『SHERLOCK／シャーロック』クリエイター、アガサ・クリスティーとシャーロック・ホームズの影響を語る

大ヒットドラマ『SHERLOCK／シャーロック』のマイクロフト・ホームズ役で知られるマーク・ゲイティス。同作で俳優だけでなく、クリエイター、脚本家、プロデューサーも兼任するように、様々なミステリードラマに深く関わってきた彼が、自身のインスピレーションの源について語った。米Varietyが伝えている。

先人に学びつつ、新しいものを模索

マークといえば、『SHERLOCK／シャーロック』だけでなく『名探偵ポワロ』『ドラキュラ伯爵』『リーグ・オブ・ジェントルマン　奇人同盟！』などの脚本を担当。今年7月に本国イギリスでリリースされた『Bookish（原題）』では、実は念願だったという探偵役として主演する傍らで脚本も執筆している。

子どもの頃からアーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ小説シリーズのファンだったマークは、「ホームズ自身が“日の下に新しきものなし”と言っています。人々をどうやって驚かせるか、まだ誰もやっていないことは何かを考え続けなければなりません」と、あらゆるものは必ずすでにあったものの繰り返しに過ぎないと犯罪について論じたホームズのフレーズを引用しつつ、物作りについて語る。

そんな彼がコナン・ドイル同様に深く影響を受けたのが、過去に誰もやっていなかったことをやった人の代表格であるアガサ・クリスティーだ。当時のミステリーの常識を次々と覆した“ミステリーの女王”について、「彼女は犯人当てゲームのあらゆる可能性を思いつき、それを最初にやってしまいました。忌々しいことにね。結局のところ、常に目指すのは人を驚かせる新しい方法を見つけることなんです」

ミステリーファンの中には、小説やドラマの中のキャラクターとともに自分も謎解きを楽しむ人も少なくない。それが、マークの「相手を驚かせたい」という挑戦をいっそう難しくしている一因でもある。例えば、マークは『SHERLOCK／シャーロック』制作当時、「犯人は必ず“画面に2度登場する最初の人物”」というある人の言葉を耳にし、調べてみるとその通りだった。そこでマークはシーズン2の脚本を変更し、“定石”を覆している。

ここ数年、ミステリー作品として“コージー・クライム”（性的描写や暴力描写がなく、気楽に楽しめる犯罪捜査ドラマ。謎解きを担うのは素人探偵）が流行っていると言われるが、マークは“気楽に”楽しむようなものとは違うミステリーを目指している。「その言葉に込められた懐古主義は好きですが、コージーという言葉は“気楽なもの”という印象も与えてしまいます。でも、そうある必要はなく、ちゃんと“牙”を持っていていいんです。多くの犯罪は、絶望や悲しみに根ざしているんですから」

ここでも彼はクリスティーを引き合いに出し、彼女の作品は大衆から支持されながらも、実際には社会に対する鋭い批評も多く含まれていたと指摘する。「皆さんが思っている以上に、彼女の作品には強烈な社会的コメントがたくさんあるんです」

マーク自身、リサーチのためにスコットランドヤードの犯罪博物館（通称ブラック・ミュージアム）を訪れた際には、実際の事件の暗さや救いのなさを感じたという。その影響もあり、最新作の『Bookish』では事件の「後」に起こることも描くことにした。

同作でマークが演じる主人公ゲイブリエル・ブックは同性愛者だが、同性愛が違法な時代（1946年のロンドン）だったがゆえに、幼なじみの女性トロッティと偽装結婚をしている。彼は書店を営む一方、犯罪捜査で警察を手助けできるほどの頭脳を持つ。

「同性愛者の主人公を歴史的な背景の中に置くことで、その時代と社会の違った側面を照らすことができます。時代劇でありながら、まだ深く掘り下げられていない領域です。当時は、表面下で様々な変化が起きていました。戦時中に女性たちは（出征した男性の代わりに）働き、社会に貢献する自由を手に入れたのに、戦後はまた台所に戻れと言われた。人々は“なぜ昔に戻らなきゃいけないのか？”と疑問を持ち始めていたのです」

マークの作品には常に「時代を超えた魅力」と「時代の先を行く感性」が共存する。それが、『SHERLOCK／シャーロック』がもともとはヴィクトリア朝の時代のキャラクターを現代に置き換えても成功した理由の一つだ。『Bookish』も、シーズン1のお披露目前にシーズン2更新が決まっている。コナン・ドイル、クリスティーから学ぶ彼の引き続きの活躍に期待したい。

『SHERLOCK／シャーロック』シーズン1～4はU-NEXT、Huluにて配信中。（海外ドラマNAVI）

参考元：米Variety