オードリー・ヘプバーン、ジョン・レジェンドも...至難の偉業EGOTを達成した19人

アメリカのエンターテイメント・ビジネス界には、EGOT(イーゴット)と呼ばれる、燦然と輝く最高の業績の証が存在する。EGOT、つまりTV界のEmmy(エミー賞)、音楽界のGrammy(グラミー賞)、映画界のOscar(アカデミー賞)、そして舞台のTony(トニー賞)というエンターテイメントの最高峰に位置する栄冠を4つとも受賞した者だけに与えられる最高の栄誉だ。長いアメリカのエンターテイメント界の歴史の中でも、この偉業を達成した者は19人しかいない。まずは達成した順に、その顔ぶれを列記していこう。(※同じ賞を何度も受賞している場合は、代表作を中心に記載している)

目次

EGOTを達成した19人

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リチャード・ロジャース(1902~1979)作曲家

『サウンド・オブ・ミュージック』『王様と私』『南太平洋』などで知られる、言わずと知れた有名作曲家。1962年に『Winston Churchill: The Valiant Years(原題)』でエミー賞を獲得したことで、史上初のEGOT受賞者となった。ロジャースはさらにピューリッツァー賞受賞者でもあり、それを含めてPEGOT(ピーゴット)と称する媒体もある。

E:『Winston Churchill: The Valiant Years(原題)』(1962)
G:『サウンド・オブ・ミュージック』(1961)
O:『ステート・フェア』(1945)
T:『南太平洋』(1950)、『王様と私』(1952)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1960)

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ヘレン・ヘイズ(1900~1993)俳優

女性で最初のEGOT受賞者。音楽が関係しない、エミー賞、オスカー、トニー賞の、演技だけで獲得する"トリプル・クラウン・オブ・アクティング"の最初の受賞者でもある。また、1932年に最初のオスカーを獲得した『マデロンの悲劇』から1977年にグラミー賞を獲得した『Great American Documents(原題)』まで、EGOT獲得に要した期間が45年(!)という最長記録保持者でもある。

E:『Schlitz Playhouse of Stars(原題)』(1953)
G:『Great American Documents(原題)』(1977)
O:『マデロンの悲劇』(1932)
T:『Happy Birthday(原題)』(1947)

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リタ・モレノ(1931~)俳優/シンガー

1931年生まれながらいまだ現役のリタ。ヒスパニック系として初のEGOT受賞者であり、2019年にはメディア業界全体の賞であるピーボディ賞を獲得し、ピューリッツァー賞受賞者でもある前述のリチャード・ロジャースとは異なる、もう一つのPEGOT受賞者となった。

E:『The Muppet Show(原題)』(1977)
G:『The Electric Company(原題)』(1972)
O:『ウエスト・サイド物語』(1962)
T:『The Ritz(原題)』(1975)

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ジョン・ギールグッド(1904~2000)俳優/演出家

ロンドン生まれの名優ジョンは王立演劇学校で学び、そのキャリアは80年以上に及ぶ。最終的にEGOTを達成したのは1991年、ミニリーズ『Summer"s Lease(原題)』でのエミー賞獲得によるもので、当時87歳。これがEGOTの最高齢記録となっているほか、ジョンはLGBTとして初のEGOT受賞者でもある。

E:『Summer"s Lease(原題)』(1991)
G:『Ages of Man(原題)』(1979)
O:『ミスター・アーサー』(1982)
T:『The Importance of Being Earnest(原題)』(1948)、『Big Fish, Little Fish(原題)』(1961)

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オードリー・ヘプバーン(1929~1993)俳優

『ローマの休日』で世界中を虜にしたオードリーのEGOTの獲得が劇的なのは、最後の2冠、エミー賞を受賞した1993年の『Gardens of the World with Audrey Hepburn(原題)』とグラミー賞を受賞した1994年の『Audrey Hepburn"s Enchanted Tales(原題)』が、ともに死後の受賞だったことにある。また、EGOT受賞者の大半は得意分野を持っておりいずれかの部門は複数回受賞しているパターンが多く、各賞を一度ずつだけ受賞しているのは、オードリーと後述のジョナサン・チューニックだけだ。

E:『Gardens of the World with Audrey Hepburn(原題)』(1993)
G:『Audrey Hepburn"s Enchanted Tales(原題)』(1994)
O:『ローマの休日』(1954)
T:『オンディーヌ』(1954)

