京都が舞台のミステリースリラー『サニー』で西島秀俊と夫婦役を演じるラシダ・ジョーンズ。ミュージシャンのクインシー・ジョーンズを父に、女優のペギー・リプトンを母に持つ彼女が、日本で行われた本シリーズの撮影について振り返った。
日本に馴染もうとしないアメリカ人を演じるラシダ
オーストラリアのポッドキャスト番組「The Screen Show(原題)」に出演したラシダ。「アメリカ日常生活でのアイデンティティ政治に疲れている」と明かし、それが『サニー』で演じるスージーとの類似点だという。
主人公スージーは、京都に住むアメリカ人女性。謎の飛行機事故で夫と息子の消息がわからなくなり、人生が一転する。「お見舞い」として手渡されたのは、彼女の夫が勤める電子機器メーカーが製造したという、サニーという名の新型家庭用ロボット。慰めようとしてくるサニーに対し、最初、スージーは腹を立てるが、やがてふたりの間には予想しなかった友情が生まれていく。そんなふたりは、スージーの家族に本当は何が起きたのかを一緒に探っていくうちに、存在を知らなかった恐ろしい世界に足を踏み入れていくことになる。
そんなスージーは倦怠感に満ちたアメリカ人で、日本語を話さず、長年住んでいても日本の社会的規範に従おうともしない。そこには意図的にアメリカとは非常に異なる国に移住することを選んだからという理由もある。
「日本の政治、たとえそれが人種、性別、階級の問題であれ、どんなものであれ、それらが彼女の問題ではないという事実によって自由を感じています。そんなことを意識してもいません。今、アメリカが文化的に非常に緊迫した時期にあるから、そんな設定がとても興味深いのです」
『ジ・オフィス』などで人種的に曖昧なキャラクターを繰り返し演じ、その黒人性が常に疑問視され、精査されてきたラシダにとってこのような設定は意外ではなかった。
本作で、人種やジェンダーによって日常生活に悩むことのない黒人女性を描くことで、マージナル化されたコミュニティに属することの疲弊感を考察していると説明するラシダ。京都では、スージーの人種や性別アイデンティティは彼女自身にも他の誰にとっても重要な問題ではないからだ。日本での滞在中もそういった問題を感じることなく、リラックスして撮影に臨めたそうだ。
「本作で描かれているのは孤独と闘い、それを自分の生活に“他人ごと化”しようとする人についてです。しかし、彼女は他の人とつながる必要性に直面し続けます。なぜなら、夫と息子に何が起こったのかを解明しようとしているからで、最終的には答え、真実、そしてつながりを切望しているのです」
『サニー』はApple TV+で独占配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:画像提供 Apple TV+