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なぜ秀作ドラマが打ち切られるのか?

『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』アメリカのドラマシリーズを観ていて、視聴者にとって最もショックなことは、人気キャラクターの(物語中の)不条理な死でもなく、主要キャストの突然の降板劇でもなく、シリーズそのものの<打ち切り>だろう。

海外ドラマNAVIでも、『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』をなんとか復活させようと、番組をサポートし続けたことは記憶に新しい。
そして『HEROES/ヒーローズ』、『フラッシュフォワード』...

「面白いのに、なぜ結末まで見せてくれないんだよ???」

という声は、アメリカでも日本でも多く聞こえてくる。

打ち切りの決定には、非常に多くの、複雑な理由が背景にある。
テレビ局、製作プロデューサー(製作会社)、配給会社には三者三様の異なる判断基準があり、それは製作内部、しかもトップの人間にしか知り得ないことだ。


◆番組の持つ実力(出来映えの良さと視聴者を引き付ける力)とリスク(製作費)の天秤。

製作費の高さと視聴率のバランスがとれなくなってしまった例が『ターミネーター~』だ。
アクション/脚本/演技、どれも映画並みの強さでスタートしたシーズン1はSFのジャンルではトップの滑り出しを見せた。
しかし脚本家のストライキ以降、番組は視聴者を失っていく。特に痛手となるのは「18~49才の視聴者層」の喪失だ。
有効な購買人口である18~49才があまり観なくなる番組には広告費は出なくなる。
そうなれば映画並みの映像クオリティーは維持できなくなってしまうのだ。


◆奇抜なストーリー展開を維持できるか?番組継続の背景に見え隠れする難しさ。

『HEROES』のように、日本でもまだまだ人気が高く、レンタルやDVDセールスが海外でも高い優秀なコンテンツも、北米での視聴率の低下の波には勝てなかった。毎回斬新な物語/視覚効果/スタントワークで視聴者を驚嘆させ続けるには、コストがかかる。
登場人物たちの超人的パワーを映像化するためには、法廷劇やラブストーリー等の通常の人間ドラマを仕上げるよりも費用が高くなるのは当然だ。それでも、コミック文化なども積極的に取り入れ、工夫に工夫を重ねながら4シーズンにわたってこの物語を紡いだ製作陣の献身は"超人的"である。

物語を進める上で、"奇抜なサプライズ"を生み続けなければならない類いのドラマは、そのスタート時から、サプライズの手法に見る側がいつか飽きてしまうという宿命を帯びている。
毎回のエピソードで「あっ!」と言わせ続ける。これは至難の業であり、これをやってのける脚本家たちの頭脳には頭が下がる思いである。


◆放送時期と製作上の戦略が裏目に出ることも...。

『フラッシュフォワード』『フラッシュフォワード』は、放送スケジュール戦略のミスを犯している。近年、シーズン途中で数週間(長ければ数ヶ月)の中断を入れるドラマが見られるが、この番組も同様の決断をした。
『フラッシュ~』は映画『ダークナイト』の脚本家でもあるデイビッド・S・ゴイヤーをクリエーターとして迎え、『LOST』の後継番組としてメディアでも非常に大きく扱われた番組だった。実際、ドキドキする期待感を持って、視聴者は毎週観続けていた。
しかし、何度かのクリエーターの交代劇で北米ファンに不安感を抱かせてしまった上、冬季オリンピック放映との競争を避けることや製作体制の立て直しのために約3ヶ月半もの中断を入れてしまった。

この中断によって『フラッシュ~』は何を失ったか?

物語は、2009年10月6日に、世界中の人々が同時に137秒間意識を失うというブラックアウト現象が起き、その瞬間に人々は6ヶ月先の2010年4月29日の未来を見てしまった、というのが主軸の設定だった。
ブラックアウト中に見た未来は、果たして6ヶ月後に真実となるのか? 視聴者の目はその一点に注がれていた。
番組の放送が開始したのは2009年の9月末。もし順調なスケジュールで放送が進めば、番組ファンはほぼリアルタイムで2010年の4月に物語の結末が見れたはずで、クリエーターたちも当初それを狙っていた。
ファンたちは日常の時間経過とドラマの時間経過をバーチャルに体感できるはずだったが、放送中断によってその楽しみ方は断たれてしまった。そして3ヶ月半が過ぎてしまった後には、"2010年の4月"に何が起きるかをもう気にかけなくなってしまっていたのだ。
結果、ドラマの質そのものとは直接関係のない要因で、視聴率は低下し始めてしまったのだ。

『LOST』の反省からか、ブラックアウトの謎を引っ張らず、割と早い段階で明かしてしまったことも、ファンの興味を削いでしまったのかもしれない。
そしてジョセフ・ファインズ演じるマーク・ベンフォードに、『24』のジャックバウアーのような牽引力がなかったことも熱烈なファンを維持できなかった要因として挙げられるだろう。

日本人キャストとして活躍した竹内結子さんは、撮影現場で皆に温かく迎えられ、そしてメディアでも「"ケイコ"役はオリジナルの役柄で新鮮。番組に必要な、愛されるキャラクターだ」との好評を得ていた。それだけに、番組が無くなったことは本当に惜しい。複数シーズンにわたって登場する可能性を秘めた大抜擢だった。


