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ローレンス司令官役が語る『ハンドメイズ・テイル』の“皮肉とユーモア”と現実社会の恐ろしさ

2025年8月7日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

(c) 2025 MGM Television Entertainment Inc. and Relentless Productions, LLC. All Rights Reserved. THE HANDMAID’S TALE is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のファイナルとなるシーズン6の配信を控えるなか、ローレンス司令官を演じるブラッドリー・ウィットフォードのインタビューが到着した。

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ローレンス司令官役ブラッドリー・ウィットフォード【インタビュー全文】

――6年間『ハンドメイズ・テイル』に携わってきて、シリーズが終わる今、どんな気持ちですか?

ほろ苦いというのがぴったりですね。この作品を通したクリエイティブな体験は、文化的に意味があるし、とらえどころのない稀有なものでもあります。この世界に長く生きているので、そこは十分わかっているつもりです。醜い真実を扱いながらも素晴らしい映画やテレビとして表現する方法なんて、誰も知らないですからね。

このドラマを形づくる原作、脚本、クリエイターと素晴らしいキャストたちが出会ったその瞬間は、まるで錬金術のような化学反応が起きました。いつも強く言いたいと私が思っていること、それは「シームレス・ウェイ(枠にとらわれない表現方法)」。

マーガレット・アトウッドが時代を先取りした素晴らしい原作を、まだ見たことのないような映像美でテレビドラマへと映像化したのです。ある意味閉鎖的な世界観を6年という歳月をかけてついに完成させることができました。私たち全員、この作品に参加できたことを幸運に思っています。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

――シリーズを通してのローレンスの旅について話していただけますか?

今まで様々な役を演じることができて幸運だと思っていましたが、ローレンス役は格別です。次々といろいろなことに巻き込まれるところが、この男の面白いところ。彼の態度はいつでも曖昧で、どこに行き着くのか想像できない。

彼の中では相反する力が働いていて、一度に複数のことが進行している人物。ローレンスほど最高に興味深い人物を演じる機会にはそうそう出会えません。

演技を始めたころには気付かなかったのですが、演技するとき、キャラクターを絞り込もうとするのではなく、その可能性を広げる方が面白い、と言うこと。歳を重ねるにつれてだんだん理解してきました。

ローレンスの場合、その可能性ってやつが範囲が広い。1つの方向に収まらないところが彼の魅力ですね。この男はひどい性差別主義者で他人を見下していて傲慢な部分もあるのですが、ジューンと侍女たちに手を差し伸べようとする心も持ち合わせている。ある意味、ローレンスはジューンに魅了されたのかなと思います。

ドラマは、ローレンスがジューンを見下した力関係で始まるものの、ジューンがローレンスの良心を揺さぶり、やがてリーダーシップを発揮するまでに至ります。このあたりが役の深掘りで面白いところでした。

実は、エリザベス・モスが17歳の時に『ウェスト・ウィング』で一緒に仕事をしたことがあるのですが、とても印象的な演技をしていたのを覚えています。あれから20年、彼女はこの番組の中心的存在となっていて、これまでに見たことのないような驚くべき仕事ぶりを発揮しています。

プロダクションのあらゆる面に気を配り、まさにプロジェクトのクリエイティブの中心となっているのです。彼女と再びコラボレーションすることで彼女の成長を目の当たりにし、彼女のリーダーシップに刺激を受け、誇りと感謝の気持ちでいっぱいになりました。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

――シリーズの今の時点でのローレンスについて、どう表現しますか?

この男が誰なのかを理解すること、と並行してずっと考えていたことがあります。それは、ベトナム戦争時の国防長官ロバート・マクナマラについての『戦争の霧』という作品。

主人公は政治的な影響力も持ち合わせる、ある優秀な経済学者なのですが、頭脳が良すぎたために人間性が押しやられてしまい、自身の経済論を実行に移そうとするある種の興奮に囚われ、結果的に何百万人もの人々の死を招いてしまうと言う実話を元にしたドキュメンタリーです。終わりへと彼の人生の描かれ方が気味悪すぎて、この作品がずっと頭から離れませんでした。
で、ローレンスも似ているなと。彼は、司令官というある意味宗教的な変人たちを自分の理論を実践する道具として利用し、それを正当化しました。危機的な環境問題が起きている現代の状況と、このドキュメンタリーがあまりにも似すぎている、と思わずにはいられませんでした。

ローレンスは自分が作り出した世界に常に懐疑的ではあったものの、最愛の妻が亡くなるまでそれに気づきませんでした。直撃されて初めて、苦しみの代償の大きさを知るなんて、悲劇ですよね。

ローレンスの政治理論には賛成できませんが、それでも、彼がジェーンに言った言葉には頷けます。「改革を望むなら内部から改革する必要がある」つまり「この腐敗した政治システムの中で、政治的機能を果たせるのは自分しかいない」。残念ながら今の時代を反映しているかに見えるこのドラマの中で、ローレンスのこのセリフは実に興味深いものです。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

――どのようにしてキャラクターに明るさとちょっとしたコメディー性を持たせることに成功したのですか?

