巨大化で先を越された時は思わず絶叫!『アントマン&ワスプ』ペイトン・リード監督インタビュー

10周年を迎えたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作である『アントマン&ワスプ』が8月31日(金)より公開となる。2015年の『アントマン』のキャスト&スタッフが再集結し、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラストを受けて作られた本作について、ペイトン・リード監督を直撃! 年々大きくなるMCUでの共同作業の仕組み、本作のストーリーを掘り下げていった過程、大きさがコロコロ変わるアントマンとワスプを描く楽しさなどについて語ってもらった。

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――『アントマン』に続いて本作の監督をすることが決まったのはいつですか?

1作目が全米で2015年7月に公開されてとても評判が良かったので、たしかその数ヵ月後に幸運にも続編を作れそうだと思い始めた。キャラクターを次にどうしたいか、2作目はどういう作品になるかについてのアイデアはあった。スコットとホープの物語だ。二人がチームとしてどううまくやっていくかを学ぶこと、そしてそれがどういう意味を持つのかということ。それが核となるんだ。

マーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれているのも気に入っているよ。もちろんキャプテン・アメリカとかファルコンとかみんなが出てくれることもあるけど、スコットとホープの関係は、マーベルコミックの世界(が大きく展開していること)に恩恵を受けている。それが僕にとってワクワクする部分だ。二人がヒーローとして一緒に活動するだけでなく、複雑な関係性を描ける。どうしたら男女として共存できるか。性別の闘争といったようなものだね。

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――MCUという巨大な世界の作品を作るにあたり、ほかの作品の監督や脚本家と話をされているそうですね。具体的にどういう風に、どのくらいの頻度で情報を共有されているのでしょうか? また、プロデューサーのケヴィン・ファイギはそこにどう関わっているのでしょう?

とてもいい質問だね。僕らはとても頻繁に会話を交わしているんだ。『アントマン』シリーズは基本的にMCUにおいて非常に限られたエリア、サンフランシスコの片隅で起きていることを描いていて、サノスなどが関連したより大きなストーリーとは違う独自の世界なわけだけど、そうはいってももちろんほかの作品と同調させる必要はあるからね。だから、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で監督を担当した(アンソニー&ジョー・)ルッソ兄弟や、その3作で脚本を執筆した(クリストファー・)マルクスと(スティーヴン・)マクフィーリーとはよく話したよ。

話す内容は、MCUで何が起きているかについてだ。だから、本作に取りかかる前に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラストがどうなるかは聞いていた。その情報に基づいて本作のエンディングを考えていったんだ。MCUに関わる僕らはみんな、それぞれが独自のストーリーを綴りながらも、同じ世界にいることはしっかりと意識しているんだよ。

そしてケヴィン・ファイギの頭の中にはいわば、MCUの"世界地図"が入っているんだ。とはいえ、僕らはそれぞれの"地域"で自分たちのストーリーを好きに変えることができる。本当に楽しいよ。自分たちの創造性に制限をかけられることなく、仲間の作品に刺激を受けて、それぞれのやり方でヒーローたちのストーリーを描きつつ、みんなで同じ世界を構成しているんだ。

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例えば、『アントマン&ワスプ』の冒頭では、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でスコットに起きたことをみんなが引きずっている。彼がアベンジャーズに混じって戦ったことは無視するわけにいかなかったからね。スコットはハンク・ピムにとって悪夢と言えることをやってしまった。トニー・スタークと政府にアントマンのテクノロジーを暴露してしまったんだ。これは『アントマン』でハンクが言っているように、彼にとって最悪の事態だ。だからこれが『アントマン&ワスプ』におけるいいスタート地点となった。スコットとハンクの間に何が起きたのか、ということだ。その結果、ホープはどうしているのか? スコットにどんな結果をもたらしたのか? こうしたことを考えるのはとても楽しかったよ。

――制限がないということは、『アベンジャーズ』4作目がどういう内容になるのかが非常に気になるような『アントマン&ワスプ』のラストについても、本作のスタッフで決めたということですね?

そうだね。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の非常に劇的なエンディングに合わせた描写は入れる必要があると思っていた。製作当初はそのことをあまり考えていなかったけど、たしか脚本執筆の段階になって、どうやるべきかを決めたと思う。実は本作のエンディングには別のバージョンがあって、そちらだと駐車場にいる顔ぶれが違うんだ。その後、どのキャラクターがいるべきか、何が起こるのかをあらためて精査して、今の形に落ち着いたんだよ。...でもこれ以上は話せないんだ。あまりしゃべっているとマーベルに睡眠薬を注射されちゃいそうだからね(笑)

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――スペシャル・ファンミーティングの席で、本作を作るにあたってまず、アントマンとワスプにやらせたいことをリストにしたとおっしゃっていましたが、そうして実現したシーンの中でお気に入りは?

