2025年も、テレビ業界からは私たちの想像を超えるような没入感溢れる物語が次々と誕生した。ストリーミング配信から地上波まで、視聴者を未知の時代や異世界へと引き込み、日常を忘れさせてくれるドラマが豊作だった一年と言える。“話題作が多すぎて何から見ればいいか分からない”そんな贅沢な悩みを抱えているなら、今こそ絶好のチャンスだ。米Varietyの名物批評家が厳選した「2025年ベスト10」を参考に、まだ見ていない傑作をこの正月休みに一気見してみてはどうだろうか。海外ドラマNAVI編集部&ライターが選んだ今年のベストはこちらより。
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編集部&ライターが本気で選ぶ!今年最高に面白かった海外ドラマ10選【2025年版】
2025年も想像を超える名作が次々と誕生した。膨大な作品をウ …
10位『華麗なるマードー家』(米Hulu)

殺人事件は序章に過ぎない…。過去に遡る機能不全の系譜。
近年のトゥルー・クライム(実録犯罪)ブームにおいて、ここまで多くの人々を魅了し、震撼させた事件はほとんどない。それが「マーダー家殺人事件」である。フィクション化されたミニシリーズ『華麗なるマードー家』は、この複雑な事件を題材に、貪欲さ、残虐さ、そして傲慢さに満ちた特権階級の恐ろしい肖像を描き出している。
物語は、2021年にマギー・マーダーとその息子ポールが、家族の広大な敷地内で惨殺体となって発見される遥か以前から始まる。
本作の最大の魅力は、事件発生という一点に留まらず、その数年前、さらには過去の世代にまで目を向ける点にある。代々続くマーダー家の歴史は、依存症、過度な甘やかし、そして根深い機能不全に満ちていたことが明らかになる。この特権的な一族が、いかに自分たちの地位と富によって支配され、やがてそれに飲み込まれていくか、その系譜を丹念に辿っているのだ。
この重厚な物語を支えているのが、実力派俳優たちの競演である。マギー・マーダーを演じるパトリシア・アークエット(『セヴェランス』)と、マーダー家の家長アレックス・マーダーを演じるジェイソン・クラーク(『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~』)が、その中心にいる。彼らは、自分たちにまつわる「伝承」や「特別さ」にあまりにも深く染まり、倫理観や現実感覚を失っていく人々のグループを、見事に描き出している。ジェイソン演じるアレックスの、威圧感と崩壊寸前の脆さが同居した姿は圧巻であり、物語に緊張感を与え続けている。
トゥルー・クライムファンはもちろん、上質な人間ドラマを求める視聴者にとっても、この『華麗なるマードー家』は、アメリカ南部の闇と特権階級の崩壊を深く考察させる、必見のミニシリーズである。
日本ではDisney+(ディズニープラス)で独占配信中。
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9位『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』(HBO)

「力関係の激変」がハイソサエティを揺るがすシーズン3。
ジュリアン・フェロウズが制作するHBOの『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』は、長年にわたり視聴者を19世紀後半ニューヨークの絢爛たるハイソサエティへと誘ってきた。しかし、最新のシーズン3では、これまでのドラマに欠けていた新鮮で鋭い視点がもたらされ、物語は決定的な転換期を迎えている。
このアグネスの没落とエイダの台頭により、ヴァン・ライン姉妹間の力関係は劇的に変化したと言える。支配する側とされる側が逆転し、観客は二人の新たな関係性と、そこに生じる緊迫したドラマに引き込まれることになるだろう。シーズン3はまた、シリーズの黒人キャラクターに対し、遥かに豊かなストーリーテリングを提供している。フィリシア・ラシャドが、ペギー・スコットの将来の義母候補として登場したことで、物語は新たな深みを得た。
『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』シーズン1~3はU-NEXTで独占配信中。
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8位『大地の傷跡』(Netflix)

