初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.11(後編)>~『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』宇宙を斬新に彩る、未来への試み~

尚、本文は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』1作目のネタバレを含んでいます。まだ観ていない方は観賞後にどうぞ。2作目のネタバレはありません。ご安心下さい♫

強大な破壊力を持つオーブ

『GUARDIANS OF THE GALAXY』(邦題:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)1作目の中盤で、クリー人過激派のロナンと手下のコラスたちは、スター・ロードたちからオーブ / Orb を奪います。

そのオーブの中には、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品群の中でこれまで登場してきた《インフィニティ・ストーン / Infinity Stone》の一つが隠されています。インフィニティ・ストーンは全部で6つ。これら6つの石が"The Dark Lord"とも"The Mad Titan"とも呼ばれる巨悪サノス / Thanos の手に渡れば、それはユニバースすべての終焉を意味します。この6つの石については、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー / Avengers: Infinity War』で、ついにアベンジャーズやガーディアンズの面々が集結を遂げる前に、本コラムでも詳しく触れたいと思っています。

この石の一つを手に入れ、秘めた破壊力の強大さを知ってしまったロナン。彼の蛮行を止めなければ、惑星ザンダーは彼の望み通り壊滅されてしまいます。インフィニティ・ストーンの力を得たロナンに逆らったらどうなるか。

八方ふさがりのスター・ロードたち。彼らは揺れます。

はぐれ者、無法者、前科者、一匹狼...彼らの命運は...!?

ジョークがあるからこそ際立つ語り合い

この作品は、全編にちりばめられたジョーク、数多くの笑いの要素が他のMCU作品以上に大きな魅力ですが、コメディ色で楽しい作風だからこそ、ここぞという局面ではキャストの真剣な語り合いが際立ちます
観客の心を引きつけるやりとりがしっかり用意されているのです!!

物語のクライマックス:最後の決戦の直前に、スター・ロードことピーターが、ガモーラ、ロケット、グルート、ドラックスに訴えます。

スター・ロード:I need your help.
皆の助けが要るんだよ。

I look around at us.
自分たちを振り返ってみる。

You know what I see?
何が見えるかわかるか?

Losers.
敗北者たちだ。

I mean, like, folks who have lost stuff.
何かを失った連中、っていうことさ。

And we have. Man, we have. All of us.
俺たち。なぁ、失くしたよな。俺たち皆。

Our homes, our families, normal lives.
故郷も、家族も、普通の暮らしも。

And, usually, life takes more than it gives.
大抵、人生では、与えられるものより奪われるものが多い。

But not today. Today, it"s given us something.

でも、今日は違うんだ。今日は、俺たちは何かを与えられたんだよ。

It has given us a chance.
チャンスを与えられたんだ。

ドラックス:To do what?
何の?

スター・ロード:To give a shit.
かましてやるのさ。

For once.
一度くらい。

Not run away.
逃げずにね。

I, for one, am not gonna stand by and watch as Ronan wipes out billions of innocent lives.
俺は、たとえ一人だって、ロナンが罪もない何十億もの民を抹殺するのをただ立って見ているつもりはないよ。

ロケット:But, Quill, stopping Ronan, it's impossible.
でもクイル、ロナンを止めるなんて、不可能だよ。

You are asking us to die.
死ねって言ってるようなもんさ。

スター・ロード:Yeah, I guess I am.
あぁ、そうかもな。

スター・ロードは何も言えなくなり、立ち尽くす。

ガモーラ:Quill. I have lived most of my life surrounded by my enemies.
クイル。私は、ほとんどの人生を敵に囲まれて生きてきた。

ガモーラが立ち上がる。

ガモーラ:I will be grateful to die among my friends.
友達の中で死ねるなら、本望よ。

ドラックスが立ち上がる。

ドラックス:You are an honorable man, Quill.
お前は立派だ、クイル。

I will fight beside you.
共に(そばで)戦う。

And in the end, I will see my wife and daughter again.
最期には、妻と娘にまた会える。

グルートが立ち上がる。

グルート:I am Groot.
私はグルート。

ため息を漏らすロケット。

ロケット:Oh, what the hell. I don't got that long a lifespan, any way.
あぁ、なんてこったい。まぁ、もともと長い寿命があるわけじゃねぇしな。

Now I'm standing. Y'all happy?
ほら、立ったぜ。皆、ハッピーか?

