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『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』の善人ベイラー役を直撃!バーティ・カーヴェルが明かす、ターガリエン一族の真実

2026年2月17日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

ディズニープラス
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『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』

ゲーム・オブ・スローンズ』(以下『GOT』)の前日譚となる新たなスピンオフ『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』。本作の第2話で鮮烈な印象を残したのが、鉄の玉座の後継者と目されるベイラー・ターガリエンだ。重要な役どころとなるベイラーを演じるベテラン俳優バーティ・カーヴェル(『刑事ダルグリッシュ』)が、現代社会にも通ずる本作の魅力について語った。

『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』杉田智和&釘宮理恵
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鉄の玉座の正統なる後継者、ベイラー・ターガリエンの真意

――ベイラー・ターガリエンというモラルがあり皆から尊敬される役を演じてみていかがでしたか。

彼が道徳的に正しいかどうかは、そういう判断を下す状況に直面するまでわからないでしょう。これは誰にでも言えることで、自分なりの信念や価値観を持っていても、いざという時にそれが本当に自分の中にあるのかはわからない。つまり、彼がいかなる時でも、自分がプライドによって導かれるのか、権力より真実を重要視するのか確信できないように微妙に描くことが大切だと思うのです。

私がこの物語とベイラーというキャラクターに強く惹かれた理由の一つがこれです。幸いなことに、彼は真実を求める人間だとわかりますけどね。そして何よりも今の時代、英雄主義が描かれる物語を見たいと思う視聴者が多いと感じています。

ゲーム・オブ・スローンズ』の世界の素晴らしい点は、 死ということに現実味があることです。冷笑主義や現実主義が当たり前になった世界で、それでもなお英雄、善、正しい行いというものが存在するということなのです。冷酷さと残虐性で権力を維持している、滅びゆく国の王子が、鉄の拳で統治する方が楽かもしれないのに、それよりも重要なものがあると彼が決断するところが、私は大好きなのです。また、現実社会の世界を描いたような物語が必要だとも思います。

つまり、私たちは単なるエンターテイメントを作っているのではなく、世の中のリーダーたちにモラルがあれば、世界がどうなるのかということをこの作品を通じて視聴者に見せているのだと思っています。

優しいターガリエンという先入観への警告

――ベイラーは非常に優しいキャラクターですが、それを現実的に見せる上での苦労はありましたか。

魅力的なキャラクターとは物語の最初から道徳的に決めつけられない存在であるべきだと思います。ベイラーが最終的に善を選ぶのか、それとも残虐非道な力の支配されるのかは、視聴者も本人にもわからないというのが重要なのです。人間誰しもそうですが、相反する衝動が彼の中には共存しており、無数の選択肢があるわけです。ベイラーはもちろん鎧をまとった戦士であり、人の腕を切ることだって容易にできます。物語をリアルで刺激的なものにするには、ベイラーの中には激しい暴力性も深い情も等しくあり、その本質ができるだけ最後の最後まで見えないということが必要だと思います。

また、人は特定の時代や場所、環境に生まれはしますが、家系や出自だけで定義されるものでもありません。人には自由意志があり、与えられた状況をどう生きるかが人間性を形成すると思います。ですので、ベイラーを“優しいターガリエン”として最初から見るのではなく、冷酷な行動も取れる人物でもあることを覚えていてください。

『GOT』の原作小説の1冊目で、ジェイミー・ラニスターのことが他者の視点で描かれているのですが、確か「ジェイミー」というタイトルの他の章を読んでいくと、そこでは彼の視点での物語が描かれているのです。他者の視点では悪役だったのに自分の視点だと主役に見える。あの原作はそういう構造でできていますが、それで読み手は色々な視点から見て複雑なストーリーを考察するようになるのです。見る側の立場が違えば、一人の人間も全く別人のように見えます。『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』はオリジナルよりもシンプルで、一人(ダンク)のキャラクターの視点で主に描かれますが、それでもその彼の目に映る世界は複雑で、物事の色々な側面が見えてきます。宝石を光にかざしたら、それぞれの角度から違う光が見えるようにね。

――今回この作品では新鋭の若手俳優が多くいます。映画、TV、舞台にと様々なメディアで活躍されているベテランとして、そのような俳優たちに何かアドバイスを促された、またはアドバイスしたことはありましたか。

アドバイスはできるだけしないようにしています(笑)

今回彼らから聞かれたことはありませんでしたが、演技について言えるとしたら、“セリフは心の底から、本心として言わなければならない”ということです。聞くと簡単そうですが、実際これが非常に難しいのです。ですがこれが演技の本質です。だからこそ私は、参加する作品はセリフが自分にとって意味をなすものを選ぶようにしているのです。そうすれば、演じるキャラクターのセリフの裏側に立つことができ、心から意味を込められるからです。単なる紙の上での文字以上の意味を持つときこそ、生き生きとその言葉が輝く瞬間なのです。

あと、以前他の人から言われたアドバイスですが、“自分ではなくシーンの相手役に意識を向ける”と言うことがあります。どうしても俳優は無意識のうちに自分の表現に集中しがちですが、この作品には素晴らしいキャストばかりですので、相手を見つめるだけで自然に演技ができるのです。(ベイラーの弟、メイカー・ターガリエン役の)サム・スプルエルは過去にも色々共演していますし、(プラマー役の)トム・ヴォーン=ローラーは親友ですし、刺激的な友人らと共演できたのは素晴らしかったです。

