『LAW& ORDER』や『SUITS/スーツ』、『リンカーン弁護士』など、日本でも人気の高いアメリカの法廷ドラマ。エンターテインメントとしてはたのしめるが、物語を盛り上げるために、あるいは実際の法手続きの複雑さを省くために、現実の裁判ではほとんど起こらないようなケースを描くことがある。そんな、ドラマでは見かけるのに実際にはありえない場面とは?
よく使われる「責任能力」
法廷ドラマでは、被告人の精神的健康状態について論じることがある。まず、精神疾患を持つ人が他人に暴力を振るう姿を映し、その人を法廷に立たせる。このような責任能力を争う場面はテレビドラマで度々描かれるが、実は不正確な表現。
まず、アメリカの薬物乱用・精神衛生管理庁は、精神的疾患や障害を持つ人々がそうではない人よりも暴力犯罪を犯す可能性が高いわけではないことを認めている。さらに、責任能力が争点となるのは全体の1パーセントのみで、成立するのは毎年30件程度とのこと。
話を脱線させる弁護士
余談はドラマではいいアクセントになるが、現実の法廷ではあってはならないこと。裁判中に話が脱線することはありえないことではないものの、望ましいことではない。開廷・閉廷時の余談は、陪審員の注意を事件の重要なポイントからそらす可能性があり、弊害をもたらしかねないからだ。さらに、証人に尋問するときは関係のない話をはさむことはできない。ジョン・ジェイ・カレッジ・オブ・クリミナル・ジャスティスに勤めるルーシー・ラング氏によると、複合質問や不適切な質問など、好ましくない状況につながる可能性があるという。
必ず裁判にかけられる
法廷ドラマは法廷がなければ成立しない。さもなければ、それは警察ドラマか法律ドラマだ。だが、実際に起きるほとんどのケースは、法廷に持ち込まれない。訴訟は金銭的にも時間的にも負担が大きいため、できる限りプロセスを減らす方が好ましいのだ。そのため、民事訴訟は裁判以外で解決することが多く、Harvard Business Reviewによると、90パーセント以上の事件がその形で解決しているという。
短縮される「ミランダ警告」
法廷ドラマを見たことがある人なら、「ミランダ警告」を聞いたことがあるはず。「あなたには黙秘権がある」というものだ。あまりによく耳にするため暗唱できそうとさえ思ったことがあるかもしれない。
しかし、ドラマでは間違ったタイミングで読み上げられており、なおかつ完全版を聞かせてもらえることはない。実際には、勾留され尋問を受ける前に必ず読まれなければならないのだ。ミランダ警告には「あなたには黙秘権がある」以上のものがあり、正しく権利を告知しなければ、裁判中に発言を止められ、まれに却下されることもあるという。
被告人が証人を襲う
法廷ドラマでは目にする機会があるのに、実際の法廷で暴力沙汰が起きることはめったにない。加えて、裁判所には武装している職員がおり、万が一の事態が起きても収束することができる。現実の裁判には騒ぎなんてないもので、被告人は弁護士からどのように振る舞い、いつ何を話すべきか指導される。想像に難くないが、身体的に訴えれば悪い結果につながってしまうからだ。
医療ドラマでよく見るが、実際にはありえないこと6選も併せてチェックしてみてほしい。(海外ドラマNAVI)
参考元:Substance Abuse and Mental Health Service Administration, Justia, Wired YouTube, NOLO, MirandaWarning.org
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