2022年11月、ファイナルシーズンとして構想されていたシーズン5に到達する前に打ち切られてしまった米HBOのSFドラマ『ウエストワールド』。クリエイターのジョナサン・ノーランはまだ諦めていないようで、作品をきちんと締めくくる気持ちが「100%ある」と述べている。
「一度始めたストーリーはちゃんと終わらせたい」
およそ1年半前にシーズン4をもっての打ち切りが発表された『ウエストワールド』。批評家から高い評価を得ていた作品の突然の終了は業界に衝撃を与えたが、ノーランはこのことを教訓として捉えるつもりはないようだ。
製作総指揮として参加した、世界的人気ゲームをドラマ化した『フォールアウト』がリリースされたのに合わせて、米Hollywood Reporterの取材を受けたノーランは、「『ウエストワールド』のために思い描いていた当初のエンディングを何かしらの形で実現させるつもりはあるか?」と問われて「100%イエス」と返答。「僕たちは完璧主義者だから」と理由を説明した。「(兄クリストファー・ノーランとともに脚本を執筆した2014年の映画)『インターステラー』も抱えていたから、『ウエストワールド』を作るのに8年もかかったし監督もほかの人に交代してもらった。でも、一度始めたストーリーはちゃんと終わらせたいんだ」
続けて「僕は作り上げたものをマジでめちゃくちゃ誇りに思ってる。本当にかけがえのない経験だった。振り返って後悔しか感じないなんて間違いだと思う。完成させたいという思いはいまだに強いよ」と胸の内を明かした。
『ウエストワールド』は過去4シーズンでエミー賞に54ノミネートを果たし、そのうち9度受賞と、HBOを代表する作品だった。しかし、脚本や物語の一貫性に対する批判が上がり、視聴率が低迷するように。その後、さらに追い打ちをかけるように2022年末、Warner Bros. Discoveryの大規模合併に伴って、HBOの動画配信サービスであるHBO Max(現Max)から無料の広告付きプラットフォームへと配信先が移行された。ともすれば侮辱とも取れる措置だが、ノーランは「無料の広告付き動画配信サービスでリーチできる人の数は、サブスクリプションサービスよりもはるかに多い」と前向きにとらえているようだ。
2010年代前半に人気ドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』を手掛けていたノーランは、ドラマ黄金期に盛衰を経験して学んだ教訓はあるかと聞かれると、「もしもその“教訓”というものが、何かの複雑さや奇妙さを和らげることなんだとしたら、僕はその教訓を学びたくない」とコメントしており、攻めの姿勢を貫く覚悟を見せた。
今年初めには同作でドロレスを演じたエヴァン・レイチェル・ウッドも結末が気になって眠れぬ夜を過ごしていると話すなど、ファンのみならずキャストも望みを捨てきれずにいる『ウエストワールド』の結末。クオリティも含めてノーランの望み通りの結末を見られる日は来るのだろうか?
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Photo:『ウエストワールド』© 2016 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.