「スーパーヒーローは嘘っぱち」『ザ・ボーイズ』エリック・クリプキ(クリエイター)インタビュー

人気アメコミを原作にした、権力や名声で堕落したスーパーヒーローたちを、何の特殊能力も持たない人々が成敗しようとする異色ドラマ『ザ・ボーイズ』。Amazonで7月下旬より配信されるや否や大きな話題を呼んでいる本作からキャスト、スタッフのインタビューをお届けしよう。最後となる第3回は、クリエイターのエリック・クリプキ。『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』『タイムレス』といったこれまでの作風とは違う本作に関わった経緯や、彼が抱くスーパーヒーロー観、通常とは逆だったキャスティング方法などを語ってくれた。

――本作に関わるようになった経緯を教えてください。

僕はもともと原作者ガース・エニスの大ファンなんだ。「プリーチャー」は僕にとって歴代のトップ2か3に入るくらいお気に入りの作品なんだよ。20代の頃に同作を読んで、その後もずっとエニスの作品をチェックしているんだ。『SUPERNATURAL/スーパーナチュラル』も彼の作品の影響を大きく受けているよ。

「プリーチャー」のことを熟知していたから、同作が自分抜きでドラマ化されると知った時は裏切られた気分でね。プロデューサーのニール・H・モリッツと知り合いだったから、彼にこう言ったんだ。「おい! よくも『プリーチャー』を奪ったな。俺はあの作品のナンバー1ファンなのに!」って(笑) すると彼が「実は『ザ・ボーイズ』の企画もあるんだ。映画にするつもりだったけど無理そうだから、ドラマ化を考えてる。興味あるかい?」と言うから、僕は「ああ、もちろん。じゃあ、俺はこっちをいただこう」って話になったんだよ。(クリエイターの)セス(・ローゲン)、エヴァン(・ゴールドバーグ)は、すでに『プリーチャー』を通してガースと家族のような関係になっていた。そこに僕も今回入れてもらったんだ。

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――本作はスーパーヒーローそのものだけでなく彼らを取り巻くエンターテイメント業界も風刺の対象にしていますね。ドラマ化するにあたってどのような狙いがあったのですか?

セスとエヴァンと僕はそもそもスーパーヒーロー神話の矛盾を指摘したかったんだ。現実世界にスーパーヒーローたちがいたらどうなるかを描きたかったんだよ。そして脚本家チームと議論を重ねるにつれて、ワクワク感が増してくるのを感じた。議論開始から2週間後くらいに、"なんてこった、この作品はすごく現代に即した内容になりそうだ"と気づいた。掘り下げていくほどにその傾向が強まったよ。

本作はセレブリティと政治の混合なんだ。特別な力を持っている人、例えば大企業や政治家、セレブリティがソーシャルメディアを使って、一般人の不利益になるようなことをしたらどうなるか、ということなんだ。プロのアスリート選手と契約の関係でもある。警備の民営化や国際関係、メディア消費についても描いている。ワンマンな人がエンターテイメント界でいかに好き放題やっているか。そしてもちろん、スーパーヒーローについての話でもある。こんなにもあらゆるものに関連した話になるなんて、僕らもびっくりしてるんだ。数年前に製作をスタートさせた時には、ここまで現代社会を如実に反映したものになるなんて予想していなかったからね。

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――いつ本作に着手されたのですか?

僕が本作に関わるようになったのは2015年だよ。まだトランプが大統領に選ばれる前だね。だから、その当時は(お騒がせセレブとして有名な)キム・カーダシアンがホワイトハウスに行って囚人たちの釈放を求めるロビー活動を行うようなことは現実にはあり得ないと思ってたんだ。

その頃にガースと話して、彼がコミックを作る上で何をインスピレーションにしているのかを聞いたんだ。彼は、最悪のセレブと最悪の政治を絡めたら何が起きるのかに興味があると話してくれたよ。トランプが大統領に選ばれた時、僕らは第1話の脚本を書いているところだった。

本作にある性的暴力のシーンをどう描くかについては慎重に取り組んだよ。多くの女性スタッフと議論を重ね、被害者となるスターライト役のエリン・モリアーティともじっくり話し合った。僕がこれまでにやった最もシリアスなシーンだったので、正しくやりたかったんだ。実はもともとの話では、シーズン半ばでスターライトが自分を傷つけた相手(ディープ)にひそかに報復するはずだった。でもMeToo運動が起きたことでストーリーを変更し、彼女が自分の受けた仕打ちを公表するという話に変えたんだよ。

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――本作はいろんなテーマを盛り込み、それらすべてをうまくスーパーヒーローに絡めていますよね。ヒーローものがエンターテイメント界を席巻していることはどう思われますか?

