初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.8>~アイアンマンとキャプテン・アメリカ~

"Earth’s mightiest super-heroes"

「地球上の、最も強大な、超人ヒーローたち」

ファンの間では有名な、The Avengers のキャッチフレーズです。アベンジャーズの初期の【定義】と言ってもいいでしょう。

アベンジャーズの"定義"

これは、原作コミックの『アベンジャーズ』の第1号(1963年9月創刊)の表紙を飾ったフレーズとして知られています。さらに『The Avengers: Earth's Mightiest Heroes!』(邦題「アベンジャーズ 地球最強のヒーロー」)という2010年のテレビアニメもあり、また2012年の映画版『アベンジャーズ』の中では、NY決戦の直前にトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が敵役ロキ(トム・ヒドルストン)と初めて対峙し、スターク・タワーの一室で交わされるセリフにも巧みに書き込まれています。

ロキ:The Chitauri are coming. Nothing will change that.
チタウリ兵たち(の艦隊)がやってくる。誰にも止められない。

What have I to fear?
私に何を恐れよと言うんだ?

 

トニー:The Avengers.
アベンジャーズだ。

That"s what we call ourselves. Sort of like a team.
そう呼んでるんだけどね。まぁ、チームみたいなものさ。

"Earth"s mightiest heroes"-type thing.
"地球最強のヒーロー"っていう感じの。

 

ロキ:Yes, I"ve met them.
あぁ、彼らにはもう会ったよ。

この後の決戦で、アベンジャーたちは結束してロキとチタウリ兵たちを打ち破り、侵略の手から地球と人類を救います。

彼らの持つ「スーパーパワー」の使い道

さて、【定義】と書きましたが、彼らについて本当に定まった解釈や決まりがあるわけではありません。

NY決戦で初めて揃い、異次元(地球外)からの攻撃に対してその威力を発揮したキャプテン・アメリカ、アイアンマン、ハルク、ソーたちの「スーパーパワー」をいつまた危機が訪れた際に平和利用できるのでしょうか?

同作の終盤で、国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.」の長官フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)に副官マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)が問いかけます。

ヒル:Sir, how does it work now?
長官、今後はどう(アベンジャーたちが機能)するんですか?

They've gone their separate ways.
彼らは、それぞれの道に去ってしまいました。

Some, pretty extremely far.
遥か彼方へと去った者もいます。

別の次元であるアスガルド国に帰ったソーなどは、簡単には地球には呼び戻せないわけです。
ちなみに、この時点ではブラック・ウィドウ(スカーレット・ジョハンソン)ホークアイ(ジェレミー・レナー)はS.H.I.E.L.D.のエージェントですから、いつでも招集が可能。ハルクの招集は...常に未知数です。

ヒルはさらに問います。

ヒル:If we get into a situation like this again, what happens then?
もし、今回のような状況に晒されたら、その時はどうするんですか?
フューリー:They'll come back.
彼らは戻ってくる。
ヒル:Are you really sure about that?
確かなんですか?
フューリー:I am.
確かさ。
ヒル:Why?
なぜ、そう言えるんです?
フューリー:Because we need them to.
我々が、彼らを必要とするからだ。

アベンジャーズ計画」とは、S.H.I.E.L.D.長官が試した、一つの"賭け"なのです。超人的能力の持ち主(個人)たちを招集できる確固としたやり方、保証はありません。

では、フューリーは、なぜ確信できるのか?何に賭けているのか?それは彼にしかわかりませんが、きっとヒーローたちの

《良心》に託している...ということなのでしょう。

それが、ヒーローたちの本質だとも言えます。

 

人知を超えるような脅威に立ち向かうには?

さてもし、その《良心》や《正義》や、あるい は今ある《能力》を総動員しても、打ち破れない(ロキやチタウリ兵以上の)脅威が、地球外に存在するとしたら、アベンジャーたちはどう闘うのでしょう?

