『ゲーム・オブ・スローンズ』フィナーレは、なぜ酷評されたのか?

ジョージ・R・R・マーティンの小説「氷と炎の歌」シリーズをドラマ化した『ゲーム・オブ・スローンズ』は、2000年代を代表する傑作ドラマの一つとして数えられているが、なぜファイナルシーズンの最終話は酷評されてしまったのだろうか。その点を米Colliderが分析している。

(以下、ネタバレがありますのでご注意ください)

キャラクターのラストに不満

『ゲーム・オブ・スローンズ』ファイナルシーズンの最終回「鉄の玉座」では、まず多くの死がフィーチャーされる。ジョン・スノウがデナーリス・ターガリエンと対峙して彼女をナイフで刺し殺し、愛を確かめ合ったジェイミー・ラニスターとサーセイ・バランシオンが瓦礫の下で寄り添うように息を引き取り、兄弟であるティリオン・ラニスターが二人の亡骸を発見するシーンなどが急ピッチで展開された。

まるで、「このエピソードで全ての物語を回収しなければ」との焦りが見て取れるような描かれ方だけでなく、サーセイが愛する人物とロマンチックかつ悲劇的な最期を遂げたラストは、シリーズで最大のヴィランとも言われる彼女に相応しいとは思えなかった。同じ意見を持つ視聴者は少なくない模様で、そういったキャラクターのラストが不満要素の一つとなっているようだ。

最終回に全く活気がない訳ではないが、『MAD MEN マッドメン』や『ブレイキング・バッド』などのフィナーレとは異なり、『ゲーム・オブ・スローンズ』は本来あるべき形で物語が幕を閉じたとは感じられず、最終回は完全に着地に失敗している。最終回は酷評されたが、ファイナルシーズン自体はエミー賞ドラマ部門作品賞に輝いており、米国TV芸術科学アカデミーの投票者が、壮大かつ壮絶な戦いが繰り広げられた第3話「長い夜」や、第2話「七王国の騎士」などのエピソードを評価した結果だと思われる。

“感情的な重み”が欠けていた?

またColliderは、「鉄の玉座」にはファンがシーズン1より親しんできた、“感情的な重み”が欠けていたとも指摘している。前述したように、最終回は統一感のないプロットを回収することに専念するあまり、シリーズの目玉と言える大規模なバトルや、キャラクター同士が火花を散らす感情の高ぶりや人間ドラマに注意が払われていなかった。よって、感動的でパワフルなクライマックスやエンディングを期待していたファンが、失望を覚えてしまったのも無理はない。

Colliderは、最終的に最も納得のいくエンディングを迎えたのは、長年にわたって無力な少女として扱われた後に北の女王になったサンサ・スタークと、ウェスタロスを放浪した後、未知の世界へ向けて新たな冒険に乗り出したアリア・スタークだったのではないかとしている。二人の物語は力強く、特にアリアは、「淑女としての生活だけが女性に許された運命」だと絶望していたため、解放感が溢れた素晴らしいラストとなっていた。

なお、『ゲーム・オブ・スローンズ』のユニバースは拡大を続けており、大成功を収めたスピンオフ第1弾『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、2024年にシーズン2がリリース予定。その他にも、ジョン・スノウを主人公にしたスピンオフ企画をはじめ、複数のプロジェクトが進行している。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『ゲーム・オブ・スローンズ』 Game of Thrones © 2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related service marks are the property of Home Box Office, Inc. Distributed by Warner Bros. Entertainment Inc.