We're all standing up now.
全員、立ち上がったぜ。

Bunch of jackasses, standing in a circle.
間抜けな野郎どもが、円陣になって立っているぜ。

 

恋人でもない、友達でもない、血のつながった兄弟でもない、そんな寄せ集めの者たちが、「一つ」に成れるのか?
彼らにとって、《奇跡》とは、強大な敵を倒せるかどうか?ではなく、

「家族」を見つけられるか?「家族」になれるか?

そもそも、本当の「家族」とは、何か?

という、とてもシンプルな問いかけこそが、この作品のテーマなのです。

好成績のワケ

その普遍的で親しみ易いテーマは、シリーズ最新作である『GUARDIANS OF THE GALAXY Vol.2』(邦題:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』)でも貫かれ、米国での5月5日初日からの公開週末の興行成績は、MCU作品のランキングでも『アベンジャーズ』2作、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『アイアンマン3』に続いて5位につけ、公開後2週間の全世界興収ではすでに650億円を記録。このままの勢いを維持できれば、これまで上記のMCUトップ4作しか果たしていない「1000億円超えタイトル」に加わることになります

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これだけマニアックなキャラクターたちを集めた映画で、アイアンマンやキャプテン・アメリカといった"ユニバースの主要スターが登場していない作品"にもかかわらず、特大級のヒットになっていることがおわかりいただけるでしょう。

「ファミリー映画」として受け入れられる

好成績を生んでいる背景として、近年は3Dでの公開劇場数が多いことももちろんあるでしょうが、この作品に関しては、他のアメコミ映画と比較しても、初週の金曜日から土曜日の成績の落ち込みが非常に少なかったことが顕著に現れています。多くのアメコミ映画は、初日に最も多くのファンたちが劇場に押し掛け、2日目のドロップ率が高くなってしまう傾向にあります。しかし、『GUARDIANS OF THE GALAXY Vol.2』は2日目のドロップ率が予想を超えて低く留まりました。この結果は、仕事や学校のない土曜日に多くの家族連れが劇場に足を運んだからだ、と分析されています。
「ファミリー映画」としても受け入れられているのです。

音楽の力

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このシリーズの「親しみ易さ」を生んだ要因の一つが、音楽の使い方であることはすでに皆さんご存知でしょう。
1作目で繰り出した、音楽のシーンへの挿入の手法は画期的でした。「ウガチャカ♪ウガ♪ウガ♪」...と一度聴いたら忘れられない"Hooked on a Feeling"のフレーズは予告編(刑務所シーン)のリリース段階から観客の心をつかみ、"Come and Get Your Love"のライトなメロディーは映画本編のタイトルバックの絶妙なタイミングで流れ、"これはかなり明るいトーンの物語になるのだな..."と誰もが予感する導入部に仕立てています。

僕が個人的に気に入ったのはThe Runawaysの"Cherry Bomb"で、前述の「主人公たちが立ち上がる」名シーンで勇気が湧き起こった直後、いざ出陣のくだりで挿入されています。アップビートな女性ボーカルの"爆弾"ロックが、なんともこの展開にマッチするのです。

終盤ではMarvin Gaye & Tammi Terrellの"Ain"t No Mountain High Enough"のような名曲も連なり、さらに観ていない方のために曲名は明かしませんが、あっと驚かしてくれる愉快なシーンにはThe Jackson 5のあの曲♪が使われていたりします。

多くの使用曲の歌詞の内容が物語とシンクロしていることも上手いのですが、すべての曲がピーター・クイルの母メレディスの世代(60年代後半~70年代頃)の名曲やヒット曲であり、ピーター自身が地球から持ってきた想い出そのものであることが大きなポイントです。

「銀河や宇宙船の船内で、これらの曲が聴こえてくる...音楽に必然性がある!!」

単にヒット曲を並べてサウンド・トラックにしたわけではなく、曲選びも物語の重要な一部であることが、着想や脚本化の見事さなのです。

これらの曲目は、60年代、70年代に青春を謳歌した年頃の人々、もしくはこれらを80年代や現代までの間に、どこかで耳にした僕らの世代にいたるまでを、一気に「銀河に惹き込む」「銀河にいざなってくれる」ことを可能にしました。
普通に生活していれば、ほぼ縁の無い「宇宙」「銀河系」の空間や星々、そしてまったく知らないキャラクターの面々に、なぜか親近感を覚え、遥か遠くの出来事とは感じさせない効果を生んだのです。

アメコミのファンさえ知らなかった物語だから、一般の観客にも「GUARDIANS」の予備知識は要らない。音楽ファンも楽しめる。マーベル・シネマティック・ユニバースの中ではかなり独立した話であり、同ユニバースの他の作品を観ずとも、1作目も2作目も充分に楽しめる。だから、観客層が広いのです。

「未来への布石」となるかもしれない大切な要素。それは...

