「ラムジーの死をネタばれされたの」『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【6】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)ハンナ・マリー(ジリ役)。〈壁〉の向こうで出会い家族となっていった彼らが、最も悲しかった死や清々した死、お気に入りのシーンについて語ってくれた。(本記事は、ネタばれを含みますのでご注意ください)

――あなたにとってのベストエピソードは?

ハンナ:エピソードを一つだけ選ぶのは難しいけど、シーンということでなら言えるわ。私たち二人のシーンの中で一番のお気に入りは、赤ちゃんの名前を決める場面よ。赤ん坊をなんて名付けようか考えている時、最終的に「ベイビー・サム」に落ち着いた。様々な可能性を追求して、ファンタジー風の名前をあげたり、モーモントと呼ぼうかとも話したわ。それはとても愛しく、ほのぼのする瞬間で、サムとジリの関係性が確固たるものになった時だったと思う。彼らが家族になったと初めて感じられたの。あのシーンの撮影は本当に楽しかった。

ジョン:そうだね。

ハンナ:それから、第四章第8話(「山と毒蛇」)のオープニングも大好きなの。モウルズ・タウンへの攻撃を長回しで撮影した大掛かりなもので、アレックス・グレイブス監督がメガホンを取ったのよ。彼は『ザ・ホワイトハウス』も監督した人で、「『ザ・ホワイトハウス』でやったような長回しをやるぞ」と言われたの。『ゲーム・オブ・スローンズ』ではそういうのは絶対やってこなかったけど、そのシーンの撮影は技術的にも見事で、クルー全員が最善を尽くして実現できた。ただただ素晴らしかった。3つのシーンをワンテイクでやったの。シーンからシーンへとムードは変わるものの、それでも通しでワンテイクとなっているので、技術的にあそこまで見事なシーンの一員となれて感動したわ。

見るのが一番好きなのは第一章の、ロバート・バラシオンとサーセイが自分たちの結婚生活について話している場面。それこそ私がこの作品に参加したいと思うきっかけとなったシーンだった。やっぱり最終的にはいつも第一章に戻るわね。それ以降のシーズンに素晴らしいシーンがないわけではなくて、それが際立っていると個人的に感じるからなの。

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ジョン:僕にとってこの作品は、シーズンが新しくなるごとに、常にそれまでやってきたことのさらに上を行く、異なるものとなっていた。「ブラックウォーターの戦い」(第二章第9話)で"これは凄い。スペクタクルという点で、これ以上どうやって上を目指すんだろう"と思ったけど、「堅牢な家(ハードホーム)」(第五章第8話)や「落とし子の戦い」(第六章第9話)といった以降のエピソードと比べるとまだ序の口だったね。スペクタクル巨編としていいと思うのは、自分のお気に入りのエピソードを何度も振り返っていくことだ。製作陣たちは今までにやったことをすぐに改善していく手法を常に見出しているようだった。シーズンが終わるごとに"さて、これは終わった。ここで最高のものを出しきらなくて良かった。次のシーズンのことを考えなくちゃならないから"とでも考えていたんだろうね。これ以上のものをどうやって作れるのか、というのはすごく不安だと思う。

僕の視点から言うと、第四章第9話「黒の城の死闘」に参加できただけで嬉しかった。すでに「ブラックウォーターの戦い」や「キャスタミアの雨」(第三章第9話)を見ていたので、(全10話という)シーズンの構造上、第9話が重要なエピソードとなることは分かっていた。各シーズンは第9話に向けて盛り上がっていくんだ。というわけで、第四章第9話のストーリーが黒の城と冥夜の守人(ナイツ・ウォッチ)に関する内容になると知った時、シーズンを通して中心となるピースを任されたことにとても興奮したよ。

あのエピソードではアクションの得意なニール・マーシャル監督と仕事をしたけど、誰かに1時間ものアクション作品を任せるなら彼が適任だろう。アレックス同様、彼も映画のような興味深い映像にする手法を見出していた。黒の城の中庭一帯に360度トラックを敷いて、夜通し撮影した。監督のオリジナリティや創造性にインスパイアされたわけだけど、あの二つのショットは特に特別なシーンになると確信したよ。それを台なしにしないように頑張らなければと刺激されたね。あのような環境は強烈だけどとてもクリエイティブで、魔法のように魅了されるものだ。

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――サムとジリはシリーズを通して互いを支え、それまでとは違う方向へと進化していきます。ご一緒に演じられていかがでしたか?

