初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.11(前編)>~『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が愛された理由~

本文は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』1作目のネタバレを含んでいます。まだ観ていない方は観賞後にどうぞ。2作目のネタバレはありません。ご安心下さい♫

宇宙の"はぐれ者"たちが、なぜ愛されているのか!?

何が理由で、彼らはこんなにも支持されたのか?

それは、彼らが、トニー・スターク(アイアンマン)やスティーヴ・ロジャーズ(キャプテン・アメリカ)やブルース・バナー博士(超人ハルク)やニック・フューリー(元S.H.I.E.L.D.長官)のようなエリート的な肩書きもなく、そして"スーパーヒーロー"としても第一線級の扱いではまったくない、むしろ底辺にいた者、追われる身の者、前科者たちが、集まって、ぶつかり合いながらも心を通わせ、ついには一丸となって、

GUARDIANS(守護者たち)として

THE GALAXY(銀河)という壮大な世界全体を、救う!!!

という、痛快な物語だからです。

「寄せ集めのスポーツ部の落ちこぼれ部員たちが、才能を開花させ、ライバルたちを破って全国優勝する!」

「仕官する先のない7人の浪人の侍たちが、個性と才覚を武器に、ある村を恐ろしい野武士たちから守りきる!」

など、よく考えてみると僕らの記憶に昔からあるような、傑作・名作を生んできた物語のカタチをまさに受け継いでいるのが、2014年に公開した、『GUARDIANS OF THE GALAXY』(邦題:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)の1作目だったわけです。

しかし、2作目が世界で公開され、大ヒット中のこのシリーズも、初めて製作が発表された頃は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画群の中でも、アメコミファンやマーベル映画ファンたちからさえもその成功を疑問視された、最もリスクの高い企画でした。

だって、誰も、

「GUARDIANS」たちが誰なのか!?知らなかったから

過去に本コラムでもお伝えしたような、映画がヒットするまでは米国の一般の人々が「IRON MAN」や「DOCTOR STRANGE」のことをあんまり知らなかった...なんていう次元じゃなく、知名度が、本当に落第点レベル

映画のセリフの中では、まともな社会(銀河)の構成員が彼らのことを

What a bunch of a-holes.

と評しています。
bunch は、束や団といった単語。a-hole とは、すなわちAss-Hole
直訳すれば、「ケツの穴」。本当に"嫌な人格のヤツ"のことを呼ぶスラングです。

「最低なヤツらばっかりだな。」

と、言われている、ここが彼らのスタートライン!

さてそれでは、「GUARDIANS」たちを初めて目にする方々には入門編として、大好きで1作目も2作目も何度も観ている方々にはおさらいとして、彼らが、アメコミ実写映画の分野に何をもたらし、今後MCUの世界観の中でいかなる役割を果たしていくのか?を考察してみましょう。

初めて『GUARDIANS OF THE GALAXY』の1作目を劇場で観た時、冒頭の2シーンだけで、"愛に溢れ"しかも"破天荒に楽しい"トーンだということを、このシリーズは観る者に提示してくれました。

1シーン目:地球 / EARTH

主人公の少年ピーター・ジェイソン・クイル / Peter Jason Quill は、1988年(少年時代)に母メレディス / Meredith Quill(演じるのはローラ・ハドック)が入院している病院にいます。その手にはSONY製のウォークマン。静まり返る廊下で、音楽をひっそりと聴いていたピーターは、母のそばに呼ばれます。

ピーターの祖父:Peter. Your mom wants to speak with you.
ピーター。ママからお前に話があるんだ。

Come on, Pete. Take these fool things off.
ほら、そんなくだらんものを外して。

祖父は、ピーターのヘッドフォンを取り、ウォークマンをナップサックにしまってやります。

顔にアザをつくっていたピーターを見て、母が問いかけます。

メレディス:Why have you been fighting with the other boys again, baby?
どうしてまた他の子たちと喧嘩したりしたの?

Peter?
ピーター?

ピーター:They killed a little frog that ain"t done nothing.
何にもしてないカエルを、あいつらが殺したからだよ。

Smashed it with a stick.
棒で、(カエルを)叩き潰したから。

(※ピーターの正義感が垣間見える言葉です。そして、動物が大好きなジェームズ・ガン監督の思いが詰まったセリフだとも言えるでしょう)

メレディス:You"re so like your daddy.
あなたは、パパみたいね。

You even look like him.
パパに、似てるわ。

And he was an angel...
彼はね、天使だったの。

composed out of pure light.
汚れのない光のような。

祖父:Mer? You got a present for Peter, don"t you?
メレディス、ピーターにプレゼントがあるんだろ?

