『ウォーキング・デッド』に監督として戻ってきたあの人が語る、自分のキャラが生きてたら...

大ヒット・サバイバルパニックドラマ『ウォーキング・デッド』シーズン4から7まで、エイブラハム役で出演したマイケル・カドリッツ。シーズン9第7話「楽器への想い」で監督としてシリーズにカムバックした彼が、もしエイブラハムが生き残っていたらどんな風になっていたか、また初監督エピソードについても米Entertainment Weeklyのインタビューで語っている。

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――シリーズにカムバックしてどうでしたか?

戻れて最高だよ。スタッフが両手を広げて迎え入れてくれたし、妙かもしれないけど俺が戻ったことで、アンディ(アンドリュー・リンカーン)不在の癒しになったんじゃないかと思う。励まされた気持ちになったし、少なくとも俺はそう感じた。キャストやスタッフから俺が与えられた物は、彼らも必要としていたんじゃないかな。シリーズではたくさんキャストがいなくなったから、誰かが戻って来るって価値があることだと思うしね。番組とキャスト、物語やキャラクターを知ってる人がもたらすエネルギーは否定できないよ。

それに、キャラクターが主体の脚本が本当に素晴らしかった。俺が熟知してるキャラクターが複数登場しているのも良かったし、(自分が監督する)エピソードの半分は、新しく登場したばかりのキャラクターに焦点が当てられている。そんなエピソードに携わることが出来てワクワクしたよ。エピソードの仕上がりにはすごく満足してるけど、撮影を進めていく段階で立ち止まらずを得ない時もあった。全てのシーンはストーリーボードに描いていたから何が起きるかは把握してたけど、ベテランの監督とは違って俺にとってアクションシーンは難しかった。

でも素晴らしいチームに囲まれ、特にカメラクルーは俺が間違ったことをしていないか確認してくれて助けられた。撮影の準備期間中も多大な助力を与えられ、俺が独りじゃないって支えてくれたんだ。現場で得られる全ての才能を使わせてもらって、心から監督したエピソードに誇りを持っているよ。

――最初に脚本を読んで、どんな感想を抱きましたか?

シーズン9がウェスタンの要素を取り入れていることは事前に知っていたから、『捜索者』や『シェーン』といった西部劇の名作をいくつか見てリサーチして、映画で描かれたビジュアルを参考にした。俺が監督したエピソードの冒頭で、タラが庭から歩いてくるシーンは、上手いことフレームができてるからチェックしてみて欲しい。『シェーン』の冒頭に登場する象徴的な玄関のシーンを盗んだんだ。

俺にとって興味深かったのは脚本を読み進めているうちに、特定のシーンが思いっきり語りかけてきたことだ。そのシーンを読んで、瞬時に自分がどう演出したいかが見えてきたんだよ。その一つがアーロンとジーザスが戦闘の練習をするシーンだ。あとは家にタラとジーザスがいる場面も。いかに階段や踊り場がある大きな空間を使うか、すぐに"ここはこうしたい"って頭に浮かんでくる場面がいくつかあったよ。

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対して、脚本を読んで"一体どうやって始めたらいいんだ?"って思ったアクションシーンもあった。それでストーリーボード・アーティストが、"取り掛かりから始めよう"と言ってくれて、俺が思い描いたショットを共同で練り、彼がストーリーボードに再現してくれた。ボードで再現されるにつれ、そこから俺もどう先に進みたいかが見えてきた。時には"ダメだ、こっちの方法でやってみよう。この方向から撮影しよう"って感じで前に戻り、仕上げた作業をやり直したこともあった。まさに文字通りショットごとに築き上げていったんだ。

そして、メリッサ(・マクブライド)とノーマン(・リーダス)と一緒に仕事が出来て嬉しかったね。(メリッサ演じる)キャロルが、(ノーマン扮する)ダリルの髪の毛を切るシーンは美しく仕上がったし、このエピソードで一番誇りに思っているシーンだ。大袈裟に描くことなく、二人の絆が感じられて本当に満足してるよ。ノーマンとメリッサを美しく捉えることが出来たし、二人の演技も最高だった。

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――元共演者に指示を出すのは奇妙な感じがしましたか?

幸い番組を観ていて出演もしたし、一緒に仕事をしていたからキャストについては知っている。どんな役柄か分かっていたからキャストと演出について話し合いもしやすかったし、特定のことで反対されても問題はなった。こちらが逆の意見を出すことも出来たし、クリエイティブな会話が持てて素晴らしかったよ。時には誰も思いつかないようなアイデアが出てくることもあったし、詰まるところ、意見を交わし合うのが正しいやり方だからね。

実は脚本にあったノーマンのストーリーラインを、自分たちで大幅に変えたんだ。ノーマンと脚本家のヴィヴィアン・シーが望む"これ"というポイントがあったし、それは俺も同じだった。最終的にはみんなで、ダリルがグループと離れている間に起きていた驚くべき裏話や、どうやって彼がグループに戻るのか、ダリルの暮らしぶりや空いた時間に何をしているのかといったアイデアを出し合ったんだ。

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全てが変わったタイムジャンプから2話しか話が進んでいなかったから、キャラクターを築いていくのは楽しかった。だから、そういう話し合いをするのは重要だと思ったよ。タイムジャンプの間にキャラクターに変化が起きているから、視聴者の目の前でキャラクターを発展させていくことは大切だ。そうすれば、ファンは現時点でみんながどういう状態なのか把握できるからね。

なぜ、その変化が起きたのか分かっていることもあるし、いくつかは後で発見することになるだろう。あの"X"がどこから来たのかも分かるし、その話はマジでヤバいんだ。タイムジャンプの間に、とんでもないことが起きてたんだよ。それはある時点で分かることだけど、かなり最悪なんだ。

――新ショーランナーのアンジェラ・カンはどうですか?

