ここ10年あまりの間に次々とアガサ・クリスティー関連のドラマを生み出してきた英BBC。今年7月にも新たなクリスティー作品を作ることが報じられたが、その背景には長寿ドラマの打ち切りがあるという。
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アガサ・クリスティーが英BBCのミステリードラマの登場人物に!?
没後およそ50年経った今もその小説をもとにしたドラマや映画が …
長寿ドラマを失ったバーミンガムに対して有言実行
当サイトでも以前お伝えした通り、BBCは2024年に24シーズン続いた歴代最長寿ドラマの一つ『Doctors(原題)』を打ち切った。ウェスト・ミッドランズの架空の都市を舞台に、イギリスで2番目に大きな都市バーミンガムで長年撮影されたこの医療ドラマを終える理由として、当時同局はドラマの制作費用が近年大幅に上昇したことなどから、資金面で苦しい状況にあるためだと説明。今後は、「視聴者により良いものを提供するよう、そして才能ある人たちをサポートする新たな機会を産出するよう努力する」と述べていた。
『名探偵ポワロ』『ヴェラ〜信念の女警部〜』『SHERLOCK/シャーロック』などの名作ドラマを生み出してきた英国ドラマ界。しかし、2020年に英国産ドラマの予算に10億ドル(約1500億円)を投入すると発表したNetflixをはじめとした米国の動画配信サービスの参入により、制作費は天井知らずに。ここ数年は、様々な番組が打ち切りとなる一方で、人気ドラマの新シーズンを作るために主演俳優の出演料を大幅カットしなければならなかったといった苦しい台所状況が伝えられている。
そんな中でBBCは2本の新作ドラマ制作を発表。これは、「『Doctors』に費やしていた制作費を、ウェスト・ミッドランズを舞台にした新たなドラマに全額再投資するというBBCの取り組みを体現するもの」だという。
その2本は、ともにミステリードラマの『The Detection Club(原題)』と『The Hairdresser Mysteries(原題)』。7月に当サイトでも取り上げた前者は、エルキュール・ポワロやジェーン・マープルを生んだクリスティー、「ブラウン神父」シリーズのG・K・チェスタトン、「ピーター・ウィムジイ卿」シリーズのドロシー・L・セイヤーズといった、1930年に設立されたイギリス推理作家クラブに所属していた推理作家たちが架空のキャラクターとして様々な事件を解決していく一話完結型のミステリー。後者は、小さな村の美容師リリー・ペタルが、美容師として培った鋭い直感と共感力で村の謎を次々と解き明かしていくというストーリー。スタッフには、『ブラウン神父』『シェイクスピア&ハサウェイの事件簿』『Doctors』のプロデューサーを務めていたウィル・トロッターも名を連ねる。
BBCは、2015年より毎年のようにクリスティーの小説(「そして誰もいなくなった」「検察側の証人」「ABC殺人事件」「無実はさいなむ」「蒼ざめた馬」「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」「殺人は容易だ」「ゼロ時間へ」「終りなき夜に生れつく」)をドラマ化し、そのほとんどが日本上陸を果たしている。海外マーケットを意識した方針を続けつつ、長年続いたドラマが失われた地域に新たな仕事をもたらす今回の取り組みが功を奏するのか、注視していきたい。
全6話の『The Hairdresser Mysteries』は9月より、全10話の『The Detection Club』は2026年より撮影スタート予定。『名探偵ポワロ』全13シーズンはU-NEXTにて配信中。(海外ドラマNAVI)
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