
米国ドラマと英国ドラマの違いに、各シリーズのシーズン数や1シーズンのエピソード数がある。平均的にシーズン数が多いアメリカドラマに比べ、イギリスドラマは少ない傾向にあるが、その理由を米Screen Rantが説明しているので紹介したい。
理由その1:国土の広さと視聴者層の違い
もちろん、イギリスでも14シーズン続いた『ヴェラ 〜信念の女警部〜』や、長寿SFドラマ『ドクター・フー』のような例外も存在する。しかし、一般的にはリミテッドシリーズとして完結するか、長くても2~4シーズンで終了するドラマが主流だ。その背景には、主に3つの理由が挙げられる。
その第一の理由として、イギリスは国土が小さいことが挙げられる。アメリカはイギリスよりも遥かに広いため、ターゲット視聴者層が大きく、長編テレビ番組の需要が高い。よって、多くのエピソードで構成された番組を長期にわたって展開しても、視聴者層を獲得することが保証されている。
対するイギリスでは視聴者数が少ないため、製作会社が赤字に陥る可能性が高く、1シーズンあたり20話以上のテレビ番組を製作することは現実的ではない。
理由その2:制作会社の規模と脚本家チームの体制
第二の理由は、イギリスの製作会社は規模が小さく、脚本家チームも3~10人程度と少人数であること。チームの規模が小さいため、一度に製作できるエピソード数にも限界があり、結果としてシーズンあたりの話数や総シーズン数も少なくなる。
理由その3:再放送のルール
さらに第三の理由として、イギリスには「シンジケーションルール」が存在しないからだ。アメリカでは番組が再放送(=シンジケーション)されるには、少なくとも100話ほど必要となるのが一般的だ。再放送されると製作者に追加の収益が入るため、多くのアメリカの番組は最初から100話を目指す傾向がある。したがって、1シーズンの話数が多くなりやすい。一方、イギリスにはそういったルールがないため、より短く凝縮された作品が多くなる。そのため、どんなに短いテレビ番組でも、人気があれば国内で繰り返し放送されるのが通例だ。
たとえば、イギリスで絶大な人気を誇るコメディシリーズ『フォルティ・タワーズ』は、わずか全12話であるにもかかわらず、頻繁に再放送されている。一方アメリカでは、この程度の話数では「シンジケーション」の対象とならず、再放送される機会もほとんどない。
このような背景から、イギリスのテレビ番組制作者は、アメリカのシリーズのように「最低100話」を目指す必要がない。再放送による収益を期待するインセンティブが、アメリカとは根本的に異なるのである。
シーズンの長さと作品のクオリティは必ずしも比例しないが、国ごとの市場規模や製作体制の違いが、放送スタイルに大きく影響しているのは興味深いと言えるだろう。(海外ドラマNAVI)