初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.3>~魅力的な人格者、キャプテン・アメリカ~

さて今回は、(MARVEL STUDIOSが製作する)マーベル映画の世界観を語る際にこの人を欠かすことはできない!! というヒーローについてお話しします。

その名は、『キャプテン・アメリカ /Captain America』。

日本ではおそらく、まだまだ一般的には知名度が低く、この人物が背負う物語について深くは知られていないでしょう。また、本国アメリカ では『アイアンマン』と人気を二分する、 もしくはアイアンマン以上に愛されているという事実があることも知られてはいないと思います。

しかしこの方、「実に魅力的な人格者」なんです!!男性コミックファンのみならず、女性や子供たちからの信頼が厚く、人気度が非常 に高い。

前回のコラム Vol.2では、まず "S.H.I.E.L.D." が何の組織なのかを知り、映画『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』の展開を見てから、テレビドラマエージェント・オブ・シー ルド第1シーズンの後半で S.H.I.E.L.D. メン バーたちの活動を見ておくと、マーベル世界の全体像を理解する際の面白さが変わってくると、少し触れました。

キャプテン・アメリカ』は、"The First Avenger"(1番目のアベンジャー)と呼ばれる通り、アベンジャーズたちが戦う歴史において、「最重要人物」と言っても過言ではないのです。

正直、僕自身、渡米した(2007年)頃まではアメコミにそれほど惹かれてはいなかったので、当時このキャラクターに関する知識はゼロでした。
印象は、「青・赤・白と、もろに星条旗をモチーフにデザインされた衣装や絵面が、少しハッキリしすぎてて、レトロで格好悪いかも...。ヘルメットに"A"って刻まれてて、まん丸い盾が武器だし...」といったものでした。これは、初めてキャプテンの姿を見た際、結構多くの方が抱く感想なのではないでしょうか?(アメリカ文化嫌いの人は、生理的に受けつけないかもしれません...笑)

ところがこのヒーロー、キャプテン・アメリカは、知れば知るほど深みがある、非常に巧く"培われた"人物なのです。

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キャプテン・アメリカとは?

(やがてヒーローとなる)スティーヴ・ロジャーズ/Steve Rogersは1940年代初頭に、人一倍 強い愛国心がありながらも、米陸軍への入隊志願を何度も拒否されている青年でした。

入隊不可の理由は明らか。ひ弱で華奢(きゃしゃ)な身体つきで、病弱な面が検査でバレてしまうからです。街では、不良に殴られる、典型的な「弱者」。常に葛藤を抱えていました。

しかし、彼は単なるloser(落伍者、敗北者)ではありませんでした。強い信念と勇気をもっていたのです。

その資質を見抜いた、SSR(戦略科学予 備軍/Strategic Scientific Reserve。※ 国際平和維持組織 S.H.I.E.L.D.の前身)の科学者であるエイブラハム・アースカイン博士、もしくはアースキン/Dr. Abraham Erskin の誘いにより、スティーヴは兵士となり、SSRが極秘に進める『スーパー・ソルジャー計画/"Super-Soldier"Project』実験の被験者となることになります。

アー スカイン博士が、入隊を志願するスティーヴに問いかけます。

博 士:Do you want to kill Nazis?
ナチを殺したいか?
スティーヴ:Is that a test?
これもテストですか?
博 士:Yes.
そうだ。
スティーヴ:I don't want to kill anyone.
誰も殺したくありません。

I don't like bullies.

横暴(弱者をくじく、残忍)な奴らが嫌いなんです。

そして、スーパー・ソルジャーになる実験の前夜、
スティーヴは博士に問います。

スティーヴ:Why me?
なぜ、僕を?
博 士:I suppose that is the only question that matters.
それこそが、唯一大切な点なのだよ。

Because a strong man who has known power all his life may lose respect for that power.

人生において、常に力を持っている強い人間は、その力の有り難みを忘れてしまうかもしれない。

But a weak man knows the value of strength.

しかし、弱い人間は、強さの価値を知っている。

And knows compassion.

