目がうるうるなのはアレルギーのせい?『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【8】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)。特別な絆で結ばれていた二人が、劇中とはまた違った"漫才"を見せてくれたほか、大泣きした日のことやお気に入りのエピソードなどについて語ってくれた。(本記事は、ネタばれを含みますのでご注意ください)

――『ゲーム・オブ・スローンズ』が終わってしまった今のお気持ちは?

ニコライ:これで終わりだ...!

グウェンドリン:どういう意味で言っているの?

ニコライ:どうやって先に進んでいったらいいんだ? これから、どうやって前進していけばいいんだろう?

グウェンドリン:それが分かっている人なんていないわ。

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――今後、舞台や映画など何か決まっていることはありますか?

グウェンドリン:決まっていることは、いつか私が死ぬことね(笑) 大切なのは、それまでの間をどう過ごすかなの。一緒に仕事をしてきた人たちと深い絆を結んだから、それが終わってしまって本当に悲しい。

さっきニコライが言っていたことに通じるけど、『ゲーム・オブ・スローンズ』では親密に仕事をしていたから、毎年みんなに支えてもらえる環境に戻れるってホッとするものなの。馴染み深い環境に身を置ける状況が8年も続いた。それぞれの瞬間すべてが愛おしいし、ブライエニーというキャラクターに奥深さを感じるわ。でもこれまでずっと掘り下げてきたから、個人的には他の仕事をし、変化していく心の準備ができている。また舞台や映画の仕事をやろうと思っているの。とにかく雇ってもらえるように努力しないと(笑)

ニコライ:僕も同じだね。

グウェンドリン:死が訪れるまで、意義のあるやり方で、ね。これには大いにプレッシャーを感じるわ。

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――終わってしまうのが寂しいですか?

ニコライ:いや、寂しいなんてまったく感じないよ。

グウェンドリン:(爆笑)そう言ってなさいよ。

ニコライ:もちろん、仕事仲間との時間を恋しくは思う。このシリーズのことは誇りに思ってるしね。君たちのような人がまだ取材に来てくれるタイミングで作品を終えられて良かった。あと3年も続けていたら、きっと二人くらいしか取材に来てくれなかっただろう(笑) クリエイターのダン(D・B・ワイス)とデヴィッド(・ベニオフ)は誘惑に負けることなく志を貫いた。もう1シーズンやればきっと田舎に小さな家が買えただろうに、ね。

グウェンドリン:そう? 私は、惑星が一つ買えるって聞いたけど。

ニコライ:ああ、惑星ね。

グウェンドリン:銀河系らしいわよ。

ニコライ:あと4シーズンやればだろ? 脚本を読んで、撮影した後、シリーズの終わり方として、あれ以上素晴らしいものはできなかっただろうと感じた。今の作品の規模に合わせたやり方だったというのが、正直なところだ。撮影のスケール感という意味でも、あれ以上のことは到底できなかったろうね。最終章はスケールが最大級だ。どんな映画よりもずっと大きい。これでおしまいだが、最高の気分だ。だから僕は悲しくなんてない。誇らしく思うよ。

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――作品の規模で言うと、この作品にはファンが大勢いますし、彼らのひたむきさは世界中の何にも代えがたいものがあります。献身的なファンのいる作品の一員となるのはいかがでしたか?

ニコライ:謙虚な気持ちにさせてくれたよ。献身的で僕以上にこの作品のことをよく知っている人に出会うのは、とても興奮するものだ。情熱とは興奮するものだね。それがガーデニングであれ、TVシリーズであれ、爽快な気分だよ。そういうものにとてもワクワクするんだ。人からは「ジェイミー!」と僕自身でなくキャラクターとして呼びかけられる。多くの人に喜びを与えられる作品の一員というのは素晴らしいね。僕たちがやっているのはまさにそういうことで、素晴らしいストーリーを語りたいわけだ。これは娯楽作品で、うまくやれば、例えばタースのブライエニーのようなキャラクターではさらに別格の楽しみを提供することができる。さっきグウェンドリンが言ったように、ブライエニーのようなキャラクターは稀だからね。

――『ゲーム・オブ・スローンズ』の終わりは、あなた方にとってある章の完結というだけでなく、どんどん競争が厳しくなるドラマ業界において最後の超人気コンテンツが幕を下ろしたのだと思われますか?

ニコライ:次が出てくるまでは、ね。

グウェンドリン:私はそれによってまた扉が開かれると思うわ。今では様々なプラットフォームがあるし、TVを見る手段もいろいろある。数多くの番組があって、その中のいくつかが熱狂的な人気を得て、初めて会う人や席が隣通しになった人、初めて一緒に仕事をする人とでも、何のドラマを見ているかについて会話することがある。例えば、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』をイッキ見したなんて話になるの。

『ゲーム・オブ・スローンズ』が成し遂げた偉業のもう一つは「慣例にとらわれない物語」であったことね。主役を最初のシーズンで殺してしまうと決めたこの作品に私はショックを受けたと同時に、嬉しくもあった。最高に反体制的だと感じたの。そういった反体制的な手法こそが、私がこの作品に出演するのが嬉しい理由で、様々なドラマや映画で異なる方法で行われているわ。我々が娯楽を消費する景色全体が変わっていったから。

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――あなたにとってのベストエピソードは?

