自分を殺して生きてきた女性必見!の秀作ドラマ 『グッド・ワイフ』レビュー

夫のスキャンダルを機に、弁護士として復帰することになったアリシアを中心に、たくましく生きる女性たちの姿を描いた法廷ドラマ『グッド・ワイフ』。5月22日(月)よりDlifeにて放送スタートとなる同シリーズについて、三村めぐみ(アメリカ在住のテレビ評論家)の批評をご紹介しよう。

今、一番好きなドラマは?とよく聞かれますが、2009年から答えは一貫して『グッド・ワイフ』です。仕事柄、何百本もドラマを観てきましたが、女の自立をここまで見事に描いた作品は、後にも先にも『グッド・ワイフ』しかありません。取って代わるドラマは未だに登場していません。それほどユニークで、構想、脚本、配役、演技、どれをとっても類を見ない第一級ドラマです。

2008~09年、一連の政府高官のセックス・スキャンダルが大いに米国メディアを賑わしました。記者会見の映像には、夫の背後にお義理のように立っている無表情な奥方の姿が必ずあります。クリエイターのキング夫妻が目をつけたのは、消え入りそうに立っていた夫人たちの胸の内でした。何事もなかったかのように、元の鞘に収まるのでしょうか? 夫を捨てて、我が道を行くのでしょうか? 「天と地がひっくり返った時こそ、人間が成長する又とない機会」を信条とするキング夫妻の構想は、良妻賢母アリシア・フローリック(ジュリアナ・マルグリーズ)が、社会(法曹界と政界)の荒波に揉まれて、人間として、弁護士として成長していく過程を描くことでした。

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私利私欲など欠片もないナイーブなアリシアが、野心満々の夫ピーター(クリス・ノース)が引き起こした"大地震"で足場を失い、昔取った杵柄で子どもを育てようとしますが、自立への道は常に"余震"続きです。職場も、夫婦関係も決して安定することはなく、波風を立てずに生きたい古風なアリシアの心が安まることはありません。

如何に個性的なキャラクターでも、シリーズ開始時と完了時とが同じでは、旅路に同行する意味がありませんが、全てアリシアの視点から描かれる『グッド・ワイフ』は、男に裏切られ自立を余儀なくされた女性には、学ぶこと満載の自立読本全7巻仕立てになっているので、ゆっくり勉強できるドラマです。背景に、どんでん返しや頓知の効いた法廷ドラマ、政界のドロ沼や裏工作、色恋沙汰なども配置されているので、アリシアがしたたかで冷めた敏腕弁護士になるまでの旅路と並行して楽しむことができます。男の都合、野心、身勝手に振り回され、自分を殺して生きてきた女性必見!の秀作です。

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余談ながら、もう一つの楽しみは、アリシア、法律事務所の大先輩ダイアン・ロックハート(クリスティーン・バランスキー)、弁護士ルッカ・クィン(クッシュ・ジャンボ)の洗練された衣装の数々を鑑賞することです。シーズン1でのアリシア(40代)は、専業主婦から職場に復帰する設定ですから、デザイナースーツは控え、黒や紺のブレザー+スカート/パンツに抑え、現実感を出すために同じ衣装を着回しすると言う念の入れようでした。シーズン2以降、色物やブランドものが加えられ、女らしさを強調するフリルなどがふんだんに使われるようになりました。一方、ビジネスオーナーのダイアン(50代)は独身貴族ですから、大柄、メタリックなど大胆で高級感のあるデザイナースーツを取っ替え引っ換えします。元ダンサーのバランスキーの細身と長い足を強調するスカートが多く、大ぶりのアクセサリーがふんだんに使われています。シーズン7に登場するルッカは、猫や花柄のカラフルな衣装と超ショートの髪型が若さの象徴として使われています。キャリアウーマンに大人気なアリシア、ダイアン風のスーツやブレザーを手頃な価格で量販するという話もあったのですが、結局実現しませんでした。

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■放送情報
Dlifeにて5月22日(月)21:00よりスタート
[二]毎週月曜 21:00~
[字]毎週日曜 25:00~

■番組概要
リドリー・スコット、トニー・スコット製作総指揮の大人気リーガル・サスペンス。今作でエミー賞ドラマシリーズ部門主演女優賞を受賞したのは、『ER』で知られるジュリアナ・マルグリース。ロースクールを首席で卒業し、2年間敏腕弁護士として活躍した後、州検事の夫と二人の子どもに恵まれ、家庭に入り家族を守ってきたアリシア。ある日、夫が逮捕されたのを機に、13年ぶりに弁護士として復帰。しかし、夫の逮捕の裏には彼を陥れようとした何者かの陰があり...。

■第1話「夫の裏切り」ストーリー
スキャンダルで失脚した州検事の妻として、アリシア・フロリックは13年ぶりに弁護士に復帰。最初の訴訟は、元夫の殺害容疑で逮捕された女性の再審理だった。

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Photo:『グッド・ワイフ』
© 2016 CBS Studios Inc.