ハンナ:格別だし最高だったわ。あそこまで長い間共演できるなんて素晴らしかった。一緒に仕事をするようになって7年も経つのよね。

ジョン:そうだね。

ハンナ:信頼し合うようになり、二人だけが分かるコミュニケーションの方法もできていった。私たちは仕事のやり方が異なるから、互いのプロセスがかなり違うことについて二人でよく話して、うまく影響し合い、相手から学んでいったの。本当に光栄だったわ。

ジョン:100%その通りだね。サムとジリの物語に助けられた。二人の関係は、初めて出会った瞬間から最終的な形まで少しずつ発展していった。すべてがゆっくりと育まれていくことが許された。その理由は、互いに相手がいかに傷ついているかを理解しているからなんだ。サムとジリはどちらも人を信頼できないという問題を抱えている。彼らの父親は、世界中で最も信頼してはならない人だったからだ。サムはジリに対して、薄氷を踏む思いで接してきた。変なことを言って、せっかく築いてきた関係を台なしにしてしまうかもしれなかったからだ。だから、アクション満載でエネルギッシュなシーンの後、サムとジリの癒やされる関係がほんの少しだけ前進するのは心和むものだった。第六章から第七章にかけてサムとジリの信頼関係が発展していく様子を描けて嬉しかった。本作には超常現象的な要素も多いが、その一方でサムとジリの物語はとても人間的で、ゆっくりと燃える炎のようなものだ。時間が経つにつれて彼らの関係が進展していく様子を見るのは心が満たされるもので、次第に二人は離れ離れになりたくないと思うようになる。サムは常にジリのことを考えてる。彼が生き延びたいと思うのは、ジリを守るためだ。そういう関係を何シーズンにもわたってゆっくりと演じる機会を与えてもらえて、最高にやり甲斐があったよ。

――シリーズを通してたくさんの死がありましたが、お二人にとって最も悲惨な、もしくは最も悲しい死はどれですか?

ハンナ:私にとってはキャトリン・スタークね。第三章の撮影が始まる前に、原作を読んでいたの。あと、なぜかロブが死ぬことも分かってた。(ロブ役の)リチャード(・マッデン)が話していたからかも。彼は「ロブ・スタークは死ぬのは分かっている」と言っていたと思うわ。キャトリンは私のお気に入りのキャラクターだった。ミシェル・フェアリーの演技も大好きだったし、サンサとアリアはいつかきっと彼女の元に戻ることができると思っていたのよね。

ジョン:分かるよ。

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ハンナ:でも「キャスタミアの雨」の箇所を原作で読んで、大切なものを奪われたような気持ちになった。あの死はすごくショックだったわ。

ジョン:そうだね。いまだにそうだよ。第一章が始まる前は原作を読んでいなかった僕にとっては、それに当たるのがネッド・スタークなんだ。本作における最善の死に様と言う場合、「キャスタミアの雨」でのキャトリンとロブが当てはまるけど、そういうことが起きた瞬間は理屈抜きのショックがまずあって、それがもたらす影響について考えるにつれ、その後じわじわと震撼するものだ。一方、ネッドが死んだ時は、"なんてことだ! それはないだろう"と思った。"だってショーン・ビーンが主役なんだ。彼が第一章の終わる前に死ぬわけにはいかないだろう。そんな馬鹿なことがあるか"と混乱するけど、本当なんだよね。

ハンナ:シーズン最終話でもないのよね。最後から2番目のエピソード(第9話「ベイラー大聖堂」)だった。

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ジョン:第一章が終わる前に彼が殺されてしまった時、"ネッドがジョンに言った最後の言葉は「お前に次に会った時、母親について話してやろう」だったのに、これだとジョンがそれについて知ることができないじゃないか"と思った。それは鍵を握る重要な情報だった。というわけで、僕にとって最も悲しかった死はネッドだね。僕たちの場合、作品を見るだけでなく、彼らと一緒に仕事をするので、いつも悲しみは2度訪れるんだ。

ハンナ:そうね。

ジョン:キャラクターが死んでしまい、それに伴って作品を通して知り合った俳優も去る。だから、僕たちは二つの素晴らしいものにお別れを言わなければならないんだ。

――逆に、最も清々した死は?

ハンナ:ラムジーね。彼はあまりにも長く生き延びすぎた。

ジョン:まさにその通りだね。

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ハンナ:いろんな人に天罰が下り始めた時、"ラムジーはどうなの? 彼は最悪じゃない!"と思った。彼の死をサンサが画策したのも満足だったわ。あの場面についてはあえて知るまいと、脚本を読んでいなかった。ファンとして何も知らないまま見たかったのよ。それなのにデヴィッドとダンがセットで、「これからもう一つのユニットに移動して、サンサがラムジーを殺すところを見てくる」とネタばれしてくれちゃって(苦笑) でも、みんながその知らせを喜んでいたわ。あれは良かったわね。

ジョン:僕にとってはジョフリーの死が良かったね。というのは、第四章の時点で大きな出来事はみな第9話で起こるものという構図が出来上がっていたからなんだ。重要な人物が死ぬのは決まって第9話だった。それなのに第四章でのジョフリーは早い段階で死んだ。確か第2話か第3話だったと思う(編集注:第2話の「獅子と薔薇」)。シーズンの構造や形式は分かっていると思わせておいての展開だったので、脚本にあったからそうなることは分かっていたけど、それでも衝撃を受けたよ。とても効果的なやり方だったね。

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――愛されるキャラクターが次々に悲劇的な死を遂げる中、お二人のキャラクターが最終章まで生き延びたのは意外でしたか?