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マーヴィン・ハムリッシュ(1944~2012)作曲家

前述のリチャード・ロジャースと同じく、EGOT+ピューリッツァー賞も獲得しているPEGOT受賞者。代表作である『追憶』は、1974年のオスカーで作曲賞と歌曲賞、1974年のグラミー賞でも最優秀楽曲賞ほか2冠に輝いた。さらに『スティング』で使用された「エンタテイナー」が、同じく1974年のオスカーで音楽賞に輝き、1974年のグラミー賞も受賞。これらの活躍によってハムリッシュは同年のグラミー賞最優秀新人賞も手にして合計7冠と、短期間で獲得した賞の数では前例のない記録を打ち立てている。

E:『Barbra: The Concert(原題)』(1995)
G:『追憶』(1974)、「エンタテイナー(『スティング』)」(1974)
O:『追憶』(1974)、『スティング』(1974)
T:『コーラスライン』(1976)

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ジョナサン・チューニック(1938~)作曲家

オードリー・ヘプバーンの項で述べた通り、彼女と同じく各賞を一度ずつ受賞しているEGOT受賞者。ただし、現在も世界的な知名度を誇るオードリーに比べると、チューニックは作曲家や指揮者として裏方にいることが多いため、残念ながら偉業の割にはあまり知られていない。

E:『Night of 100 Stars(原題)』(1982)
G:「みんなひとりじゃない(『イントゥ・ザ・ウッズ』)」(1988)
O:『A Little Night Music(原題)』(1978)
T:『タイタニック』(1997)

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メル・ブルックス(1926~)俳優/演出家

コメディ俳優・監督として名高いメルは、これまでEGOT各賞を11も受賞。また、オスカーを脚本賞で手にした唯一の例だ。オスカーの受賞部門は俳優部門でなければほぼ音楽関連であり、それに当たらないのは、メルの脚本賞、マイク・ニコルズの監督賞、スコット・ルーディンの作品賞(プロデューサー)の3例のみ。また、前述のハムリッシュのように同一作品で複数の賞を受賞することは珍しくないが、メルの場合、1969年にオスカーに輝いたコメディ映画『プロデューサーズ』のミュージカル舞台化で2001年のトニー賞と2002年のグラミー賞も受賞しており、同一作品で30年以上を経て3冠を達成し、EGOT受賞者となっている。

E:『あなたにムチュー』(1997~1999)
G:『プロデューサーズ』(2002)
O:『プロデューサーズ』(1969)
T:『プロデューサーズ』(2001)

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マイク・ニコルズ(1931~2014)演出家

日本ではダスティン・ホフマンが主演した1967年の映画『卒業』の監督として名高いニコルズだが、アメリカでは舞台演出家としてよく知られている。トニー賞を最初に獲得した1964年の『裸足で散歩』から最後に受賞した2012年の『あるセールスマンの死』まで、ほぼ半世紀、舞台演出の第一線に立ち続けた。EGOT達成にかかった期間はすでに述べた通りヘレン・ヘイズの45年間が最長だが、EGOT対象賞を初めて手にした時から最後に得た時までの長さに関してはニコルズの51年が最長と、長きにわたって活躍し続けたことが分かる。

E:『エマ・トンプソンのウィット/命の詩』(2001)、『エンジェルス・イン・アメリカ』(2004)
G:『An Evening with Mike Nichols and Elaine May(原題)』(1961)
O:『卒業』(1968)
T:『裸足で散歩』(1964)、『アニー』(1977)、『あるセールスマンの死』(2012)

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ウーピー・ゴールドバーグ(1955~)俳優/ホスト

コメディエンヌのウーピーは、アカデミー賞助演女優賞を受賞した『ゴースト/ニューヨークの幻』の霊媒師役で一躍お茶の間に名を知られるようになった。ただし、2度のエミー賞受賞はいずれも、俳優ではなくホストとして手にしたものだ。黒人として最初のEGOT受賞者でもある。

E:『The View(原題)』(2009)
G:『Whoopi Goldberg: Direct from Broadway(原題)』(1986)
O:『ゴースト/ニューヨークの幻」(1991)
T:『モダン・ミリー』(2002)

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スコット・ルーディン(1958~)プロデューサー

ルーディンはブロードウェイのプロデューサーとして数多くの作品をプロデュースしてきた。そのことが、エミー賞、オスカー、グラミー賞の受賞は一回ずつであるのに対し、トニー賞の受賞は17回という数字に現れている。EGOTでオスカーを作品賞(プロデュース)で獲得しているのは彼だけだ。

