医師役がよく似合う男、ノア・ワイリー『ER』から『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』へ!

医療ドラマの金字塔を打ち立てた名作海外ドラマ『ER 緊急救命室』。同作にて、ジョン・カーター医師役を長らく演じ続けた俳優と言えば、ノア・ワイリーである。そんなノア・ワイリーがこのほど、医療ドラマへのカムバックを果たした。一話一時間のリアルタイムで進行する前代未聞の斬新な医療ドラマ『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』にて、主演を務めるノア・ワイリーのキャリアを、ここで今一度振り返ってみよう!

 

『ER 緊急救命室』で人気者の仲間入りしたノア・ワイリー

本名ノア・ストラウザー・スピア・ワイリーは、1971年6月4日アメリカ・ロサンゼルスにて、看護師の母と電気技師で起業家の父の間に生を受け、カリフォルニア州オーハイに位置する名門ボーディングスクール「サッチャースクール」で学び、ノースウェスタン大学の演劇プログラムにも参加。しかしながら、大学へと進学することはなく、ハリウッドブルーバードの小さなアパートメントに住みながら、演技レッスンを受ける日々を送った。

1984年、西部劇コメディ『Lust in the Dust(原題)』の名もない小さな役でデビューを飾り、いくつかの映画やTVドラマに出演。1992年にはロブ・ライナー監督による名作『ア・フュー・グッドメン』にも端役で出演している。

そして1994年、当時23歳の時に早くもブレイクのきっかけとなる作品へレギュラー出演を果たす。『ER 緊急救命室』だ。

『ER 緊急救命室』TM & (c) Warner Bros. Entertainment Inc.

同作は、後に医療ドラマの金字塔を打ち立て、15シーズンにわたり視聴者を楽しませ続けたご長寿医療ドラマとして今なお語り継がれる名作だ。ワイリー演じるジョン・カーターは、最初、医学生としてカウンティ総合病院の緊急救命室へとやってくる。白血病だった兄の治療に当たった医師への憧れから医学生となり、様々な困難を乗り越え、最終的にはERのチーフレジデントまで任される存在へと成長を遂げる。放送開始当時はキャストの中で最も若い俳優であったが、その演技は高く評価され、幾度となくエミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。2001年にはTVガイド賞で助演男優賞を受賞している。

劇中では多くの名医たちが代わる代わる主人公となり、視聴者のマンネリ化を防いできたわけだが、筆者が特に印象に残っているキャラクターは、やはりノア・ワイリー演じるジョン・カーターである。

レギュラーとしてはシーズン11をもって降板したが、その後もシーズン12とファイナル・シーズンへのカムバックも果たし、同作の最も多くのエピソード(254話)に出演した俳優でもあることから、多くのファンから愛されていることは言うまでもない。

余談だが、シーズン10当時の1エピソード辺りにおける出演料は、およそ40万ドル(約6,232万円)だったと言われており、「エピソード毎に最も稼ぐTV俳優」として、2005年のギネス記録にも認定された。

ノア・ワイリーのもう一つの代表作「ライブラリアン」シリーズ

ノア・ワイリーを語る上で、もう一つ欠かせないシリーズがある。2004年のTV映画『ライブラリアン 伝説の秘宝』より始まった「ライブラリアン」シリーズだ。同作では、メトロポリタン図書館の司書となったフリン・カーセンが様々な秘宝を追い求めて冒険を繰り広げる姿が描かれる。

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主人公に扮したワイリーは、『ER』の時とは異なるコメディ路線にシフトチェンジし、インディ・ジョーンズばりのヒーロー像を体現して魅せる。それでいて、どこにでもいるような普通の男の雰囲気を醸しだしている点も評価が高く、2008年までにTV映画としては異例のシリーズ3作品が製作された。2014年からはTVシリーズ版となる『ライブラリアンズ』が製作され、同作でもフリン役として存在感を発揮した。

『フォーリング スカイズ』での圧倒的な演技!

『ER』降板後も精力的に俳優活動を行ってきたノア・ワイリーが、再び、TVドラマで輝いたのは、何を隠そう『フォーリング スカイズ』だ。

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スティーヴン・スピルバーグ製作による同作は、突如、地球にエイリアンが飛来し、あっという間に侵略されてしまった世界を舞台に繰り広げられる、SFドラマ。ワイリーは、エイリアンたちに反旗を翻すレジスタンスであるマサチューセッツ第2連隊のリーダー格トム・メイソン役に扮した。

同作のワイリーは『ER』のジョン・カーターのように正義感あふれる元歴史学者を見事なまでに好演している。その佇まいは、かのエイブラハム・リンカーンを彷彿させ、そのカリスマ性たるや圧倒的という言葉しか見当たらないほどだ。また、3児の父でもあることから父親としての責任感と信念を身に纏っており、まさにキャリアで培ってきたスキルの集大成とでも言うべき演技を5シーズンにわたり披露した。

ノア・ワイリーが久しぶりに医師役としてカムバック!『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』

2021年からは『レバレッジ 詐欺師たちの流儀』のリバイバル版となる『Leverage:Redemption(原題)』でも存在感を発揮しているワイリーだが、この2025年、海外ドラマファンにとっては待望の最新作が日本上陸を果たした。

アメリカ・ピッツバーグの救命救急センターの1日をリアルタイムで描く『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』だ。

Photograph by Courtesy of Max

同作で、個性豊かな研修医たちを取り仕切るマイケル・“ロビー”・ロビナヴィッチ役に扮するワイリーだが、やはり医師役がとてつもなく似合う!

銃創患者、薬物で意識を失った学生、胸に釘が刺さった男性、足の解放骨折患者…次から次へと運ばれてくる重症患者の相手をする医師として、まるでジョン・カーター医師の数年後の姿を見ているかのような印象さえ受ける。

トイレに行く暇もないほどの激務をこなすロビーは、病院の体制とも戦っていかねばならず、プロデューサーとしても名を連ねるワイリーは、いわば現代アメリカ医療の“現実”を炙り出す存在としても視聴者の期待を集めている。『ER』時代に培ってきた医療の知識も最大限生かしている印象だ。

あまりにも斬新なストーリーテリングが大きな話題となっているが、その軸となるストーリーラインもしっかりした医療ドラマとして今後の展開に大いに期待したい。

長らく海外ドラマを視聴していると、医療ドラマの多さに驚かされることがある。しかしながら、ノア・ワイリーが関わる医療ドラマにハズレなし!とここに宣言したい。それほどまでに、ジョン・カーターもロビーもノア・ワイリー演じる医師には説得力とリアリティがあるということだ。

ノア・ワイリーが医師役として主演を務める『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』はU-NEXTで独占配信中

(文・Zash)

Photo:ノア・ワイリー公式Instagramアカウント@therealnoahwyleより 『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』Photograph by Max/Warrick Page 『ER 緊急救命室』TM & (c) Warner Bros. Entertainment Inc. 『フォーリング スカイズ』Copyright 2010 Empress Media Asset Management, LLC 『ライブラリアンズ』© 2017 Ex Libris Holdings, Inc. All Rights Reserved. TM & ©2017 Turner Entertainment Networks, Inc. A Time Warner Company. All Rights Reserved.