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アガサ・クリスティーが自身の作品の映像化に不満だった理由とは?

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アガサ・クリスティー

“ミステリーの女王”と呼ばれ、その作品の売上は聖書、シェイクスピア作品に次ぐと言われるアガサ・クリスティー。作品は舞台やドラマ、映画、アニメ、ラジオドラマなどになってきたが、クリスティーの生前に作られたその多くは本人に気に入られていなかったという。

『オリエント急行殺人事件』にあった「許せない過ち」

1920年に出版された「スタイルズ荘の怪事件」により、30歳にして作家デビューを果たしたクリスティー。彼女の作品が最初に映像化されたのはその8年後の1928年で、短編集「謎のクィン氏」に収録された一編、「クィン氏登場」をもとにした白黒サイレント映画『The Passing of Mr. Quin(原題)』だった。

それからおよそ100年、エルキュール・ポワロ、ミス・マープルという有名なキャラクターを生み出した彼女の作品はいくつもの映画やドラマとして生まれ変わってきたが、満足のいかないものもあった。その最たる例が1960年代に作られたミス・マープル映画シリーズだ。マープル作品の「パディントン発4時50分」やポワロ作品の「葬儀を終えて」といった原作をマーガレット・ラザフォード主演で映像化したものだが、アカデミー賞や大英帝国勲章を持つ名優のマーガレットの実力をクリスティーは賛辞しつつも、彼女が演じた、おとぼけでコミカルなマープルは「自身の思い描くイメージとはまったく異なる」と秘書に漏らしていたという。

映像化でたびたび見られたコミカルな要素は、クリスティーにとって受け入れがたいものだったようだ。ポワロの有名な作品の一つ「ABC殺人事件」をもとにした1965年の映画『The Alphabet Murders(原題)』について、クリスティーは「友人、出版社から見ないように忠告された」と記しているが、ポワロ役を当初アメリカのコメディアン、ゼロ・モステルが演じるはずだった(クリスティーが拒否したことからトニー・ランドールに変更)ことも示すように、こちらもコミカルな要素が含まれていたことから不興を買うことに。

イングリッド・バーグマン、ショーン・コネリー、ローレン・バコールといったオールスターキャストで制作され、アカデミー賞も受賞した1974年の映画『オリエント急行殺人事件』ですら、クリスティーにとっては不満の残るものだった。著者はその理由として、ポワロ役のアルバート・フィニーが自身の大きな口髭をコミカルにいじる点は「どうしても許せない過ち」だとしている。

もちろん原作にも、ポワロの口髭の大きさや強い自惚れ、ミス・マープルのおしゃべりで噂好きな老婦人といったコミカルな要素が、語り手や登場人物の視点から綴られることはある。しかし、それはあくまでも彼らが犯人や容疑者を油断させてうまく話を聞き出すための「表向きの顔」とも言うべきものであり「本質」ではない。ちょっとした犯罪や犯罪未満の事件を見逃すこともあるものの、クリスティー作品の登場人物は基本的に法の守護者であり、極悪人に対する私刑を認めるか否かで思い悩んだり、無慈悲に殺された知り合いを思って涙を流したりするのだ。

クリスティーの守護者としてポワロのコミカルさを排除したデヴィッド・スーシェによる『名探偵ポワロ』が今も愛され続けるのは、作者の思いを正しく伝える作品だからこそなのだろう。クリスティー自身は1976年に没したため、1989年に始まった同作を見ることは叶わなかったが、間に合っていればお眼鏡に適ったことは間違いない。

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参考元:米Slash Film英Radio Times

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海外ドラマNAVI編集部

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