グウェンドリン:私は第三章が大好きなの。ニコライと共演していたし、自分にとって2年目だったから。本シリーズ以前にドラマの仕事をしたことがなかったから、(初登場だった)第二章ではシーズンを通していろいろ試してみた。ブライエニーはキャラクターとして大きく変貌を遂げたけど、それまで私はあのように変化していくキャラクターを演じたことがなかったから、コントロールするよう努力し、統合していかなければならなかった。そして第三章では、ジェイミーとブライエニーという素晴らしいキャラクターのストーリーを掘り下げていき、ずっと経験豊かな尊敬する相手(ニコライ)と仕事する機会を得たの。彼には悩まされることも多いんだけどね(笑)

ニコライ:それは世のためだ。

グウェンドリン:それに一番楽しかったのよ。残念ながら具体的にどのエピソードだったか覚えていないけど、バスタブのシーンね(第三章第5話「炎の口づけ」)。ニコライがある物語を語るシーンの演技を見ていたけど、あれは極めて重要な分岐点だった。私にとってマスタークラスだった。胸躍る場面で、目の当たりにできて光栄だった。

ニコライ:なんで今日僕に優しいの?

グウェンドリン:他の役者との経験がほとんどなかったからよ(笑) あれは素晴らしいシーンだった。自分がその一部になれたのはとても幸運だったわ。

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――ニコライ、あなたはいかがですか?

グウェンドリン:第三章じゃないでしょ。

ニコライ:君の言う通り、第三章は素晴らしかった。それがこの作品ならではだが、クマの檻に飛び込むシーンが演じられるなんて他にあるかい? あれはクレイジーだったね。ベルファストで撮影した時はクマはいなかったが、ロサンゼルスに行ってクマのバートに会ったよ。

グウェンドリン:バート2世ね。

ニコライ:そう、バート2世だ。彼の方が主役気取りだった。本物のクマと撮影したんだよ。

グウェンドリン:そうだったわね。何でも言えたはずなのに、よりによって「君を一日中辱めることができるのはいいね」なんて言うのよ。

ニコライ:あれは良かったよ。

グウェンドリン:あなたが実際に言ったことよ。

ニコライ:僕はメソッド俳優だからだ。キャラクターであり続ける。

グウェンドリン:そうだったわね。

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――撮影最終日はいかがでした?

グウェンドリン:あなたの最終日はどうだったの?

ニコライ:素晴らしかったね。僕にとっては良かった。本当にそうだったんだ。僕にとって最もふさわしいやり方だった。驚異的なセットで素晴らしいシーンだったよ。天気も良かった。北アイルランドは雨が降って気が滅入ることも多いが、あの日は快晴だった。そしてついに終わりがやってきた。それまで多くのキャストが最終日を迎えるのを見てきた。多くの人々が涙を流し、お別れの挨拶をしているのを見てきたんだ。僕は"感情的にはなりたくない!"と思っていたが、なぜそんな風に思ったんだろうね。素晴らしいものが終わりを迎えた。最高だったが...うーん、どうだろう。あの日僕はアレルギーに悩まされてて、目がうるうるしてしまったんだ。

グウェンドリン:あなたが泣いてたのは知ってるわ。

ニコライ:泣いてなんかいないさ。

グウェンドリン:知ってるのよ。

ニコライ:泣いてないって。

グウェンドリン:分かってるから。

ニコライ:泣いてない。泣いてなんていない。

グウェンドリン:分かってるって。

ニコライ:絶対にそれはない。

グウェンドリン:自分が泣いたことにイラッとしてるのね。

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ニコライ:君はどのくらい泣いたの?

グウェンドリン:2時間よ。2時間ずっと泣いていたわ。止まらなかったの。ヘアメイク用の部屋を占領してね。

ニコライ:情けないな。

グウェンドリン:衣装部にも「彼女はまだ泣いてる」って言われたの(笑) 車の中でも一緒に乗っていた人に「グウェン、もう泣き止んだ?」と聞かれたわ。とにかく酷い有様だった。自分には「大丈夫だから」と言い聞かせたの。

ニコライ:あの後、君に話しかけたけど、その時もまだ泣いてたね。

グウェンドリン:そう、また泣いたの。泣いた後、少ししてまた泣いちゃって。その後、さらにまた泣いたわ(笑) でもそうやってスッキリできたと思う。

ニコライ:そうなの? 出しきった?