打ち切りはテレビファンにとって、衝撃であり、残念な決断である。

しかし、アメリカはご存知の通り、"実力社会"。
ビジネスとしての実力が、番組(商品)の行方を左右するということを忘れてはならない。

日本ではあまり馴染みがないが、ハリウッドでは毎年上半期に"パイロット版"と呼ばれる、ドラマの試作品としての第1話が製作される。批評家の評価も高く、テレビ局も勝算があると睨み、放送/配給のメドがつけば、続きのエピソード製作にゴーサインが出る。

『ターミネーター』は2シーズン、『HEROES』は4シーズン、『フラッシュフォワード』は1シーズン、パイロット版の成功があったからこそ、僕らは1シーズンでも2シーズンでも番組を目にすることが出来た。
打ち切られたと言っても、これらは優良作品群の中でも上位に位置するのだ。
実際、どの作品も日本をはじめとする各国に配給されるルートを勝ち取っている。

逆に、ゴーサインが出ずにお蔵入りとなり、撮影されたのに我々の目には触れない"第1話"がハリウッドには山ほどあるのだ。昨シーズンも、批評家の高い支持を得ながら、わずか2話で放送を打ち切ったドラマさえある。


『フリンジ』今や人気ドラマの1本となった『フリンジ』。
その第1話の撮影中のメイキングの中で、製作プロデューサーの1人がカメラに向かって、

「この作品が(ゴーサインが出て)オンエアーされることを願っているよ!」

と冗談混じりに語っていたのを僕は忘れられない。
パイロットとしての第1話に、10億円を投資した作品でも、1シーズン全ての放送と配給は100%確約されている訳ではないのだ。
番組のクリエーターが業界人気トップのJ・J・エイブラムスであっても、約束された馴れ合いのドラマ作りは許されない、ということがよくわかる。
事実、昨年9月に放送を開始した同クリエーターの作品『Undercovers』は、1シーズン目の中盤で製作を打ち切られてしまった。


アメリカのドラマは、基本的に1シーズン20話以上を、数シーズン、何年にもわたって放送することを目標に作られる。数シーズン続く物語を構築するには、クリエーターと脚本家が物語を練り上げるためのDevelopment(開発、展開)に先行投資することになる。
シーズンを支えるキャストやスタッフも同じ顔ぶれを維持しなければならない。
キャスティング担当は、エピソードに出演するゲストや端役の俳優をオーディションに時間をかけて毎週数人から数十人単位で探し続けなければならない。
次シーズンの製作が決まれば、次シーズンのために全ての部門のスタッフが動き出す。
その予算は膨大な額になる。

壮大な構想プランには、膨大な仕事量が必要とされ、予算が動くからこそ、

「これ以上製作しても赤字。ダメージが大きくなるだけ!」

と判断されれば、<打ち切り>という決断をすぐにでも下さなければならないのだ。

しかし、長きにわたった各々のドラマのDevelopmentを切り捨てるというのは、製作チームにとっては断腸の思いであろう。固定ファンがいるような番組であれば、テレビ局(放送側)としても悩みに悩む苦渋の決断であるに違いない。


アメリカのエンターテインメント業界のシビアな判断、基準点は、
テレビ界、映画界、演劇界と、ほぼ共通していると言っていい。

どんな有名なスターが出ている、または巨匠監督の映画でも、出来映えが悪く、お客の入らない映画は、2週間そこそこで上映を止めてしまう。上映どころか、お蔵入りになる映画は少なくない。

ブロードウェイの舞台は、完成度が低ければ幕を開けないことがあるし、たとえ開演して2日目でも3日目でも、批評家に酷評され、それが興行に致命的となれば即公演を中止してしまう。ドル箱スターが出演していても、容赦はない。

当たり前のように下されるこのような判断は、日本にはなじみがないので理解され難いかもしれない(日本は先行投資で製作を拡大していくというより、もともと確保した予算内に収める傾向がまだまだ強い)。
視聴者や観客が期待していた作品、観続けていた作品、それが製作サイドの理由だけでキャンセルされてしまうのは、不親切であり、酷だともいえる。

しかしこのシビアさ、
この競争の水準、
構想に懸ける時間と費用の投資、
潔い決断、

それこそが、
世界を唸らすクオリティーの映画、舞台、そしてテレビドラマを生み出し、
我々ファンを常にときめかせるエンターテインメントを供給してくれている根幹なのだ。

それを思えば、

<打ち切り>という強引なシステム。

その決断の在り方。

そしてそのシステムとの闘いをやめない
彼ら製作陣の気迫と創造性に、感謝できるのだ。




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【発売元】ワーナー・ホーム・ビデオ

『フラッシュフォワード』:©ABC Studios
『FRINGE/フリンジ』:TM & (c) Warner Bros. Entertainment Inc.

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ライタープロフィール

尾崎英二郎
尾崎英二郎

リアリズムを追求する米国の演技手法を日本で学び、NHK『あぐり』でTVデビュー。

99年のNYオフ・ブロードウェイ公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』で現地メディア批評家に演技を称賛され、その後アメリカの映画/TV業界を目指す。03年、侍のアクションメンバーとして出演した『ラストサムライ』をきっかけに人脈を広げた。

06年に主要キャストとして日本から抜擢された『硫黄島からの手紙』でハリウッドへの扉をこじ開け、ついに念願の本格渡米を実現。

米TVシリーズ『TOUCH/タッチ』『フラッシュフォワード』『HEROES/ヒーローズ』など、自らの出演体験をもとに、ハリウッドのシステムの凄みを伝える。

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