初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.5>~雷神マイティ・ソーと武器のハンマー~

マーベル映画の話になった時、多くの方が???となる単語に、「PHASE(フェイズ)」という言葉があると思います。

Phaseには、変化・成長・発達の「段階」「時期」という意味があります。2015年11月現在、マーベル・スタジオが製作してきた映画群のユニバースには、《フェイズ1》と《フェイズ2》の、二つの段階があり、

《フェイズ1》が、まず『アイアンマン』に始まり、『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『アベンジャーズ』までの6作品。

《フェイズ2》が、『アイアンマン3』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『アントマン』までの6作品。

この他、上記の《フェイズ》に添いながら製作されてきたテレビ部門の『エージェント・オブ・シールド』『エージェント・カーター(Agent Carter)』『デアデビル(Daredevil)』などのドラマがあるわけです。

これらの作品のキャラクターたちやさまざまな場面の伏線が、お互いどこかで絶妙に絡み合い、壮大な世界観(Universe)として、つながりのある物語を築き続けています。

映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』

来年は、いよいよ《フェイズ3》に突入するわけですが、ほとんどのアベンジャーたちが登場すると伝えられている『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー(Captain America: Civil War)』(2016年)には、あの緑の超人ハルクは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(公開済み)の終盤でその行方をくらましているため、登場の機会は無くなったと言われています。

そして、その代わりに!!

『マイティ・ソー/ラグナロク(Thor: Ragnarok)』(2017年)で、ハルク: Hulk(マーク・ラファロ:Mark Ruffalo)がこのユニバースに再登場すると、最近のニュースで報じられました。しかも、ソー(クリス・へムズワース:Chris Hemsworth)とハルクとのバディー・ムービーになるらしいと。

これはなかなか面白い、巧く練られた先行きだと思います。

というのも、感情的に暴走した時にコントロールの保てないハルクは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でもその存在の危険性や害が人類に及んでしまったように、このままでは地球上の世界では人間たちとの共存ができません。そしてハルクの持つ破壊力に対しマイティ・ソーの怪力が匹敵することは、『アベンジャーズ』で二人が見せた、空母ヘリキャリア:Helicarrier の中での激突シーンで証明されているからです。いいバランスの二人...と言っていいでしょう。

ここで、《フェイズ1》や《フェイズ2》をまだ見ていない...という皆さんのために、このコラムで初めて、

ソーって、何者なの? 誰なの?」

ということについて、語ってみたいと思います。

映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』

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マイティ・ソーって何者?

人間から見ても、馴染み難い、あのギラギラした衣装。キャプテン・アメリカやハルクのように、"Super-Soldier/超人兵士"計画の実験の影響で進化や変貌を遂げたスーパーヒーローでもなければ、怪物でもない。

しかも、持っている武器が、金槌(かなづち)???
格好良いのか、格好悪いのか、日本人の目にはいまいち解り難いキャラクターです。

「彼は、何なんだい???」

今でもそう感じていらっしゃる方がきっといるはず。

答えは、

」です。

雷神:Thunder God」です!

北欧(ノルウェー)に伝わる神話に登場する「神」をもとにしたヒーローで、アスガルドという神々の住む王国で王位を継承する重要人物なのです。いわゆる、キリストのような神とはちょっと意味合いが違います。

ドラマ『エージェント・オブ・シールド』シーズン1の第1話の中で、グラント・ウォード捜査官がマリア・ヒルに対し、

ウォード: I don"t think Thor is technically a god.
厳密に(専門的に)言えば、ソーは神でないですよね。

と、面白い言い回しでソーについて意見する場面があります。
a god(ある一人の神)」と表現されているので、宗教上の唯一絶対の神「God」とは違う存在として認識されていることが判ります。

共存するクセの強いキャラクターたち

ヒーローや怪物に混じって、神話の「神」まで出ちゃうのかよ... と、奇想天外にも感じるかもしれませんが、コミックの世界観の中で共存するキャラクターたちを、"実写化という壁"をも越えて映像化を成功させたのが近年のマーベル・スタジオのスーパーヒーロー映画やドラマです。

ちょっと古い時代に遡れば、例えば、日本の特撮映画の怪獣やヒーロー作品に『ガメラ』や『大魔神』というキャラクターがいました。今も根強い人気があります。「ガメラ」は亀をモチーフにした大怪獣、「大魔神」は戦国時代に民衆に危機が及ぶと怒り悪を懲らしめる救いの「神」です。怒りが治まっている平時には穏やかな顔をした大きな石像で、怒ると正義の使者(憤怒の表情)に変貌するのです。大映映画の中でも、もっとも有名な神話的ヒーローと言っていいでしょう。

もし、一つの映画の中で、ガメラと大魔神が対決したら...、あるいは協力して戦ったら...これはワクワクしますよね! 東宝では1960年代に『キングコング対ゴジラ』という作品を作っていますから、大映でも2大怪獣&ヒーローの共演があってもおかしくない。むしろ、見てみたかった...

