真田広之、『SHOGUN 将軍』シーズン2や役柄との歴史を語る

戦国の日本を描いたジェームズ・クラベルの小説をもとに、米FXで制作された戦国ドラマ『SHOGUN 将軍』。本年度エミー賞で最多25ノミネートを果たした同作について、新シーズンの展望も含めて、主演・製作総指揮を兼任する真田広之が語っている。

日本の文化を世界に正しく伝える上で賭けに勝つ

SHOGUN 将軍

――エミー賞での最多25ノミネートおめでとうございます。4月にはワシントンD.C.で行われたホワイトハウス記者協会主催の夕食会に参加されていましたね。

「ええ、あれは素晴らしい経験でした。楽しかったですよ。今はロサンゼルスにいて、みんなで喜んでいます。こんなにも多くのノミネートをいただけるなんて想像していませんでした。クルー、キャストの全員を誇りに思います」

――以前ミシェル・ヨーに話を聞いた時、アジア人俳優ばかりが出演している『クレイジー・リッチ!』が世界的なヒットを飛ばしたことには大きな意味があると話していました。同じように日本人が主に出演する『SHOGUN 将軍』も配信開始後、最初の6日間で900万人に視聴され、Rotten Tometoesで99%と高評価を受けています。この成功はあなたにとってどんな意味がありますか?

「素晴らしい驚きでしたね。最初に私たちが話し合ったのは、劇中で登場人物たちにどのくらいの割合で日本語を話させるかでした。結局、本編の70%で日本語を話させて英語字幕を付けることにしましたが、これは一種の賭けでした。とはいえ、私たちは視聴者の知識、知性、想像力を信じていました。そして賭けに勝ったのです。予想以上の反響でしたが、とにかく幸せでしたね。これが日本の文化を世界に正しく伝える最善の方法だと信じているので、正しい決断だったと思います」

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――製作総指揮も務めるあなたは、本作が正しい歴史・文化を描く上でも大きな役割を果たしましたね。これまでにも日本文化の要素が含まれたアメリカ作品に何本も出演されていましたが、そうした経験と比べていかがでしたか?

「私は日本で子役として始めたので、一緒に仕事をした監督や俳優から多くのことを学びました。侍が出てくる映画にも何本も出ました。本作で扮した虎永のモデルである家康公を演じたこともあります。石堂和成のモデルとなった石田三成も日本で2度演じました。ですので、幸運なことに本作のストーリーの背景を前もって知ることができたのです。ハリウッドに進出してからは、『ラスト サムライ』を含めたすべてのドラマ、映画で日本文化のコンサルを務めてきました。そうした経験によって、西洋のクルーに日本文化の正しさをどう説明すればいいかが分かるようになったのです。こういった経験すべてが本作のプロデューサーとしての仕事に役立ちました。これまでも自分ですべてやっていたのですが、今回はプロデューサーという肩書を得ましたし、日本の時代劇のスペシャリストたちを衣装、カツラ、小道具といったすべての部署で雇うことができました。今回は初めてチームと一緒に臨むことができたので、より簡単でしたしスムーズに進みました。日本のクルーとキャスト、西洋のクルーとキャストと一緒に仕事をする上で、これまでの人生で俳優として、コンサルタントとして培ったものをすべて投じました」

「プロデューサーとして素晴らしい経験でした。すべて準備し終えて、カメラの前に立った時は、ご褒美のようにリラックスして楽しめました。演技に専念してキャラクターになりきり、ほかの人の演技に反応していました。自分にとってちょうどいいバランスだったと思います」

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――あなたが演じた虎永はとても戦略的な人物ですね。

「13歳か14歳の頃に家康公について書かれた小説を読み、俳優としてトレーニングしていた時にも彼の物語を読みました。彼から学んだのは、戦略よりも辛抱強さですね。彼のことを一言で言い表すなら“忍耐強さ”です。彼はひたすら自分の時が来るのを待ち続け、決して焦りませんでした。それを少年時代に学び、その後の人生で生かしてきました。“20代や30代で成功しようと考えるな。40代や50代などもっと先を考えておけ。それまでは一歩ずつ練習し学ぶんだ。焦るんじゃない”と考えていました。これは家康から教わったことです。今こうして彼のストーリーを世界中に伝えることができました。日本や西洋の視聴者、子どもたちが似たようなものを感じ取ってくれたら嬉しいですね。人生は長い道のりなので、焦る必要はないんです」

