「30年後も僕たちはウェスタロスの話をしているだろう」『ゲーム・オブ・スローンズ』インタビュー【9】

米HBOで2011年より始まり、この春放送された最終章をもってついに完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』。それを記念して、最終章放送前に行われたキャスト&スタッフのインタビューをお届けしていこう。今回登場するのはジェイコブ・アンダーソン(グレイ・ワーム役)ジョー・デンプシー(ジェンドリー役)。〈穢れなき軍団〉の隊長、ロバート・バラシオンの落とし子としてそれぞれ重要な役回りを担っていた二人が、本作との出会いや別れに対する思い、ヒルとの遭遇について語ってくれた。

――『ゲーム・オブ・スローンズ』がついに終わりますが、今の心境は?

ジョー:ここ数日間、楽しんでいるんだ。インタビューはこれまであまり受けていなかったからね。昨年、僕はあまり表に出なかったので、僕たちのほとんどが控え室に一日中一緒にいるものだとばかり思っていたが、実際にはまるで夜の海ですれ違う船のように、互いにほとんど顔を合わせることがない。それでも懐かしい顔ぶれにまた会えるのは嬉しいものだよ。

「撮影が終わるというのはいかがですか?」とよく聞かれるんだが、僕たちの誰にとってもエモーショナルな体験だった。今はまだこの作品のために取材を受けていて、その後で最終章が始まり、シリーズ最終話が放映されるまではまだ続いていくと頭の片隅で感じているが、その後、"喪に服す"過程のまた別の段階に至るんだろうね。

ジェイコブ:それぞれが互いの世界にずっと居続けるように感じるから、不思議だよ。

――ということは、本作で育まれてきた友情、人間関係というのはこれからもずっと続いていくと?

ジェイコブ:僕はそう信じているよ。僕たちは単なる共演者というわけでなく、互いのことを知り尽くしており、素晴らしい共通の体験がある。キャリアを通してこのような体験ができる俳優は限られているから、僕たちはとても幸運だと思う。素晴らしい作品で一緒に仕事をしたという共通の絆でずっと結ばれているんだ。

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――撮影初日のことを覚えていますか?

ジェイコブ:僕の初日は、グレイ・ワームが初登場するシーンだった。ヘルメットを脱いで自己紹介をするというもので、エミリア(・クラーク/デナーリス役)、ナタリー(・ドーマー/マージェリー・タイレル役)、イアン(・グレン/ジョラー・モーモント役)、イアン(・マッケルヒニー/バリスタン・セルミー役)と一緒だったよ。

――参加できることに興奮しましたか?

ジェイコブ:いや、恐怖だった。クビになるに違いないと思って怖かったんだ(笑) ジョーとは10年来の友人だし、ハンナ(・マリー/ジリ役)とも何年も前から友人だったりと他にも知り合いがいたにもかかわらず、なぜだか本当に怖かった。あまりにも大規模な作品だからHBOの人が突如セットにやってきて「彼は無能だからつまみ出して別の役者を入れよう」と言われるんじゃないかってね(笑) "きっとクビになる"と初日はずっと心配してたよ。

最近モロッコを自転車で横断していて、偶然に最初のシーンを撮影した場所を通った。撮影以来そこには行っていなかったんだけど、通りがかった時に"この場所、知ってるぞ"と思い出した。あのスケール感、セット、ロケーション、そして現場にいた素晴らしい役者たちに圧倒されたのを覚えてる。再び戻った時、すべてがよみがえってきたんだ。当初はほとんど誰も知らなくて、そのような大作に自分が参加するのは力不足だと思っていたのに、最終章まで生き残ったのは考えてみたら凄いことだね。

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ジョー:本作特有のものか分からないが、この作品に出演する役者の間ではよくあることみたいだね。第三章でジェイコブが登場する頃には本作はすでに人気だったが、第一章から出演している僕も第三章になってもまだ怖かった。だから第一章でも間違いなく恐れおののいてたよ(笑) HBOは素晴らしいTV局として定評がある。彼らはドラマ界の先駆者だ。僕は複数の役のオーディションを受けたが、実際にキャスティングされたジェンドリーのイメージからはかけ離れていた。だから"僕のキャスティングは焦ってやったんだろう。第一章だけ僕に演じさせて、第二章が始まる頃にはキャラクターもより大きくなってちゃんとした別の人が雇われるんだろう"と思い込んでいた。このジャンルで演じたことがなかったのもある。僕はそれまで母国のイギリスで、こういう表現は好まないんだが、"キッチンシンク(労働者階級の人々の日常をあるがままに描写した作品)"と呼ばれるものを多くやってきた。対して『ゲーム・オブ・スローンズ』の初日はショーン・ビーン(ネッド・スターク役)が相手だったので凄いことだったよ。

ジェイコブ:(クリエイターの)デヴィッド(・ベニオフ)とダン(D・B・ワイス)、そしてキャスティング・ディレクターがうまくやったんだろうが、「このキャラクターは原作でこういう感じだから、それに合うタイプの人を探す」のではなく、彼らは役者をキュレートし、キャスティングするんだろうね。

ジョー:僕が言いたいのもそういうことなんだ。"僕のことはどうしようもないと思われているに違いない。何度も呼んでくれるけど、役を与えてはもらえないだろう"と思っていたが、実際は彼らは一緒に仕事をしたい人間をまず選んでから、その人に合ったキャラクターを当てはめるので、キャスティングはまるでジグソーパズルのピースのようだった。

――デヴィッドとダンは各キャストの撮影最終日に絵コンテをプレゼントしたそうですね。

ジョー:そう、僕のはメリサンドルとのヒルのシーンだった(笑) あれは最も型破りな撮影日だったね。

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――とても印象的なシーンでしたが、撮影はいかがでした?

