米AMCの大人気サバイバル・パニックドラマ『ウォーキング・デッド』(以下『TWD』)のローレン・コーハン(マギー役)は、当サイトでお伝えしてきた通り、シーズン9で降板することが決定している。ローレンは、米ABCにて2019年に放送開始予定の新作アクション・ドラメディ『Whiskey Cavalier(原題)』に主演するが、以前、撮影がオフの間であれば『TWD』への出演も可能だと語っていた。彼女が信頼を置くショーランナーのアンジェラ・カンは、シーズン10でもマギーの物語をもっと用意しており、マギーを連れ戻すことができると述べている。そんなローレンが、米Entertainment Weeklyのインタビューで本作降板や今後について語った。
――まずは、『TWD』のシーズン9で降板、そして新作ドラマ『Whiskey Cavalier』に出ることになった経緯を教えてください。
8年というのは、同じキャラクターを演じ続けるには長い歳月よ。マギーにも、そして私にも。この作品に出演する中で、思いがけず色々な感情の起伏があって、そういう状態のマギーを演じ、私自身もそういう感情の中で過ごすには8年はとても長い時間だったわ。
正直な話、いろんな側面から考えて、降板を決断するのが自然だと思ったの。マギーのことは大好きだし、これからもお気に入りのキャラクターだということは変わらないわ。これまで演じてこられてとても楽しかった。ただこれから先のことはわからない。私が人生において大切にしたいと思っているのは、自分を取り巻く環境に身を任せること。個人的には、人生で今が一番先の見えない状況にいると感じてるわ。そういう、今後が予測できない状態だからこそ、目の前にある情報を頼りに降板を決め、新作に出演する決断をしたのよ。
――シーズン9への契約更新の際、気持ちは落ち着いていましたか? それともストレスを感じていましたか?
実はいろんな意味で私もちょっと驚いたのよ。戸惑っている自分がいたの。それで思ったわ、"ああ、これはきっとそういうサインね。もう合わないのかもしれない"って。製作側と私が同じ感覚ではないと感じたから、"わかったわ。これは何か意味があることなのかも"と思ったの。でもね、今までの経験からして、プライベートでも仕事でも私はいつも結果オーライなのよ。私は俳優でアーティストだから、仕事では感受性豊かに挑まないといけない。けれどそういう感覚的なスイッチを切り替えて、プロとして冷静に物事を見ないと。自分自身を守るために、ビジネス的な思考で考えないといけないと思ったの。自分の感情を切り離して客観的に判断できるようになったことが一番の成長だと思うわ。
この作品で素晴らしい経験をさせてもらったし、俳優であれば誰もが夢見るようなチャンスを与えてもらった。でももう次の一歩を踏み出す時期が来ていたのよ。それに生涯の友と呼べるような人たちともこの作品で出会えたし、その友人たちのおかげで、新しいジャンルの新しい作品に向けて進むという冒険への決心ができたんだと思う。
――今まで『TWD』に出演しているキャストは、番組に残るかいなくなるか、どちらかはっきりしていましたが、あなたの場合はちょっと違いますよね。降板して『Whiskey Cavalier』に出演することは周知の事実ですが、スケジュールによっては『TWD』に戻ってくる可能性も伝えられています。『ウォーキング・デッド』でマギーがどうなるのかわからない状況がずっと続いていることをどう感じていますか?
自分のやりたいことをするだけね。みんなも知っている通り、この8カ月間は私にとってとても興味深い旅路だった。繊細な人や女性が人気作品を降板して新作に出るという稀な行動について問われたら、それを正当化して何かしら説明しなきゃと思うかもしれない。でも私は、「どうなるかしら。わからないわね。でもまあ様子を見てみましょう」って答えることを心地良いと感じるの。曖昧だけど自分の置かれている状況を正直に話す方が、作品にも、自分自身にも、キャリアにとっても良いと思うから。先が見えなくても今を生きるのが私流なのよ。そして今をどうやって生きていくかがわからない時は、どうやってその瞬間を生きることができるようになるかをただ考えるの。
――『TWD』の撮影現場を去る時はどんな気持ちでしたか? 完全に去るというわけでもなく、もしかしたら戻ってくるかもしれないという状況で、何を思いましたか?