1960年代の原作コミックでお気に入りの画があるんだ。ハンクとジャネットが一緒に映っているんだけど、ハンクが大きくて、その横に小さいジャネットがいるという図でね。だから、学校のシーンでスコットとホープのサイズがバラバラなのは気に入っているよ。

あと、本作ではスコットのスーツの調子がずっと悪いんだけど、彼が普通のサイズに戻った時に同じサイズのホープとすごく近い距離感になってロマンチックな雰囲気になるところも好きだね。そういうロマンスの要素は他のマーベル作品より強いかもしれないな。

――アントマンのサイズといえば、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でアントマンの巨大化が初めて描かれたわけですが、あなたの中でそもそも巨大化させる考えはあったのですか?

シリーズ1作目を作った時から、もし2作目が実現すればやりたいと思っていたよ。だから、ケヴィン・ファイギから『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でアントマンが巨大化すると聞いて「僕がやりたいのに!」って叫んだくらいなんだ(笑)

『アントマン&ワスプ』の製作が決まった時、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を受けて作る必要があるとわかっていた。アントマンが巨大化するのはもちろんだけど、そこからさらに一歩踏み込んで、スーツが不調なせいでいろんなサイズになってしまうという表現を加えたのも楽しかったね。

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――キャスティングについても聞かせてください。ミシェル・ファイファー、ローレンス・フィッシュバーン、ハンナ・ジョン・カメンなどが本作で新たにMCUの仲間入りを果たしましたが、MCU作品のほとんどでサラ・フィンが一手にキャスティング・ディレクターを務めてきましたよね。ミシェルたちを選んだのはあなたかと思うのですが、キャスティングの連携はどう行われているのでしょう?

サラは素晴らしいよ。彼女はMCUのこれまでの作品すべてに関わっていて、若手からベテランまで把握してくれているんだ。

でも、ミシェルたち3人を選んだのは僕らだよ。ハンクの妻でありホープの母であるジャネットのストーリーを語る上で彼女以外に適任はいないと思ったし、ありがたいことに出演を承諾してもらえた。そしてビル・フォスターは、僕が少年時代に原作コミックを読んでいた頃から大好きなキャラクターなんだけど、彼ならハンク・ピム博士の宿敵としてぴったりだと思った。演じてくれたローレンス・フィッシュバーンも、ミシェル同様に第1候補だったんだ。

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そしてゴーストに関しては、(原作では男性である)あのキャラクターを女性にすると決めた時、フレッシュな俳優を使いたくなった。あまり観客に知られていない人にね。そしてハンナは素晴らしかった。オーディションでたくさんの女優に会ったけど、彼女にはこの役に必要な身体能力と冷静さがあり、大物俳優たちを前にしても臆することがなかった。

ハンナの演技にすごく感心したから、監督仲間へ向けてこういう手紙を書いたんだ。「私はハンナと一緒に仕事をしたのですが、彼女は本当に素晴らしいので、もし機会があれば起用することをお勧めします。スティーヴン・スピルバーグより」ってね(笑)

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――『アントマン』シリーズの特徴の一つとして、アントマンやワスプ、車やビルのサイズがコロコロ変わりますよね。とはいえ、そうしたシーンの全部がデジタルで描かれているわけではなく、いくつかのシーン、例えば本作で5mほどの大きさになったアントマンがトラックをスクーター代わりにしてカーチェイスを繰り広げる場面は、小さめのトラックを作ってアントマンが大きく見えるように撮影したのかと思ったのですが、デジタルを使ったバージョンと、小道具やセットのサイズを変えることでデジタルを使っていないバージョンの割合を教えてもらえますか?

実はあのカーチェイスのシーンはデジタルを使っているんだ。まず本物のトラックを傾けて撮影して、それにポールの動きを組み合わせる形でね。でも、サンフランシスコの街なかで真昼間に展開するカーチェイスをリアルに見せたいと思っていたから、デジタルを使っていないように受け取ってもらえたのなら嬉しいね。そして、本作全体のデジタル:アナログの割合は80%:20%かな。

――本作のラストでアントマンとワスプがMCUに帰ってくるかどうかが明言されていませんでしたが、彼らは今後も関わってくるのでしょうか?

アントマンとワスプのMCUにおける状況は気に入っているよ。先程も話した通り、彼らは必ずしも直接、インフィニティ・ストーンやガントレットのストーリーに関わっておらず、世界の片隅でやっているんだ。そんな彼らが今後アベジャーズとどう関わるのか...そこにミステリーがあるのは好きだね。彼らはどちらもとても生き生きとしたヒーローだ。そして、『アントマン&ワスプ』では、MCU全体で大事な存在になることについて、彼らがとても強く主張するのを、目にしてもらうことになるよ。

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『アントマン&ワスプ』は8月31日(金)より全国ロードショー。
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Photo:
ペイトン・リード監督
『アントマン&ワスプ』
©Marvel Studios 2018