『レヴェナント:蘇えりし者』の脚本家マーク・L・スミスと息子エル・スミスが手掛けたNetflixのミステリー・スリラー『大地の傷跡』は、美しい自然の風景とは裏腹に、秘密と長年くすぶる傷を巡る、没入感のある物語。
舞台はヨセミテ国立公園。驚くほど美しく、荘厳に撮影されたこのシリーズは、その壮大な景観と、人間に潜む闇とのコントラストが際立っている。本作の主人公は、国立公園局捜査サービス部門(ISB)の特別捜査官であるカイル・ターナー(エリック・バナ)。公園内で遺体が発見されたとき、カイルは捜査のために乗り出す。しかし、彼が事件の解決を試みるにつれて、単なる殺人事件の捜査ではないことが明らかになる。カイル自身の個人的なトラウマが表面化し始め、彼の判断を曇らせ、神経質にさせるのだ。エリック・バナは、冷静沈着なプロの捜査官と、内面の傷に苛まれる一人の人間という二面性を、見事に演じ分けている。
捜査ドラマというジャンルは、既に作品が溢れ、ユニークな新作を生み出すことが困難な分野である。しかし、『大地の傷跡』はその定説を覆し、特別な作品となり得ることを証明した。
Netflixシリーズ『大地の傷跡』は独占配信中。
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エリック・バナ主演のNetflixミステリー『大地の傷跡』がシーズン2更新
エリック・バナが主演を務めるNetflixオリジナルドラマ『 …
7位『A Thousand Blows(原題)』(米Hulu)
『A Thousand Blows(原題)』は、容赦のない世界で自らの足跡を残そうと決意したアウトサイダーたちのスリリングな物語。『アドレセンス』で話題の人となったスティーヴン・グレアムと同作に出演しエミー賞を受賞したエリン・ドハティが出演。
舞台は1880年のイースト・ロンドン。新たな機会を求めてジャマイカからロンドンに到着したヘゼキア・モスクワ(マラカイ・カービー)とアレック・マンロー(フランシス・ラヴホール)が主人公である。彼らがそこで見つけたのは、絶え間ない人種差別と、街の犯罪がはびこる裏社会だった。ボクシングを唯一の収入源とするヘゼキアは、女性ギャングのメアリー・カー(エリン・ドハティ)から関心を寄せられる。だが、このことがイースト・エンドを仕切る残忍なギャング、シュガー・グッドソン(スティーヴン・グレアム)の怒りを買うことになるのだ。
性差別、人種差別、忠誠心、そして復讐を描いた本作。2025年の必見ドラマなので日本上陸を待ちたい。アメリカでは2026年1月9日よりシーズン2が開始。
6位『Outlander: Blood of My Blood(原題)』(Starz)

Instagramアカウント@outlander_starzより
世界中で熱狂的なファンを持つファンタジー・ロマンスの金字塔『アウトランダー』。そのフランチャイズを拡大する米Starzの新たな前日譚シリーズ『Blood of My Blood(原題)』。本作が描き出すのは、オリジナルシリーズの主人公であるクレア・ランダルとジェイミー・フレイザー、それぞれの両親にスポットを当てた2つの鮮烈なラブストーリーだ。
物語の舞台となるのは、第一次世界大戦中の西部戦線、そして18世紀初頭のスコットランドの牧草地という、数世紀の時を隔てた2つの時代。一般的に、人気作の前日譚や続編は、往々にして蛇足と捉えられがちである。しかし、この『Blood of My Blood』に関しては、その懸念は無用だろう。本作は、前日譚という枠に収まらない、稀有で愛おしく、そして中毒性すら感じさせる独立した傑作としての地位を確立している。
『アウトランダー』の魂を継承しつつ、新たな伝説の幕開けを感じさせる本作。二組の両親が辿る数奇な運命は、再び世界中の視聴者を魅了することになりそうだ。
本家『アウトランダー』シーズン1~7はHuluにて配信中。
\月額1,026円(税込)/
5位『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー “それ”が見えたら、終わり。』(HBO)

