『ツイン・ピークス』『将軍　SHOGUN』『FBI』…2025年に亡くなったドラマスター22人

2025年ももうすぐ終わりとなるタイミングで、今年もドラマ界で活躍した人を中心に、惜しまれながらこの世を去ったスターたちを、一部ではあるが振り返りたい。

2025年に亡くなったドラマスター22人

デヴィッド・リンチ

今年早々、1月16日に訃報が伝えられたのは鬼才デヴィッド・リンチ。1990年代にカルト的人気を集めたミステリードラマ『ツイン・ピークス』をはじめ、『イレイザーヘッド』『ブルーベルベット』『ストレイト・ストーリー』『マルホランド・ドライブ』などで独自の世界観を披露し続けた。晩年は、長年の喫煙習慣による肺気腫を患っており、家を出ることさえできなかったため監督業からも遠ざかっていた。死後に行われたオークションでは未完の脚本などが高値をつけている。

ミシェル・トラクテンバーグ

もともと子役として活動を始め、『バフィー～恋する十字架～』のドーン・サマーズ役や『ゴシップガール』のジョージーナ・スパークス役で知られたミシェル・トラクテンバーグは、2月26日に39歳の若さで死去。ミシェルの死因は糖尿病の合併症と伝えられており、恐らく2024年に受けた肝臓移植手術が関係していると思われる。

エミリー・ドゥケンヌ

カンヌ映画祭パルムドールに輝いた1999年のダルデンヌ兄弟作『ロゼッタ』に17歳で主演し、主演女優賞を受賞したエミリー・ドゥケンヌ。ベルギー出身で、『アストリッドとラファエル　文書係の事件録』のようなフランス語圏の作品に出ることが多かったが、英米合作の『ザ・ミッシング　～消えた少年～』にも出演していた。3月16日、副腎皮質ガンによりパリ郊外の病院で息を引き取った。43歳だった。

リチャード・チェンバレン

1980年に制作されたドラマ『将軍　SHOGUN』でブラックソーン（のちの按針）を演じ、三船敏郎や島田陽子と共演したリチャード・チェンバレンは、91回目の誕生日を2日後に控えた3月29日に永眠。ハワイのワイマナロにて、発作が引き起こした合併症が死因となった。『将軍　SHOGUN』や『ドクター・キルデア』で3度ゴールデン・グローブ賞に輝いている。

『将軍　SHOGUN』からは、アルビトを演じたダミアン・トーマスも、リチャードの死からおよそ3週間後の4月18日に進行性核上性麻痺により死去（享年83）。

ヴァル・キルマー

『バットマン フォーエヴァー』のバットマン／ブルース・ウェイン役や『トップガン』シリーズのアイスマン役で知られたヴァル・キルマーは、4月1日没。65歳だった。ドラマには『アントラージュ★オレたちのハリウッド』や『NUMB3RS　ナンバーズ　～天才数学者の事件ファイル』にゲスト出演したほか、『ナイトライダー ネクスト』でKITTの声も担当していたが、喉頭ガンによる影響で晩年は声を失っていた。

ニッキー・カット

デイビッド・E・ケリーが手掛けた学園ドラマ『ボストン・パブリック』で地質学の教師ハリー・セネトを演じたニッキー・カットは4月に54歳で他界。鬱の末の自殺と伝えられている。何人もの大物監督と仕事をしており、リチャード・リンクレイター（『バッド・チューニング』『スクール・オブ・ロック』）やロバート・ロドリゲス（『プラネット・テラー in グラインドハウス』『シン・シティ』）が、その死を惜しんだ。

ロレッタ・スウィット

ロバート・アルトマン監督の戦争映画のドラマ版として1970年代から1980年代に大ヒットを記録した『マッシュ』でマーガレット・“ホット・リップス”・ホリハンを演じ、2度エミー賞を手にしたロレッタ・スウィットは、5月30日、ニューヨークの自宅で87年の生涯に幕を下ろした。マックスウェル・クリンガー役のジェイミー・ファーは、「義理の妹のような存在のロレッタのことが大好きだった」と述べている。

ハリス・ユーリン

130を超える映画、ドラマに出演してきたハリス・ユーリンは、6月10日に87歳で没。『スター・トレック／ディープ・スペース・ナイン』『24 -TWENTY FOUR-』『オザークへようこそ』などのドラマに参加しており、死後に『AND JUST LIKE THAT…／セックス・アンド・ザ・シティ新章』最終章での出番が放送されるなど、亡くなる直前まで仕事を続けた。

ジュリアン・マクマホン

『チャームド～魔女3姉妹』のコール・ターナー役や『NIP/TUCK　ハリウッド整形外科医』のクリスチャン・トロイ役、『FBI：Most Wanted～指名手配特捜班～』のジェス・ラクロイ役で知られるジュリアン・マクマホンは、7月2日、ガンにより56歳で還らぬ人に。遺作となった殺人ミステリードラマ『ザ・レジデンス』では、ジュリアンの父の職業であるオーストラリア首相に扮していた。

マーク・スノウ

誰もが聞いたことがあるであろう『X-ファイル』の音楽を手掛けたマーク・スノウは、7月3日に骨髄異形成症候群により他界（享年78）。そのほかにも『刑事スタスキー＆ハッチ』『ミレニアム』『トワイライト・ゾーン』『ヤング・スーパーマン』『ゴースト　～天国からのささやき』『ブルーブラッド　～NYPD家族の絆～』などの曲を作りエミー賞に15回ノミネートされた。映画音楽の分野で活躍した故マイケル・ケイメン（『リーサル・ウェポン』『ダイ・ハード』）とは学生時代の親友で、バンドも組んでいた。