メレディス:Of course. There.
そうよ、そこに。

You open it up when I"m gone, okay?
私がいなくなった時に開けるのよ、いい?

ピーターは黙って答えない。

メレディス:Your grandpa...is gonna take such good care of you.
おじいちゃんが、ちゃんとあなたの面倒を見てくれるからね。

At least until your daddy comes back to get you.
パパが、あなたに会いに戻ってくるまで。

Take my hand. Peter.
ママの手を握って。ピーター。

Take my hand...
手を握って...

ママの望みに応えてあげることができないピーター。

非常に短いやりとりで母との絆を見せてくれますが、ここで描写される「情」「受け継いだ血」、そして「母からの贈り物」は、シリーズを貫く大切なカギとなります。この"物語のはじまり"がまず巧い!
ピーターは母と別れた夜、突然、何者かにさらわれてしまいます。拉致された先は、なんと宇宙...。それから26年後、成長したピーターはある星にいます。

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2シーン目:忘れ去られた星モラグ / MORAG

成長したピーター・クイル(演じるのは『ジュラシック・ワールド』『マネーボール』のクリス・プラット)は、モラグの寺院から強大なパワーを秘める宇宙の遺物"オーブ / Orb"を盗み出そうとします。そこを、クリー人のコラス / Korath(演じるのは『ブラッド・ダイヤモンド』のジャイモン・ハンスー)の部隊に見つかってしまう!

オーブを手にするピーターに、コラスは叫びます。

コラス:Drop it, now!
それを置け(下ろせ)、早く!
ピーター:Hey, cool, man. No problem. No problem at all.
おい、ちょっと落ち着けよ。問題ない、問題ないから、全然。
コラス:How do you know about this?
どうやってそれ(オーブ)のことを知った?

ピーター:I don"t even know what that is.
これが何なのかさえ、俺は知らないよ。

I'm just a junker, man. I was just checking stuff out.
ただのガラクタの収集屋(売人)だよ。ちょっとチェックしてただけ。

コラス:You don"t look like a junker.
ガラクタの収集屋には見えんな。

You are wearing Ravager garb.
ラヴェジャーの格好をしているじゃないか。

ピーター:This is just an outfit, man.
これはただの扮装だよ、もう。

Ninja Turtle, you better stop poking me.
ニンジャ・タートル、小突くのをやめろよ。

(※コラスの部下たちに銃で突っつかれ、彼らが亀をモデルにしたアメコミヒーローに似てるのでそう呼ぶピーター。大ピンチの時に、人を喰ったようなことを平気で言うピーターが面白い!)

コラス:What is your name?
名を言え。
ピーター:My name is Peter Quill, okay? Dude, chill out.
名前はピーター・クイルだ、わかった? 兄さん、落ち着こうよ。
コラス:Move!
動け!(ついてこい!)
ピーター:Why?
どうして?
コラス:Ronan may have questions for you.
ロナンがお前を尋問する。

ピーター:Hey, you know what? There"s another name you might know me by.
あ、そうだ、もう一つ呼び名があるんだよ、これならアンタも知ってるかも。

Star-Lord.
スター・ロード。

コラス:Who?
誰?

ピーター:Star-Lord, man. Legendary outlaw.
スター・ロード、だよ。伝説的な無法者。

Guys?
キミたちっ(知ってるよな)?

コラス:Move!
来いっ!
ピーター:Ah, forget this.
あぁ、もう知るかってんだ!

そう、このピーターこそが、のちに『GUARDIANS OF THE GALAXY』のリーダーとなる、"スター・ロード"。
宇宙の海賊である「ラヴェジャーズ」の服装をしていますが、地球で産まれ、宇宙で冒険を続けてきた人間(!?)だったわけです。

"Lord"とは、支配者・主・神・殿様といった、位の高い人を指します。
伝説的なはずなのに、知られていない...(笑)。
「誰?」とコラスが思わず聞き返すのは、この映画の原作やキャラクターを知らなかった観客たちの胸の内をまさに代弁しているよう。なので、ここでのツカミはばっちりなのです!

