『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』日本語吹き替え版でピーター・パーカー/スパイダーマンを演じる榎木淳弥にインタビュー! 孤独を抱えながらも成長したピーターの魅力や、ハルク、パニッシャーたちとの掛け合い、そして本作に込められた意味について、たっぷり語ってもらった。
記憶をなくした世界で描かれる、ピーターの「人間ドラマ」
――前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではドクター・ストレンジの魔術により、MJやネッドを含む全世界の人々からピーター・パーカーに関する記憶が消されてしまいました。あらためて前作を振り返ってみていかがですか?
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、歴代のスパイダーマンが時空を超えて集結するというところで、演者としても視聴者としてもすごく感動しました。そこからのどんでん返しで、ピーターとしては全員に忘れられるという、守るためとはいえ不幸な選択肢をとった怒涛の展開でしたよね。
すごくショッキングな展開でしたが「ヒーローとはなんだろう?」というものを強く提示していたと思います。「自己犠牲」がテーマとしてあったと思うので、僕は悲しい気持ちより感動が大きかったです。「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉を体現していましたよね。ピーターにとっては不幸だったと思いますが、だからこそ感動しました。映画としてはすごく面白かったので、今回もどんなお話になるのか楽しみにしていました。
――『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』のストーリーを知った際の率直な感想をお聞かせください。
人間ドラマとしてかなり濃厚だなと思っています。アクションシーンも派手ですごくかっこいいですし、ストーリー自体も励まされたり、ピーターの気持ちにグッときたりするシーンがたくさんあって、本当に素晴らしかったですね。
――これまでの三部作ではピーターは高校生でしたが、本作から20代です。前作の出来事が影響して孤独な状況です。身体的にも変化がありましたが、演じ分けなどで意識されたことはありますか?
そうですね。新たな力が目覚めるところは、トム・ホランドさんのお芝居がだいぶ変わっていたので、僕も吹き替えとしてガラッと雰囲気を変えたり、孤独感を意識して演じました。
――本作でのトム・ホランドの表情や演技を見ていて、彼自身の変化を感じる部分はありましたか?
大人びたシーンが多くなったなと思いました。ハードな展開もありますが、物理的にボコボコにされるというより、心理的にハードなシーンが多くて。だんだん大人になっていっているんだなと。内面的にすごく大人になりつつ、子どもみたいな無邪気なところもある。今回はその両方が混ざっていた印象ですね。
あと、ムキムキになっていました(笑)。昔から筋肉がすごかったですけど、細マッチョみたいだったのが、今回は分厚くなっていて「いつの間に鍛えたんだ!」とびっくりしました。

――体格の変化に合わせて、声の出し方を工夫されたりもしたのでしょうか?
彼自身の声は変わっていなかったので、僕は鍛えずに臨みました(笑)。年齢感もそこまで変わっている印象はなかったんですが、落ち着いているシーンが多いので、そのシーンに合わせて演じればちょうど良くなるかなと思い、年齢を過剰に意識することはなかったですね。
――『クラウデッド・ルーム』など、『スパイダーマン』シリーズ以外の作品でもトム・ホランドの吹き替えを担当されていますが、長年吹き替えてきた榎木さんだからこそわかる彼の演技の魅力はどこにあると思いますか?
なんでも演じられるところですね。MCUのようなエンターテインメントとしての演技もありつつ、老若男女が楽しめるエンタメ性高い王道のお芝居から、シリアスで感情を抑えたお芝居までできる。身体能力もすごく高いですし、本当に幅広い役者さんだなと思います。

