「原作の精神に最後まで忠実だった」『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【5】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)ハンナ・マリー(ジリ役)。〈壁〉の向こうで出会い家族となっていった彼らが、参加した当初やお別れの時、本作ならではのサプライズについて語ってくれた。(本記事は、ネタばれを含みますのでご注意ください)

――『ゲーム・オブ・スローンズ』がついに終わってのご心境は?

ハンナ:こういう風に今もこの作品のインタビューを受けているので、まだ続いているかのように感じるわ。まるで、また来年戻って再開するかのようにね。ついに終わってしまったのだと実感が湧くには、まだ時間がかかりそうよ。

ジョン:インタビューのために会う機会がある限り、そのような感覚を絶やさないでいられるだろう。全員が一堂に会す機会は少なくなってしまうと分かっているから、みんな一生懸命になるんだ。(ジョン・スノウ役の)キット(・ハリントン)の発言を思い出すよ。彼とは夜遅くにかなり熱い話をすることがあって、ある時こう言われたんだ。「僕たちは『ゲーム・オブ・スローンズ』を口実にしていつも会っていたわけだけど、撮影が終わった時こそ、友情を継続していくために努力しなければならないし、友情が続いていくことをどれだけ求めているかが分かる」とね。それは本当だと思う。

僕がこの作品を通じて育んできた友情は、会う理由がなくなってしまっても乗り越えることができるほど強いものだ。自分があまり楽しめないと感じる仕事をしていたとしたら、もしくは世界のどこかで何かをやっていて『ゲーム・オブ・スローンズ』が恋しくなったとしたら、悲しいだろうね。これまでは"またキットやハンナ、あるいは(クリエイターの)デヴィッド(・ベニオフ)とダン(D・B・ワイス)に会える"と思えてホッとしていたけど、自分がよく知る、心地良い仕事環境にもう戻れないわけだから。

20191201_GOT5_05.jpg

――本作に初めて参加した日のことは覚えていますか?

ハンナ:ええ。ベルファストに到着して、ジョンと一緒にリハーサルをやったのを覚えているわ。彼と会ったのはそれが初めてだった。それから私とジョンとキットで一緒にディナーに出かけたの。それに(ジェンドリー役の)ジョー・デンプシーとは私にとって最初の仕事(英国のTVシリーズ『Skins -スキンズ』)で共演していてすでに友人だったから、一緒に飲みに行ったわ。"ここにもう友達がいる"と思えて良かった。

撮影初日は、第二章でゴースト(ジョン・スノウのダイアウルフ〈大狼〉)がリスを持つ私の匂いを嗅ぐので怖がっていると、サムが追い払ってくれるというシーンの撮影だった。グリーンスクリーンの前で演じるのはそれが初めてだったけど、大狼の代わりに棒の先にボールが付いたものに向かって演じるのは調子が狂ったわ(笑)

デヴィッドとダンにオーディションで会った時、偉大なプロデューサーである二人はすぐハリウッドに帰ってしまってもう2度と会うことはないだろうと思っていたのに、撮影現場にいたからとても驚いた。彼らは毎日現場にいて、とても友好的で、この作品にすべてを捧げていたの。

それからジョンとの初めてのリハーサルが素晴らしかったことも覚えてる。私にとってベルファストでの初日の晩、あるシーンの演技をしていて、監督から「君たちのキャラクター(ジリとサム)は羽が折れた2羽の鳥のようなもので、お互いに出会った時に初めて、もしかしたら飛べるかもしれないと気づくんだ」という素敵な言葉をもらったの。

――その時点で、本作にどれくらいの期間、出演するだろうと思いましたか?

ハンナ:2シーズン以上続くTVシリーズというのは稀で、この役のオファーがあった時、第二章のいくつかのエピソードの後に第三章で大きな役どころになるとは言われていたけど、それ以降のことは誰からも何も言われなかった。私は第三章のことすらあまり考えていなくて、"それだけの期間撮影したら、あとは別のことをしよう"と思っていた。たとえ少しだけでもその世界に足を踏み入れるのは楽しかったけど、自分の人生においてこんなにも大きな部分を占めることになるとは夢にも思わなかったわ。

20191201_GOT5_02.jpg

ジョン:僕も初日のことは覚えているよ。かなり前のことで、2010年8月だね。僕にとっては本作の初日だっただけでなく、ドラマのセットで仕事をするのも初めてだったので、スケール感に圧倒されたのを思い出すよ。TVの撮影がどういう仕組みになっているのかも知らなかった。それまでは舞台役者になるための演劇学校に通っていたので、その3年間で受けたカメラのトレーニングは3時間ほどだった。つまり僕にとってカメラの前で演技をする4時間目は『ゲーム・オブ・スローンズ』の最初の1時間だったんだよ。そこにどのくらい多くの人がいるか、セットがいかに本格的か、そして製作費がいかに高いかなどを考えて、"僕は今どうしたらいいんだ?"と思った。本当に手探りだったよ。

