「ホームランダーは最も弱いキャラクター」『ザ・ボーイズ』アントニー・スター(ホームランダー役)インタビュー

人気アメコミを原作にした、権力や名声で堕落したスーパーヒーローたちを、何の特殊能力も持たない人々が成敗しようとする異色ドラマ『ザ・ボーイズ』。Amazonで7月下旬より配信されるや否や大きな話題を呼んでいる本作からキャスト、スタッフのインタビューをお届けしよう。第2回は、スーパーヒーローたちの選抜チーム、7人の精鋭から成るその名も"セブン"のリーダーであるホームランダー役のアントニー・スター。空を飛び、怪力で、透視ができる上に並外れた聴力を持ち、さらには目から光線も出せるという正にスーパーヒーロー的な能力者だが、実際は「スーパーマンとは正反対なキャラクター」へと変身する過程を語ってくれた。

――本作はなかなか目にしないような特異な作品ですが、出演した経緯を教えてください。

もともと僕は別の作品に出演していたんだけど、この話が降って湧いたんだよ。企画を聞き、誰が関わっているのかを知って、興味が湧いた。僕は普通の体格だから、ホームランダーのような筋肉ムキムキの人物を演じられるとは思えなかった。だけどトントン拍子に話が進んで出演することになり、髪を金髪に染めて、スーパーマンとは正反対なキャラクターへと変身したんだよ。最高だったね。本当に素晴らしいスタッフたちだよ。(クリエイターの)エリック・クリプキは本作の神だね。優れたリーダーだ。ここまで本当にうまくいっているよ。

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――本作では何人もの優れた監督がメガホンを取っていますね。彼らとの仕事はいかがでしたか?

素晴らしかったが、ある意味で難しくもあった。基本的に監督が週替わりだったからね(編集部注:シーズン1の8話すべてを違う監督が担当)。新しい監督が来たら、その人と急いで理解を深め合わなくちゃならないんだ。とはいえ、ベテラン監督ばかりだったので、撮影はすごくスムーズだった。監督によってキャラクターに対するアプローチが異なるから、いろんな相手と組むのは楽しいよ。特にシーズン1ではホームランダーのキャラクターを固めたくなかったからね。せっかく素晴らしい頭脳を持つ人たちと一緒に仕事をしているんだから、いきなり自分の意見を述べる代わりに聞き役に回って周囲のアイディアを聞き、その後で自分の思いつきも伝えてみたよ。あれぞまさにコラボレーションだね。素晴らしかった。

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――シーズン最終話の監督を担当したのはクリプキでしたね。彼はこの作品に愛と情熱を注いでいるので、適任だったのでは?

その通りだね。エリックはこの作品に関わる誰よりも懸命に働いているんだ。『ザ・ボーイズ』は言わば彼のベイビーなのさ。僕らはラッキーだよ。僕自身はこれまでツイてないことも何度かあったから、今の状況を特別に有り難く思っている。才能がありながらも周囲に対してオープンで協力的で、いざとなれば自分のアイディアを守るために戦い、さらには作品やキャストの庇護者にもなってくれるようなリーダーはなかなかいないんだ。この作品にはそんな特別な人物がいてくれて本当に良かった。

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――あなたが演じるホームランダーはずっとスーパーヒーローのスーツ姿ですが、着心地はいかがですか?

劇中は本当にずっとこのスーツ姿だけど、気に入ってるよ。我らが麗しのコスチュームデザイナー、ローラ・ジーン・シャノンのおかげだね。彼女は人間工学に基づいた、実に機能的でありながらもヒーローらしいスーツを我々に作ってくれたんだ。シーズンを通して何度も改善し、より適した形を突き詰めていったもので、ラテックスがたくさん使われていて、体重の増減に対応できるストレッチ機能がついているんだ。彼女がスーツを作る過程は見ていて楽しいよ。

ホームランダーの両肩には鷲の飾りが付いていて、ブーツも含めて非常にミリタリーテイストだ。このスーツは僕にとって鎧なんだよ。これを身に着けるのは、有名ブランドの新作を着ている時の感覚とはまったく違う。このスーツは作品を反映しているんだ。現実世界が冷徹であるようにこの作品も厳しい現実を描いている。だからスーパーヒーローが出てくるドラマとはいえ、スーツもあまり現実離れしていない、リアリティのあるものでなければならないんだ。

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――原作コミックは非常にワイルドで過激な要素を含んでいます。そのためドラマは多少トーンダウンしたものにしなければなりませんが、そのことにはいつ気づかれましたか?

