人気リーガルドラマ『SUITS/スーツ』のパイロット版では、リック・ホフマン演じるルイス・リットが悪役になり得るキャラクターとして描かれたが、「本編ではその設定があまり追及されなかった」と米Screen Rantが指摘している。
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複雑で魅力的な脇役という位置づけに
本シリーズは、ニューヨークの敏腕弁護士ハーヴィー・スペクターと、天才的な記憶力を持つ無資格弁護士マイク・ロスがコンビを組み、法律事務所で数々の案件に挑む姿がスリリングかつスタイリッシュに描かれる。
パイロットエピソードの冒頭では、ルイスが上司ジェシカに度々否定されるシーンが描かれ、彼の能力と野心がハーヴィーに比べて軽んじられていることが明示される。これはルイスが将来的に「大きな敵」として描かれる伏線であり、観る者に期待を抱かせる設定だ。実際、ルイスは頭脳明晰で、マイクが弁護士の資格を持っていないという秘密を知れば、ドラマの展開を大きく変えられる立場にあった。
またルイスは、ハーヴィーには及ばないものの法務スキルは卓越しており、職務上の劣等感や部下への対応は悪役としての素質を十分に備えていた。特に若手アソシエイトへの高圧的な態度や、自身の評価に対する過敏な反応は、悪役誕生の起点として申し分ないものだったと言える。
ところが、シリーズはすぐに彼が悪役になり得るシナリオを覆し、ルイスを複雑なキャラクターとして描く方針に切り替えた。第2話以降でルイスは完全な悪役にはならず、ハーヴィーやマイクとの関係性で善悪の境界を揺れ動く人物として描かれることになる。
シリーズ後半、ルイスはマイクの秘密を知った際にジェシカに脅しをかけ、ポジションを取り戻すという強硬な行動を見せるものの、最終的にはマイクを許し、敵対者としての立場を取らなかった。結果として、ルイスはシリーズ全体で最も複雑で魅力的なキャラクターの一人となり、「本格的な敵」としての役割を負うことはなかった。
総じて、『SUITS』はマイクとハーヴィーの物語を中心に描かれるため、ルイスを本格的な悪役として据えることは、シリーズ全体のトーンを大きく変えてしまう可能性があった。結果的に、パイロットで提示された悪役の要素はほとんど活かされず、ルイスは複雑で魅力的な脇役という位置づけに落ち着いたと言える。初回の伏線を回収しなかったことは惜しいが、最終的にはシリーズのドラマ性を損なわず、彼の人間味あふれるキャラクター像を際立たせる形になったのだ。
『SUITS/スーツ』全9シーズンはNetflix、Hulu、U-NEXTで配信中。(海外ドラマNAVI)