ただ仕事の仕方が違うというだけで、すごくいいと思うよ。ここまできたら、長いことシリーズに投資してきた人にとって新しい変化は必要だ。ある意味で、そういう人には報酬みたいなものかもね。だからキャストの立場からしたら助言を貰えて、逆に自分の助言も尊重されたら報われたように感じる。それって良い状況だよね。

――たくさんの変化が起きて、新しいエネルギーも生まれたのではないでしょうか

カンは、クリエイティブで素晴らしい何かを持っていると思う。前ショーランナーのスコット・M・ギンプルとは、全く違う方法で仕切っている。それが必ずしも良いとか悪いとかではなくて、彼がショーランナーの任務を終えたのには理由があると思う。番組を大きくするための役割を果たす時が来たんだ。

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でも個人的には原作コミックとの関連もあるし、カールや他のみんなもいてくれたらな、とは感じる。それにアンディを解放してあげたのは、物語を一新できるから良い選択だったんじゃないかな。もう誰も、"それはコミックで起きたことじゃない!"なんて言えないし、番組は原作から遠く離れてしまったから、そんなことを口にしたらバカみたいに聞こえてしまうだろう。だって設定や世界、キャラクターが訪れる場所以外は、番組が綴る物語はコミックとは関係なくなってしまったからね。視聴者が追いかけているキャラクターは大きな変化を遂げたけど、原作と比べることなく、より深く番組を楽しめるチャンスになるんじゃないかと思う。

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――新しく、聾唖(ろうあ)のローレン・リドロフと耳が不自由なエンジェル・セオリーがキャストに加わりましたが、彼らと会い意思の疎通を図ってみてどうでしたか? 初メガホンを取る監督としては、考慮すべき点が別次元だったと思うのですが...

そうだね、全てが揃っていたよ。アメリカ手話もあれば未成年のキャストもいたし、動物もいたしね! 犬と馬は米動物虐待防止協会が管理していたんだ。ヘンリー役を演じるマット・リンツが仕事に来たけど、彼は未成年だから労働時間に制限がある。彼の撮影が始まった途端に3時間半も稲妻のせいで中断になって、8時間しか働けないキャストの3時間半を失ってしまった。いやあ、もう最高だったよ(笑)。

 

でも、手話通訳士への演出説明も上手くいったし、手話のシーンに携われたのは素晴らしい経験になった。知らない人もいるかもしれないが、撮影現場には手話通訳士が常駐している。ローレンはセットでの安全を確保して、コミュニケーションを取る必要があるからね。それに加えてモニターの後ろにも、何が撮影されているか確認できるように他の手話通訳士が待機していたんだ。そうすることで、アメリカ手話が第一言語ではない通訳士が、きちんと翻訳してくれているか知ることが出来た。

演技だけでなく、初めてアメリカ手話で会話をするキャストもいたから、全てが正しく把握されているか確認し、どの方法がベストなのか模索しなくちゃならなかった。全ての会話を手話にするのか? それとも一部だけにするのか? 全てを完璧に通訳しなくても済むように、手や肩を上げて合図を送るのかとか、何を決めるのかとかね。新しいグループと新たなエネルギーの注入は、番組に素晴らしい方向性を示してくれたと思う。ファンも気に入ってくれるんじゃないかな。

――もし、ニーガンが他のキャラクターを選んでいてエイブラハムが生きていたら、8年のタイムジャンプ後に何をしていたと思いますか?

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明らかに全てが"もしも"になるけど、エイブラハムが好きなように出来るなら、最初のバリケードを突破して救世主の半分を殺してたんじゃないかな。でも事件やタイムジャンプが過ぎて、全てが起こるべくして起こったら、エイブラハムとサシャは赤ちゃんを育ててるだろうね。キャロルとエゼキエルのように、二人も難しい決断を下していると思う。エイブラハムもサシャも影響力のあるリーダーだから、グループの分裂を引き起こす役割として使われていただろうし、似たような状況に陥るんじゃないかな。だから、キャロルとエゼキエルの関係と重ね合わせてしまうな。

だけど、エイブラハムは未来を望むだろう。彼は、リックとミショーンと同じような会話をして決意を固めていた。文字通り、キャンピングカーでサシャと暮らす未来を描いて心に決め、そうしている自分を想像できていた。だから、タイムジャンプの後ではそうなっていたと思うし、心配りが出来る素晴らしいリーダーになっていたはずだよ。

 

――再び監督としてカムバックするつもりはありますか? 今後の計画は?

そう願うけど、後は製作チーム次第だね。最近カンと話をしたけど、彼女の一存では決められないこともあるし、"また監督したい"ということを伝える以外のプレッシャーをかけるつもりはない。とりあえずは様子見だ。マイケル・E・サトラゼミス(『ウォーキング・デッド』のエピソードを監督)とも話をしたんだが、『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』でメガホンを取る可能性も少し話に出たよ。だけど、これも製作側の選択だからね。もう一度監督したいということだけ伝えて、後は相手の判断次第だ。

『ウォーキング・デッド』シーズン9で、主人公リックを演じたアンドリュー、マギー役のローレン・コーハン、ジーザス役のトム・ペインらがシリーズを去った。だが同時に新しいメンバーの加入やタイムジャンプなど、番組は変化の時を迎えている。第8話でシーズン9前半の放送が終了し、後半エピソード(9話目以降)は、2019年2月11日(月)よりFOXチャンネルにてリアルタイムで配信スタート。

(翻訳/Nami)

Photo:『ウォーキング・デッド』
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