グウェンドリン:あれ以上泣けなかったもの。涙をすべて出しきったと思う。こういう感情は抑えてはいけないの。重要なことよ。

ニコライ:そうだね。

グウェンドリン:何時間もずっと泣き続けて、すべてを出しきるのが重要なの。

ニコライ:きっと僕も突然それに襲われるんだろうね。突然、泣き崩れるんだ。

グウェンドリン:多分、今日ね(笑)

ニコライ:今日というのは十分あり得るね。

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――本作では秘密を守らなければならないことも多かったはずですが、それはどのくらい大変でしたか?

ニコライ:「これは言えるけど、それは言えない。これだけは言ってもいい」という状況なら多分ややこしくて大変だったろうけど、一切口外してはいけなかったから、それほど大変でもなかったよ。

グウェンドリン:実はあの秘密保持によって他者との関係が大きく変わったの。私が仕事場でのことを話せないとなると、自然と相手の発言を聞くことが増えて、より相手に耳を傾けるようになった。そして自分より他人の方が面白いことに気づいたの(笑) だからそういう意味ではとても有効だった。

――グウェンドリンは『スター・ウォーズ』シリーズにも出演していますが、両作のどちらがより秘密主義ですか?

ニコライ:どっちか選んで。

グウェンドリン:最終的に、『ゲーム・オブ・スローンズ』はあの秘密主義レベルと同格になったわ。

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――10年後、20年後でも『ゲーム・オブ・スローンズ』は人々の記憶に残ると思いますか?

グウェンドリン:興味深い質問ね。でも、分からないわ。時が経つと私たちの感じ方は変わっていくものだから。

ニコライ:きっとクイズ番組で出てくるだろう。「オスカーを何度も受賞しているグウェンドリン・クリスティーの最初の大役は?」といった風にね。

グウェンドリン:(爆笑) そうだったらいいけど。このように人気に火がつき、誰もがそのとりこになるのを目の当たりにするのは興味深いものね。それが続いていくかを見守っていくのも面白いわ。この作品はとにかく脚本が素晴らしかった。原作も素晴らしかったけど、デヴィッドとダンの脚色も見事だった。だから社会現象ということだけでなく、私たちの人生にいかに影響を与え続けるかを今後も見守っていきたいの。

――ジェイミーはこの作品で最も変貌を遂げたキャラクターではないかと思いますが、このキャラクターのどのような側面が演じ甲斐がありましたか?

ニコライ:彼が右手を失ってからが興味深かった。生まれ変わろうとしているのが良かったね。最終章では、ジェイミーと弟ティリオンの関係も描かれるし、ブライエニーやサーセイともいろいろあったからその中で最も興味深いことを選ぶのは難しいけどね。

――ちなみにグウェンドリン、日本のファンの人気投票で、ブライエニーはデナーリス、ジョン・スノウに次ぐ第3位になったんですよ。おめでとうございます。

グウェンドリン:本当? うわーっ! ヤッター! ありがとう。本当にありがとう!

<『ゲーム・オブ・スローンズ』リレーインタビュー>
「どう終わってほしかったかという考えに捉われてはならない」【1】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)
「サンサやアリアも自分を見つけていったのは素晴らしいこと」【2】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)&ソフィー・ターナー(サンサ・スターク役)
「ジェイミー・ラニスターを演じてみたかった」【3】アイザック・ヘンプステッド・ライト(ブラン・スターク役)
「ティリオン、ジェイミーとのブロマンスは最高だった」【4】ジェローム・フリン(ブロン役)
「原作の精神に最後まで忠実だった」【5】ジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)&ハンナ・マリー(ジリ役)
「ラムジーの死をネタばれされたの」【6】ジョン・ブラッドリー(サムウェル・ターリー役)&ハンナ・マリー(ジリ役)
「最初の読み合わせで二人クビになった!」【7】ニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)&グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)
「30年後も僕たちはウェスタロスの話をしているだろう」【9】ジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)&ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)
「素晴らしい悪役が死ぬ度、少しの間、喪失感を味わう」【10】ジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)&ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)
「メリサンドルを定期的に罵ってるよ」【11】リアム・カニンガム(ダヴォス・シーワース役)
玉座に座るべきはブライエニーとトアマンドの子?【12】クリストファー・ヒヴュ(トアマンド役)
「死んだあのキャラが再登場したのは、その俳優に会いたかったから」【13】デヴィッド・ベニオフ&D・B・ワイス(クリエイター)
「シリーズ完結は新たな始まり...」作品担当者が語る、本作の日本上陸と鉄の玉座が生まれた経緯

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■商品情報
・『ゲーム・オブ・スローンズ<第一章~最終章>』
12月4日(水)ブルーレイ&DVD発売
【初回限定生産】ブルーレイ コンプリート・シリーズ...42,727円+税
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※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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