映画版と同じくビル・スカルスガルドが演じるペニーワイズのオリジンストーリー『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー “それ”が見えたら、終わり。』は、単なるホラーの続編ではない。深く、複雑で、感情を揺さぶる心理的なトラウマに踏み込んだ傑作である。
物語の舞台は1962年のメイン州デリー。一人の幼い少年の衝撃的な失踪事件から幕を開ける。しかし、このドラマは、表面的な恐怖だけで終わらない。ペニーワイズの恐怖を背景に、当時の社会が抱えていた闇を露呈させていくのだ。
そんな本作が描くのは、冷戦下のパラノイア、根深い人種差別や虐待の恐怖、そして心理的なトラウマである。これらの要素は、緊張感あふれる恐怖の糸となってシリーズ全体に深く絡みついている。ホラー・ドラマである以上に、私たち人間が、いかに残酷で恐ろしい存在になり得るかに焦点を当てている。ペニーワイズという存在を通して、人間の内なる闇を鏡のように映し出す、挑戦的な作品だと言えるだろう。
『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー “それ”が見えたら、終わり。』はU-NEXTで独占配信中。
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『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー』ビル・スカルスガルドがペニーワイズ役を語る
HBOドラマ『IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー “それ …
4位『パラダイス』(米Hulu)

複雑に絡み合う人間模様を描いた傑作『This Is Us/ディス・イズ・アス』を世に送り出したヒットメーカー、ダン・フォーゲルマン。彼の類まれなる才能は、最新作となる政治スリラー『パラダイス』において、さらなる深化を遂げた。フォーゲルマンは本作で、時間、空間、そして幾重にも重なる秘密を脚本の上で巧みに操り、視聴者を予測不能な迷宮へと誘う。その構成の妙は、まさに彼のクリエイターとしての真骨頂といえるだろう。
物語の核となるのは、シークレットサービスのエージェント、ザビエル・コリンズ(スターリング・K・ブラウン)だ。平穏な日常は、彼の監視下で米大統領(ジェームズ・マースデン)が殺害されるという最悪の事態によって一変する。ザビエルは、自身が想像を絶する巨大な陰謀の渦中に置かれていることに気づく。
しかし、『パラダイス』は単なる「ホワイトハウスを舞台にした暗殺劇」にはとどまらない。物語が展開する世界観そのものが、我々の既成概念を覆す独自性を放っており、ミステリーとしての面白さに、より深く、心に刻まれるような多層的な厚みを加えているのだ。
全編を通して緊張感が持続するシーズン1だが、中でも第7話は「真の傑作」として際立っている。このエピソードは、主演を務めるスターリングとジェームズに最高の見せ場を与えた。二人が繰り広げる卓越した演技の応酬は、まさに火花を散らすような迫力に満ちている。
そこで描かれるのは、我々の現実社会と地続きにあるかもしれない、あまりにリアルで冷徹な「裏切りの世界」だ。緻密に練られたプロットと、胸を締め付けるような感情の深淵が見事に融合した『パラダイス』。一度足を踏み入れれば、最終話まで釘付けにされることは間違いない。
『パラダイス』シーズン1はDisney+(ディズニープラス)で独占配信中。シーズン2は2026年2月23日(月・祝)より独占配信スタート。
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【インタビュー】『パラダイス』ザビエル役スターリング・K・ブラウン「これからクレイジーになる」
『THIS IS US/ディス・イズ・アス』のクリエイターで …
3位『君との永遠』(Netflix)