ハンナ:実は、私たちは大丈夫なんじゃないかという密かな期待はずっとあったの(笑)

ジョン:そうそう。サムは本作や原作の中で原作者のジョージ・R・R・マーティンを象徴しているという説が出てから、僕たち二人は安全なのではと思い始めたんだ(笑) ジョージは良心的兵役拒否者、反戦主義者で、物事を解決する手段としての暴力行使に反対しているから、サムがジョージを象徴しているんだ。サムは、物事は教育によって解決することが可能で、読書は武器と同じように力を持つということを示している。これはジョージによる世界の見方なんだろうね。自分のキャラクターがこの世界観の作り手である著者を象徴しているとなれば、"僕にとっていいことだ"と思わざるを得ないよ(笑)

――原作を読んでいるそうですが、最後の2シーズンは原作がない(出版されたものより先の展開を描いている)ので大きく変化したと思われますか?

ハンナ:私は撮影しながら読んでいたけど、途中で読むのを止めたの。第1巻と第2巻は第二章が始まる前に読み、第3巻を第三章の前に読んだけど、第四章の前にデヴィッドとダンと夕食を食べている時、「これから先、ジリは原作から離れることになる」と言われたから、原作を読む利点が感じられなくなってしまって。二つの物語に分かれるなら原作を読んだら反って混乱してしまうと思ったの。それに、ジリはもともと原作とはかなり違うこともあった。いつか好奇心から再び手をつけるかもしれないけど、原作が途絶える前から読むのを止めていたの。原作とは離れたところで作品が発展していき、原作なしに完結したというのは興味深いと思うわ。

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ジョン:そう、それが責任だよね。原作が出版され始めたのは1990年代半ばで、確か1996年だったと思う。つまり人々はジョン・スノウやデナーリスに23年前に出会ったわけだ。僕たちには、人々が常に抱いてきた疑問に、今答えなければならないという責任がある。完結の仕方、満足のいく終わり方を見出さなければならなかったんだ。最終的に原作の物語が終わる時、もしかしたらTVシリーズとは違う終わり方になるかもしれない。ジョージがどう考えているかは僕たちには知る由もない。ただ今は、物語、そして長い間ずっと人々に愛され続けた本作のキャラクターを完結させる責任がある。最終章で満足させなければならない人が大勢いるんだよ。

――そのプレッシャーについてはいかがですか?

ジョン:プレッシャーは、主要な決断を下す立場にいる製作総指揮のデヴィッドとダンが主に感じるものだが、僕たちもファンがいかに情熱的かは知っている。このTVシリーズがどう終わるのかに関する説がネット上にいかに多くあるかということだけを取ってみても、それは明らかだ。この番組のことを年に10週間(放送期間)だけ考えているわけじゃなく、一年を通してずっと考えているんだ。ずっと素晴らしかったのにエンディングでがっかりさせられた作品というのは、名指しはしないけど、これまでにたくさんあり、そうなるとそれまで見てきたすべてが再評価されることになってしまう。シリーズ全体のレガシーをも台なしにしてしまうことになりかねない。でも最終章の最終話の脚本を読んだ時、僕たちはそうならないのだと感じ、ホッと胸をなで下ろしたんだ。チャレンジングで必ずしも多くの人々が求めるものではないかもしれないが、見てもらい、その後、再評価してもらえたら、これが僕たちに可能な最高のエンディングであると思ってもらえるんじゃないかな。

<『ゲーム・オブ・スローンズ』リレーインタビュー>
「どう終わってほしかったかという考えに捉われてはならない」【1】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)
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「ジェイミー・ラニスターを演じてみたかった」【3】アイザック・ヘンプステッド・ライト(ブラン・スターク役)
「ティリオン、ジェイミーとのブロマンスは最高だった」【4】ジェローム・フリン(ブロン役)
「原作の精神に最後まで忠実だった」【5】ジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)&ハンナ・マリー(ジリ役)
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目がうるうるなのは涙じゃなくアレルギー!?【8】ニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)&グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)
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「素晴らしい悪役が死ぬ度、少しの間、喪失感を味わう」【10】ジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)&ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)
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「シリーズ完結は新たな始まり...」作品担当者が語る、本作の日本上陸と鉄の玉座が生まれた経緯

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■商品情報
・『ゲーム・オブ・スローンズ<第一章~最終章>』
12月4日(水)ブルーレイ&DVD発売
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※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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