でも、"僕はオーディションを受けたし、彼らは僕に何ができるかを知っていて、僕がこの役を演じられると信じてくれている。だからこれまで演劇学校でやってきたような演技をやればいい"と考えた。それまでカメラの前で最後に演じたのは100人を前にした演劇学校最後の年だったけど、あの時と同じでいいのか、それとも少し異なる演技をするべきなのかと迷い、彼らをがっかりさせたくないと願ったよ。初めて足を踏み入れた時、"ここには高いレベルで仕事をしている人々が大勢いる。そんな中で僕らしさを維持できたら"と思った。というのもカメラが回り出した時、僕にそれが可能か分からなかったからだ。その日何時間くらい(撮影が)続くのか不明だったから、困難な境遇に放り出されたような気分で時間が経つのが遅く感じられた。こんなにも壮大なスケールの作品でデヴィッドとダンが信頼を寄せてくれたわけだから、"カメラが回り始めたら、その恩返しをしないと"と考えていた。

その瞬間、僕にとっての演技というものが、そして自分と演技の関係が突如、変化した。それまでとは異なる理由で演技をするようになったんだ。何よりもまず生計を立てるために演技をしたが、それと同時にハードルがかなり高くなった。数カ月前に同じセリフを言っていた時とは、それを言う理由が変わったと感じたんだ。それは時が経つにつれて良くなっていったけど、当初は確信が持てなかった。

20191201_GOT5_03.jpg

――撮影最終日について聞かせてください。額縁に入った絵コンテを記念にもらいましたか?

ハンナ:ええ。私の絵コンテは第三章のホワイト・ウォーカーの襲撃よ。あれは私が誇りに思っているもので、重要な意味を持つ素晴らしいシーンなの。ダンとデヴィッドがその絵コンテを贈呈してくれた後、スピーチがあった。彼らの言葉はとても個人的な思いにあふれた、心の込もったものだった。その時に言ってくれたことは額縁の裏にも書いてあるの。

――その額縁はご自宅の特別な場所に置くのですか?

ハンナ:私は現在ロサンゼルス在住(※出身は英国ブリストル)なので、その絵コンテは両親の家に置いてあるの。デヴィッドとダンは素晴らしい人たちで、彼らが言ってくれた言葉はどれも私にとって重要な意味を持つの。ジリのカツラを取りたくないと思ったのを覚えているわ。その朝、カツラを着ける時、私のヘアを担当してきてくれたローラに、「これが最後ね」と言うと、「そんなこと言わないで」と返されたの。クルーにとっても終わりが近いことを意味していたから、それについて考えたくなかったのね。いろんな役者の最終日が訪れる度、彼ら自身の最後も近づいていると感じていたのかも。その数カ月後、私は写真撮影のためにベルファストへ戻った時にまたジリのカツラを着けたんだけどね(笑) あの撮影最終日、私は終わりが来るのをなるべく遅らせようとしていた。ついにホテルに戻った時、とても非現実的な感じがしたわ。

ジョン:僕の絵コンテも同じで、これをずっと大切にするよ。ちょっと残念なのは、ダンとデヴィッドの言葉が書かれたのが額縁の裏なので、壁にかけるとそれが見えないことだね(笑) 雛形があって、お世辞やインスパイアされるような感動的な引用文が使われるといったものでなく、とてもパーソナルなスピーチで、僕たち一人ひとりに合わせて、その瞬間に僕たちそれぞれが特別だと感じられるような言葉をかけてくれたんだ。デヴィッドとダンは、僕たちには価値があるのだと常に感じさせてくれて、初日から最終日の最後の瞬間までずっと、コラボレーションだと思わせてくれた。すべてにおいて自分が重要だと感じられたんだ。

二人と一緒に出かけたことがあるけど、支払いの面だけでなく、時間を割いたり誰とでも友達になるという意味で、彼らはとても寛大だ。3人だけで出かけたこともあれば、セカンド・アシスタント・ディレクター、俳優数人、ヘア&メイクアップなどのクルーを交えた日もあった。その中の誰かが二人に「あなたたちは何をするのか?」と尋ねると、決まって「君たちと一緒に仕事をする」と言ったものだよ。それこそがまさに彼らが僕たちに感じさせてくれたことだった。誰もが各々の役割を担っていて、能力が許す限り常に最高を目指していると認識している。誰もがそれに向かって努力している。何百人もの人々で家族のような雰囲気を作っているんだ。

20191201_GOT5_04.jpg

――オーディエンスは最終章をどう思うでしょう?

