初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.2>~S.H.I.E.L.D.(シールド)とは?~

前回、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画の第1作目『アイアンマン』の中で、すでに国際平和維持組織 S.H.I.E.L.D.は、アイアンマンという高性能の戦闘用アーマーを自らの身に装着して操るトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)に接触を試みていた...と書きました。

 

今回は、この"S.H.I.E.L.D."とはなんなのか? もう少し、掘り下げてみましょう。
特に、これまでアメコミにまったく興味が持てなかった方々は、"S.H.I.E.L.D."という名称を見ても聞いても、「ん...何それ???」となるはず。

映画『アベンジャーズ』からのスピンオフドラマ『エージェント・オブ・シールド/Marvel"s Agents of S.H.I.E.L.D.』も、この"S.H.I.E.L.D."そのものが何者たちによる組織なのかがよく解れば、MCU映画で繰り広げられる物語と同時進行で楽しむことができるのです!!

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S.H.I.E.L.D.(シールド)とは...?

「Strategic Homeland Intervention, Enforcement and Logistics Division」の略です。

直訳すると、"戦略的・国土・介入(干渉、調停)・執行・軍事的な調達(補給、輸送支援)の部門"。

「戦略的に、国土の治安維持への介入を、軍事的な武装配備や情報力をもって、執行できる組織」といった意味になります。

日本では【戦略国土調停補強配備局】という形に訳されているようです。

マーベル・コミックの長い歴史の中で、なんと1965年に誕生した、スーパーヒーローたちを管理する秘密諜報機関。英語の頭文字をとった呼称が『シールド』。つまり、「盾・防御壁」という意味にもなりますね。最先端のテクノロジーや軍事力を配備し、国土や人類のための「盾」となる国際組織なのです。

 

『エージェント・オブ・シールド/Marvel"s Agents of S.H.I.E.L.D.』第1シーズンの第1話には、映画『アベンジャーズ』でマリア・ヒル/Agent Maria Hill を演じたコビー・スマルダーズがゲストスター枠で登場します。

第1話から、映画のユニバースとクロスオーバーするのです!

クロスオーバーについて

このドラマは、「MCUの映画作品群とのクロスオーバーが見どころ!!」と盛んに宣伝されていますが、crossover とは "交差する・混じり合う"という意味です。つまり、登場するキャラクターたちが映画とテレビドラマの間を行き交い、場面設定なども重なり合いを見せるということです。

同じような言葉で、tie in というフレーズもよく使われます。こちらは、"結びつける・関連の~"というような意味。

例えば、僕が初めて出演した第2シーズンの第8話「兄弟の再会/The Things We Bury」では、映画のユニバースのある人気キャラクターが登場するのですが、この場合は、

The Things We Bury is a "crossover episode".
(The Things We Bury は、クロスオーバーする回です)

とか、

This week"s Agents of S.H.I.E.L.D. will tie in with ◯◯◯◯◯・◯◯◯◯.
(今週の「エージェント・オブ・シールド」は、映画「◯◯◯◯◯・◯◯◯◯」とつながります)

という言い方がされたりします。

こういった、MCUの映画と映画、もしくは映画とドラマが絡み合う試みやシーンの総称をMCU Crossovers とか MCU Tie-ins と呼んだりもできます。

 

ウォード捜査官のセリフの中に模範解答が

話を戻しましょう。

ドラマの第1話からクロスオーバーでこのドラマに初登場のマリア・ヒル。彼女はS.H.I.E.L.D. の長官ニック・フューリー(Director Nick Fury:サミュエル・L・ジャクソンが演じている)の右腕、副官。

彼女が、特命チームに招集された若手グラント・ウォード捜査官と対面し、組織についての質問を投げかけるシーンがあります。その会話をご紹介しましょう。

ヒル:What does S.H.I.E.L.D. stand for, Agent Ward?
S.H.I.E.L.D. が何を表しているか、わかるわね、ウォード捜査官?
ウォード:Strategic Homeland Intervention, Enforcement and Logistics Division.
戦略国土調停補強配備局です。
ヒル:And what does that mean to you?
あなたにとっては、何を意味するのかしら。
ウォード:It means someone really wanted to spell out "shield".
誰かが、どうしても"シールド(盾)"っていうスペルにしたかった、ってことですよ。

※ ちなみに、ここ、原語ではクスっと笑うとこです。階級の高い上官に対してこんな答え方をする、ウォードの生意気な性格がこの一言で伝わります。

しかしこの後、彼はしっかりと答えます。

ウォード:
It means we"re the line between the world and much weirder world.
我々が、この世界と、もっと奇妙な世界との境界線ってことです。
We protect people from news they aren"t ready to hear.
世の、まだ知り得ない(事実を知る準備ができていない)出来事から人々を守る。
And when we can"t do that, we keep them safe.
もしそれができなければ、安全に維持する。
Something turns up, like this Chitauri neural link,
例えばこのチタウリの神経系回路のようなものが見つかった時とか...
We get to it before someone bad does.
僕らが、悪党より先に確保します。

彼の答えは模範解答。
(※ Chitauri は、映画『アベンジャーズ』で宇宙から襲撃してきた異星人軍団)

このウォード捜査官(ブレット・ダルトン演じる)は、このドラマで初めてMCUに登場したキャラクターですが、第1話の中でマリア・ヒルから高い評価を受けている人物です。

 