スーパーヒーローものは大好きだよ。マーベルの映画は全部観たしね。『ザ・ボーイズ』を作ったからって、決してああいう作品を見下してるわけじゃない。ストーリーが良くできていて面白いし素晴らしいよ。ただ、スーパーヒーローに限らずどんな神話でも同じだけど、あまりにも大きく膨らんでしまった神話というのは批評してみると面白い面が見えてくるものなんだ。根源的に、スーパーヒーローというのは嘘っぱちだと思ってるよ。だって僕ら人間はみな自分勝手なのに、スーパーパワーを得たらいきなり高潔になるなんておかしいだろう? パワーを得ただけじゃ依然としてドジで危なっかしいままだと考える根拠はいくらでもあるんだ(笑) そんな人が実在したらすごく危ないよね。だから、本作の脚本家チームのルールは、スーパーヒーローの神話と厳格な現実を組み合わせることだった。ひとたびそう考えてみると、スーパーヒーローはツッコミどころ満載なんだよ。例えば魚と話ができるとかね。

とはいえ、本作の舞台は現実世界なので、パロディ要素を入れたりはしないよ。最初からそこははっきりしていた。もしも『裸の銃(ガン)を持つ男』のスーパーヒーロー版なんて作ったら、今回みたいな成功はなかっただろう。

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――原作のヒューイは俳優のサイモン・ペッグがモデルですよね。サイモンはドラマ版ではヒューイの父親役を演じています。彼はどのようにして本作に関わるようになったのですか?

サイモンは原作の画を担当したダリック・ロバートソンと親しいんだ。たしかダリックがヒューイの外見を彼そっくりにしたことがきっかけで知り合ったんじゃなかったかな。だからサイモンはこの作品のことはずっと前から知っていて、本作が映像化されたらヒューイを演じるのかという質問に対しては少し前まで「演じられたらいいね」と言ってくれていたんだ。でも最近のインタビューで「今ではヒューイ役をやるには少し老けてしまったけど、彼の父親ならやれるんじゃないかな」と話していた。だから彼を父親役に起用したんだよ。

キャスティング・ディレクターが彼のエージェントに連絡して、「サイモンがヒューイの父親役を本当にやる気なら、彼に演じてほしい」と伝えたんだ。そしたらありがたいことに、彼は二つ返事で受けてくれた。当時は『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のプロモーションで世界中を巡っているところで忙しかったのに、この役のために時間を作ってくれたんだ。僕が思うに、彼が出演してくれたのは、原作とそのファンに対して恩義を感じていたからだと思う。そんな風にファンを思いやれる彼のことを尊敬しているよ。

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――ドラマ化する上で、原作の中で特に残したかった部分、逆に特に変えたかった部分は?

脚色というプロセスは、ジェンガ(タワー型のパーツの一部をどんどん抜き取って最上段に積み上げていく玩具)に似ているよ。いろんな要素を切り取ってうまくまとまるように調節するんだ。コミックとドラマではフォーマットが全然違うから、調節しなければならないことは分かっていた。コミックはまるで一話完結型で、巻ごとに新しい謎が出てくるんだ。もしも毎週放送するネットワークのCBSが成人向けの作品を放送できるなら、そのままで良かっただろうね。でも配信ではイッキ見することが多い。だから一話完結型でなく連続型のストーリーにして、この素晴らしい作品の要素を再構成したんだ。絶対に見たいものは何かを話し合い、そこに謎とひねりを加えて、全8話にまとめ上げたのさ。

以前ガースがコミックを作る時のインスピレーションの一つとして、ジェームズ・エルロイのクライムノベル「L.A.コンフィデンシャル」を挙げていたんだ。無骨な男たちが無骨なことをする話だよね。だから、『ザ・ボーイズ』のシーズン1はその要素を取り入れている。一つの場所を舞台に、ひねりが加わってより大きな謎に迫っていくんだ。僕らが製作当初から大事にしているのは、ガースがくれた素晴らしいアドバイス、「キャラクターを原作とブレないように描き、それに沿ったストーリーであればどんなものでも大丈夫」ということ。キャラクターこそが本作の核だからね。

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――先程、配信の話がありましたが、本作はどういう経緯でAmazonオリジナルドラマとなったのですか?

