『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』が『24』のようなリアルタイム進行になった背景とは?

U-NEXTで独占配信中の医療ドラマ『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』。主演のノア・ワイリーと、彼とともに製作総指揮を務めるR・スコット・ゲミル、ジョン・ウェルズの3人が米Varietyの取材に応じ、『24 -TWENTY FOUR-』のようなリアルタイム進行となった背景などについて語った。(※この記事はネタバレを含みますのでご注意ください)

一日のシフトを追うという「体験型ライド」

アメリカ・ピッツバーグにある救命救急センターの一日を舞台に、一話一時間のリアルタイム進行スタイルで医療の最前線を描き出す全15話の『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』。本作では、1994年に始まった『ER 緊急救命室』のジョン・カーター役でブレイクしたノアが再び医療ドラマに戻ってくる。今回彼が演じるのは、過酷な状況で命を救おうと奔走するベテラン医師のマイケル・“ロビー”・ロビナヴィッチ。『ER』のプロデューサーだったゲミル、ウェルズと再タッグを組みながらも新たなアプローチを試みている。

主演と製作総指揮に加えて、第4話と第9話の脚本も担当しているノアは、パンデミックの最中「自分が無力に感じて抑うつ状態」にあった時に、再び手術着に袖を通すことを考え始めたそう。「僕らがかつて(『ER』で)敬意を表して描いた人々が今苦しんでいる。彼らに再び手を差し伸べ、スポットライトを当てるべきだという思いから(この作品は)始まった」と企画のきっかけを明かした。

ゲミルは『ER』終了後、医療ドラマは二度と作りたくないと長らく公言していたが、彼もまたパンデミックを機に考えを改めるようになった。「僕らにはもう一度やる理由があると気づいたんだ。ただし、僕たちと視聴者の両方にとって新鮮な形でやる方法が見つかればという条件だった。過去にやったことをただ繰り返すようなことは避けたかったんだ」と『ER』との差別化を意識したという。

米NBCで1994年から15シーズン続いた『ER』の放送終了から15年が経ち、医療現場にも製作現場にも大きな変化が。特に今回は動画配信サービス(Max)のための作品作りとなったことで大きなチャンスが得られたという。「現実感を完全に別のレベルに引き上げることができた」と話すウェルズ。「一日のシフトという設定を使うことで、継続的に登場人物たちの個人的な関係に焦点を当てる必要がなく、ただ一日の職場を描くことができる。登場人物それぞれについて、人々とのやり取りを通じてどんな人間なのかという人となりを少しずつ感じさせ、非常に現実的な方法で表現している。それがまるで緊急治療室での体験型ライドを味わっているような感覚をもたらすんだ」と、『24』のようなリアルタイム進行となった背景を語った。

『ER』のカーターと『ザ・ピット』のロビーというキャラクターの一番の違いについてゲミルは、パンデミックを経験しているかどうかにあると見ているようだ。「新型コロナウイルスで最も苦しんだのは、私たちが家にこもっている間にも現場で対応に追われた最前線の労働者たちだった。病気だけで命が失われたわけではない。それに対応しなければならなかった人々も命を落とし、精神的な苦痛に耐えられず自ら命を絶った人もいた。ロビーというキャラクターがどういう人間なのかを描く上で、それは非常に重要な部分だった。僕らが考えたのは、彼がメンタルヘルスの問題を認めない世代、職業に属しているということ。そうした意識は今少しずつ変わりつつある。ありがたいことにね。でも昔はそれが誰かの経歴に傷をつけることがあったから、ロビーは決して周囲に弱さを見せない。そういうタイプの男である彼は、自分が経験したことを処理できていないんだ。お分かりの通り、そうした感情をずっと押し込めておくことはできない。いつか外に出てくるものなんだ」

ウェルズは「緊急医療の現場で働くみんなが(本作を見て)“これがまさに実際に起こっていることだ”と反応してくれた」と喜ぶ。日頃、視聴者が目を背けがちな厳しい医療現場の現実にスポットライトを当てて気づきをもたらしたいと考えているようで、あえて快適さを避けていると述べた。「感情を誘導する音楽はない。各手順が何かを説明することもなく、ただ見せていくだけ。電気ショックでひどく火傷を負った腕を見たいかと言ったら恐らくみんな見たくないだろうけど、それをやらなければならない人がいることを理解しないといけない。そして僕らは医師たちにそれを頼んでいること、僕らが必要とする時に彼らがそこにいてくれていることを認識しなければならない。視聴者がこれまで見たことのある医療ドラマとはまったく違う体験に投げ込まれるという、意識的な試みだよ」

『ER』が患者中心の作品だったのに対し、『ザ・ピット』は医療を提供する側を中心としている点も大きく違うとノアは語る。『ER』といえば、同作でクリエイターを務めた故マイケル・クライトンの遺産管理団体から、『ザ・ピット』は『ER』のリブートにほかならず「権利凍結条項」の違反に当たると訴えを起こされていたが、ワーナー・ブラザース・テレビジョンとノア、ウェルズ、ゲミルはまったくの別物であると主張。今も裁判は進行中だが、1月末に開かれた公聴会で判事はワーナー側が主張する表現の自由を根拠とした反SLAPP(戦略的訴訟抑止)申し立てを棄却する「暫定的な判断」を下し、これにより本件は法的に宙に浮いた状態に置かれることになった。今後より明確な判決が下されるのを待つことになりそうだが、最終的な判決がいつ下されるかについて、判事は自身の多忙なスケジュールを理由に、具体的な日程を示していない。

『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』はU-NEXTにて配信中。毎週金曜日11:00に新しいエピソードがリリースされる。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Variety米Deadline

Photo:『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』© 2024 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. All rights reserved. Max and related elements are property of Home Box Office, Inc.