E:『He Makes Me Feel Like Dancin"(原題)』(1984)
G:『ブック・オブ・モルモン』(2012)
O:『ノーカントリー』(2008)
T:『パッション』(1994)、『ダウト 疑いをめぐる寓話』(2005)、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(2015)、『ハロー・ドーリー!』(2017)

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ロバート・ロペス(1975~)作曲家

『アナと雪の女王』の主題歌「レット・イット・ゴー」をはじめ、ディズニー作品に楽曲を提供しているフィリピン系のロペス。唯一のアジア系EGOT受賞者であるとともに、各賞をすべて複数回受賞というのも彼一人だ。さらに史上最年少のEGOT受賞者(達成時39歳)であり、それに要した期間が10年間という最短記録保持者でもある。

E:『Wonder Pets!(原題)』(2008、2010)
G:『ブック・オブ・モルモン』(2012)、『アナと雪の女王』(2015)
O:『アナと雪の女王』(2014)、『リメンバー・ミー』(2018)
T:『アベニューQ』(2004)、『ブック・オブ・モルモン』(2011)

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ジョン・レジェンド(1978~)ミュージシャン/プロデューサー

シンガーソングライターとして数多くのヒット曲を持つジョンは、現役EGOT受賞者として最も高い知名度を誇る。ミュージシャンとして2006年以降いくつものグラミー賞を受賞していたが、映画や舞台に活躍の場を広げることで、2015年からの3年間で残りの3冠を制し、EGOTを獲得した。

E:『Jesus Christ Superstar Live in Concert(原題)』(2018)
G:「Get Lifted」(2006)、『Wake Up!」(2011)、「Higher」(2020)
O:『グローリー/明日への行進』(2015)
T:『Jitney(原題)』(2017)

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アンドリュー・ロイド・ウェバー(1948~)作曲家/プロデューサー

著名な作曲家であるロイド・ウェバーは、『オペラ座の怪人』『エビータ』『キャッツ』といった世界中でヒットしたミュージカル舞台やその映画化の音楽を数多く手掛けている。一方でTVではほとんど仕事をしていなかったが、自身の『ジーザス・クライスト=スーパースター』を生放送で再現した『Jesus Christ Superstar Live in Concert』をジョン・レジェンドやティム・ライスと共同で2018年に製作してエミー賞を受賞、3人一緒にEGOTを獲得している。

E:『Jesus Christ Superstar Live in Concert』(2018)
G:『エビータ』(1980)、『キャッツ』(1983)
O:『エビータ』(1997)
T:『エビータ』(1980)、『キャッツ』(1983)、『オペラ座の怪人』(1988)

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ティム・ライス(1944~)作詞家/プロデューサー

前述のアンドリュー・ロイド・ウェバーとのコラボレーションで知られる作詞家のライスは、EGOT各賞のいくつかを彼と共同で受賞している。『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」、『ライオン・キング』の「愛を感じて」のようなディズニー作品でおなじみの主題歌も手掛けており、英国で最も知られた作詞家の一人。1994年にエリザベス女王からナイトの称号を与えられた。

E:『Jesus Christ Superstar Live in Concert』(2018)
G:『エビータ』(1980)、『アラジン』(1993)、『アイーダ』(2000)
O:『アラジン』(1993)、『ライオン・キング』(1995)、『エビータ』(1997)
T:『エビータ』(1980)、『アイーダ』(2000)

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アラン・メンケン(1949~)作曲家

ディズニー作品の作曲家として知られるメンケンは、正式にEGOTの仲間入りを果たすまでにかなりの時間を要した。2012年までにグラミー賞・アカデミー賞・トニー賞を合わせて21個獲得していたが、エミー賞は皆無。ただし、コンペティションを経ていない名誉エミー賞なら受賞済みという、「名誉」EGOT受賞者だったのだ。しかし、ディズニーのTVシリーズ『ラプンツェル ザ・シリーズ』を手掛けたことで、ついに2020年7月に名実ともに仲間入りしている。

E:『ラプンツェル ザ・シリーズ』(2020)
G:『美女と野獣』(1993)、『アラジン』(1994)
O:『リトル・マーメイド』(1990)、『美女と野獣』(1992)、『アラジン』(1993)、『ポカホンタス』(1996)
T:『ニュージーズ』(2012)

ジェニファー・ハドソン(1981~)俳優/シンガー/プロデューサー

E:『Baba Yaga』(2021)
G:『カラーパープル』(2017)
O:『ドリームガールズ』(2007)
T:『A Strange Loop』(2022)