多くの人が白黒つけることを好むでしょうね。私もそうよ。でも、だからこそ、自分で無理矢理はっきりさせないようにしているの。だってそれは正直な気持ちじゃない気がするから。『TWD』の家族やファン、そして私自身にとっても、確約することに誠意があるとは思えない。「みんな、愛してるわ、また遊びに来るわね!」と(最後の撮影で)言ったのよ。みんな、私のことを本当に応援してくれているから。
それから(一足先に降板したリック役の)アンドリュー(・リンカーン)と最後のディナーをともにしたわ。みんなにお別れディナー会をしてもらったのよ。一緒に過ごすその瞬間を大事にしたかった。さっきから"その時、その瞬間"という言葉を何度も繰り返しているけど、私にとって"その瞬間"は今年のテーマだったのよ。
――ショーランナーのカンと、チーフ・コンテンツ・オフィサーのスコット・M・ギンプルとは、シーズン10のマギーの役どころについて既に話し合っているのですか?
ええ、マギーをどうするか、今後の展開について話し合ったことはあるわ。
――あなた個人にも、俳優というキャリアにも、マギーというキャラクターにも、そしてもちろん番組にとっても、(シーズン10でのマギーの展開は)とても重要だと思いますが...。
そうね。面白いものでスティーヴ(・ユァン)が降板した時、グレンがもういないこと、グレンとマギーが一緒にいないという喪失感は、予想もしない形で表れたわ。『TWD』でマギーがいなくなることも、きっとそういう感じなんでしょうね。
実は、(エイブラハム役の)マイケル・カドリッツが降板した時に私はとても刺激を受けたの。彼はこの業界が長いから、出会いがあれば別れもあることを知っていたのよ。私の祖父がよく言っていたわ。「別れの後は必ず出会いから始まる」とね。いずれにせよ悲しいことは訪れる。そういう感情を持つ機会は必要だけど、だからといって、ベッドルームに引きこもって懐かしい写真を見て悲しむことはないわ。お別れするからといって、悲嘆に暮れる必要はないってこと。実際、まだお別れした気がしないのよ。『TWD』の撮影現場から遠く離れた場所にいるわけじゃなくて、電話すればいつでもすぐに会いに行ける距離にいるから実感がないのかもね。
マイケルは降板した時、これは人生で巡り巡ってくる豊かな旅路であって、お別れではないということを教えてくれたの。私は『TWD』で知り合えた人たちを大切に想っているし、第2の家族のように感じているわ。大切な時間を一緒に過ごしてきたのだから。そういう風に考えると何だか寂しいわね、でも、美しくもあるでしょ。(『TWD』のおかげで)私たちは出会うことができた。そして全ての物事には終わりがあるのよ。それは来年だったかもしれないし、5年後だったかもしれない、というだけ。
3、4年前のマギーよりも、今のマギーのストーリーの方がワクワクするわ、だってとても内容が濃くなっているから。そしてマギーにとってもこれで良かったんだと思う。シーズン9は、本当に素晴らしい冒険で、胸がいっぱいになるはず。面白いことに、マギーには今まで以上にもっともっと語られるべきストーリーが出てくるような状況になるのよ。このシーズンの『TWD』は今までと全然違うの。新しく出てくるキャラクターも全くタイプが異なるし、それもあって今シーズンのマギーはすごく変わるのよ。
『TWD』のどういうところが特別なのかというと、どのキャラクターの物語でもないっていうことなの。アンディは、細胞を培養するシャーレみたいな環境を作ったのよ。そこから、培養されたキャラクターが増えてストーリーがどんどん展開していくようになったわ。私やアンディが抜けても、自信を持って、誰かに引き継いでもらえると断言できるTVドラマは、珍しいと思う。色々な物語で織られた生地はすごくしっかりと紡いであるから、誰かにその生地が引き継がれても、きっとほつれたり破れたりしないわ。
ローレンは前述の『Whiskey Cavalier』だけでなく、マーク・ウォールバーグ(『トランスフォーマー』シリーズ)主演のアクションスリラー映画『マイル22』にも出演しており、TV業界だけでなく、映画界へと活躍の場を広げている。『ウォーキング・デッド』から一旦去ることは残念だが、いつか復帰することを期待しつつも、益々の活躍を期待したい。
(翻訳/Erina Austen)
Photo:『ウォーキング・デッド』(c)Gene Page/AMC(c)Jackson Lee Davis/AMC