「子役だった私は多くの俳優を目にしてきました。20代初めで成功した人がその後消えていく一方、スロースターターの人は40代や50代で偉大で尊敬される俳優になりました。それが一番いいと思います。そのような考え方を家康から教わったので、彼を演じることでお返しができたような気がします。彼は長い時間をかけてチェスをしていたようなものですね。そして時が来た時に、チェックメイトと宣言したんです」

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――『SHOGUN 将軍』はそもそもリミテッドシリーズでしたが、さらに2シーズン作られることになりました。シーズン2以降はジェームズ・クラベルの小説で描かれていない内容になりますが、どういう展開になるか少し教えてもらえますか? 今後の虎永はどうなるのでしょう?

「シーズン2のことは全然考えていなかったので、シーズン1で小説で書かれた要素は描ききってしまいました。(シーズン1が終わった時に)俳優としては“最善を尽くした。やりきった”と思いましたが、プロデューサーとして次世代の日本のクルーとキャストのためにこのプラットフォームを残せたことはとても重要です。20年前にロサンゼルスに住み始めた時の私の使命の一つは、東西の間にある高い壁を崩すことでした。その壁を壊し、次の世代のための橋を作りたいと考えています。それこそが私の使命ですね」

「『SHOGUN 将軍』が大きな成功を収め、さらに数シーズン作る機会をもらえました。止まる必要はありません。これは俳優としてだけの意見ではなく、プロデュースすることで俳優としても学ぶことがありました。“もちろん、次世代のためにも続けるべきだ”と。だからこそ、シーズン2、3を続けることを決めたんです。若いキャスト、クルーにとって素晴らしい機会になるでしょう」

「おっしゃるように原作の要素はもう使いきっているのですが、これは脚本家たちが自由を得られるという意味でもあります。私たちには歴史があり、劇中に出てきたキャラクターの実際のモデルがいます。そして実際に何が起きたのかを知っています。歴史上のエピソードもたくさんあります。ですので、脚本家たちも自由を楽しめると思います。私たちのDNAにすでに含まれているのですから。クラベルのスタイルに敬意を払いながら、自由にオリジナルのストーリーを作っていきたいですね。どのような物語が出来上がるのか、今から楽しみです」

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――撮影開始はいつでしょう?

「来年のどこかで始められればと思っています。2025年の夏にスタートできたらいいですね。脚本家チームはすでに始動しており、毎日取り組んでいます。日本の歴史と文化を彼らがどのように見るのか、気になりますね。もちろん、一緒に創作に取り組んでいます。脚本の草案ができたら、その内容をチェックして、文化的な誤解や固定観念を削ります。日本人としての視点で読むのはとても楽しいです。ここからまた新たな旅路が始まるんです」

――今後やってみたい役は?

「これまでやったことがないものを演じてみたいといつも思っています。例えば、シェイクスピア作品のロミオ、ハムレット、オセロ、リア王など。新しい役を演じるためには、リサーチと勉強が必要になります。だからこそ、年々フレッシュでいられるんです」

――シェイクスピア作品といえば、あなたはイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『リア王』に史上初にして唯一の日本人キャストとして参加し、大英帝国勲章(メンバー)を受章していますね。

「あれは私の人生において最大のチャレンジでした。シェイクスピアが書いた英語で初めて観客に向けて話しかけた時にはもちろん緊張しましたが、素晴らしい経験になりました。多くを学びましたが、その一つが文化交流は新たなものを生み出すことです。難しいことですが重要で興味深いものです。だからこそ、私は今ここにいられるのです」

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――『SHOGUN 将軍』ファンからの反響で印象的だったものはどんなものですか?

「日本文化に対する深い理解が得られたことですね。時には、日本の若い層からより大きな反響があり、探求心が強い人も多いです。70%が日本語だったにもかかわらず、(日本語が母国語でない)視聴者のみなさんはキャラクターたちの心情をその演技から感じ取ってくれました。視聴者が喜んでくれたことで、演技は演技ですし、言語は言語に過ぎないということが分かりました。人は(言葉が分からなくても)演技から感じ取ることができるんです。シーズン1が評価されたおかげで、シーズン2&3、さらなる別のプロジェクトを作るための強さとエネルギーをもらえました。言葉はもはや大きな障害にはならないんです」

『SHOGUN 将軍』シーズン1はDisney+(ディズニープラス)にて配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline



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Photo:『SHOGUN 将軍』© 2024 Disney and its related entities/© Katie Yu/FX