さて、もう一つ、特筆すべき本シリーズの成功要因に触れてみたいと思います。

実は、これが最も大きな「未来への布石」となるかもしれない大切な要素。それは...

この作品の「色(配色・色彩)」です。

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多くの「宇宙モノ」の映像作品は、ストーリーが起こる舞台設定をリアルに見せるために、極端な色使いを好みません(少なくとも現在までは)。過去のお気に入りのSF映画やドラマの宇宙船の外観や船内や宇宙服などを思い浮かべてみて下さい。大抵はモノトーンで、無機質な感じが、本当らしさを生んでくれていたはずです。

"架空""空想"という作風を強く押し出した作品であれば、『スタートレック』のように異色で鮮やかな例もありますが、あの画期的な『スター・ウォーズ』であっても、ジェダイの騎士たちのイメージは白や茶色のコスチューム、ストームトルーパーなどの兵士も白の鎧、ダース・ベイダーは黒のマスクにマントです。その方が重厚さも醸し出せるのです。
逆に、原色の強さというのは、ピンポイントで使用してこそ、よりインパクトがあります。ジェダイやベイダーが握るライトセイバーの、勝負時に見せる青や赤みがかった光は、強烈なパワーでシーンを盛り上げてくれますよね。

一方、『GUARDIANS OF THE GALAXY』のシリーズは、まるで宝石箱、あるいはおもちゃ箱のように、原色を映画全編に使っています。子供っぽい印象を与えかねない、いわばギャンブルです。

ピーターの母がピーターに贈るプレゼントの包み紙から、宇宙の生物たちの肌、星の地面、空、ユニフォーム、宇宙船、建造物、ありとあらゆる事物に、溢れんばかりの彩色が施されています。

僕が(個人的にですが)思い出すのは、黄色。
それぞれのシーンをじっくり観ていると、病室や刑務所や宇宙船の船室など、普通なら暗いイメージで描かれそうな場面のセット美術・衣装・照明にも黄色がふんだんに使われ、「暖かで、明るい」。まるでこの作品のトーンを象徴しているかのようです。映画のタイトルの文字も、ドーン!と黄色(金色に近い?)で出ますよね。

「バカバカしくは映らないバランス」

生物や星人たちの肌には、ピンク、青、赤、緑...数えることが無理なくらい多種の色が存在しています。例えばガモーラの皮膚の緑は、エイリアンでありながら、バカバカしくは映らないバランスの緑色にするために、何度もメイクのテストを重ねたと言います。

実はこれは、コミックというフィクション世界を実写化する際に、最も力点を置くべき、熟慮されるべき、大切な分岐のラインです。

"リアルに実在してほしい"、でも"コミックらしさを失ってほしくない"、この2点を巧みに抱かせながら着地することは難しく、そこが成功のカギだと思うのです。

新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』には、ソヴリン / Sovereign人という新たな種族が登場しますが、その一族の指導者アイーシャ / Ayesha(演じるのは『ナイト・マネージャー』『コードネーム U.N.C.L.E.』のエリザベス・デビッキ)は肌も衣装も黄金色。

"黄金"といえば響きはいいですが、「全身、真っ金、金」ですよ。一昔前であれば、人気上昇中の女優なら断ってしまった役柄かもしれません。架空の物語であっても、全身が金ピカで人気を博したキャラクターで思い出せるのは、『スター・ウォーズ』の C−3PO くらいではないでしょうか? あれはドロイド(ロボット)ですが、それでも70年代当時は思いきったデザインのキャラクターとして挑んで創ったに違いありません。

視覚効果関連の雑誌インタビューで、「配色」について語った、ジェームズ・ガン監督自身の言葉がありますので、ご紹介します。

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One of the first things I did was I sat down and gave every scene a color palette.
最初に腰を据えて取り組んだことの一つは、すべてのシーン毎のカラー・パレットを用意したこと。