ジョー:僕にとってはこの作品がどれだけとんでもない作品かを確信する瞬間だったので、実は懐かしい思い出なんだ(笑) あのエピソードの撮影が近づいた時、他のキャストは準備があったから脚本を事前にもらっていたけど僕には送られてこなくて、撮影の2週間ほど前に共演者から「第5話はもう読んだ?」と意味深に聞かれ、「まだだけど、なんで?」と返すと「そのうち分かるさ」と言われた。実際に脚本を読んで、"ああ、みんなが言っていたのはこれか"と思ったよ。ヒルはCGで処理するのかと思ってたら、撮影の2日ほど前に届いたメールの中に「ジョー、ヒルは大丈夫だよね?」とあった。"一体どういう意味なんだ? ヒルが大丈夫な人なんているのか?"と思ったよ(笑)

――つまり、ヒルは本物だったのですか?

ジョー:そう、本物だったんだ(苦笑)

ジェイコブ:この作品ではそういうことをやるんだよ。僕の場合も、ヒルはなかったけど、最終章で"これはどうやるんだろう?"と思っていたことが実際に行われたことがあった。

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――最終日はいかがでした?

ジョー:とても不思議な感じだった。最終日を分かち合った他のレギュラーキャスト数人と一緒だったのは嬉しかったね。妙に静かな雰囲気で...表現するのがなかなか難しいな。最も近いのは学校の卒業前の最終日だね。人生の中のある章が幕を閉じようとしていて、これからも連絡を取り合って会う人も大勢いるが、今後はあえてそういう努力をしなければならない。撮影で自然と顔を合わせることはなくなるけど、僕は努力して連絡を取り合っていきたいと思ってるよ。

ジェイコブ:僕は絵コンテはまだもらってないんだ。僕の最終日は不思議だったよ。どうやって心の準備をしたらいいのか分からず、思っていたような反応ではまったくなかった。自分では終わる準備ができているつもりだった。最終章は撮影期間が長くて10カ月にもわたり、その時点では先に進めると思っていた。役者はみんなクルーに感謝の言葉を述べていたが、僕はその言葉を前もって用意していなくて、「みんなのことがどれだけ大好きかということを、今まさに実感しています」と思いつくまま言った時、感極まってしまった。そのような人たちを失ってしまうと気がついた時、いかに彼らが大切だったのかを実感した。これは単なる仕事ではなかったんだ。

終わってから10分後、僕は打ちひしがれていたが、ついにグレイ・ワームの衣装を脱がなくてはならない時が来た。撮影初日からずっとそれを着てきたので臭かったが(笑)、衣装部の素晴らしい女性が手伝ってくれて、身に着ける、脱ぐという手順を繰り返してきた。撮影の合間の待ち時間が長い時は、30分脱がせてもらったりもして、とにかく彼女はいつもそこにいてくれた。僕の最後のシーンの後も彼女が衣装を脱がせてくれたんだが、僕は直感的にそれを掴んだ。手放したくなかったんだ。彼女に「これを手放したくない」と口に出して言ったほどで、それからまた涙が出てきた。自分がそんな風に反応するとは思ってもいなかったが、『ゲーム・オブ・スローンズ』に別れを告げるのはとてもエモーショナルなことだったよ。

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――本作の一員だったことをどのように感じていますか?

ジョー:個人的には素晴らしい友達ができた。プロフェッショナルな面では、シリーズの最初の頃は、若手俳優がみなそうであるように、もっとストーリーラインに関わりたかったし、もっと責任を持たせてもらいたいと前のめりで貪欲だった。自分自身に、友人たちに、「そこにいられれば満足というわけにはいかない。もっと貢献したいんだ」と言っていたのを思い出すよ。だけど最終章の終わりが来た時は、その一員でいられるだけで満足だった。

ジェイコブ:まったく同感だね。これ以前にやった演技の仕事のほとんどを忘れてしまった。それまでの仕事で一緒だった人たちがいい人じゃなかったとか、過去の仕事においていいことがなかったというわけじゃなく、それだけこの作品が強烈だったんだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』のことは一生忘れないだろうね。

ジョー:今後、幸運なことに何年もずっと演技の仕事ができるとしたら、そして人々が質問したいと思ってくれるなら、30年後もまだ僕たちはこの作品の話をしているだろうね。なぜなら、『ゲーム・オブ・スローンズ』はそれだけ素晴らしいから。そして、僕は喜んで話すだろう。僕たちの人生において大きな部分を占めるものであり、忘れることはできないね。

<『ゲーム・オブ・スローンズ』リレーインタビュー>
「どう終わってほしかったかという考えに捉われてはならない」【1】メイジー・ウィリアムズ(アリア・スターク役)
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「シリーズ完結は新たな始まり...」作品担当者が語る、本作の日本上陸と鉄の玉座が生まれた経緯

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■商品情報
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※R-15:本作には一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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