おっと、話が逸れましたが、本来は重なり合わないような物語を絡み合わせる、そういう夢のような(米コミックでは長年描かれ続けてきた)アイデアを、2000年代についに実写映画で具現化したものが『アベンジャーズ』だったということなのです。

ソーが持っているハンマーは何?

「で、あのソーのハンマーは何なの!?」

日本でいうところの「雷神」が背負った"太鼓"...と発想は同じです。あれを打ち鳴らすと雷や雷雨が巻き起こる。

マイティ・ソーの持つハンマーは、マーベルの世界でも最強の力の持ち主である彼にしか持ち上げることのできない、王国をも防衛し得る絶対的な武器です。

このハンマーを持つことのできる者は限られています!!!

実は、"怪力"がその必要条件ではありません。同じくマーベル最強の怪物ハルクでさえ、このハンマーを持ち上げることは叶わないのです。

製作陣も発音に苦労した?

このハンマー、名前を「Mjolnir」と言います。日本では通常ムジョルニアと表記しますが、ソーの父であるアスガルドの国王オーディンも『マイティ・ソー』(第1作)の劇中で「ムョルニア」あるいは「ミョルニア」というような音で発音しています。

ケネス・ブラナー

(ケネス・ブラナー監督)

監督のケネス・ブラナー:Kenneth Branagh がハンマーについて語っています。

 The first challenge with the hammer is to work out how to pronounce it, which is "Mjolnir" in our movie, at the moment, till somebody corrects me.

このハンマーに関して、最初のチャレンジはその発音だよ。映画の中では"ミョルニア"と呼んでる、誰かが訂正してくれるまではね。

製作陣も発音に苦労したんですね(笑)

ものすごい威力

プロデューサーのケヴィン・ファイギ:Kevin Feige も、ハンマーの威力についてこう説明します。

ケヴィン・ファイギ

(ケヴィン・ファイギ)

ケヴィン: What Thor can do with that hammer, he can create lightning storms, tornadoes, he can control the elements.
ソーがハンマーを駆使してできることは、雷の嵐やトルネードなどを引き起こしたり、自然(の天候や要素)をコントロールすること。

ケネス: The power of, a sort of galactic nuclear explosion.
巨大な原子力の爆発くらいのパワーがある。

他にもこのハンマーは、時空の扉を開き、持ち主にrealm(王国・領域・界)realmを行き来させることができ、天地を揺るがし、高速による飛翔をも可能にする力があるのです。

ケヴィン: He"ll throw that hammer, no matter what it hits, it"ll always come back to him. This has given us some of the most iconic and spectacular imagery.

ソーがこのハンマーを投げると、どんなものに当っても、必ず彼の下に戻ってくる。最も象徴的で、大迫力のイメージ(映像)をもたらしてくれるんだ。

なんとなく、ハンマーの威力がお判り頂けたでしょうか。

ソーが傲慢さの代償に背負った課題

ソーは、父である王のオーディン:Odin から(王位継承の決断期に見せてしまった)傲慢さを咎められ、アスガルド: Asgard の王国から別の領域・次元であるミッドガルド: Midgard=地球(人間界)へと追放されてしまいます。

この時オーディンは、ハンマーも同時に地球に送りつけるのです。
オーディンは、「Mjolnir」を地球に送りつける際に、呪文のような言葉を囁きかけます。

オーディン: Whoever wield this hammer, if he be worthy, shall possess the power of Thor.
この槌をつかみし者、その価値あれば、ソー(雷神)の力を得るであろう。

この偉大な力を有する槌(hammer)は、王位継承者に相応しい高潔な心を有する者にしか手にできない...ということを戒めとして唱えています。

そしてそれだけの人格(もしくは神格)を備える者に成らなければ、ミッドガルドからアスガルドへと次元の扉を越えて戻ってくることは叶わないということなのです。したがって、ソーは「神」でありながら、地球上で修行の試練を経なければ、再び王位の継承もできない...。彼が傲慢さの代償に背負った課題です。