また若手俳優の皆も才能豊かですが、特に(エッグ役の)デクスターは、まだあんなに若いのに非凡な才能の持ち主で、共演できて光栄です。

――本作のテーマはどのようなことだと思いますか。

他の『ゲーム・オブ・スローンズ』とは、まったく違う印象の作品ですよね。特にこの作品では、“小さな人(small people)”、つまり普通の人であるということが、どういうことかをリアルに描いています。主人公のダンクは身体的には大男ですが、ある意味とても“小さい”男です。原作者のジョージ・R・R・マーティンがよく言っている“普通の人” つまり“庶民”ですね。そしてそう言う人たちには何ができるのか、何かやることに意味があるのかをいうことを問いかけています。

先日、ある批評家が『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』は『GOT』のコメディ版だと評していたのを読んだのですが、それはこの作品を正確に表していないと思いました。純朴な人間であるダンクが、大人になったらこうなると信じていた自分の“大人像”はただの理想に過ぎないと思い諦めるのか、それとも理想の自分になるまで追求し続けるのかということを主軸に描いており、そういう点がオリジナルの世界観とは異なると思っています。

この世界で大人であるとはどういうことなのか、理想はいつか捨てるべきなのか。そういうことを問うています。そして結局ダンクは正しい選択肢の方に進んでいますよね。

――普遍的な課題と様々な形で争いを続ける人類の物語をあえて、現実社会でなくファンタジー要素を加えた世界を舞台にする理由はどこにあると思いますか。

ファンタジーを舞台にするという点に関してですが、現実と違うことが新たな視点をもたらすからだと思います。シェイクスピアなどもそうですよね。おそらくそれが効果的な手法の一つだからでしょう。ルールが分からない見たこともない世界は魅力的ですから、視聴者を引きつけることができます。そして、ファンタジー世界と現実世界との間に共通点があれば、両方を重ね合わせることもできます。

また、ファンタジーでは、現実世界の厳しい現実が同じように描かれていたとしても、それほどひどく感じないのも好まれる理由かと思います。私自身はリアルな作品も大好きですが、子どもの頃はファンタジー小説が大好きでよく読んでいました。ファンタジーの世界の想像の中では、残酷なこともそれほど酷いと感じず、安心したからだと思います。ですが肝心なのは、ファンタジーの世界で描かれていることが、実は身近な問題だと気づく瞬間があるということです。

本作もファンタジー世界が舞台ですが、いじめ、英雄、チャンピオン、正しいことをする意味があるのかどうかについて描いており、それは現代社会にも通じるといえます。

――ベイラーというターガリエン家の権力のある王族役を演じる上で、一番大変だったことはなんですか。

現実的な話をすると、泥だらけの野原で鎧を着て、トイレにも行けないことです(笑)

それでも、(トイレのことなどではなく)深刻な問題を抱えている権力者、冷酷な支配者を演じなければいけない。視聴者からそう見えなければどうしようもないわけです。カメラが回っている時に求められるベイラーとしての姿と本当の自分は、全く違うのです。ロケでは待ち時間が長く、華やかとは程遠いことが色々起こり、ベイラーが感じている、考えていることと全く反対の私個人の感情が湧いて出てきます。ですので、その二つの自分のバランスが崩れないようにしないといけないのがチャレンジでした。

『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』第4話場面写真

【ネタバレ注意】ベイラーが下した「騎士道の決断」

――ベイラーはなぜダンクを試合で助けるような行動を取ったのだと思いますか。

ダンクそのもののためというよりも、身内の甥が残虐な行為に及んだという事実があの行動をとった理由です。

あの日、何かが彼の中で起こったのです。この試合というのは、表向きは誰が最強かということを決める騎士道の見せ場なわけですが、ベイラーは賢い男です。ここでは“最強であるというのはどういうことか”を問うているのです。単に身体的に強いということなのか、それとももっと深い意味があるのか。正しい者が決定する試練なのです。そしてベイラーは不当に扱われた人が負けるのを傍観できず、立ち上がったのです。

そしてこれは我々一人一人の人生でも試される瞬間です。私自身もよく自問します。“リスクの高い状況で正しい選択ができたかどうか”と。まあ、“できた”と思いたいものですがね(笑)

――ありがとうございました。

ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』シーズン1はU-NEXTで独占配信中。毎週一話ずつ配信となる。杉田智和&釘宮理恵による吹替版は、2月23日(月・祝)に全6話が一挙配信。

(取材・文/Erina Austen)

Photo:『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』© 2026 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. All rights reserved. HBO Max and related elements are property of Home Box Office, Inc.

  • この記事を書いた人

Erina Austen

数カ国数都市に在住後、現在は、Austin在住。幼少期に『ファミリータイズ』にハマって以来、アメリカドラマ歴は30年以上。SF、法廷モノ、ミステリーなどが好み。ブロードウェイオタクゆえに舞台出身の俳優には詳しい。ハリウッドのドラマや映画にエキストラとしての出演経験も。ジェームズ・キャメロン製作の『アリータ: バトル・エンジェル』では数ヶ月に渡って撮影に参加。日本のアニメ好きでもありハリウッド実写化作品は必ずチェックする。

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