
Apple TV+のコメディシリーズ『ザ・スタジオ』の第2話「長回し(原題:The Oner)」では、映画制作における最もスリリングな撮影手法の一つ、「長回し」がテーマとなる。長回しとは、編集なしで一続きのカットを撮影する技法であり、観客にリアルな没入感を与える。しかし、その裏側には膨大な準備と、予期せぬトラブルとの戦いがある。
ワンテイクのはずが…次々と襲いかかるカオス
セス・ローゲン(『ネイバーズ』)演じるコンチネンタル・スタジオの新任責任者マット・レミックは、サラ・ポーリー(『死ぬまでにしたい10のこと』)監督によるゴールデンアワー(夕暮れ時)を狙う撮影現場を訪れる。そこでは、『パスト ライブス/再会』のグレタ・リー演じる架空の映画の主演女優が、決められたセリフと動きを完璧にこなしながら、車で夕陽に向かって走り去るシーンの撮影が進められていた。

この撮影は、まさに「長回し」スタイルで行われる。しかし、マットがいることで俳優たちは気を取られ、ポーリー監督も集中力を失ってしまう。次々と現場の邪魔をし、撮影は混乱の渦に巻き込まれていく。彼の軽率な行動によって、小道具のトラブル、セリフ忘れといった問題が次々と発生。スタッフの間に広がる苛立ちと、次第に追い詰められていくポーリー監督の姿が、絶妙なコメディとして描かれている。
笑いの中に込められた映画制作のリアル
このエピソードでは、映画撮影における緻密な計画とチームワークの重要性がユーモラスに強調されている。「長回し」は、観客にシネマ・ヴェリテ(ドキュメンタリー風手法)を彷彿とさせるリアリティを与えるが、現場ではわずかなミスが全体の破綻を招く。成功すれば映画史に残るシーンとなるが、失敗すれば膨大な時間とリソースが無駄になるのだ。
映画史に残るワンナーの名シーン
『ザ・スタジオ』第2話のように、ワンカット撮影は映画やドラマの中でしばしば取り上げられる。マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』、アルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』など、数々の名作がこの手法を活用している。
また、テレビシリーズでも大きな役割を果たしており、最近ではNetflixの『アドレセンス』にて、エピソードごとに50分以上の長回しを取り入れるという革新的な試みがなされた。また、エミー賞常連の『一流シェフのファミリーレストラン』では毎シーズン印象的な長回しシーンが登場している。
『ザ・スタジオ』が見せる映画制作の光と影
『ザ・スタジオ』は、映画業界の裏側を風刺しながら、クリエイターたちの情熱と苦闘をリアルに描く。第2話「長回し」は、ワンカット撮影という映像技法の魅力と、それを成立させるための努力、そしてそこに潜むカオスをコミカルに、エピソードそのものを「長回し」で表現した必見エピソードだ。
映画やドラマの完成したシーンを観るだけでは伝わらない、現場の奮闘とトラブルの数々。本作を観れば、次に長回しを目にしたとき、その背後にある職人技と緊張感に改めて気づかされるだろう。
『ザ・スタジオ』はAppleTV+にて独占配信中。映画制作の舞台裏に興味があるなら、ぜひチェックしてほしい。(海外ドラマNAVI)