「メリサンドルを定期的に罵ってるよ」『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【11】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはリアム・カニンガム(ダヴォス・シーワース役)。かつて密輸業者だったものの改心し、本作の良心的なキャラクターの一人となった〈玉ねぎの騎士〉が、スタニス・バラシオンやメリサンドルとの複雑な関係、"盗み癖"などについて語ってくれた。(本記事は、ネタばれを含みますのでご注意ください)

――ダヴォスはメリサンドルを許したのでしょうか?

彼がなぜそんなことをするんだ? どうやって彼女を許すというんだい? 一体、何のために? 私のためにケーキを持ってきてくれたわけでもないだろう。花やチョコレートを持ってきたわけでもない。何もないじゃないか。電話してきたわけでもないし、手紙も書いたりしなかった。今度会ったらぶっ殺してやる。そう引用してくれて構わないよ。

シリーンはダヴォスが昔から気にかけていた存在だった。「良い子で優しかった。それなのにお前は殺してしまった!」とメリサンドルに言う場面に演技はいらなかったよ。ダヴォスが愛した子どもだったというだけでなく、あんな酷いことを純粋無垢な子にするなんて。我々は時として、戦う相手と同じように悪い人間になってしまう。シリーンに関してはすべてが間違っていた。だから彼がメリサンドルを許すことはないだろう。

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――セットから何か持ち帰りましたか?

アムステルダムで(メリサンドルのネックレスが)一つ盗まれてしまった。展覧会のことを覚えているかい? 誰かがマネキンから外して持っていってしまったんだよ。何年も前に起きたことだ。

私自身はたくさん盗んだよ。盗んだもので新居がいっぱいになるくらいにね。それは冗談だが(笑)、ダヴォスはブラックウォーターの戦いで指が吹っ飛ぶが、その指を入れる袋をもらったね。カリス(・ファン・ハウテン/メリサンドル役)が怒っている時に、手袋を外して彼女に向かって中指を立てようとして「カリス?」と言うと、なぜか彼女は笑い転げていた。中指のところが縫ってあったのを忘れていたんだ。だからうまくいかなかった。そんな手袋ももらったよ。衣装部の代表であるアレックのところに行って、「第三章で指が吹っ飛んだ後、手袋をつけるのか?」と聞いたところ、「いや、それはもう終わったから、持って帰ってくれていいよ」と言われたんだ。ところが持って帰ろうとしたところ、どこかに行ってしまって、みんなで探したけど見つからなかった。でも4年後、アレックがやってきて、ポンッとそれをくれた。「一体どこにあったんだ?」と聞くと、物を移動させていた時、箱の一番下に入ってしまっていたと教えてくれた。というわけで手袋はもらったんだ。

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それから鹿の像を二つもらったよ。ダヴォスがシリーンに作ってあげた鹿の像と、あの酷い奴が子どもを火あぶりにした時に一緒に焼かれたバージョンの両方ともね。それ以外に何を盗んだかな。あとはブレーヴォスのお金と、ドスラクのフルサイズの剣かな。ちゃんとしたバージョンだよ。たくさんのものを持ち帰ったんだ。ネットオークションで金儲けができるというわけだ(笑) たくさんあったよ。

――あなたにとってのベストエピソードは?

多分自分が出ていない回だろうな。我々の頭はエピソードではなく物語を追うようになっているから、キャラクターとしてそういう考え方はできないんだ。そういう理由でエピソードという風には考えない贅沢さはあるね。「あのシーン」という風に聞いてもらわなければならない。視覚的には「落とし子の戦い」(第六章第9話)が素晴らしかった。20分間の戦いのシーンのために、25日間かかったんだが、あの撮影は難しかった。怪我をする可能性もあったし、私は危うく殺されそうになった。でもその結果は衝撃的だった。ただただ素晴らしかったね。美しい映像製作だ。「ここにはユーモアのセンスが必要だ。これは撮影が困難だぞ」という思いがある。というのも、撮影というのは、状況が困難になればなるほど、雨が酷くなればなるほど、寒くなればなるほど、作品は素晴らしいものとなる。不思議なものだね。その数式は不思議なんだ。あるシーンを頭の半分では嫌だと思っていても、もう片方がとても気に入っている。やった甲斐は大いにあったね。そういうのがいくつかあったよ。

――ダヴォスはファンの間で人気が高いですが、それは彼がこのドラマの道徳的指針だからでしょうか? それともあなたが演じているからでしょうか?

それは私が演じているからだ。すべては私のおかげだよ。ダヴォスとは一切関係ない(笑) そうだったらいいがね。不思議なものだが、彼は道具でしかない。彼はオーディエンスの代弁者だ。彼がやってきて「お前たち、そんなことをしてはならない。それは間違っている。どうかしているぞ」と言うと、ソファの上で見ている人の多くが"ダヴォス、よく言った!"と思うんだ。彼は分別、良識においてみなが頼りにしている男だ。それからまたシリーン・バラシオンやリアナ・モーモントとの関係は...。彼はああいった子どもたちの持つ純粋さ、持って生まれた良識が好きなんだ。そして彼のそうした面はメリサンドルの良い引き立て役でもある。スタニスに関しても、二人は同じ役割を担っている。どちらも彼を玉座へと導こうとしている。その手法が異なるだけだ。

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――最も撮影が大変だったのはどのシーンでしたか?

