「素晴らしい悪役が死ぬ度、少しの間、喪失感を味わう」『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【10】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)。〈穢れなき軍団〉の隊長、ロバート・バラシオンの落とし子としてそれぞれ重要な役回りを担っていた二人が、最も清々した死や悪役が与える影響、"ホームコメディ"について語ってくれた。(本記事は、ネタばれを含みますのでご注意ください)

――あなたにとってのベストエピソードは?

ジェイコブ:「落とし子の戦い」(第六章第9話)が良かった。あのエピソードで僕は二人の喉を掻き切るんだけど、その撮影で"なんてクレイジーなシーンなんだ!"と思ったよ。あの時にミゲル(・サポチニク)監督と初めて一緒に仕事をしたけど、"この男は凄い!"と思ったね。その時が初めてではなかったけど、あれを見て"僕がこれに出演しているなんて、一体どういうことだ? 凄いことだ"と実感した。そのエンドクレジットで僕の名前が出てきた時、"こんな社会現象みたいになった作品に僕が関わっているなんて、あり得ない!"と思った。あそこまで容赦ない、様々なレイヤーで構成された大作の1時間を見たことはなかった。僕はミゲル・サポチニク監督の大ファンなんだよ。あれ、彼の名字、ちゃんと言えてたかな?

ジョー:大丈夫だよ。

ジェイコブ:なら、いいや。

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ジョー:それに異論を唱える者はいないだろうね。本作が成功した大きな要因の一つは、目を見張るようなセットとキャラクターによって導かれるシーンのバランスだと思う。僕が本作で好きなシーンは二人のキャラクターが部屋で話しているだけの場面なんだ。一方で「落とし子の戦い」のように大掛かりなセットの回も素晴らしい。その傾向は「ブラックウォーターの戦い」(第二章第9話)で始まり、その後「堅牢な家(ハードホーム)」(第五章第8話)や「落とし子の戦い」へと続いていった。「イーストウォッチ」(第七章第5話)や「壁の向こう」(第七章第6話)もそうだったね。TV界の限界に挑戦したことこそ、この番組の遺産の一つじゃないかと思うよ。その象徴が「落とし子の戦い」なんだろうね。

――最終章は誰かと一緒にご覧になるのですか?

ジョー:友達と一緒に見るつもりだよ。第二章、第三章あたりから人気が出てきたことは分かっていたけど、その頃アメリカに行くと『ゲーム・オブ・スローンズ』試写パーティが流行っていると言われたものだよね。

ジェイコブ:僕はまだそれについては考えていない。きっと見ないだろうね。サー・パウンス(トメンの飼い猫)は出てこないらしいから。サー・パウンス抜きで素晴らしい作品になるわけがないよ。...というのは冗談だけど、どうだろうね。僕はパーティが苦手だし自分の姿を見るのもあまり好きじゃない。でも友達が見事に演じる様子は見たいし、彼らの努力が実を結ぶ様子は目にしたいんだ。

ジョー:自分が出てる箇所を早送りすればいいんだよ。僕は逆に、僕以外の人の箇所を早送りするけどね(笑) 自分のところだけ見るんだ。

ジェイコブ:多分、自宅で妻と犬と一緒に見るだろうね。特に大きな計画はないんだ。つまらない答えだよね。謝るよ。ジョーさえ良ければ、彼と一緒に見るよ。あとは最終章が解禁になったらSNSをチェックするよ。ショックと驚きが満載だから、そういうツイートを見るのは楽しいだろうね。

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ジョー:笑える場面も多いよ。

ジェイコブ:そうだね。

ジョー:今年はホームコメディだ(笑)

ジェイコブ:そう、あれは不思議な展開だったね。

ジョー:それでもうまくいったよ。

ジェイコブ:そうだね(笑)

――ショックと言えば、本作で最も悲しい、もしくは最も清々した死は何でしたか?

ジョー:興味深い質問だね。『ゲーム・オブ・スローンズ』の死者は多いが、誰かの死を願っていても天罰が下るのには時間がかかるものだ。僕にとってムカつくキャラクターはジョフリー・バラシオンだった。周りの人もそうだったけどね。それはひとえにジョフリーを演じたジャック・グリーソンがいかに優れた役者かということの証明なんだけど、当時は僕の周りの誰もが彼を倒してやりたいと思っていた。ただ、誰かの死を望む度、それを後悔することになる。なぜなら特定のキャラクターにそれほど強い感情を持つのは、彼らが素晴らしいからなんだ。素晴らしい悪役が死ぬ度、少しの間、喪失感を味わう。そしてまた別の誰かを憎むことになるんだ(笑)