2004年に人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』で注目されるようになると、その3年後にアカデミー賞受賞、2022年にEGOT達成と、20年足らずで大きな成功を収めたジェニファー。歌唱力と演技力が高く評価されてきたが、最後に獲得したトニー賞は出演者ではなくプロデューサーとして手にしている。作曲家のロペスに史上最年少、獲得に要した期間でそろって上回られたものの、女性としてはどちらもナンバー1の記録を誇る。

ヴィオラ・デイヴィス(1965~)俳優/プロデューサー

E:『殺人を無罪にする方法』(2015)
G:『Finding Me』(2023)
O:『フェンス』(2017)
T:『King Hedley II』(2001)、『フェンス』(2010)

ヴィオラは『フェンス』の映画、舞台バージョンでアカデミー賞とトニー賞に輝き、さらに6シーズン続いた主演ドラマ『殺人を無罪にする方法』でエミー賞を手にした。最後に残されたグラミー賞は2023年にオーディオブック部門で初めてノミネートされ、そのまま獲得。

エルトン・ジョン

エルトン・ジョン(1947~)シンガー/作曲家

E:『エルトン・ジョン・ライブ:ドジャー・スタジアムからの別れ』(2024)
G:『That's What Friends Are For』(1987)
O:『ライオン・キング』(1995)、『ロケットマン』(2020)
T:『アイーダ』(2000)

2024年1月に最も新しいEGOT達成者となったのがエルトン。グラミー賞では1987年の初受賞から5度(+名誉賞)栄冠を手にしており、続いてアカデミー賞を『ライオン・キング』の歌曲賞で1995年に獲得、そして『アイーダ』の舞台版でトニー賞を得たのは2000年と、20年以上にわたりEGOTまでリーチ状態だった。最後に残されたグラミー賞は、2022年に行ったライブ映像によって初めてノミネートされ、そのまま獲得した。87歳4ヵ月で達成したジョン・ギールグッドに次いで、史上2番目の最高齢(76歳9ヵ月)での記録達成者に。

実はマイナー(?)な受賞者たち

意外に思われるのが、EGOT達成者はさぞかし有名だろうと思いきや、実際にはその多くは特に名が知られているわけではないという事実だ。オードリー・ヘプバーンやジョン・レジェンドも含まれているが、多くの人にとっては知らない名前の方が多いに違いない。

その一因は受賞カテゴリーにある。もともとEGOTは業界内の賞であり、そのカテゴリーには、こういうものもあったのかというようなマイナーなものも含まれる。その種のカテゴリーは受賞セレモニーのTV中継では中継されずに終わることも珍しくないため、結果として一般には知られていないEGOT受賞者が多く存在する。

また、EGOTには獲得に有利な専門ジャンル、傾向というものが存在する。つまり、EGOTは全エンターテイメントに関係するが、例えば、人によっては神的演技を披露できても歌は苦手だったり、歌って踊れても演技は下手だったりする。役者に専念している者はグラミー賞に選ばれにくい一方、歌専門のシンガーはオスカーやエミー賞には関係が薄い。こういう人たちは、専門分野でどれだけ圧倒的な実力やカリスマを持っていても、EGOT対象者にはなりにくいのだ。

一方、音楽を用いない映画やTVはほとんど存在しないが、音楽ステージやアルバム製作に役者は基本必要ない。そのためEGOT獲得は、音楽関係者に有利に働く。パフォーマーでなく、作詞作曲者、プロデューサー、エンジニアといった裏方で作品を支える音楽関係者は、TV、映画、演劇、音楽のすべてのジャンルに関係することができ、ノミネートされる確率が高くなる。基本的にパフォーマーに比べて一本の作品に関わる期間が短く済むため、より多くの作品に関わりやすいという点も有利に働くのは言うまでもない。それに対し、俳優がグラミー賞を獲得している場合は、声優としてレコーディングに関係しているケースが多い。

もう一つのEGOT、「名誉」EGOT受賞者とは?