もともとはケーブルのCinemaxで放送するはずだったんだ。でも企画が通って最初の脚本を書いたところ、彼らから本作に必要なだけの予算がないと言われた。Cinemaxの名誉のために言っておくと、彼らはだからといって予算に合うように作品の質を下げようとはしなかった。残念ながら作品が求めるだけの予算がないということで、円満に別れることになったんだ。

Amazonはちょうど何かしら派手で他とは違うものを探しているところだったから、この作品はピッタリだった。脚本を何本も送った後、めでたくシリーズ化が決まったんだ。お金の問題も解決したし、ハッピーだよ。

――予算はいくらなのですか?

具体的な金額は言えないけど、僕がこれまでに関わったどの作品よりも高額だよ。ただし、特殊効果に映画並みのお金をかけているので、十分な予算とは決して言えないけどね。あらゆるショットに対して僕らが望むものができるまで、特殊効果のパターンを30から40くらい作ってもらっているんだ。だから、第1シーズンの全8話で作った特殊効果は全部で1800から1900くらいに上るんじゃないかな。『ゲーム・オブ・スローンズ』だって映画じゃなくてドラマだけどあれだけこだわって作っているだろう? さすがに同作ほどの予算は僕らにはないけどね。その半分にも達してないんじゃないかな。でも、世界中のお金を手にしていなくても、自分が望むレベルにはたどり着ける。みんなが作品に愛情を注いで、ひたすら努力すればね。

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――キャスティングについて教えてください。ぴったりなキャストが揃っていますが、選考にはどのくらいかけたのですか?

本作は主要キャラクターが12人と、僕がこれまでに関わった作品の中で最も大所帯なんだ。主要キャスト一人を決めるのですら苦労するんだから、今回は特に大変だったね。今回のキャスティングに関して面白いのが、先にスーパーヒーローたちを決めたことだね。なぜなら、僕らにはヒーローたちのスーツを作るだけのお金は湯水のようにはなかったけれど、時間は半年以上あったんだ。だから早目にスーツの制作に取りかかれるよう、撮影の半年前にヒーローたちを配役した。最初に選んだのは、スターライト役のエリンだったと思う。その後まもなくホームランダー役のアンソニー・スターが決まり、Aトレイン役のジェシー・T・アッシャー、ディープ役のチェイス・クロフォード、クイーン・メイヴ役のドミニク・マケリゴットが続いた。主役(ザ・ボーイズ)でなく敵役(セブン)を先に選ぶというのは新鮮だったね。

その後でようやく"ザ・ボーイズ"を選んでいった。プロセスはややこしかったけど、選考自体は楽だったよ。ビリー・ブッチャーなんて一瞬で決まったからね。僕とセスとエヴァンが3人そろって「じゃ、(カール・)アーバンに電話しよう」って言ったんだ。スタジオ側の許可もすぐに下りた。とはいえ、本当に彼で間違いないかを確認するために、何カ月もかけて世界中の人に会ったよ。もちろん他にも素晴らしい人はいたけど、僕らはブッチャー役にはカール以外あり得ないと分かっていた。彼が『マイティ・ソー バトルロイヤル』で見せたカリスマ性と面白さにすっかりやられちゃってたからね。そこで候補者全員と会った後、ようやく原点のカールに戻れることになり、幸運にもカール自身も興味を持ってくれたんだ。

その後、ヒューイ役のジャック・クエイドの映像を見た。彼の映像は、ヒューイ役候補として見た最初のものだったよ。それを見て、"彼に決まりだな"と思った。ブッチャーの時と同じく、その後に他の人にも会ったけど、最初から結果は分かってたよ。

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――『ザ・ボーイズ』が始まった一方で、『SUPERNATURAL』はついに終わりを迎えますね。15年間を振り返っていかがですか?

これだけ長い間続けてきたものが終わるのはやはり辛いものがあるね。でも、今感じているのは愛と感謝だよ。俳優にもファンにも恵まれて、本当に素晴らしい道のりだった。この作品は多くのものをもたらしたと思う。大勢の人たちを一つにした。この作品自体が素晴らしいものだし、誇りに思うよ。でももっと誇らしいのは、この作品をきっかけにしてチャリティ活動が広がるなど、様々なポジティブなエネルギーを与えられたことだね。これからもずっとその流れが続いていって、より大きくなってくれるよう願っているよ。

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『ザ・ボーイズ』シーズン1はAmazon Prime Videoにて配信中。

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Amazon Original『ザ・ボーイズ』