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ジェイコブ:僕はタイウィン・ラニスターがトイレで殺されたのに満足感を覚えたよ。倒すことが不可能な人物のように思えたからね。

ジョー:演じているのがチャールズ・ダンスだから。

ジェイコブ:そう、チャールズ・ダンスだから。

ジョー:彼がトイレで死ぬ。

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ジェイコブ:タイウィンは世界中で一番邪悪な人物で、とても仰々しい。自分は素晴らしい人間だと思っている。そんな彼がトイレでクロスボウで射られる。これはなかなか良いものだと思うね。

ジョー:下手くそな撃ち方だったけどね。

――最も悲しかった死は?

ジェイコブ:ネッド・スタークだと思う。いや、視覚的に最も胸が張り裂けそうだったのは「キャスタミアの雨」(第三章第9話)だ。

ジョー:スタニスの娘シリーン・バラシオンの死は悲惨だった。僕たちはスクリーン上の暴力描写に対する感覚が鈍りがちだが、本作では暴力描写が多いので特にそれが顕著だと思う。それでもシリーンの死は理屈抜きに僕の心からずっと消えなかった。あの時点で(シリーン役の)ケリー(・イングラム)のことは知らなかったから個人的な絆はなかったけど、それでも胸を打たれたよ。

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――最も撮影が大変だった章は?

ジェイコブ:僕は少しあった恐怖症を今シーズン克服したんだ。それが何かは言えないんだが、今年の撮影では怖いことがあった。それでも衣装を身に着けて、50人もの人々がカメラ、機材を持って僕に神経を集中させた。以上だよ(笑)

ジョー:ちょっと厄介な恐怖症だよね。僕は最近までカメラ恐怖症だった。あと、ヒルのシーンは大変だった。撮影も長時間だったしね。難しいわけではなかったが、とにかく時間がかかったんだ。それから「壁の向こう」のアイスランド・ロケも過酷だった。昨日もその話をしていたんだけど、冬だったのでアイスランドでは日照時間があまり長くない。そこで撮影時間のほとんどで、歩いているところ、話しているところなど、とにかく撮れるものをどんどん撮っていった。それが最後の30分になるまで延々と続く。そして僕以外は撮影終了となる。僕はそこから来た道を逆に向かって走って戻らなければならなかった。しかもそれを最後のところにつなげて使うために、5回も繰り返すんだ。アイスランドだから凍え死ぬほど寒く、走り始めると今度は熱くなる。『ゲーム・オブ・スローンズ』においては心地良い温度というものはないんだよね(苦笑)

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――自分のキャラクターにお別れを言うことはいかがでした? また、ジェンドリーとグレイ・ワームはシーズンを通してどう変わっていきましたか?

ジョー:ジェンドリーの旅路は終始、発見の旅だったと思う。浮き沈みを経験したキャラクターは他にもたくさんいるが、彼のように精神的にあそこまで様々なことを経験し、世界が大きく拓かれていったのは稀だ。彼自身が狭いと感じていた極端に限られた世界から始まり、それが何かは自分でも分かっていなかったが、壮大な何かに関わっていきたいと思っていた。ただ、それが何なのか、そしてどうやったらそれに関わっていけるのかは、さっぱり分からなかった。恐らくそれを実現させる術もなかったろう。そこから彼は自分が誰なのかを知っただけでなく、そこに何があるのか、そして何がやってくるのかを教わった。それは驚愕すべきことだったろう。彼はそこから成長しなければならなかったんだ。

ジェイコブ:この作品はストーリーが見事だよね。キャラクターも素晴らしい。

ジョー:そうだね。そういうのをこれまでもやってきた。

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ジェイコブ:グレイ・ワームについては始まった当初、"いつまでいるか分からない。今シーズンだけで消えるかもしれない"と思っていた。僕はとにかく〈穢れなき軍団〉に人間的な側面を見せたかった。ずっと話してきたことだが、この物語で演じることができて光栄だった。グレイ・ワームの物語は、ある意味ミッサンデイの物語と似たところがある。トラウマによって壊れ、ロボットになってしまったような人物をどうやって立ち直らせるか、そんな人物を戦士という立場を超えて大きな世界で機能するようにどうやって人間であることを学ばせていくかということだ。僕はこの作品のほとんどのシーンで無表情だが、そういった側面を演じ、それを追求できるのをとても楽しんだ。時には少し戻さなければならないこともあり、どう映るかというのを考えなければならなかった。こういうのはあまりこれまでなかったと思うんだ。

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■商品情報
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※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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