SPECIAL 特集

ハリウッドを支える日本人たち

ヘアスタイリスト ユウコ徳永コーチ

いつでも前進、そのエネルギーが仕事につながる!

2008年、2009年と2年連続でエミー賞ヘア部門にノミネートされた日本人へアスタイリング・アーティストのユウコ・コーチさん。今回、残念ながら受賞は逃したが、エミー賞で日本人が2年連続受賞候補に挙がったのは初めてのこと。対象となったのは、日本でも放送されている『プッシング・デイジー~恋するパイメーカー~』。ポップで鮮やかなビジュアルが生命線のドラマだけに、個性豊かなキャラクターを体現するヘアスタイリングで、より一層の独創性を発揮したことが評価されたのだろう。


目次

ハリウッドでのユニオン加入を目指し渡米! たった8年でここまで来た~
Photo

ユウコさんが渡米したのは、2001年のこと。それまで日本で“ヘアメイクさん”として活躍していた。有名アイドルを担当していた時期も、美容サロンを経営していた時期も、京都で本格的な和のヘアメイク・着付けを学んだ時期もある。キャリア・技術的には誰にもひけを取らないユウコさんだが、ハリウッドで働くとなると話は別。
「ヘアのユニオンに入ることを目標に頑張りました。アメリカではそこしか生きる場所がないと思った。」

TOP TOP

ハリウッドで仕事をする秘訣は、ありのままの自分でいること
Photo

「TVシリーズは、日本物とは関係ない仕事を選り好みし、弱点であるアメリカ文化の理解を深めることに目的をおきました」と、ユウコさん。『ザ・ユニット 米軍極秘部隊』『Moonlight』に参加後、いよいよメインのヘアスタイリストとして招かれたのが『プッシング・デイジー』だ。世界中から腕自慢の集まるハリウッド。ヘアスタイリングの仕事は、ユニオンからまわってくる場合もあるが、たいていは同業者やプロダクション・マネージャーから依頼される。TVや映画の現場では、1人で何十人もの出演者のヘアを手がけることは決してできないからだ。だから、ユウコさんも仕事が決まれば、アシスタントの誰々など、他のヘアスタイリストに声を掛けることになる。
「仕事がハリウッドでできるかどうかは、人間関係。技術はできて当然、世界中からプロが集まってきていますから。それぞれのバックグラウンドの理解が必要です。日本人っぽくしてもダメだし、日本人だからアメリカっぽくしてもダメです。だから相手が心地よい状態にいてもらうには、とにかく“地”でいることですよね、たとえ英語ができなくてもありのままの姿勢が大切です。」

仕事がもらえても毎日がチャレンジの積み重ねだ。たとえば時代物のドラマのときは、その時代背景をリサーチしなければならないし、『プッシング・デイジー』のように時代感覚のないドラマにもヘアになんらかの基準を考えておくのは仕事のうち。
そして現場では、「大変な神経疲れです、失敗は許されない。コンティニュイティ(Continuity)ていって、こっちを向いて終わったら、続きの撮影では、前と同じに(ヘアスタイルを再現して)やらないと。ちょっとでも間違いがあったら、仲間が文句言ってきますからね。番組からじゃなくて(笑)。いいもの作ろうとするから、それくらいキチンとできないとダメですよ。」

TOP TOP

言い回しに一工夫 女優も手のひら乗せる会話テク
Photo

ユウコさんのようなヘアスタイリストは、撮影の仕事の中でも出演者と最も密に触れ合う仕事だ。
「メンタルが大変ですよね。(女優たちは)機嫌のいいときばかりじゃないし、それを察知しないとダメだから。髪の毛をいじってもらいたくない日もあるし、昨日すごく気にしていたことも今日はそうでもないとか(笑)。しゃべり方にもすごく気を使います。それも一つの技術ですよね。そろそろ伸びてきているヘアでも、切りたくない人だったら、『Let’s Haircut!』と言ってもダメだし。それを『Why don’t you?』と勧めた言い回しに変えるなどの会話の工夫も考えないと。そうすると、(私の気持ちをわかってくれてる)って、女優さんが私の手のひらに乗ってくれるんです」

今ではセレブにも友だちがいる。そんな“手のひらに乗ってくれる”セレブの1人がデニス・リチャードだ。
「仲いいです。評判と性格が全然違う。性格は気さくだし、日本人のことをよく理解しています。」
逆に心を開いてくれないセレブも。
「(彼女らが)心を開いてくれたときはうれしいです。人間関係に隔たりがあるときは諦めず、根気よく自分のすべきことを続けます。最初から心を開いている人は経験が豊かだし、容姿でなく心の中に自信がある。本当にビッグ(豊かな経験を通して)になった人は見る目があるので、私の仕事に対する熱意や真剣さを言葉の壁を乗り越えてわかってくれます。」