マルコム＝ジャマル・ワーナー

7月20日に不慮の事故で命を落としたのは、『レジデント　型破りな天才研修医』のAJ・オースティン役でおなじみのマルコム＝ジャマル・ワーナー。コスタリカでの休暇中に海で溺れ、助からなかった。54歳。看護師ニック役のエミリー・ヴァンキャンプをはじめとした『レジデント』共演者たちも追悼の言葉を寄せている。

アロン・アブトゥブール

マルコム＝ジャマル・ワーナーと同じく海で還らぬ人となったのは、アロン・アブトゥブール。『スノーフォール』のアヴィ・ドレクスラー役や『ダークナイト ライジング』のパヴェル博士役で知られるアロンは、7月29日に自国イスラエルのビーチで倒れ、応急手当の甲斐なく息を引き取った。60歳だった。若い頃からハリウッドの作品にもたびたび参加しており、『ミュンヘン』や『ワールド・オブ・ライズ』などの映画、『NCIS：LA　～極秘潜入捜査班』『ブラックリスト』『FBI：インターナショナル』といったドラマにも出演していた。

ジェリー・アドラー

『ザ・ソプラノズ／哀愁のマフィア』でトニー・ソプラノの父の代からの相談役“ヘッシュ”ことハーマン・ラブキンを、『グッド・ワイフ』とそのスピンオフ『グッド・ファイト』では弁護士のハワード・ライマンを演じたジェリー・アドラー。8月23日、ニューヨークの自宅で眠りながら静かに息を引き取る形で96年の生涯を終えた。『グッド・ワイフ』のクリエイターは、訃報を受けて、当初は一話だけの出演予定だったが、彼の演技が気に入って30話以上出てもらうことになったと明かしている。

グレアム・グリーン

1990年のケヴィン・コスナー監督・主演映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で“蹴る鳥”という名前の先住民族を演じてアカデミー賞助演男優賞候補となったグレアム・グリーン。独特の存在感で活躍したグレアムは、9月1日に自国カナダで永眠（享年73）。ドラマ界では、『DEFIANCE／ディファイアンス』のレイフ・マコーリー役や、『エコー』のスカリー役でレギュラー出演していた。

ダイアン・キートン

10月11日、肺炎により79歳で亡くなったダイアン・キートン。1977年の映画『アニー・ホール』でアカデミー賞主演女優賞に輝くなど映画の印象が強いが、2016年のドラマ『ピウス13世　美しき異端児』にシスター・メアリー役でレギュラー出演。また、『ツイン・ピークス』の監督を務めたり、ミステリードラマ『Pasadena（原題）』の製作総指揮を担ったりもしていた。

ジューン・ロックハート

ファミリードラマで活躍したジューン・ロックハートは、10月23日に100歳で永遠の眠りについた。『名犬ラッシー』で主人公の少年ティミーの継母ルース、『宇宙家族ロビンソン』ではジュディ、ペニー、ウィルという3人の子どもを抱えたロビンソン一家の母親モーリーンと、家族を支える母親役で知られた。後者の映画版やリブート版ドラマ『ロスト・イン・スペース』に特別出演している。

チェッキー・カリョ

6ヵ国語を話すことができ、善人・悪人のどちらも演じられることから国際的に活躍したチェッキー・カリョ。10月31日、ガンにより72歳で亡くなるまでに約140本の作品に出演した。ジャン＝ジャック・アノー（『子熊物語』）、リュック・ベッソン（『ニキータ』『ジャンヌ・ダルク』『リュック・ベッソン　ノーリミット』）とのコラボレーションで知られるほか、ドラマとしては『ザ・ミッシング』『バティスト』シリーズで演じたジュリアン・バティスト役が当たり役に。

ダイアン・ラッド

元夫のブルース・ダーン、娘のローラも同じく俳優のダイアン・ラッドは、11月3日に89歳で死去。ローラと共演した『ワイルド・アット・ハート』などで3度アカデミー賞助演女優賞候補になった演技派。ドラマにもたびたび参加し、ローラが主演した『エンライテンド』のほか『スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル』や『チェサピーク海岸』でレギュラーを務めた。

ケイリー＝ヒロユキ・タガワ

東京で生まれ、5歳の時に家族とともに渡米した日系2世のケイリー＝ヒロユキ・タガワは12月4日没（享年75）。死因は発作に端を発した合併症で、家族に見守られながら旅立った。『リベンジ』でエミリーに武術を教えた恩師サトシ・タケダ役、『高い城の男』での通商大臣・田上信輔役などで深い印象を残した。

ロブ・ライナー

年の瀬に世界中に衝撃をもって伝えられたのが、12月14日、妻とともに自宅で殺されたロブ・ライナーの訃報。日本では『スタンド・バイ・ミー』や『ミザリー』の監督という印象が強いかもしれないが、コメディを中心に俳優としても活動しており、『New Girl　～ダサかわ女子と三銃士』『グッド・ファイト』『一流シェフのファミリーレストラン』などのドラマにも出演していた。

ジェームズ・ランソン

『THE WIRE／ザ・ワイヤー』で港湾労働者のジギーを演じ、『IT／イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』で大人になったエディを演じたジェームズ・ランソンは12月19日、自らの命を断った。46歳だった。『BOSCH／ボッシュ』『モザイク　～誰がオリヴィア・レイクを殺したか』などにも出演していた。

モハマド・バクリ

『HOMELAND』最終シーズンにアフガニスタンの副大統領アブドゥル・グロム役で出演したモハマド・バクリは、クリスマスイブに72歳で天に召された。心臓と肺に問題を抱えていたと伝えられている。俳優・監督として活動していたパレスチナ出身のモハマドは、遺作『All That’s Left of You（原題）』が年明けに発表されるアカデミー賞で国際長編映画賞候補になるかもしれないという。

（海外ドラマNAVI）