自己犠牲のその先へ。ピーター・パーカーの新たな魅力
――本作でピーターの魅力が増したと感じる部分や、好きなところはありますか?
前作の「自己犠牲」から、さらに更新してきた感じがあります。自問自答しつつ「その先に何があるのか」という境地にたどり着こうとしている。それはすごく前向きな答えだったりもするので、見ていて気持ちのいいところでした。
――「やっぱりピーターってこうだよな」と思える具体的なシーンがあれば教えてください。
僕としては面白いシーンにピーターらしさを感じるんですが、本作でいうとお風呂に入るシーンですね。昔からのピーター・パーカーっぽい、ちょっとひょうきんなところがあって。マスクを被ると少し性格が変わるのかな、というところは感じました。
――本作ではフランク・キャッスル(パニッシャー)やブルース・バナー(ハルク)との関わりがありましたね。
バナー博士はピーターの記憶をなくしているので、ピーターが一方的に知っている状態なんですが、二人とも理系なので、賢いコンビとして通じ合っているなと感じました。
フランクは悪友というか、友人というわけでもないのですが、お互いに憎まれ口を叩き合っていても仲が良さそうで新鮮でした。今までの気を遣ってくれる年長者とは違って、割と近い目線で接してくる近所の悪いお兄ちゃんみたいな感じでしたね。

――本作のメインヴィランについてはいかがですか?
ヴィランに関しては、ピーターとさほど違わないというか、共通点もあるのかなと思っています。ただ悪いことを考えて行動する、典型的な悪役ではないんです。そこが今回のドラマチックな部分に絡んできて面白かったですね。
10年目の気づきと、「ブランド・ニュー・デイ」
――アクションシーンはいかがでしたか?
強くなっているなと感じました。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の少し拙い感じから始まり、今回も打ちのめされるシーンは多いんですけど、よりパワフルな動きになっていて頼りになるというか。
アクションシーンは細かい息遣いを全部入れるので、秒数などを合わせるのがめちゃくちゃ大変なんです。でも、この10年で気づいたことがあって。今まで台本に全部タイミングを書き込んでいたんですけど、書かない方が瞬発力で合うということを最近発見したんです。
そうしたらあまり苦労しなくなって、スムーズに収録を終えられました。台本に目を落としている間に画面が先に進んでしまうことが多いので、聞こえた音に合わせて画面を見ていた方が合うんだなと気づきました(笑)。

――本作ならではの音声収録のディレクションはありましたか?
こちらにも選択肢を与えてくれて、一緒に考えてくれる現場でした。「ここのセリフはどう思います?」「別バージョンの方がいいですかね?」と話し合ったり、スタッフさんたちと全員で一回録ったシーンを聞き直して「もうちょっとこうしようか」と調整したり、皆で一緒に作り上げているという実感がありました。
特に冒頭の、世界から忘れられたピーターがどういうテンションで話し始めるのかというシーンは、トム・ホランドさんのテンションに合わせつつ、日本語の聞こえ方としてどうするか、何度かテイクを重ねました。
――演じられていて、特に感情が揺さぶられた印象的なシーンを教えてください。
後半のヴィランとのシーンはグッときましたね。今までのピーターだったらマイナスの方に進む可能性もあったけれど、今回はすごく成長しているからいい方向に進んでいくし、それが周りにも波及していく感じがあって良かったです。

――記憶を失ったMJやネッドとのシーンはいかがでしたか?
再会のシーンは、展開としてはあるだろうなと予想していました。後半の友人たちとの関係性をどう構築していくか、という過程が僕は好きですね。変化していく姿が美しいなと感じました。
――本作のタイトル『ブランド・ニュー・デイ』についての印象と、榎木さんご自身の経験で「新たな一日(第一歩)」を踏み出したと感じた瞬間があれば教えてください。
スパイダーマンとして、そしてピーター・パーカーとして、もう一度何かを作り上げていくという要素が作品にも強く込められているので、ぴったりのタイトルだと思いました。自分の経験としては、いきなり「ドン!」と変わったわけではなく徐々にという感じでしたが、仕事が増えてきた時期……それこそ『スパイダーマン』に関わるようになった頃が、業界や世間に自分を知ってもらうタイミングだったと思います。当時は目まぐるしくてとにかくやらなきゃと必死でしたが、今思えばそこが新たな第一歩だったのかもしれませんね。
――最後に、日本語吹き替え版ならではのおすすめポイントと、映画を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
吹き替えの良いところは、字幕を追わなくていいので役者さんの表情に集中できるところです。僕たち声優も、演じている役者さんのお芝居を大事にして、その魅力を損なわないように忠実に演じています。ぜひたくさんの方に劇場で見ていただきたいです。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』公開情報
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