この役に配役されてから、なんと半年で30キロ弱を減量したというクリス・プラットは、この場面のコラスの部隊の面々との闘いで、スター・ロードとしての運動神経、俊敏さ、流れるような武器の扱いの巧さを見せつけてまんまと逃げ切ります。

そして映画の最初の見せ場から、アカデミー賞ノミニーであり威圧感たっぷりのジャイモンをいきなり持ってくる贅沢さに、ワクワク感は一気に上がってしまうのです。

個性豊かなキャラクター

ヴィラン

コラスは、クリー人過激派のロナン / Ronan the Accuser(演じるのはリー・ペイス)の手下の一人。ロナンは、ご存知マーベル世界のスーパー・ヴィランであるサノス / Thanos と密約を結んでいる悪役です。
(サノスを演じるのはジョシュ・ブローリン。彼がこの作品からヴォイス&モーション・キャプチャーでの出演。サノスのキャラクター自体は、『アベンジャーズ』のポスト・クレジット・シーンですでに登場しています)

ロナンは、ピーターが盗んだ"オーブ"が秘めた無限の力を手に入れ、その破壊力をもって惑星ザンダーを滅ぼそうと企んでいたのです。

コラスの手を逃れ、スター・ロードがオーブをブローカーに売りさばこうとして訪れたのが、ノヴァ帝国 / Nova Empire の首都である惑星ザンダー / Xander。

そのスター・ロードを追うためにロナンが送り込んだのが、ガモーラ / Gamora(演じるのは『アバター』のゾーイ・サルダナ)です。ガモーラは、悪の権化サノスが育て上げた秘密兵器であり、訓練された暗殺者。全身が緑色なのが特徴的ですが、その種族はサノスによって滅ぼされ、彼女は養女とされた...という背景があります。彼女には、血のつながらない姉妹関係のネビュラ(演じるのはカレン・ギラン)がいますが、彼女とも激しいライバル関係にあります。

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ガモーラは、

I'm no family to Ronan or Thanos.
私はロナンやサノスの家族でもなんでもない。

という、複雑な運命の中で生きてきたのです。

アライグマと樹木の生命体?

そしてスター・ロードに目をつけ、追いかける輩があと二人...じゃなくて、あと一匹と一本(!?)。
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「一匹」とは、ロケット・ラクーン / Rocket Raccoon(声を演じるのは『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー)。見た目は単なるアライグマ。しかしマシンガンを撃ちまくり、武器と戦略とハイテク危機に長けた、滅法強い傭兵で、口が悪く、喧嘩っ早い。賞金稼ぎとしても生き抜くロケットは、オーブを盗んだスター・ロードにかけられた懸賞金に目をつけ、仲間の"樹木"の巨漢とともにスター・ロードを襲います。

ロケットは次から次へと悪態をつくキャラクターです。しかし、1作目の中での彼の最高のセリフは、

Oh, yeah.

口語で"Yes"のことですが、「これだよ」「待ってたぜ」「最高だよ」みたいなニュアンスで言う一言で、彼にとって、いかに武器をぶっ放すのが快感か、可愛いアライグマなのに、いかに好戦的な性格かが一発でわかります。本当にアブない奴。でもだからこそ、いざという時に頼りになるのです。

そして「一本」とは、一見、怪物とも思える樹木の生命体で、名前はグルート / Groot(声を演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズで大人気のヴィン・ディーゼル)。自在に伸び、コントロールできる枝葉を武器とし、性格は温厚ですが、怒るととてつもない力で敵を粉砕します。

1作目の中での彼の最高のセリフは、

I am Groot.
私はグルート(僕はグルート)

実は、この3単語しか話せません。しかも、この順序でだけ(笑)。
知能はあるんです。しかし、このたった一言ですべての感情表現をするので、彼と意思疎通ができるのは、相棒のロケットだけ。

演じたヴィン・ディーゼルは、この一つのセリフを、(外国語バージョンも含め)1000回くらいは録音したらしいです。

スター・ロードがやってきた惑星ザンダーの街では、オーブを奪おうとするガモーラと、懸賞金目当てでスター・ロードを捕まえようとするロケット&グルートの三つ巴の大乱闘が始まります。
ゾーイ・サルダナの、鍛え上げたアクションの腕前が見れるので、このシーンでガモーラに惹かれる人は多いはず。
しかも、登場と共にそれぞれの戦闘や機転の能力が観客にすぐに伝わる、巧みなシーンです。

ワイルド・カード枠

さらにあと二人、このシリーズを語る上で非常に重要なワイルド・カードを紹介しましょう。

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オーブを探している、もう一人の強者がいます。スター・ロードの首に懸賞金をかけた男ヨンドゥ / Yondu Udonta(演じるのは『ウォーキング・デッド』のマイケル・ルーカー)。ヨンドゥは、宇宙海賊ラヴェジャーズの中の一派のリーダーで、スター・ロードことピーター・クイルとの歴史が長い人物です。
(※ネタバレを避けたいので、どんな関係かは、ここでは書きません。是非1作目を観てから、新作を観に劇場へ足をお運び下さい)

