電気店で働く青年ヒューイの人生は、大してパッとしないものの穏やかで平和だった。ある日、一人のスーパーヒーローによって恋人が悲惨な死を遂げるまでは...。権力や名声で堕落したスーパーヒーローたちを、何の特殊能力も持たない人々が成敗しようとする異色ドラマ『ザ・ボーイズ』。人気アメコミのドラマ化で、Amazonで7月下旬より配信されるや否や大きな話題を呼んでいる本作からキャスト、スタッフのインタビューをお届けしよう。第1回は、恋人を失った青年ヒューイの前にいきなり現れ、スーパーヒーローに復讐してやろうと彼を誘い込む謎の人物ビリー・ブッチャー役のカール・アーバン。これまでに『ロード・オブ・ザ・リング』『スター・トレック』『ジャッジ・ドレッド』『マイティ・ソー』といったファンの多い作品に出てきたカールが、本作ではうさん臭くて調子の良いタフガイを好演している。3人のクリエイターがそろって第1候補に挙げただけあってハマり役の彼が「ブッ飛んだ」本作について語ってくれた。
――あなたは過去にもアメコミの有名なキャラクターを演じましたが、本作のどんなところに惹かれたのですか?
実はこの原作が出版された当時を覚えてるんだ。目にして興味を引かれたことをね。その後、本作のパイロット版の脚本を読み、あまりにも面白い上にブッ飛んだ話だから度肝を抜かれた。スーパーヒーローものの体裁を取りつつ、非常にしっかりとした、キャラクターありきでストーリーが展開していくスタイルがすごくハマっているよ。とはいえ、俺自身は何よりもこのビリー・ブッチャーというキャラクターに惹きつけられたってのが一番大きかったね。本当に面白くて茶目っ気のある奴だよ。
――ちなみにブッチャーは原作者のガース・エニスにとって一番お気に入りのキャラクターだそうです。
らしいね。(クリエイターの)エリック(・クリプキ)がご丁寧に教えてくれたよ。全然知らなくて良かったのに(苦笑)
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――あなたは過去に他のフランチャイズ作品で有名なキャラクターを演じていますが、それによってブッチャーを演じる上での責任のようなものに準備ができていたのでは?
確かに、俺が熱心なファンのいる作品に関わるのは初めてじゃない。ブッチャーを演じるにあたっては、自分なりのブッチャーを作り上げた。ガースの原作を参考にしつつね。もちろん、エリックにもかなり助けてもらったよ。なにせ彼は原作のストーリーをドラマ用に脚色している張本人だから。ブッチャーの原作とドラマ版には、かすかだけど重要な違いがいくつかあるんだ。そんなわけで、日々の撮影の終わりには毎回、ガースが創り出したものと、そこからエリックが新たに生み出したものを称えることの大切さをしみじみと感じてるのさ。
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――この原作のようにかなり過激なストーリーを映像化するには、ある程度の変更は避けられません。シーズン1のブッチャーにまつわる部分で大きな変更を加えた箇所はありますか?
いくつかあるんで、そのうちの一つを教えるよ。原作でのブッチャーはドラマで「コンパウンドV」と呼ばれる薬、スーパーヒーローの能力を生み出す一種のステロイドを自分も使っているという設定なんだ。でもエリックはその部分をスパッと削った。スーパーパワーを持つ相手に、そうした特殊能力を持たない普通の人間が立ち向かう話こそが彼の描きたいものだったからね。俺自身にとっても挑戦しがいのある設定だよ。世界で最も強いスーパーヒーローたちと普通の人間たちとの戦いをどうやって描き続けるか?というのはね。
――特に苦労した撮影は?
第1話でのトランスルーセントっていう全身が透明になる奴との戦いは、俺が今まで経験した中で一番トリッキーなものだったね。あのシーンは3回撮影したんだ。1回目はグリーン色の全身タイツを着た相手と、そして2回目と3回目は俺一人でのファイトシーンをね。相手なしで戦うってのは想像よりはるかに難しいんだ。普通、戦いでは相手の動きを見ながら反応するわけだから。なのに、あの時はそれを全部自分の頭の中で思い描かなきゃならなかった。それって全然勝手が違うんだよ。
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――マーベルですでにスーパーヒーローものを経験していたあなたですが、スーパーヒーローの神話をブチ壊すような本作に出演したことについてはどう考えていますか?
俺自身は、本作はセレブリティを取り巻く状況の比喩だと考えてるよ。だって考えてもみてくれ。これまでに何度も、人気スターの秘められた暗い一面が明らかになったことはあっただろ? 本作のスーパーヒーローたちはまさにそうしたセレブなんだ。彼らは名声を追い求め、高価な品々を所有し、多くのフォロワーがいる。だから毎日の撮影の終わりには、"オーケー。世界にスーパーヒーローは本当にいるのか? それとも、そう見せかけてるだけか? そいつらも実際は俺たちみたいに欠点があって傷ついてて混乱してるだけなのか?"って感じになるんだ。
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――話が進むにつれて、原作のようにドラマでもブッチャー個人のスーパーヒーローたちとの関わり合いが描かれるのでしょうか?
もちろん。ストーリーが進むにつれ、なぜブッチャーがヒーローを成敗しているのかは語られるよ。ヒューイのように、彼にも劇的なことが起きたんだ。ヒューイというキャラクターは、視聴者が感情移入しやすいような、モラルのある人間だ。そして本作に関して俺が気に入ってることの一つは、ブッチャーがヒューイも自分と似た心の傷を抱えてることを理解するものの、彼を自分の復讐のために利用することだね。
――自らも決して模範的ではないブッチャーは、視聴者が応援すべきキャラクターと言えるのでしょうか?
素晴らしい質問だ。俺の考えでは、ブッチャーは10回のうち9回は間違ったことをしてしまうようなキャラクターだよ。でも、彼はそうした欠点があるからこそ興味深いんだ。彼は視聴者が望むような正しい行動を取るとは限らないけど、たとえブッチャーが間違ったことをしても、見てる人はその理由が理解できるはずさ。
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――シーズン1であなたが経験した、最もブッ飛んでいたシーンは?
透明になる野郎との戦いはかなりシュールだったね。あまりネタばれはしたくないけど、あるスーパーヒーローを倒す時の方法には驚いたよ。みんなもそうだと思うけど、俺も映画やドラマで描かれる暴力シーンに対して、ちょっとやそっとのことじゃ驚かなくなってたんだ。でもコイツは強力だった。それだけ言えは、どれだけブッ飛んでたかはなんとなく分かるだろ?
『ザ・ボーイズ』シーズン1はAmazon Prime Videoにて配信中。
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Amazon Original『ザ・ボーイズ』