マーベルスターや『ビバヒル』『ハリポタ』『ER』キャストも…2022年に亡くなったドラマスター【前編】

2022年ももうすぐ終わり。今年も、ドラマ界で活躍した人を中心に、惜しまれながらこの世を去ったスターたちを一部ではあるが、前・後編に分けてあらためて振り返りたい。

ボブ・サゲット

今年ドラマファンにとって衝撃的だった訃報の一つは、世界中で愛されたファミリードラマ『フルハウス』『フラーハウス』の父親ダニー・タナー(キミーに言わせるとミスター・T)役で知られたボブ・サゲットの急死だろう。1月上旬、仕事で滞在していたフロリダのホテルにて65歳で亡くなった彼の死因は頭部外傷。頭を何かにぶつけ、そのまま意識を失ったものと見られている。葬儀にはタナー家の関係者はもちろん、300人以上の人が参列した。Netflixでは、『フルハウス』と『フラーハウス』のほか、友人や家族がボブの人生を称える特別番組『ダーティー・ダディ ボブ・サゲットに捧ぐメモリアルスペシャル』も配信中だ。

ジョー・E・タタ

キャストにとって父親的存在だった人といえば、『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』とスピンオフ『新ビバリーヒルズ青春白書』でピーチピット店長ナットさんを演じたジョー・E・タタも挙げられるだろう。ジョーは2018年からアルツハイマーを患っていると伝えられており、今年8月にスティーヴ役のアイアン・ジーリングによって彼が85歳で亡くなったことが明かされた。遺作がケリー役ジェニー・ガースの主演映画だったというのは“ナットさん”らしいと言えるかもしれない。

なお、今年お別れすることになった『ビバヒル』関係者は彼だけではない。高校の副校長イボンヌ・ティーズリー役でシーズン1から23話にわたって出演(別の役としても1話出演)したデニース・ダウスも、髄膜炎により昏睡に陥った末にジョーとほぼ同時期に亡くなっている(享年64)。

アンジェラ・ランズベリー

『ジェシカおばさんの事件簿』のジェシカ・フレッチャー役で知られる英国俳優アンジェラ・ランズベリーは10月に永眠。ロサンゼルスの自宅で安らかに眠りながらあの世へと旅立った彼女は、97歳の誕生日まであと5日だったという。10代で映画デビューを果たした『ガス燈』をはじめ3回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、2014年に名誉賞を手にしている。同年には大英帝国勲章も授与された。また、エミー賞候補になった回数は18回に上る。

なお、アンジェラの訃報の1週間後には、『ジェシカおばさんの事件簿』でシーズン5からモート・メッツガー保安官役に扮してきたロン・メイサックがカリフォルニアの病院で死去。86歳だった。

ウィリアム・ハート

1985年の『蜘蛛女のキス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したウィリアム・ハートは3月、前立腺がんにより死去(享年71)。アンジェラと同じく、彼も目前(1週間後)に控えていた誕生日を迎えることはできなかった。1995年の『スモーク』のようなインディペンデント作品に出演することも多かったが、2008年の『インクレディブル・ハルク』からマーベル・シネマティック・ユニバースの一員となり、将軍、のちに長官となるロスを10年以上にわたって演じた。2000年代後半からドラマ界での活動も増え、『ダメージ』『弁護士ビリー・マクブライド』『コンドル ~狙われたCIA分析官~』といった作品に出演。ウィリアムの死を受けて、ブルース・バナー/ハルク役のマーク・ラファロが「演劇界をまた襲った大きな損失。偉大な俳優であり、素晴らしい精神の持ち主。どうぞ安らかに」と述べている。

ジェームズ・カーン

『ゴッドファーザー』のソニーは短命に終わったものの、同役を演じたジェームズ・カーンは7月に亡くなった時、82歳だった。主に映画界で活躍してきたが、2003年からドラマ『ラスベガス』のメインキャストに。さらには、息子スコットがレギュラーを務める『HAWAII FIVE-0』にゲスト出演していた。1996年の映画『ダーティ・ボーイズ』で彼と共演したアダム・サンドラーは「彼のようになりたかった。そばにいると笑いの絶えることがなかった。彼の映画は最高のものばかりだ」とジェームズを絶賛している。

ネッド・アイゼンバーグ

『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のロジャー・クレスラー役で知られるネッド・アイゼンバーグは、2月に死去(享年65)。2年前から胆管がんと眼球黒色腫という2つのがんと闘っていたという。『~性犯罪特捜班』では当初異なる役で出演していたが、シーズン3からクレスラー役となり、シーズン10まで定期的に出演していた。

ポール・ソルヴィノ

『LAW & ORDER』ファミリーでは、本家のシーズン2&3でフィル・セレッタを演じていたポール・ソルヴィノも7月に83歳で逝去。イタリア系で強面の彼は、『グッドフェローズ』や『ゴッドファーザー・オブ・ハーレム』でギャング、マフィアを演じることも多かった。レオナルド・ディカプリオ主演の『ロミオ+ジュリエット』ではジュリエットの父親を演じている。ポールの娘で『誘惑のアフロディーテ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したミラ・ソルヴィノは、父親の死を受けて「私の心は引き裂かれたかのようです。彼は最も素晴らしい父親でした」などと綴っている。