ヨンドゥは、荒くれ者の集まり"ラヴェジャーズ / Ravagers"を率いていますが、ある意味、一匹狼と捉えてもいいでしょう。必ずしも、海賊仲間たちから慕われているわけではありません。肌の色は青ですが、同じく青いロナン(クリー人)とも、似た色のサノス(タイタン人)とも異なる種族です(←このシリーズ、初めて観る方は覚えておいて下さいね!!)
ヨンドゥが身に帯びている武器と、その戦い方は、この映画の中でも非常にCOOLなもう一つの見せ場です。
圧倒的な強さを誇るので、海賊たちを従えることができるのです。

スター・ロード、ガモーラ、ロケット、グルートは、ザンダー街中で繰り広げた三つ巴のバトルの末に、ノヴァの警察組織に全員逮捕されてしまい、キルン / The Kyln と呼ばれるセキュリティが高度の刑務所に投獄されます。

その刑務所内で出逢うのがドラックス / Drax the Destroyer(演じるのはデイヴ・バウティスタ)。他の囚人たちもひれ伏すような強靭な肉体の男ですが、ロナンに妻と娘を殺された過去を持つ、悲しき破壊魔です。灰色の身体の隅から隅まで、腫れたような凄まじい文様の赤いタトゥーをまとっています。やや知性が劣るのか(?)というボケをかますことがありますが、その真剣な表情に皆震え上がります。本当は情が厚く、失った家族の復讐を心に秘めています。

ドラックスも、スター・ロードたちと共に、ついには過激派ロナンとバトルを繰り広げる「仲間たち」に加わるのです...。

MCUのテレビドラマも追いかけている方への基礎知識

「クリー人 / Kree」と「インヒューマンズ / INHUMANS」
クリー人の過激派ロナンは、『GUARDIANS OF THE GALAXY』の中で、平和なザンダーの人々の惑星を壊滅させようと試みますが、このMCUのユニバースの中でクリー族が触手を伸ばしたのは、ザンダー星だけではありません。クリー人の帝国は、地球を遥かに上回るテクノロジーを有していて、多くの戦士を生んできた戦闘国家です。

マーベルのテレビドラマ『エージェント・オブ・シールド / AGENTS OF S.H.I.E.L.D.』を観て下さっている方は覚えていらっしゃるでしょうか、シーズン1でクリー人だと判明した青い宇宙人の遺体のことを?
映画『アベンジャーズ』の中で一度は死んだ、コールソン捜査官(演じるのはクラーク・グレッグ)が"タヒチ計画"で注入され、命を復活させた血清、あれはその遺体の成分から作られたクリー血清です。クリーの種族は、特殊なDNAを持つ"インヒューマンズ"を目覚めさせることができ、同ドラマのシーズン2で登場した"オベリスク / Obelisk"という物体に触れると、インヒューマンズのDNAを持つ人間と、持たない人間を見分けることができます。第二次大戦中に一時ハイドラ / HYDRAの手中にあったオベリスクを、地球上にもともと持ち込んだのがクリー人なのです。のちに現代で、そのオベリスクから放たれたテリジェン・ミストという霧を浴びたS.H.I.E.L.D.メンバーのスカイ(演じるのはクロエ・ベネット)と謎の女レイナ(演じるのは本年度アカデミー賞ノミニーのルース・ネッガ)は、二人ともインヒューマンズとして覚醒しました。
クリー人は、他の星々の生命体を改造し、"戦士"を生み出してしまうことができるのです。

ちなみに、(『エージェント・オブ・シールド』のスピンオフではない)マーベルの新ドラマ『インヒューマンズ / INHUMANS』がこの秋に米国ABC局で放送をスタートします。マーベル・スタジオが映画化を目指していた企画ですが、実写ドラマ化が決定し、まず最初の第1話と第2話をIMAXで初公開上映、その後にテレビ放送をスタートするという、非常に面白い試みで期待されています。この作品については、また本コラムで取り上げましょう。

後編はこちらから。

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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Photo:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(C)2014 Marvel. All Rights Reserved. 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(C) Marvel Studios 2017 ゾーイ・サルダナ(C) Kazuki Hirata/HollywoodNewsWire.net