ハンナ:きっと大反響よ。素晴らしい反応になるでしょうね。

ジョン:僕もそう思うよ。

ハンナ:世界中の人に見てもらえるのが嬉しいわ。自分が出ている以外のシーンも見たいから、待ちきれない。それについて人々と語り合うのも楽しみよ。

――長年にわたって、この作品は大きなサプライズやショックを提供してきました。最終章にはより大きなサプライズがあるのでしょうか?

ジョン:もちろんさ。僕たちはこれまでずっとオーディエンスに対して挑戦し続けてきたし、保守的になったことは決してなかった。「起こってほしくない」ものの好例として特に印象的だったのは、ネッド・スタークの死やレッド・ウエディングだよね。もちろん僕たちはそんなことが起きてほしくないと思うわけで、ネッドにも最後まで生きてほしかったし、ミシェル・フェアリー演じるキャトリン(・スターク)やペドロ・パスカル演じるオベリン・マーテルもまた然り、ずっと出演してほしかった。だから、彼らが命を落とすと「ノー!」となる。ただ、この作品にはそういう要素が必要であり、オーディエンスからそこまで理屈抜きの反応を引き出せるのが、これほどの大成功を収めた理由なんだ。それを最終章でもまたやっている。決して簡単なものにはしていないよ。

20191201_GOT5_06.jpg

――最終章について原作者のジョージ・R・R・マーティンは「ほろ苦い」と表現していましたが、あなたはどのように表現されますか?

ジョン:初めてそのエンディングを読んだ時、最後にまったく異なるトーンで脱線していき、人々をがっかりさせてしまうといったことがないと知って僕はホッとしたんだ。この作品は、原作の精神に忠実で、それは最後の瞬間までずっとそうだったよ。

――本作の展開について周りからよく質問されますか?

ハンナ:そうでもないわ。私の場合はその逆のパターンが多くて、「お願いだから、どうなるか言わないで」と頼まれるの(笑)

ジョン:エンディングについて、単に「こういう風に終わる」と言ったとしたら、それを正当に扱うことにはならない。なぜなら最終章の全6話を通して、最もふさわしいエンディングに向けてすべてが展開していくからだ。最終章について言えるのは、これまで僕たちはいつだって急ぎ足で進めることなく、妥当な時間が与えられてきたということだ。戦いのシーンを重要なものとしたのは、それがそこに至るまでの出来事の結果であり、シネマチックに見せるための戦いではない。そこに至るまでのクライマックスであり、政治的策略、そしてそれらを取り巻くキャラクターたちの関係なんだ。これまで僕たちは根拠もなくやってきたことなどなく、エンディングだけを切り取ってその説明をしようとするのは公平ではないんだよ。

<『ゲーム・オブ・スローンズ』リレーインタビュー>
「どう終わってほしかったかという考えに捉われてはならない」【1】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)
「サンサやアリアも自分を見つけていったのは素晴らしいこと」【2】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)&ソフィー・ターナー(サンサ・スターク役)
「ジェイミー・ラニスターを演じてみたかった」【3】アイザック・ヘンプステッド・ライト(ブラン・スターク役)
「ティリオン、ジェイミーとのブロマンスは最高だった」【4】ジェローム・フリン(ブロン役)
「ラムジーの死をネタばれされたの」【6】ジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)&ハンナ・マリー(ジリ役)
「最初の読み合わせで二人クビになった!」【7】ニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)&グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)
目がうるうるなのは涙じゃなくアレルギー!?【8】ニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)&グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)
「30年後も僕たちはウェスタロスの話をしているだろう」【9】ジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)&ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)
「素晴らしい悪役が死ぬ度、少しの間、喪失感を味わう」【10】ジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)&ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)
「メリサンドルを定期的に罵ってるよ」【11】リアム・カニンガム(ダヴォス・シーワース役)
玉座に座るべきはブライエニーとトアマンドの子?【12】クリストファー・ヒヴュ(トアマンド役)
「死んだあのキャラが再登場したのは、その俳優に会いたかったから」【13】デヴィッド・ベニオフ&D・B・ワイス(クリエイター)
「シリーズ完結は新たな始まり...」作品担当者が語る、本作の日本上陸と鉄の玉座が生まれた経緯

20191201_GOT5_jacket2.jpg
20191201_GOT5_jacket.jpg

■商品情報
・『ゲーム・オブ・スローンズ<第一章~最終章>』
12月4日(水)ブルーレイ&DVD発売
【初回限定生産】ブルーレイ コンプリート・シリーズ...42,727円+税
【初回限定生産】DVDコンプリート・シリーズ...34,545円+税

・『ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』
ブルーレイ&DVD好評レンタル中
12月4日(水)ブルーレイ&DVD発売
【初回限定生産】ブルーレイ コンプリート・ボックス...11,818円+税
【初回限定生産】DVDコンプリート・ボックス...10,000円+税

※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

公式サイトはこちら

Photo:

『ゲーム・オブ・スローンズ』
(C)2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.