そして、人への思いやりを知っている。

Whatever happens tomorrow, you must promise me one thing.

明日、何が起こったとしても、一つだけ約束して欲しい。

That you will stay who you are.

君は、君であり続けることだ。

Not a perfect soldier, but a good man.

完璧な兵士なんかではなく、良い人間であってくれ。

このシーンは、この後のストーリーと、さらにこの後のマーベル・シネマティック・ユニバースの展開を考えると、泣けます。
是非、お好きな方はもう一度見直してみて下さいね!彼の人格について語られる、胸に沁みるシーンです。

そして翌日、いったいどうなったのか!?
これは、この映画をこれから初めて見る方のためにネタバレするのはやめましょう。

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
(マーベル・シネマティック・ユニバースの5作目)をご覧下さい。

ド派手な見た目のワケ

さて、せっかく SSRに認められて、ようやく兵士としての入隊も叶ったのに、なぜ彼は、あんな派手な、一見格好良いとはいえないデザインのユニフォームを着ているのか?あんな派手じゃ、戦地で目立ってしょうがない... 笑。

実は、このユニフォームにもちゃんとした背景と理由があるのです。

スティーヴ・ロジャーズは、米国上院議員の依頼により、戦線には配属されず、国家の戦意高揚のための「キャプテン・アメリカ」というマスコットにされてしまうのです。戦時公債を国民に売るためのショーやヒーロー映画に起用され、PR活動に利用されます。(※ このようなコミック原作の作品でも、映画『父親たちの星条旗』でも語られたような「戦争の功労者を国民的ヒーローに仕立て上げる」という政治の暗部を風刺しているのが興味深いですね)

だから、あのド派手な、もろに星条旗の色とデザインの装束を着させられているのです。敢えて、レトロな、古臭いコミック画の初期の歴史そのままの姿からまず実写化し、"単なる強いヒーロー兵士" としては描かず、そこから成長させる製作陣の着想と脚本構築の巧さが際立ちます。

スティーヴ(キャプテン)を演じるクリス・エヴァンスは、インタビューでこう語っています。

Initially when Captain America becomes Captain America,
はじめ、キャプテン・アメリカが "キャプテン・アメリカ"になった時、

he is not released to go off and fight right away. He"s used as a propaganda tool.
彼は戦場へはすぐには送られない。プロパガンダ(国家的、政治的な宣伝)の道具として使われてしまうんだ。

He"s in this very silly Captain America costume.
この馬鹿げたキャプテン・アメリカの衣装を着てね

この宣伝 活動の一環で、慰問のために訪れたイタリアの戦線で、現地で戦う米兵らに冷笑され、
バッシングを受けたスティーヴは、傷つき落胆します。

彼のことを心配する、SSRのエージェントであり、スーパー・ソルジャー計画の実験にも立ち会ったペギー・カーター/Peggy Carter(ヘイリー・アトウェル Hayley Atwell 演じる)は、スティーヴに語りかけます。

ペギー:I understand you"re "America"s New Hope."
あなた、"アメリカの新しい希望" になったのね。
スティーヴ:Bond sales take a 10% bump in every state I visit.
僕が訪れた全州で、公債の売り上げが10%上がってるよ。
ペギー:You were meant for more than this, you know.
あなたにはもっとやるべきことがあるはずだわ。

 

スティーヴ:
You know, for the longest time, I dreamed about coming overseas and being on the front lines, serving my country.
ずっと長い間、外国の最前線で、母国に奉仕することを夢見たのに。

I finally got everything I wanted and I"m wearing tights.

それがすべて叶ったのに、僕はタイツなんか着てるんだ...。

この場面でペギーがスティーヴに言った、

You were meant for more than this.

の一言で、彼は自分を見つめ直します。

"meant for ◯◯" = ◯◯のために意味付けられた、運命づけられた...