科学に答えを求めたアイアンマン

そこに科学で「答え」を出そうと試みたのが、トニーブルース・バナー博士(マーク・ラファロ)でした。トニーは、NY決戦で生死の境目を自ら体験した後、「人知を超えるような脅威の恐れ」に立ち向かうには、自分たちだけの手では足りないと悟ります。

そこからアイアンマン・スーツに改良を重ね、遠隔操作のできるリモート型のアーマーを量産します。それらのアーマーの一団が、映画『アイアンマン3』の中で活躍するのはご存知のファンも多いでしょう。

トニーとバナー博士は、映画『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』で、HYDRA(米語発音はハイドラ。日本での表記はヒドラ)という悪の組織から奪い返した「ロキのScepter: 槍」に付いている蒼く輝く石(Mind Stone: マインドを操ることのできる石)が人工知能を発展させ得る力を宿していることを突き止めます。

その未知の「パワー」を応用し、ドローン型ロボット集団 Iron Legion(レギオンはカタカナ読み。リージェンやリージィョンという風に発音します)の運用システムに新型の"人工知能"を取り込んで、そのドローンたちを世界中の地域に配置することができれば市民の平和を守れる...と考えました。

そこでトニーがバナー博士を説得し、スティーヴやソーたちの知らないところで、開発しようと着手したのが「the Ultron Program」という計画です。

しかしウルトロンとして自我に目覚めてしまった人口知能は暴走しました。あまりにも優れた"高度な知能"は、人類と地球のすべての歴史や記録から判断して、

「"最善"の施しは、地球上から人類を消滅させることだ」

と、独自に設定した目標を完遂してしまおうとするのです。

トニーが「正しい答え」だと導いた平和実現への解決策は、皮肉にも、未知の、彼をも上回る"知能"に覆されました。そしてアベンジャーたちは、ウルトロンが「知能」となって操るロボット集団の全軍と戦わなければならなくなるのです。

キャプテン・アメリカの真髄、高潔な精神

ハードウェアに頼り、「科学の正しさ」を根拠とするトニーに、アベンジャーズのリーダー的存在であるキャプテン・アメリカこと、スティーヴ・ロジャーズ(クリス・エヴァンズ)は詰め寄ります。

 

スティーヴ:The Avengers were supposed to be different than S.H.I.E.L.D.
アベンジャーズ(の目的)は、S.H.I.E.L.D.とは違うはずじゃないか。

トニーはNY決戦の時のことを回想しながら語ります。

トニー:A hostile alien army came charging through a hole in space.
敵意のある異星人の軍団が宇宙に空いた穴から攻め込んできた。

We're standing 300 feet below it.
俺たちは、(頭上を飛び回る奴らの)100メートルくらい下の地上で立ち尽くしてる。

We are the Avengers.
俺たちはアベンジャーズだ。

We can bust arms dealers all the livelong day,
一日中、武器商人たちをこらしめるくらいならできるさ、

but that up there, that's.....that's the endgame.
だが、上空にいる奴ら...奴らと(の戦い)は、"終末"を覚悟しなきゃならない。

How were you guys planning on beating that?
いったいどうやったら、奴らに打ち勝てるっていうんだ?

スティーヴ:Together.
一緒にやる。
トニー:We'll lose.
それでは負ける。
スティーヴ:Then we'll do that together, too.
だったら、負けるのも一緒にだ。

スティーヴのこの言葉、グッとくる一言です。この強い意思を聞いて、トニーは黙ります。

理屈では、トニーの言い分は正しく響きます。しかし、スティーヴの「Together」という一言には、仲間との絆や友情に重きを置く「高潔な精神」が読み取れます。
『キャプテン・アメリカ』の真髄、と言ってもいいでしょう。

仲間と運命を共にするという、純粋すぎるほどの思いに、トニーは言葉を返すことができません。
スティーヴの信念に対し、一目置いているのです。

*   *   *

映画の中盤、ウルトロンの戦闘力に手こずり、さらにスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)の魔力で「過去や未来の悪夢」を見させられ、アベンジャーたち各々が翻弄された後...

とある田舎の一軒家の原っぱで暖炉用の薪(まき)木を切っているスティーヴとトニー。
二人は再び、議論を交わします。

スティーヴ:"Earth's mightiest heroes." Pulled us apart like cotton candy.
"地球最強のヒーロー"が...。綿菓子のように引きちぎられた。
トニー:Seems like you walked away all right.
キミは、まったく無事らしいな。
スティーヴ:Is that a problem?
それが悪いのか?

トニー:I don"t trust a guy without a dark side.
暗い影を背負っていない者を信用できなくてね。

Call me old-fashioned.
古くさい主義だが。

スティーヴ:Well, let"s just say you haven"t seen it yet.
まだ、(俺が抱える)暗部を知らないだけさ。
トニー:You know Ultron is trying to tear us apart, right?
ウルトロンは、俺たちをバラバラにしようとしてる、わかるだろ?

スティーヴ:Well, I guess you"d know.
さぁ、あんたは知ってるんだろ?

