先日発表された第77回プライムタイム・エミー賞のノミネート一覧に、ある大きな“欠落”があった。高い評価を受け、『スター・ウォーズ』シリーズの中でも屈指の傑作と称されるドラマ『キャシアン・アンドー』のキャストが、主要演技賞の候補から完全に外されてしまったのだ。
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【第77回エミー賞】ノミネート一覧 投票者の視線はAppleへ!
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背景に根深いシステム的な問題
『キャシアン・アンドー』でタイトルロールを演じたディエゴ・ルナは、傭兵から理想を持つ反乱軍へと成長していく複雑で豊かな人物像を見事に表現し、多くの視聴者の心を掴んだ。しかし、彼の名はドラマシリーズ部門の主演男優賞の候補には挙がらなかった。また、『スター・ウォーズ』の歴史に深みを加えたモン・モスマ役のジェネヴィーヴ・オライリーも、助演女優賞にノミネートされることはなかった。
約50年にわたる『スター・ウォーズ』の歴史の中で、俳優が演技賞にノミネートされたのはわずか5回に過ぎない。近年は、Disney+(ディズニープラス)が配信するドラマシリーズの影響でドラマ界での評価は多少高まったが、それでもノミネート数は限られている。『マンダロリアン』でジャンカルロ・エスポジートがゲスト男優賞と助演男優賞の両方で候補に入るなどしたが、今回はフォレスト・ウィテカーがゲスト男優賞に名を連ねただけだ。
『キャシアン・アンドー』でクリエイターを務めたトニー・ギルロイも、「もっと評価してほしかった演技がたくさんあります」と発言し、ディエゴとジェネヴィーヴの演技について、「最終的な勝利は、彼らの演技が今後何年にもわたって称賛され、語り継がれていくことだと思います」と語っている。
『キャシアン・アンドー』は最高水準の演技で、社会の権力構造に切り込み、ファシズムと反乱の痛烈な物語を描き出しているにもかかわらず、なぜキャストの演技は賞レースで無視されてしまうのだろうか。
米Entertainment Weeklyは、その背景には根深いシステム的な問題があるとしている。特にホラーやSF、ファンタジーなどのジャンル作品は、この壁に何度もぶつかってきた。どんなに優れた作品であっても、「ジャンルもの」として括られると、「安っぽい」「カルト的」「低予算」といったマイナスイメージが付きまとってしまう。また、ハリウッドの興行収入の大半を支えるジャンル作品は、いわゆる“真面目な”俳優賞からは距離を置かれがちだ。例えば、8シーズン続いた『ゲーム・オブ・スローンズ』はエミー賞に164回ノミネートされるほどの成功を収めたが、そのうち演技部門は32回(約20%)だった。
『スター・ウォーズ』がさらに苦戦を強いられる理由としては、本格的に賞レースに絡み始めたのが2019年の『マンダロリアン』以降と、比較的最近であることも挙げられる。それに対し、『ゲーム・オブ・スローンズ』はHBOの看板作品として、「これはTVではなくHBOだ」というプレミアム放送局のブランド力を背負っていた。対して、ディズニーはヒット作を量産するものの、賞レースでのアカデミックな評価にはまだ弱い印象がある。
こうした構造的な偏見がある限り、『スター・ウォーズ』のキャストが演技賞で正当に評価される日は、もう少し先になりそうだ。
『キャシアン・アンドー』全2シーズンはDisney+(ディズニープラス)で配信中。(海外ドラマNAVI)
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