MCU内での繋がり

『アイアンマン2』にて

《フェイズ1》の映画『アイアンマン2』の中で、Randy's Donuts というドーナツ屋さんで、S.H.I.E.L.D. の長官ニック・フューリー: Nick Furyがトニー・スターク: Tony Stark(アイアンマン)にこんなことを激しく言うシーンがあります。

フューリー: You have become a problem, a problem I have to deal with.
君は、俺が対応せざるを得ない障害(問題)になってるんだよ。

Contrary to your belief, you are not the center of my universe.
あいにく君の考え通りにはならない、君はこの世界の中心じゃないんだ。

I have a bigger problem than you in the southwest region to deal with.
俺には、君よりも大きな問題を、南西の地区に今抱えているんだよ。

"アイアンマン"の管理よりも重大な問題...。

さらに、同映画の中の別のシーンで、トニー・スタークを監視していたS.H.I.E.L.D. のコールソン捜査官が、任務を解かれて新たな場所へ向かう旨をトニーに告げに来る場面があります。コールソンは言います、

コールソン: Goodbye. I"ve been reassigned.
お別れだ。配置換えなんだ。
トニー: Huh..
へぇ。
コールソン: Director Fury wants me in New Mexico.
フューリー長官にニューメキシコ州に向かうように言われた。
トニー: Fantastic. Land of Enchantment.
素敵だね。魅惑の地だな。
コールソン: So I"m told.
ああ、そう聞いてるよ。
トニー: Secret stuff?
極秘事項か?
コールソン: Something like that.
そんなとこだ。

 

そしてこの映画の post-credit scene(エンドクレジット後の付録シーン) で、コールソンは、南西のニューメキシコで地上に落下したとみられる地球外からの物体:extraterrestrial object を発見します。

それが、Thor 自身なのか、それとも Mijolnir なのか、どうか映画『アイアンマン2』もしくは『マイティ・ソー』でご確認下さい。

Mijolnir は、おそらくマーベル・シネマティック・ユニバースの物語の舞台が地球上のみならず、銀河系宇宙やアスガルドなどの国々に《フェイズ3》から大きくシフトしていくであろう過程の中で、かなり重要な意味合いを持つ武器になっていくはずです。

《フェイズ1》の『マイティ・ソー』を観ずに、このハンマーの威力と意義を把握することはできません。またこの作品抜きでは、王国の継承者ソーと義弟のロキの関係が判らず、『アベンジャーズ』になぜロキが悪役として登場するのか、その背景にある感情が判らないので、ユニバース理解の面白さが半減してしまうのです。
是非、「ソー&ロキ兄弟の物語」の鑑賞をおススメします!

ソーの他に持ち上げられるキャラクターはいるの?

《フェイズ2》の(アントマン:Ant-man 登場前の)最終章と言える『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の序盤にも、アベンジャーたちがNYの彼らの拠点でお酒を片手にくつろいでいる際に「誰が ハンマー Mijolnir を持ち上げられるか!?」という余興ゲームをする場面があります。

この時、クリント・バートン(ホークアイ)の次にゲームに挑むのがトニー・スタークです。彼は軽口をたたきます、

トニー: So, if I lift it, I then rule Asgard?
もし持ち上げたら、アスガルドを支配できるんだよな?
ソー: Yes, of course.
そう、その通り。

一見ユーモア溢れるこのシーンでは、実はアベンジャーたちの中で誰が「高潔な精神」を有しているかが試されています。

ホークアイも、アイアンマンも、持ち上げるどころか、1ミリも動かすことさえできません。

この映画の中で、誰がハンマー Mijolnir を動かすことができるか? 持ち上げることができるのか? を注視すれば、今後「地球」「アスガルド」やその他の「realms」を誰が守れるのか? 逆に、誰が破滅に導く可能性を持っているのかが、読み取れるかもしれません!!! 《フェイズ3》の行方を占うワンシーン... なのかも...。

次回のコラムは、雷神ソーと、その義弟ロキ:Loki について、その性格や関係について書いてみたいと思います。

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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Photo:映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 (C)Marvel 2015 クリス・ヘムズワース (C) 2013 MVLFFLLC. TM & 2013 MVLFFLLC. (C) 2013 Marvel2013.All Rights Reserved. ケネス・ブラナー (C)Izumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net ケヴィン・ファイギ (C)Kazuki Hirata/www.HollywoodNewsWire.net