この男の面白いところは、多くの問題を抱えていても、常に皮肉とユーモアに富んだセリフを吐くこと。この点を少しでも直感的に表現したいと思いましたが、脚本でもしっかり表現されていましたのでありがたかったです。

脚本家たちはとても協力的で、ユーモアについての私の提案を受け入れてくれることもありました。ただ、ローレンスは群れの中にいても群れを信用せず、周囲と違う行動や意見を言うような男。そんな人間が他人を出し抜くにはユーモアが不可欠、というのが根底になります。

だから、ローレンスはいつも皮肉屋で、彼の話にはユーモアが絶対ある。悲観的な状況ほど、冗談を言いたくなる、というのは私も同じです。

――シーズン6でエリザベス・モスが監督を務めたことについてはどう思いますか?

キャストの誰かが監督を務めると、『ホームアローン』的になりがちですが、リジーは素晴らしい監督で、お世辞なしにお互いに何でも話せる最高の監督。信頼し協力できる関係を築けています。

先日、リジーが初めて監督を務めた時のパネルディスカッションで、誰かが彼女に「一緒に演技している時に他の俳優の演技を判断するのは難しいですか?」と尋ねたら、彼女は「いいえ、仲間と一緒に演技をしながら他の俳優の演技もジャッジする、ってことをずっと続けてきたから問題ない」と答えていました。

リジーも私も、監督の立場になって俳優を見ると、演技する方がとても楽に感じられるし、脚本を理解さえすれば、一瞬一瞬やシークエンスを深く意識して演じることはそれほど難しいことではないと思っています。でも、彼女が監督になるのを見るのは率直に嬉しいし、一緒に共有できて本当に楽しいです。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

――新しいベツレヘムとは何ですか?

先日、興味深い本を読みました。私たちは、科学の時代に生きているように見せかけて、本当は資本の時代に生きている、らしいです。科学が私たちを導いているのではない、と言うのです。そして、気候変動もその1つの結果であると。

ローレンスは基本的に、至る所でファシズムに陥りかけているこの世界こそ、経済の起爆剤を作り出すのに最適だ、と考えていると思います。民主主義ではなく、残念ながらファシズムの世界が舞台です。

――『ハンドメイズ・テイル』は、あなた個人にとってどのような意味を持ちましたか?

このシリーズで得られたクリエイティブな体験は、俳優として他ではめったに得られないものだと思っています。俳優、そしてストーリーテラーとして魅力的な機会に出会えたこと、みんなで協力して喜びを分かち合えたことに感謝しています。

このドラマに参加していること自体、実は少し奇妙に感じていて、と言うのも、私はマーガレット・アトウッドを以前から知っていて、原作は1985年に読んでいます。原作をすべて忠実にドラマで表現しているわけではもちろんありませんが、確かに原作を感じさせるドラマに仕上がっていると言えます。

以前マーガレット自身、「ドラマが原作からかなりかけ離れたストーリーになり、ストーリーの説得力が薄れることにならなければ良いが」とコメントしていたのを知っているのですが、「シーズン6ができましたので見てみてください」って言いたいです。

2022年に連邦最高裁で「ロー対ウェイド判決」(1973年連邦最高裁判所の判決で中絶は合法とされたが、2022年に覆されたため、現在多くの州で中絶が禁止または厳しく制限されている)が覆された後、妊娠中のレイプ被害者が人工中絶医療を受けられないよう、医療機関側がレイプ被害者の受け入れを拒否する事例がアメリカ各州で増え始めましたよね。

レイプ事件のほとんどは、どこかの酔っ払ったおやじの仕業、などと軽く言い流すことはできません。アメリカではレイプ犯の子どもを妊娠させられ出産を余儀なくさせる女性たちが確実にいます。かつてマーガレット・アトウッドが危惧していた、この作品の評価の方向性について、もはや恐れる必要はありません。

物語の一部はすでに現実となったのですから。レイプ犯の子どもと肉親を結びつけることや、現実問題を見つめること、次に何ができるかを考えることが重量だと思います。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン

――ジューン・オズボーンはどれほどの力を持っていますか? 彼女はニックやローレンスのようなキャラクターを変える能力を持っていますか?

もちろんです。彼女こそ、この物語の中心となって暗黒の時代を生き抜きぬく、パワフルな重要な人物です。彼女が体現する世界では、女性や子どもたちは絶望することさえ許されず、絶望から逃れるために行動を起こすしかありません。

ジューンは自身の行動と不屈の精神を示すことで、革命により自由を手にできることを人々に気づかせる力を持っています。つまり、自分がどこにいようと、政治的に抑圧されていようと、閉じ込められている世界を打ち破るのは自分しかいない、ということ。

現代社会では女性差別は現在進行形の問題で、他にも性差別、人種差別などの問題が常に蔓延していています。バーモント州にある理想的なコミューン(バーモント州はヒッピー文化や反文化運動の中心地として知られ、その影響で数多くのコミューンが存在する。自給自足、環境重視の共同生活、ジェンダーレスなど個人の価値観やライフスタイルを重視する理想郷とも言われる)のような場所に行き着くことなど、ありえません。

私たちに必要なことは、「戦いは続いている」と知ること。ジューンの一番の存在理由はそこにある、と私は思います。

『ハンドメイズ・テイル』配信情報

『ハンドメイズ・テイル』ファイナルシーズンは8月8日(金)からHuluにて見放題独占配信。(初日に第1〜2話配信、以降毎週金曜に1話ずつ配信)

(海外ドラマNAVI)

\月額1,026円(税込)/

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海外ドラマNAVI編集部

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