近年毎年のようにアメコミ原作の新作映画が発表され、人気を博している。ここ数年、敵役(ヴィラン)に対してもスポットライトが当てられており、現在、最も凶悪と言われるヴィランを主演にした映画『ヴェノム』が大ヒット公開中だ。トム・ハーディ主演のこの映画は、危うさやミステリアスさだけでなく、親しみやすさという相反する要素をあわせ持つ彼だからこそ表現できた役柄ではないだろうか。今回はそんなカメレオン俳優とも称されるトムの過去の出演作を取り上げながら、彼の魅力について触れてみよう。
トム・ハーディが演じる数々の役柄
幅広い役柄で観る人を魅了するトム。今回の主演映画『ヴェノム』ではヴィラン役なのにも関わらず、その人物自体には凶悪さはあまりみられなかった。ブレイクのきっかけとなったクリストファー・ノーラン監督&レオナルド・ディカプリオ主演の2010年公開映画『インセプション』で知的な偽装士に扮し注目を集めたトム。2012年公開の『ダークナイト ライジング』では、マスクをつけた悪役を驚くほど魅力的に演じた。語りだけでなく、目配せの仕方や表情、仕草など、彼だからこそ表現できるキャラクターの魅力についつい引き込まれてしまう。
映画だけじゃない!ドラマ界でも活躍
映画への出演が話題となることの多いトムだが、TVドラマ界での活躍も見逃せない。Netflixにて配信している英BBCの時代物ギャングドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』。本作シーズン2でユダヤ系ギャングのボスを、そして歴史ドラマ『TABOO』では父親の復讐を誓うジェームス・ケザイア・デラニー役で主演している。本作は、トムの実の父親である劇作家、チップス・ハーディが原案を手がけている。父と共に育んだこの『TABOO』は、ストーリー上も父と子の関係性が重要なキーとなる。なお、2001年のハリウッドデビュー以降親交があるリドリー・スコットが製作総指揮として本作に携わっている。
TABOO(タブー)とは一体何なのか
英BBC Oneと米FXがタッグを組み、2017年にシーズン1が放送された『TABOO』は現在シーズン2を製作中。物語は19世紀初頭のイギリスを中心に展開。トム演じる主人公ジェームズは、アフリカに渡ったきり死亡したと思われていた。しかし、父親であるホーレスの死をきっかけに、突如ロンドンに舞い戻る。謎の死を遂げた父が残した遺産の受取人となるジェームズ。その遺産を巡り、妹だけでなく、当時圧倒的な力を持っていた東インド会社を相手取り闘うこととなる。粗野な身なりに知性を併せ持つジェームズは、アフリカでは奴隷を扱う職にあった。そのことがイギリスに帰ってからもジェームズにのしかかる。何がタブーか、見る人によってその答えが異なるドラマだと言えるだろう。
圧巻のスケールに、映画好きも目が離せない
東インド会社を相手取るなど、その胆力の大きさももちろん、ジェームズの頭の回転の速さや行動力には目を見張る。めまぐるしく進むストーリーは、もちろん歴史を知っていればより理解がしやすいのだが、知識がなくても存分にその世界観に引き込まれる。シャンデリアが吊り下げられた厳かな屋敷に衣装や小物などがリアルに再現されているため、近世のヨーロッパの装飾が好きという方にも楽しめるドラマに仕上がっている。
映画顔負けの音の演出は臨場感抜群
本作は音の効果的な使われ方も必見。タイミングの良いシーンで流れる音楽だけでなく、ドラムなどの楽器を使用した演出なども迫力満点。静まり返ったシーンに鳴り響く銃声や、「間」の使い方にもハラハラさせられる。
ジェームズを取り巻く環境や、父親と共有する秘密、ミステリー要素もアクション要素も満載の『TABOO』は、1話約60分で全8話構成。海外ドラマが初めてという方にもおススメしたい内容の濃いドラマだ(海外ドラマNAVI)
Photo:トム・ハーディ
(C) JHMH/FAMOUS