正義感なら誰にも負けない、ひ弱な肉体の青年が、命を賭けてスーパー・ソルジャーになった運命に、もっと何か意味があるはず...。

ここからが、真の『キャプテン・アメリカ』のスタート。彼の"超人兵士"としての道のりが始まります。ユニフォームも、実践的なデザインと素材に劇的に変化していきます。

あの天才技術者と深い関わりを持つ唯一のアベンジャー

ちなみに、キャプテンの戦闘用スーツ、そして武器である盾(shield)を開発するのは、スーパー・ソルジャー実験にも技術者・発明家(engineer, inventor)として協力したハワード・スターク/Howard Stark(ドミニク・クーパー Dominic Cooper 演じる)です。

Stark? そう、スターク・インダストリーズのCEOであり、現在アイアンマンとして著名になったトニー・スターク氏... 彼の父親がキャプテン・アメリカ誕生に携わっていたのです。トニーの父親は(将来トニーが S.H.I.E.L.D. からアベンジャーズ計画への参加に打診される、その遥か昔から)SSR/戦略科学予備軍に関わっていたというわけです。

ここから70年後の現代では、トニー及びスターク・インダストリーズが S.H.I.E.L.D. と協力し、キャプテンの武器も開発していることがマーベル映画の中でも触れられています。

MCUは、親子ニ世代で描かれているユニバースでもあるわけです。そしてスティーヴ・ロジャーズは唯一、ハワード&トニー・スタークという天才技術者の双方と深い関わりを持つアベンジャーなのです。

映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と、時代を超えて次々と革新されていくキャプテン・アメリカの衣装デザインは、ファンの注目の的です。

「スーパー・ソルジャー計画」

ところで...

ちょっと待って、でも彼は1940年代、第二次世界大戦(World War Ⅱ)の時代に生きていた青年。なんで、2000年代の現在、『アベンジャーズ』たちとともに、戦っているの?どうしてまだルックスが若いの???

これには もちろん秘密があります。
スーパー・ソルジャー計画」の実験に使われた血清(スーパー・セイラム/Super-Soldier Serum)は、様々な面で人間の能力を向上・増進させます。

Peak Strength 強靭さの限界域
Agility 敏捷性
Stamina スタミナ、持久力
Intelligence 知性

これらが複合的にグレードアップされた超人的な生命力が、映画のクライマックスで、ある理由により氷漬けになってしまったキャプテン・アメリカの生命を維持し続けたのです。戦後約70年間、仮死状態で眠っていました。(その、氷漬けになった彼を、いったい誰が発見して保護したのかは、映画をご覧下さいね!! )

この奇跡的な血清は、精製した人物が不幸に見舞われてしまうため、「スーパー・ソルジャー計画」の実験そのものが第二次大戦中に立ち消えになってしまいます。

つまりこの時点で、"実験成功"と言える例は、スティーヴ・ロジャーズ、ただ一人。

但し、この「スーパー・ソルジャー」を培養、または量産するというコンセプトは、度々MCUの世界の中に登場します。血清を不完全な処方で用いれば、失敗の犠牲も生み出します。

アベ ンジャーの一人である、ブルース・バナー博士/Dr. Bruce Banner(『インクレディブル・ハルク/incredible Hulk』ではエドワード・ノートン Edward Norton が、『アベンジャーズ』以降はマーク・ラファロ Mark Ruffalo が演じる)もこの計画を現代の技術力をもって研究していました。
その成功を確信し、人体実験を自らに施した結果、血清の投与とガンマ線(Gamma Radiation)の使用が仇となり、緑の巨大な怪物 HULKに変貌してしまったのです。

その後、これに似た超人兵士の増産計画は『アイアンマン3』やテレビドラマ『エージェント・オブ・シールド』でも描かれているので、Super-Soldier ProgramSerumという用語は覚えておくと英語音声で見ている時により楽しめるはずです。

さて次回は、キャプテン・アメリカの武器である「盾」の秘密について。
さらにキャプテンの宿敵(彼の宿敵は、『S.H.I.E.L.D.』にとって、共通する最大の敵対集団!)についても語ります。お楽しみに!!!

(※ 注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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Photo:『エージェント・オブ・シールド2』(C)2014 ABC Studios & Marvel