そういうのがなければ、自分の仕事をちゃんとやっていない証拠だ。我々はそういうのを見るのが好きなのだから、すべてが難しくあるべきだ。いつもこう言うんだ。「ドラマとは、つまらない箇所を取り除いた人生だ」とね。だからどのシーンも難しかった。『ゲーム・オブ・スローンズ』であるシーンが始まったら、リラックスしていい。この作品の場合、(脚本の)半ページ分などの短い時間ではなく、少なくとも3~4分は同じところにいるからね。「お前に会いたいそうだ」「分かった。今から向かう」と言って、コートを着てさっさとその場を去るといった風には描かれないんだ。どんなシーンでも集中しなければならない。本作の撮影中は、一日の終わりにいつも、役者として頑張ったと感じたものだ。

自宅に戻り、シャワーを浴び、軽く夕食をとる。そしてとにかく就寝する。ほとんどの日、肉体的にも精神的にも疲れ切っている。それでもそういった理由のために働くわけで、それによって見る価値のあるものが出来上がるんだ。役者としてそういうのをうまくものにしなければならない。ほとんどの場合、ギリギリのところでやっているんだ。

――個人的にどの死が最も悲劇的で、どの死が最も楽しかったですか?

楽しい死だって(笑)? ジョフリーの死は楽しかったね。でも彼がいなくなってしまったのは寂しかった。彼は本当に良い奴だった。いや、キャラクターは酷いが、演じたジャック・グリーソンは素晴らしいんだ。素晴らしいキャラクターだったね。

面白いもので、ジョフリーが生きていた時は人々はまるで「ジョフリーを殺せ」と書かれたTシャツを着たり、バナーを持っているんじゃないかと思えるほどの勢いだった。でも彼が死ぬや否や、翌週には「彼を生き返らせることはできないのか」と言われた。人々は彼を憎むのが大好きなんだ。彼は憎むには最高の人だった。彼を憎むのを楽しんでいた。最高だね。

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――ご自身のキャラクターが最終章まで生き残ると思っていましたか? これでおしまいだと思われたことはありませんでしたか?

それは分からなかった。(ネッド・スターク役の)ショーン・ビーンがいなくなってからというもの、安全な者など誰一人いなかった。プロデューサーの機嫌を損ねるのを誰もが恐れていた。私自身、3シーズンもの間、彼らと目を合わせないようにしていたよ(笑)

――自分より先にスタニスが死んでしまう展開は予想していましたか?

まったく分からなかったよ。脚本をもらうまでは、どうなるか一切教えてもらえないんだ。それはシリーンも同じだった。読んだ時、"冗談じゃない"と悲しみでいっぱいになった。そういうシーンは何回か読み返した後、"なんてこった"と思うものだ。ドラマ的にはそれは悲惨だった。彼女との共演はとても楽しかった。楽しい子なんだ。それが奪われてしまう。共演するのが楽しい相手が死ぬと、そのキャラクターに対して憐れみを覚えると同時に、一緒に仕事をするのが楽しい相手を取り上げられる自分のこともかわいそうになる。二重の苦しみなんだ。スタニス役のスティーヴン(・ディレイン)が去ったのも辛かったよ。スティーヴンとのシーンはどれも最高に楽しかったからね。

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――あなたが体験したことの中で何が一番恋しいですか?

"ウェスタロス"は自宅から車で2時間ほどのところにあるということを忘れてはいけない。ドラゴンストーンの撮影はバンブリッジのサテライト・スタジオでやったので、アイルランドの国境にある南ダブリンの自宅から車で45分で通勤できた。これは嬉しかったね。恋しくなるのは、シーズンの初めに"さあ、また始まるぞ"と思う、あの安心感だ。脚本が素晴らしいと分かっていて、参加するのが心から楽しかったよ。撮影初日、誰もが自分史上最高の仕事だと分かっている。これはある意味、少し悲しいことでもあるがね。でもそれと同時に、仕事をしていて、最高のクルー、最高の品質のプロダクション・デザイン、最高の脚本、最高のキャストだということを認識していた。そしてこういうのは永遠に続くものではない。あそこまでのレベルを維持し、簡単にやってのけているかのように装うのは誰にとっても難しいものだ。短期間ならやることはもちろん可能だが、(クリエイターの)ダン(D・B・ワイス)とデヴィッド(・ベニオフ)のように人生のうち12年間以上の年月を費やして続けていくというのは凄いことで、その一員であることが誇らしいね。

士気は常に高かった。仕事の環境は素晴らしく、クルーは優秀だ。世界中のクルーが『ゲーム・オブ・スローンズ』と履歴書に書けたらいいのにと思っている。それはクオリティの高さを証明するものだからね。

――共演者とは今も連絡を取り合っていますか?

我々の間にはチャットグループがあるんだ。その名前を言うわけにはいかないがね。

――チャットでは互いにひたすらメッセージを送り続けるのですか?

カリスが虐めてほしがってるだろうなと感じる時はいつでも、電話で「私が相手をしてやる」といって、彼女が調子に乗らないように罵ってるよ(笑)

<『ゲーム・オブ・スローンズ』リレーインタビュー>
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■商品情報
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※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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『ゲーム・オブ・スローンズ』
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