レイ・リオッタ

主演作『グッドフェローズ』でマフィアのボスを演じたポールと共演していたレイ・リオッタは5月、新作映画のために訪れていたドミニカ共和国にて、眠りながら67歳で息を引き取った。優しい父親から危険なストーカーまで幅広い役柄をこなす彼は主に映画界で活躍していたが、1994年にゲスト出演した『ER 緊急救命室』でエミー賞を獲得。ここ10年ほどは、3シーズンにわたりレギュラーを務めた『シェイズ・オブ・ブルー ブルックリン警察』をはじめとしたドラマにも多数出演していた。遺作の一つとなったドラマ『ブラックバード』で共演したタロン・エガートンは、レイについて「僕にとってヒーローのようだった」と話している。

ジョン・アイルウォード

『ER 緊急救命室』といえば、シーズン3から最終シーズンまで登場した診療部長ドナルド・アンスポー役でおなじみのジョン・アイルウォードも、2022年にこの世を去った一人。75年の生涯でおよそ100本に上った出演作の半数以上がドラマで、『ザ・ホワイトハウス』『エイリアス』などにも参加していた。5月の彼の死を受けて、『ER』で共演したカーター役のノア・ワイリーやベントン役のエリック・ラ・サールがその才能を称えている。

グレゴリー・イッツェン

2000年代に大ヒットしたドラマ『24 -TWENTY FOUR-』で憎々しい大統領チャールズ・ローガンを演じ、エミー賞に2度ノミネートされたグレゴリー・イッツェンは、74歳で死去。2015年に心臓発作を起こしていた彼は、今年7月に受けた緊急手術中の合併症が死因となった。『24』製作総指揮者のジョン・カサー(Twitter写真の左)は、「ともに働く栄誉にあずかった俳優の中でも最も才能ある一人だったが、何よりもあらゆる点において優れた人間だった」としてその死を悼んでいる。心臓発作の後も演技を続けていたグレゴリーの最後の出演作は『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』で、2020年に全米で放送されたシーズン17に、シーズン1以来に別の役でゲスト出演していた。

ロバート・モース

『MAD MEN マッドメン』で主人公ドン・ドレイパーが勤める広告代理店の共同経営者かつ創設者バートラム・クーパーを演じたロバート・モースは4月、90歳でその生涯に幕を下ろした。エミー賞にクーパー役で5度ノミネートされたほか、1980年の『American Playhouse(原題)』でトルーマン・カポーティを演じて受賞。さらにトニー賞にも2度輝いている。

ロビー・コルトレーン

10月に72歳で亡くなったのは、『ハリー・ポッター』シリーズのハグリッド役で有名なロビー・コルトレーン。ピアース・ブロスナン主演の『007』シリーズも含めて、大ヒット映画シリーズに出ている印象だが、実は3シーズンにわたって続き、TV映画も制作された犯罪捜査ドラマ『心理探偵フィッツ』で主人公を演じたりもしていた。巨漢ながらもどこか可愛らしい役柄を演じることも多かったロビーだが、その体格からか糖尿病や内臓に問題を抱えていたという。彼の訃報を受けて、ハリー役のダニエル・ラドクリフは「僕が出会った中で最も面白い人の一人」だったとして、自分たち子役は彼に何度も笑顔にさせてもらったと回想。シリーズ3作目『~アズカバンの囚人』でハリーがハグリッドの帽子の中に隠れたシーンが特に思い出深いと語っている。

ギャスパー・ウリエル

今年は、不慮の事故で命を落とした人も多かった。その一人が、フランス人俳優のギャスパー・ウリエル。1月にスキー事故で頭部に重傷を負い、ヘリコプターで緊急搬送されたが、そのまま帰らぬ人となった。37歳という若さで旅立ってしまった彼は、その後に配信されたマーベルドラマ『ムーンナイト』でアントン・モガートを演じている。『かげろう』や『ロング・エンゲージメント』での静かな演技に定評があったギャスパーは、2019年のミニシリーズ『トワイス・アポン・ア・タイム』でも繊細な演技力を披露していた。

アン・ヘッシュ

アン・ヘッシュは交通事故の末に死去。1990年代後半に『6デイズ/7ナイツ』『ワグ・ザ・ドッグ/噂の真相』といった映画でハリソン・フォード、ロバート・デ・ニーロら大物俳優と共演し、最近では『シカゴ P.D.』にシーズン6から登場したシカゴ警察副本部長ケイト・ブレナンを演じていた。8月に彼女の運転していた車がロサンゼルスで事故を起こして炎上、火傷を負い病院に搬送されるも、およそ1週間後に53歳で息を引き取った。かつて彼女と交際していたエレン・デジェネレスも「悲しい日」と追悼コメントを寄せている。

メアリー・マーラ

『ER 緊急救命室』シーズン2&3で演じたロレッタ・スウィート役で知られるメアリー・マーラは61歳で死去。6月、ニューヨーク州にあるセントローレンス川で遺体が発見されており、喘息持ちだった彼女は姉の別荘滞在時の遊泳中に溺死したものと見られている。『クリミナル・マインド FBI行動分析課』『デクスター ~警察官は殺人鬼』『LOST』『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』といった人気ドラマで名脇役として活躍した。

Photo:『ハリー・ポッターと秘密の部屋』©GIG/FAMOUS