I wrote the story through colors and I would want people to be able to look at the way those colors move and be able to tell what the story is just through seeing those colors.
色彩を通して物語を書いていき、観ている人々がそれらの色が動いていくのを視覚して、色彩を見つつ、どんなストーリーがその時に起きているかが判るようにした。

A little green, a little orange, a little red - and then we get into some darker colors.
緑が少しあって、オレンジが少しあって、少し赤があって、そしてそこからいくつかの暗い色に入っていく。

It's just the feelings they elicit.
フィーリングを彼らが(色から感じて)導き出せるようにね。

So when we go to the Sovereign world at the beginning of the movie, it's all golds and blues, then we go to pinks and whites in the next location. Then we go to all greens for a long time, then we go back and at the end we get into some bigger colors.
映画の冒頭でソヴリン人の世界を僕らがが訪れた時には、すべてが金色と青色、そして次の場所では、ピンクや白色を訪れる。それから長い間、すべて緑色のところへ行って、戻って、そして最後に僕らはいくつかのより大きな色彩の中に入っていくんだ。

このコメントでわかるように、単に派手なのではなく、深くプランが練られた「色」への配慮が、同シリーズの魅力を生み出しているのは明らかです。

他の宇宙モノやSF作品と比較しても、おそらく何十倍もの(原色系の)彩りに大きく舵を切っているこの映画のキャラクターたちや事物の描写は、フィクション作品への新たなアプローチとして試金石になるでしょう。

ガン監督は、上記の効果に加え、50年代~60年代のパルプ小説や80年代のコミックあたりの色合いも、新作では打ち出したかったそうです。

これまでなら「バカらしく、呆れられた」かもしれない色使いは、転じて斬新さとなり、その斬新な試みは、実は本来のアメコミの作画文化を担ってきた「色」を全面に活かすシーン作り、そのビジュアルの実写化を叶えてくれた手法の一つだ!と言えるのです。

「映画ができることの可能性を広げる」

「多彩な色のパレット」とは、芸術そのものでもあり、楽しさを生むものでもあり、「明るさ」は光であり、希望です

過去のMCU作品の中では、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で登場したヴィジョンというキャラクターの肌が度肝を抜くパープル・ピンキー・レッド色の顔で、コミックのキャラの実写版として突き抜けた感がありました。『ドクター・ストレンジ』で目にした、無数の次元で見られたサイケデリックな光景の配色も同様です。

その流れを加速させるように、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の前作と新作の2本は、コミックが生んできた色や形やコンセプトを、これまで以上に直球のストレートで表現した点で、コミックと宇宙モノの映画史において非常に大きな功績を遺しているのではないでしょうか。この秋に公開が待たれる『Thor: Ragnarok』(邦題:『マイティ・ソー バトルロイヤル』)のさらに大胆にも映るデザインや配色の面白さにも期待が膨らむというものです。
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「映画ができることの可能性を広げる」

ということは、決して容易なチャレンジでありませんが、多くのファンや映画作家たちが『スター・ウォーズ』にときめきを覚え、革命的な影響を受け続けてきたように、これからの世代は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の試みから、次の何かを受け止め、生み出していくでしょう。

現在公開中の2作目も、可愛らしい新登場キャラクター(米国版『オールド・ボーイ』のポム・クレメンティエフが演じるマンティス)や、思わぬ名優たちの出演(『ワイルド・スピード ICE BREAK』のカート・ラッセル、『クリード チャンプを継ぐ男』のシルベスター・スタローン...そして他にも!)、贅沢すぎてびっくりのポスト・クレジット・シーンの数々、こだわりのサウンドトラック(Awesome Mix Vol.2)...そしてスター・ロードにまつわる秘密と、キャラクターたちの関係性を掘り下げる脚本...

見どころの紹介は尽きませんが、きっと劇場スクリーンで観て、(あらゆる角度からの視点で)観て損はないはずです。

是非、1作目の抜群の出来映えを堪能した上で、新作の「色」、そしてそれに伴う「感情」を楽しんで下さい♪

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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Photo:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(C)2014 Marvel. All Rights Reserved. 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(C) Marvel Studios 2017 ジェームズ・ガン監督(C) Izumi Hasegawa/HollywoodNewsWire.net 『マイティ・ソー バトルロイヤル』(C) Marvel Studios 2017