ユウコさんの技術とメンタルケアで、現場の俳優たちから信用を得ても、それで万事が順調というわけではない。
「ハリウッドはスピードと競争が激しいところなので、いつも崖っぷちですよ。体力でも誰にもひけを取ることは許されないし、モチベーションを最高のシフトにおいて長時間の撮影に備える必要があるので神経的にそれが一番つらいですね。オスカーをもらうような人たちは、つらいことも、人間の駆け引きも乗り越えてきた。そこまでいくには、実績や技術だけじゃない。それ以外に、たとえば人に誤解をされたり、陥れられたりとか、そういうのを全部乗り越えて何年もポジティブに仕事を続けてきた“たまもの”なんです。」

TOP TOP

エミー賞に二度ノミネート後も、常に学ぶ姿勢をアピール
Photo

日本のマスコミは、どうしても「○○賞を獲った」、「××さんを担当した」と、そういったことばかり注目しがち。けれど、その地位にたどり着くことのできた人が、いかに強い人間性とバランスを兼ね備えているかを知ってほしいとユウコさんは願っている。エミー賞に二度ノミネートされたユウコさんも、徐々に取り巻く状況が変わってきている。

「前みたいに誰もちやほや雇わないですね。予算が合わないとか、経験豊富な人よりもアシスタントレベルの方が雇用しやすいなどいろんなものが微妙に変わってきた中で、自分のイメージレッテルも勝手に生まれます。そのプレシャーのある流れの中で自分を正しく理解してもらいながら再度売っていかないとダメ。『私はいつでも学びたい。常に新鮮に仕事を受け入れる前向きな姿勢でいる』ということを大切に考えています。アワードを受賞した人達ばかりに囲まれての現場にいますが、何気ない素振りでひた向きに受賞翌日にもけなげに働く仲間を目あたりにして、彼らは本当に好きでやっていると感じる。そんなハリウッドに生きるアーティストの偉大さがとても刺激になります。このようなすばらしいクルー達と常に肩をならべ、よきサポートができる自分でありたいと願っています」

ユウコさんは、去年パサデナでヘアサロン&アカデミー、KCスタイリストをオープン。日本からユウコさんを慕い(目指し)やって来た、若いスタッフたちに仕事を教えている。現在、ユウコさんは、TVドラマシリーズ『Castle』に参加中。ちなみにこのドラマの主演女優スタナ・カティックは、ユウコさんの代名詞ともなっている、ボブ・スタイルが印象的な女優だ。

ユニオンに入って、まだ5年目。こんなに順調にハリウッドで活躍できると思っていましたか?
「思ってなかった。それは家族のおかげだし、スタッフのおかげ。人に恵まれていると思います。だって(撮影仕事の)電話1本入ったら、すぐ行っちゃう。お店も任せきりで成り立ちますから。そういう環境に持っていけたらいいなと長年思ってきました。やっぱり(夢を)描かないとそうならないと思います。」

オープンなユウコさんは、セレブの話からヘアスタイリングの仕事、さらにはコーチ家のフトコロ事情まで?明かしてくれた。エネルギッシュな人だけれど、どこか温かいお人柄。
「(自分のエネルギーは)やっぱり凄いと思います、普通じゃない環境にいるから。出会う人たちは私の100倍くらいエネルギーあります。特に監督とか女優さんとか。だから『ユウコといると落ち着く』って言われます(笑)。それくらいハリウッド業界のボルテージは高いです。そのパワーを平気で受けとめないと、まず安心して(スタイリング用の)イスに座れないですよね。スタミナとバイタリティとウツワの深さが、自分の細胞から出てこないとダメ。説明しなくていいんですよ、敏感で感受性豊かな人達の集まりなので通じ合う同士が一緒に作品を作るからこそいい仕事ができるんだと思います。」

“アメリカン・ドリーム”の実現途上にいるユウコさん。しかし、ユウコさんの“ドリーム”は、今も毎日大きくなっているようだ。

TOP TOP


Photo

Photo

Photo

Photo

Photo


ユウコ徳永コーチプロフィール
ヘアスタイリスト ユウコ徳永コーチ(Yuko Tokunaga-Koach)

KC Stylist Studio (所在地:カリフォルニアUSA)代表。

16歳から京都にて着物を学び、美容家、和装トータルスタイリストとして雑誌、TV映画などで幅広く日本で活躍した後、2001年に渡米。ハリウッドエンターテインメント業界において、アジアンテイストをブレンドさせたユニバーサル的ヘアデザインで存在感を示すヘアーデザイナーとしてユニオンに加入、瞬く間に正式デビューを果たす。

最近の作品では公開前のスターウォーズのヘアーデザイン。ポップ界のキング、故マイケル・ジャクソンの今年行われる予定だった、ロンドンツアー用『スリラー』のプロモーションビデオ制作に臨み、唯一の日本人ヘアーデザイナーとしてプロジェクトに携わった。

現在は、ABCで放送中の『CASTLE』でヘアデザインを担当。




PAGE UP