Whether you"d tell us is a bit of a question.
俺たちにも教えてくれるのかは疑問だけどね。

トニー:Banner and I were doing research.
バナーと俺は、研究を重ねたんだ。
スティーヴ:That would affect the team.
その研究がチームを揺るがした。

トニー:That would end the team!
研究がチームに終わりを告げるんだ!

Isn't that the mission?
それが使命だろ?

Isn't that the "Why We Fight"?
それが、"なぜ我々が戦うか"の理由じゃないのか?

So we can end the fight.
戦闘を終えられるように。

So we can get to go home!
そして皆が家に帰れるように。

 

スティーヴ:Every time someone tries to win a war before it starts, innocent people die.
戦争が始まる前から、ねじ伏せようと誰かが試みる度に、いつも罪も無い人々が死ぬことになる。

Every time.
いつもだ。

戦争のシステム、矛盾、悲しみを知っているからこその"キャプテン"の言葉が、再びトニーの心に刺さります。

*   *   *

東欧のソコヴィアという国での、映画のクライマックスの戦いで、アベンジャーたちは市民をいかに救うか?というギリギリの選択を迫られます。

ウルトロンらが仕掛けた装置の強大なエネルギーで、ソコヴィアの街全体が空中に浮き上がり始めます。街を巨大隕石のように地上に落下させ、地球を破壊するという恐ろしい計画が実行されてしまった、最大の危機の真っ直中のナターシャ・ロマノフとスティーヴのやりとりです...

ナターシャ:Cap, these people are going nowhere.
キャップ、もう(上空に浮き上がった)ここにいる市民には逃げ場が無いわ。

If Stark finds a way to blow this rock...
スタークがこの岩(街)を砕いて散らす方法を見つけ次第...

スティーヴ:Not till everyone's safe.
いや、全員の安全が確保できるまでダメだ。

ナターシャ:Everyone up here versus everyone down there?
上空の人々と、地上にいる人々、どちらを救うつもり?

There's no math here.
(数字上は)比較にならないわ。

スティーヴ:I'm not leaving this rock with one civilian on it.
民間人が一人でもいるうちは、俺はこの岩(街)を去らない。

 

そう、「キャプテン・アメリカ」という英雄であるスティーヴ・ロジャーズは、"民間人を、人を守る"ことが責務。それが彼の一兵士としての信念であり、彼の《良心》に他ならないのです。

熾烈な戦いの末、スティーヴ、トニー、そしてアベンジャーの面々は、ソコヴィアの国民の多くを救いました。

しかし本来、人々を守るためのシステムが、人々の犠牲を生み出す悪循環は世界から消えません。NYでも、ソコヴィアでも、数多くの死傷者の犠牲が発生しました。

トニーの正しいはずの論拠は揺らぎ、スティーヴの《良心》さえも揺らぎ始めます。

分裂すれば、倒れる

マーベル・シネマティック・ユニバース:MCUの最新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の宣伝コピーは、

"DIVIDED WE FALL"
「分裂すれば、倒れる」

です。

映画『アベンジャーズ』(2012年)では、ヒーローたちの最初の「出逢い」が描かれました。

ニック・フューリーが言った、

They'll come back. Because we need them to.
彼らは戻ってくる。我々が、彼らを必要とするからだ。

という「賭け」は、キャップ、アイアンマン、ソー、ハルクらの《良心》と《自主性》に委ねられていました。

映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)では、スティーヴが口にした、Togetherの思いが仲間たちに通じ、「共に戦う」結束が描かれ、人類滅亡の危機を乗り越えられました。

しかし同時に、多くの犠牲を生んだ責任の重荷は、ヒーローたちに現実を突きつけます。

その「現実」を描いたのが、『シビル・ウォー』(2016年)です。

 

良心》と《自主性》が、ヒーローたちが自らの意思で誰かを守れる「本質」であるならば、なぜ、キャップことスティーヴ・ロジャーズが、"国のシステム"と"管理"に賛同できないかがわかります。

そしてキャップこそが、チームが "DIVIDED"となり、袂を分かつ選択を、最もとりたくなかったアベンジャーなのです。

故郷である、"75年前のNYのブルックリン"には二度と戻れないスティーヴには、今、心の寄りどころである「HOME」は、アベンジャーたちの拠点しかありません。(...いや、彼にとって本当の仲間は今いるのか? いるならば、どこにいるのか?)

それを踏まえれば、『シビル・ウォー』での彼の苦悩が、より深く慮られるのです。

このまま、"WE FALL..."となるのか、アベンジャーたちの運命はこれまで以上に、キャップの選択にかかっているのです。

<Vol.9>はこちらから。

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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Photo:『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(C)2016 Marvel.