ジュディ・ブルームの画期的な小説にインスパイアされ、『ブラックライトニング』のマーラ・ブロック・アキルが創り上げたこの壮大なティーンのラブストーリーは、間違いなく時代を超えて語り継がれるシリーズとなるだろう。2018年のロサンゼルスを舞台にしたこのNetflixシリーズは、対照的な世界からやってきた二人の若者を追う。一人は、陸上選手であるケイシャ・クラーク(ロヴィー・シモーネ)。もう一人は、バスケットボール選手のジャスティン・エドワーズ(マイケル・クーパー・ジュニア)だ。
このシリーズは、お互いへの激しい感情、そして高校生活と思春期の最終学年を乗り越えていく、彼らの芽生えるロマンスを年代記として記録している。魔法のように雄大で、陶酔的な愛、胸を抉るような痛み、そして傷つきやすい初めての恋愛のすべてを通して、視聴者の手を優しく握り、物語の世界へと誘う。若さゆえの情熱と繊細さが凝縮された、必見のラブストーリー。
Netflixシリーズ『君との永遠』は独占配信中。
2位『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』(HBO Max)
Photograph by Warrick Page/Max

Photograph by Warrick Page/Max
アメリカドラマのジャンルで最も人気なのが病院を舞台にしたメディカルドラマだろう。だが、HBO Maxによる『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』のような作品は他に存在しないと断言できる。これは、既存の医療ドラマが抱えていた華やかさ、魅力、非現実的な筋書きを全て取り除いた、極限のリアリティドラマである。
全15話のシーズン1は、ピッツバーグ外傷医療センターの、文字通り過重労働に喘ぐERスタッフを追う。物語は、たった15時間のシフトに焦点を当てて展開される。そこで紹介されるのが、トラウマを抱えながらも非常に有能な指導医、マイケル・“ロビー”・ロビナヴィッチ医師(ノア・ワイリー)と彼のチームである。彼らは、全員の神経を極度に緊張させる血まみれの、過酷な症例を次々と乗り越えていく。
『ザ・ピット』が描くのは、命を救う英雄譚だけではない。これは、アメリカの崩壊した医療制度が抱える恐ろしさと、それでもなお現場に残された希望を、赤裸々に浮き彫りにする。他の医療ドラマを停滞させてきた甘さを排除し、極限状態での人間の決断と葛藤にフォーカスした本作は、医療ドラマの新たな金字塔として、視聴者に強烈なインパクトを与えたのだ。
『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』はU-NEXTにて独占配信中。
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1位『アドレセンス』(Netflix)

ジャック・ソーンとスティーヴン・グレアムが制作したNetflixのリミテッドシリーズ『アドレセンス』は、2025年の必見作だ。本作が優れているのは、現代のインセル文化、ソーシャルメディア、コネクティビティの落とし穴といった重い主題を扱うだけでなく、その画期的なフォーマットにある。
本作は女子クラスメイトを殺害した容疑で逮捕された13歳のジェイミー(オーウェン・クーパー)の朝から始まる。視聴者は、フィリップ・バランティーニ監督(『レスポンダー 夜に堕ちた警官』)による象徴的なワンショット・スタイルのレンズを通して、ジェイミーの逮捕、彼に対する証拠、そして彼のクラスメイト、友人、家族に波紋を広げる余波を追うことになる。途切れることのない映像は、視聴者に極度の緊迫感と臨場感を与える。
特に第3話では、ジェイミーが裁判所指定の児童セラピスト(エリン・ドハーティ『ザ・クラウン』)とのセッションを受けている様子が描かれる。これにより、この若きティーンの精神の、これまで見られなかった側面が明らかになる。彼の内面、孤独、そして暴力的な思想が形成されていく過程が、生々しく映し出されるのだ。
『アドレセンス』は、私たちが社会としてどれほどグロテスクになったか、暴力的なレッドピル文化(映画『マトリックス』に由来しネット上の特定のコミュニティ主に男性優位主義的な思想を持つグループで、社会に隠された真実(厳しい現実)に目覚めることを意味する)がどのようなものか、そして私たちがそれを根絶し始めなければ何が待ち受けているのかを露わにしている。目を背けたくなる現実を突きつける、強烈な問題作である。
Netflixシリーズ『アドレセンス』は独占配信中。
(海外ドラマNAVI)