アラン・メンケンの項で触れたが、EGOTには特殊な「名誉」EGOT受賞者というものも存在する。「名誉」EGOTというのは、各賞の一つ以上がノミネートされて投票で獲得したものではなく、競争なしで与えられる名誉賞で、そのため正式なEGOTとは見なされない。これを含めることでEGOTを獲得しているのは現状6人いる。

●バーブラ・ストライサンド(1942~)シンガー/俳優(名誉受賞:トニー賞)
●ライザ・ミネリ(1946~)シンガー/俳優(名誉受賞:グラミー賞)
●ジェームズ・アール・ジョーンズ(1931~)俳優(名誉受賞:アカデミー賞)
●ハリー・ベラフォンテ(1927~)シンガー(名誉受賞:アカデミー賞)
●クインシー・ジョーンズ(1933~)ミュージシャン/プロデューサー(名誉受賞:アカデミー賞)
●フランク・マーシャル(1946~)プロデューサー(名誉受賞:アカデミー賞)

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EGOTに王手をかけた者たち

現在3冠でEGOTまであと一つと迫っているのは、前述の名誉EGOT受賞者も合わせて現在94人(故人含む)。彼らの中から、次にEGOTを獲得しそうなEGOT予備軍を挙げてみよう。

<エミー賞を受賞すればEGOT>

●スティーヴン・ソンドハイム

<グラミー賞を受賞すればEGOT>

●エレン・バースティン
●ジェレミー・アイアンズ
●ジェシカ・ラング
●フランシス・マクドーマンド
●ライザ・ミネリ
●ヘレン・ミレン
●アル・パチーノ
●ヴァネッサ・レッドグレーヴ
●ジェフリー・ラッシュ
●マギー・スミス

<アカデミー賞を受賞すればEGOT>

●ハリー・ベラフォンテ
●シンシア・エリヴォ
●ヒュー・ジャックマン
●ジェームズ・アール・ジョーンズ
●クインシー・ジョーンズ
●シンディ・ローパー
●オードラ・マクドナルド
●ベット・ミドラー
●リン=マヌエル・ミランダ
●シンシア・ニクソン
●トレイ・パーカー
●ベン・プラット
●ビリー・ポーター
●マット・ストーン
●リリー・トムリン
●ディック・ヴァン・ダイク

<トニー賞を受賞すればEGOT>

●ジュリー・アンドリュース
●バート・バカラック
●シェール
●コモン
●ブライアン・グレイザー
●ヒルドゥル・グーナドッティル
●ロン・ハワード
●ランディ・ニューマン
●マーティン・スコセッシ
●バーブラ・ストライサンド
●ジョン・ウィリアムズ
●ケイト・ウィンスレット
●ポール・マッカートニー
●リンゴ・スター
●エミネム
●アデル

上記で意外なのは、最も得意なはずの分野で受賞を逃している者たちで、グラミー賞を逃しているライザ・ミネリ、トニー賞を逃しているジュリー・アンドリュースはその最たるもの。しかし彼女らは半分現役を引退しているような形なので、今後まだチャンスはあるかは微妙なところだ。

その点、仕事が回ってきさえすれば可能性は高いのが、ケイト・ウィンスレット、ロン・ハワード、マーティン・スコセッシなどで、今後EGOT受賞者になる確率は非常に高い。

ヒュー・ジャックマンは2013年に『レ・ミゼラブル』でアカデミー賞主演男優賞に、シンシア・エリヴォは2020年『ハリエット』でアカデミー賞主演女優賞などにノミネートと、二人ともほぼEGOTに手をかけた状態だったが、わずかに届かなかった。グラミー賞のみを残す名優も多いが、彼らの場合はオーディオブックなどのレコーディングに関係するのがEGOTへの近道だろう。

こんな人もリーチなのか、というのは、大人向けアニメシリーズ『サウス・パーク』のクリエイターであるトレイ・パーカーとマット・ストーン。とはいえ、彼らが残る1冠、アカデミー賞を獲れるかはかなり苦しいかもしれない。

しかしこれらのマルチタレントにも増して俄然頭角を現しているのが、ヒルドゥル・グーナドッティルだ。アイスランド出身のチェリストである彼女は、2019年から2020年にかけて映画『ジョーカー』とHBOのミニシリーズ『チェルノブイリ』でいきなりトニー賞を除く3冠を達成。現在最も熱い視線を注がれる作曲家と言える。

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また、3冠まで達しながら、惜しくもこの世を去った者たちもいる。この中には、ヘンリー・フォンダ、イングリッド・バーグマン、ボブ・フォッシー、オスカー・ハマースタイン2世、レナード・バーンスタイン、クリストファー・プラマーといった斯界の名優、著名人が名を連ねる。生きていればチャンスはあったろうにと思えるロビン・ウィリアムズも、トニー賞を残すのみだった。実力と運を兼ね備えていないと、EGOT受賞者にはなれないのである。

(文/生盛健)

Photo:

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