10周年を迎えたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作である『アントマン&ワスプ』が8月31日(金)より公開されるのに合わせて、3年ぶりに来日した主演のポール・ラッド(スコット・ラング/アントマン役)を直撃! 主演・脚本家として身長1.5cmの愛すべき最小・最強ヒーロー、アントマンに込めた熱い思いとともに、自身が大ファンだったサバイバルドラマ『LOST』のケイト役で知られるエヴァンジェリン・リリー(ホープ・ヴァン・ダイン/ワスプ役)との共演が叶った時の心境をあらためてふり返ってもらった。
――3年前に『アントマン』で来日された時もインタビューさせてもらったのですが、覚えていますか?
君のこと?(両手でガッチリ握手を交わしながら)当たり前じゃないか! もちろん、覚えているよ。また会えて嬉しく思っているよ。
――本当ですか? いやぁ、ウソでもそう言っていただけると光栄です(笑) 東京でのスペシャル・ファンミーティングにも参加させていただきました。
そうだったんだね。アントマンを愛してくれてありがとう。日本のファンのみんながとても温かく迎え入れてくれたことに、心から感謝するよ。
――ところで、あなたは『アントマン』に続いて本作でも脚本家として参加されていますが、どのようなスタンスで執筆に関わっているのですか?
みんなでアイデアを出し合い、チームで作り上げていく感覚だね。実は『アントマン』を作っている段階から、監督のペイトン・リードやプロデューサーのスティーヴン・ブルサールと、「もしも次があるなら、どんなストーリーがいいかな?」なんて話し合っていたんだ。そこでいくつか方向性を出していたら、『アントマン&ワスプ』を本当にやることになって、新たにクリス・マッケナ、エリック・ソマーズ(『スパイダーマン:ホームカミング』の脚本家コンビ)たちとチームを組むことになったんだよ。
――『アントマン』が大成功しただけに、今回はさらに気合いが入ったのでは?
『アントマン』の時は、僕がライターとして契約する前に、すでに脚本の骨子ができ上がっていたので、それに沿って書いていくだけだったけど、今回はゼロからのスタート。オリジナルストーリーを作るところから参加している点が大きな違いだね。僕らは、一つの部屋にこもって、思いついたアイデアをメモにして壁にどんどん貼っていき、順番やつなぎなどを考えながら議論を重ね、脚本を少しずつカタチにしていったんだ。まさに、クランクインのギリギリまで悪戦苦闘が続いたよ(笑)
――本作では、あなたらしいコメディセンスや人間味あふれる視点が数多く観られました。脚本を書く上で、特に心がけたこと、意識したことは?
コメディでも、ドラマでも、アクションでも、僕のアプローチで一貫しているのは、「一般的な視線」を大切にすること。自分が演じているキャラクターが、観客にとって共感できるような存在であってほしいから、ヒーローだからといって一段上に構えるのではなく、スコットのヒューマンな側面に焦点を当てるようにしているんだ。人が共感するのって、自分と同じような葛藤や悩みを抱えていたり、あるいは短所を持っていたり、そういう部分だと思うからね。
――元泥棒はさておき(笑)、なかなか定職に就けない中年のバツイチ男。生き甲斐は、元妻の元で暮らす愛娘だけ...確かにスコットは、どこか欠けているけれど心根は優しくて人間臭いキャラクターですね。
だから、ソーやハルクとはまた違ったカタチの共感を感じてもらいたいんだ。例えば、君が急に「ヒーローになってくれないか?」ってハンク・ピム博士から頼まれて、アントマンの特殊スーツを渡されたら、スコットと同じように困惑するだろ? そういう身近な視点からアプローチしたい、というのが僕の中には常にあるんだ。
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――MCUという大きな枠の中で、他の作品との連携も考慮されたのでしょうか? 例えばアントマンは、本作の前に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にも参戦しているわけですが。
どのマーベル作品にも言えることだけれど、僕らの大きなミッションは、MCUにフィットさせながらも、一本の映画として成立するものを作ること。確かに、『アントマン』から本作の間にいろいろな出来事が起きて、スコットが『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で戦ったことによる余波も今回のストーリーに影響を与えていることは間違いない。でも、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観ていない人もこの映画を容易に理解することができるし、『アントマン』の世界観に夢中になれるよう作られているので、MCUファンはもちろんのこと、全く知らない人でも十分に満足してもらえるエンターテイメント作品になっていると思う。
――みなさんの才能が結集し、誰もが楽しめる脚本が完成したというわけですね。
ただしMCUの場合、「最終稿ができた。よし、これで行こう!」ということはほとんどない。何かいいアイデアが浮かんだら、現場でどんどん採り入れて、脚本を修正していくんだ。そういった面では、撮影をしていても「この先、どうなって行くのかな?」と、いつもドキドキ、ハラハラしていたよ。
――今回は、アントマンの開発者であるピム博士の娘ホープがグレードアップされたスーツでワスプに変身し、あなたのバディとなって活躍します。ホープ役のエヴァンジェリン・リリーについてどんな印象をお持ちですか?
彼女はとても愉快で、才能豊かだ。よりハードになった役に対して苦悩するのでなく、それを心から楽しんでしまうような、地に足の着いた人なんだ。彼女と一緒に仕事ができるなんて最高の経験だよ。
――あなたは、大ヒットドラマ『LOST』の大ファンで、クレア役のエミリー・デ・レイヴィンに自らインタビューもしたそうですが、エヴァンジェリンは同作でケイト役を演じていました。そういった意味でも彼女との共演は特別なものだったのでは?
(驚いた表情を見せながら)よく知ってるね! 実はそうなんだ、あのドラマの大ファンで、特にシーズン1はすっごくハマったんだよ。だから、『アントマン』でエヴァンジェリンと共演できると知った時は興奮したんだ! 『LOST』のキャストや撮影についていろいろ裏話を聞くことができたしね(笑)
――スコットとホープの関係もますます気になるところですが、『アベンジャーズ』4作目ではアントマンとしてどんな存在感を見せたいですか?
『アベンジャーズ』に関して僕から言えることは何もないんだ。僕がどこまで関与するかも含めてね。ただ、ファンミーティングでも言ったけど、本作のラストで起きることが、この先の物語に影響を与えていることは間違いない...いや、ちょっと待って...間違いないかもしれないってぼかしておこうかな。一つ言えるとすれば、「もっと出番が多いといいなぁ」っていうのは本音としてあるけどね(笑)
(取材・文・写真/坂田正樹)
『アントマン&ワスプ』は8月31日(金)より全国ロードショー。
Photo:
ポール・ラッド
『アントマン&ワスプ』
©Marvel Studios 2018