原作を読んですぐに気づいたよ。とにかく過激だからね。そこで僕らはそのまま映像化するわけにはいかないような箇所を切り取ったわけだけど、核となるアイディアとキャラクターが素晴らしいんだ。すごくイマジネーションにあふれた作品だよ。そもそも原作が様々な方向へ進めるような内容である上に、優れたスタッフが加わったおかげだね。

エリックと脚本家チームは、原作のある部分をそのまま残し、別の部分をより掘り下げることに長けている。そして原作者のガース・エニスは何に対してもとてもオープンだ。お世辞でなく本当に話しやすい人で、大きな助けになってくれたよ。もしも彼が原作にとにかく忠実であることを望むタイプだったら、問題が起きていただろうからね。僕らとしてはあまりの過激さゆえに配信できないような番組を作るわけにはいかないわけだから。そう考えると、多くの人に見てもらえるようなものにしつつも、持ち味であるエッジが効いたところと斬新な部分を保ち、他の作品とはまったく違うものを作るために取捨選択する上で賢明な判断ができたと思う。

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――あなたが演じるホームランダーは、スーパーヒーローの選抜チーム"セブン"の中心的存在のはずですが、実際は彼らはみな選抜にはほど遠い存在です。彼は"セブン"の仲間をどのように見ているのでしょう?

僕が考えるに、ホームランダーにとって彼らは家族なんだ。例えば、クイーン・メイヴはかつては世の中のためになるようなことをしたいと目を輝かせていたわけだけど、いつの間にかお酒に溺れてしまった。彼女は新入りのスターライトにとってはまるで反面教師だね。本作のテーマの一つは権力による堕落で、スーパーパワーを持つ人たちは最初は理想に燃えているけれど、名声や欲によって堕落してしまった。そんな完璧ではない彼らのことを、ホームランダーは自分の子どもと見なしているんだろう。僕はそう解釈しているよ。"セブン"は彼の家族だから、彼らに手を出す奴らがいたらホームランダーがやっつけるんだ。一方で家族の誰かがミスをしたら、このミスっていうのは彼の見方によるんだけど、その時は父親役であるホームランダーが彼らを厳しく叱って、それぞれのケースに合わせた対処をしなければならない。彼は"セブン"をうまくいかない家族と見なしているんだ。

とはいえホームランダーは大きく誤解されたキャラクターで、正直なところ、彼は誰よりも弱いんだ。ホームランダーにとっての"クリプトナイト"(弱点)は人間性なんだよ。

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――ホームランダーと、エリザベス・シュー演じるマデリンの関係は非常に興味深いですね。彼女との共演はいかがですか?

有り難いことに僕らは個人的にとても仲が良いんだ。そしてプロとして互いに敬意を払っている。だからこそ、撮影でリスクを冒しても問題はないし、しっかり話し合えているんだ。これって必ずしもできることじゃないんだよ。人によってそれぞれの取り組み方があるわけだから。でも僕らの関係はうまくいっているから、おかげで突飛な展開もスムーズにこなせるんだ。エリザベスは真のプロフェッショナルだよ。ずっと活躍し続けるだろうね。実は彼女が出ている1984年の映画『ベスト・キッド』は僕のお気に入りなんだ。本当に素晴らしい女優で、共演できたことはとにかく幸運だったよ。

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――本作で体験した最もクレイジーなことは?

最もクレイジーかどうかは分からないけど、ハーネスを付けたのは初めてだったんだ。だから飛ぶシーンはすごく楽しかったね。車の上に立っているところを滑車で素早く持ち上げられた時、思わず大声を出しちゃったよ(笑) そんなにも速いとは予想していなかったからね。あれはまったくもって新しい体験だった。すごく面白かったしね。ハーネスを使うシーンは心から楽しめたよ。

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――ホームランダーの言動には毎回驚かされましたが、脚本を読んだ時、"この上、何をさせるんだ?"と思ったりされましたか?

毎回脚本をもらうと、何度も何度も読むんだ。僕のキャラクターがぴったりハマって、これで撮影現場で何かバカなことをしたりしないで済むだろうって感じられるまでね。エリックはとにかくオープンで協力的だから、現場ではいろんなアイディアが飛び交ってすごく流動的な撮影なんだ。僕も自分の中にあるねじくれた部分をもっと変なものに、同時により良いものにするように意識しているよ。例えば、あるシーンについて話している時に、僕がよりダークでエッジが効いていてもっとねじくれたアイディアを出したとしたら、エリックは大笑いして「そうだな、やってみよう!」と言ってくれるんだ。だから僕もとことん付き合うんだよ。どんな作品かは最初から承知の上だしね。こんなにブッ飛んでる世界に本気で飛び込む気がなければ、そもそも出演を決めたりしないよ。

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『ザ・ボーイズ』シーズン1はAmazon Prime Videoにて配信中。

『ザ・ボーイズ』カール・アーバン(ビリー・ブッチャー役)インタビュー「一番ブッ飛んでたのは、あるヒーローを倒す方法」
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Photo:

Amazon Original『ザ・ボーイズ』