彼の任務成績をコールソン捜査官(クラーク・グレッグ演じる)が読み上げるシーンがあります。

コールソン:
Agent Hill did a very detailed assessment of your last three missions.
ヒル捜査官が、君の過去3度の任務について詳細な査定をしてくれた。
Combat, top grades. Espionage, she gave you the highest marks since Romanoff.
戦闘能力はトップの成績。スパイ活動は、ロマノフ捜査官以来の優秀さだ。

ウォードは、同じS.H.I.E.L.D.エージェントであるナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ジョハンソン演じる。通称:ブラック・ウィドウ)と諜報や偵察などの活動能力などが同等に高い、と認められているわけです。これはかなり鍛え上げられた敏腕。ロマノフは、アベンジャーたちに混じって戦っている人物なのですから。

こういう、ちょっとしたシーンのセリフだけでも、映画の中のキャラクター名が次々と登場し、「情報もクロスオーバーする!!」ので、登場人物の皆が"同じ世界観(ユニバース)"の中に居るということが実感できるのが、このドラマシリーズの醍醐味です。

 

アベンジャーズ計画について

S.H.I.E.L.D.は、人類にとって脅威となる物質・物体・現象・超人的パワーの持ち主などを常に捜索し、確保し、管理します。しかし、司令長官も、副官も、敏腕の捜査官(諜報員)たちも、全員が所詮は生身の人間たち。

映画『アベンジャーズ』のように、敵となるのが異星人であるチタウリや、その軍団を地球上に呼び込んだ邪神ロキ(トム・ヒドルストン演じる)といった、人類では到底手に負えない攻撃力を持つような侵攻勢力に向け、対抗できるチーム(a response team)として、かねてから『アベンジャーズ計画/the Avengers Initiative』を考慮しており、ついに未知からの襲撃に対し、この秘密計画を発動したわけです。

この「計画」は、冒頭にも書いたように、第1作目の映画『アイアンマン』の中で、ハイテクパワーを有する戦闘スーツの持ち主であるトニー・スタークへの接触に始まり、アスガルドという神々の王国の戦士ソーや、第二次大戦の英雄である超人兵士で70年間も氷漬けになり現代に蘇ったキャプテン・アメリカ、そしてガンマ線を浴び緑の怪物となり比類なき破壊力を発揮できるハルクたちを集めて協力させるという、統率できる可能性のきわめて低い、言ってみればあまりにもリスクの大きいプランでした。

 

このギャンブル的な計画を、ニック・フューリー司令長官の命により、S.H.I.E.L.D.のフィル・コールソン捜査官、ナターシャ・ロマノフ捜査官、クリント・バートン捜査官らが力を尽くし、上記の超人的ヒーローたちを見事に assemble(組み立てる、集合させる、という意味)させて実現したのが、『アベンジャーズ計画/The Avengers Initiative』というわけです。

ちなみに、英国やアイルランドでは、assembleという単語を使った『Avengers Assemble』というのが映画『アベンジャーズ』の題名になっています。このフレーズ「Avengers assemble!!(アベンジャーズ、集合せよ!!)」は原作コミックの中で、アベンジャーズたちを集結させる時に呼びかける名ゼリフで、マーベル・シネマティック・ユニバースの作品群の中でも、どこかのシーンで聴ける(かも!?)しれませんので、気をつけて見ていて下さい。

S.H.I.E.L.D.(シールド)の存在意義を表す名シーン

さて、2012年の映画『アベンジャーズ』の敵はロキチタウリでしたが、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン Marvel"s Avengers: Age of Ultron』(ウルトロンの時代)で、アベンジャーズたちの前に立ちはだかるのは Ultron です。

このウルトロン(モーション・キャプチャーでジェームズ・スペイダーが顔、身体、指先まで生命を吹き込んで怪演。もちろん声も!!)は、皮肉にもアベンジャーズであるトニー・スターク自身が最先端の技術を駆使して生み出してしまった、優秀な人工知能(Artificial Intelligence)。この人工知能が強靭なボディのロボットの身体を手に入れ、暴走し始めるのです。
おっと...、これ以上のネタバレはいけませんね。

 

この最新作の壮大なクライマックスで、こんな印象的な1シーンがあります。
アベンジャーズの一員として戦う、あるキャラクターが「驚きの光景」を目にし、別のアベンジャーにこう聞きます。

あるキャラクター:This is S.H.I.E.L.D.?
これが、シールド?
別のアベンジャー:This is what S.H.I.E.L.D."s supposed to be.
これが、シールドのあるべき姿なんだ。(=こうであるはずだったんだ。※ S.H.I.E.L.D."s の "s は、is もしくは was です)

「(この組織の)本来の姿は、こうでなくてはならない!!」という、この時のアベンジャーの思いは、映画『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』そして、そこにクロスオーバーするドラマ『エージェント・オブ・シールド』第1シーズンの後半を見ておくと、さらに、グッと胸に迫るものがあります。

この爽快な光景が、【S.H.I.E.L.D.】の"存在意義のすべて"を表していると言ってもいい、名シーンであり、名ゼリフです。

まだ、ご覧になっていない人は是非、劇場の大きなスクリーンで見てみて下さいね!そしてもう何度も見たという方も、もう一度このシーンの英語セリフを聴きに、字幕版を改めてご覧になってみてはいかがですか?このアベンジャーたち二人の英語セリフが、聴き取れるはずですよ。

Vol.3 に続く...

 

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム" という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています。)

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Photo:『エージェント・オブ・シールド2』 (C)2014 ABC Studios & Marvel 映画『アベンジャーズ』 (C)Everett Collection/amanaimages