イギリスで1964年から4,500話以上に渡って放送され、全盛期は約1,500万人の視聴者を誇った伝説の連続テレビドラマ(ソープオペラ)『クロスローズ』のメグ役として、お茶の間で最も愛された女優“ノリー”ことノエル・ゴードン。そんな彼女の突然の降板劇を描く伝記ドラマ『NOLLY ソープオペラの女王』が、Amazon Prime Videoチャンネル上の動画配信サービス「スターチャンネルEX」にて独占日本初配信中だ。また、今年年1月には放送もスタートとなる。
今回はマーク・ゲイティスのインタビューをお届け。マークと言えば、『SHERLOCK シャーロック』シリーズ(2010~2017)でシャーロックの兄マイクロフト・ホームズ役を演じているほか、『ゲーム・オブ・スローンズ』へのゲスト出演など、人気海外ドラマでも活躍。『NOLLY ソープオペラの女王』では、ヘレナ・ボナム・カーター演じるノリーの良き理解者であり友人のラリー・グレイソンを演じている。
目次
『NOLLY ソープオペラの女王』ラリー・グレイソン役マーク・ゲイティス【インタビュー】
描かれるのは「当時を知る人々にとって、とても大きな芸能事件」
――『NOLLY ソープオペラの女王』のストーリーを教えてください。
英国ソープオペラのレジェンド、ノエル・ゴードンが『クロスローズ』を解雇された事件を描いたドラマです。当時を知る人々にとっては、とても大きな芸能事件で、私にとっては女王が王冠を失う物語でした。『クロスローズ』を詳しく知らなくても、そのペーソスを理解することはできると思います。それがラッセル・T・デイヴィスの脚本の素晴らしいところだと思います。とても感動的で、面白い。非常に楽しい作品です。
――ラリー・グレイソン役を演じる前に、『クロスローズ』やノエル・ゴードンのことは知っていましたか?
もちろんです。子どもの頃によく見ていました。撮影前に『クロスローズ』を見直しましたが、『Acorn Antiques(原題)』(※)がそのテイストの一部を引き継いで生き続けているんだなと思いました。本当に楽しいドラマシリーズです。
※1985~1987に放送されたソープオペラ。その後も何度か復活しミュージカル化もされた。
――本作は、テレビ業界についての物語でもありますよね?
まさにそうです。ラッセルは根っからのテレビっ子。このドラマは彼からのテレビへのラブレターです。テレビ、パーソナリティ、それに付随するものすべてが大好きというのは、イギリス人の奥底にあるものだと思います。
あのテレビの全盛期、『クロスローズ』のキャストたちはスーパースターで王族みたいな人気だったんです。だからこそ、このストーリーは心に響くのです。ITVXがこのようなドラマを作ったことは素晴らしいと思います。ニッチすぎると思われるかもしれないですが、脚本の大きな勝利です。この脚本は、いろんなことが詰め込まれています。
ソープオペラを解雇された往年の女優の物語であり、もう一方では非常に人間的な物語でもある。私が手掛けた、『ドクター・フー』の誕生秘話を描いた『An Adventure In Space And Time(原題)』を思い出しました。この作品を撮ったとき、『ドクター・フー』のことをあまり知らない人に、「これは人生を変える役を手に入れた男のヒューマン・ストーリーです」と説明したのを覚えています。私たちは誰も不可欠な存在ではないということ。ノリーにも共通すると思います。
お気に入りのシーンは‟スタンダップ・ショー”
――シンボリックなエンターテイナー、ラリー・グレイソンについて少し教えてください。役作りのためにいろいろ調べましたか?
私は特に彼が司会を務めたゲーム番組『The Generation Game(原題)』での彼が大好きでした。ラリーを演じることができて本当に光栄です。4年ほど前に彼のドキュメンタリー番組を見るまで忘れていたのですが、その後、彼がノエル・ゴードンの親友であったことを知りました。
私は彼の声や物腰を理解するために、何本も何本もテープを見たのですが、彼の演技にはほとんど特徴がなく、下品で、カメラを少し鼻先で見下ろすような感じなんです。でも、非常にコミュニケーション能力が高い人で、みんなに愛されていました。撮影中にラッセルが「ラリーは本当に素敵だったんだね」と言ったのを覚えています。彼は一夜にして並外れた成功を収め、35年間ハードに働き、10年間頂点に立ち続けた。そしてすっぱりと引退。それきりでした。彼を演じることで彼と再会できて本当に嬉しかったです。
――ノリーとラリーの関係について教えてください。
どこで二人が知り合ったのかわからないのですが、すぐに親しくなったようです。ゲイとの友人関係というのは、ショービズ界にはよくあることだし、私にとってもラリーにとっても馴染み深いものでした。
ラリーとノリーは切っても切れない関係でした。みな実際に彼らが結婚すると思っていたそうです。『コロネーション・ストリート』でヒルダ・オグデンを演じたジーン・アレクサンダーがいつも少し背が低かったので、道行く人がジーンにお金を渡していたのと同じようにね。二人はお互いに献身的でした。バラエティー番組での二人の映像があるのですが、一緒に歌を歌い、彼女が先に退場する。ラリーは彼女が舞台袖に行くのをほんの一瞬待って、絶妙の間で「彼女は酒を飲むんだよ」と言うのがすごくいいんですよ。
――ラリー・グレイソン役でお気に入りのシーンはどこですか?
ノリーがラリーのショーを見に来るところです。ストックポートの劇場で、150人ほどの観客を集めて彼のスタンダップ・ショーのシーンを撮影しました。基本的には静かなマチネーのショーをやっているようなものですが、私はそれが大好きでした。
ラリーのスタンダップは断片的にしか見ていなかったから、みんなを笑わせるために、ラリーの演技からちょこちょことセリフを付け足したりして挑みました。とても楽しかったです。それにヘレナは仕事はもちろん、楽屋でのプライベートな会話と表向きの顔とのコントラストが印象的でした。彼が楽屋で、「僕を見たらどう思うんだろう?」と言うんです。というのも、彼は明らかにゲイっぽく見えるからです。そのような二律背反はとても興味深いと思います。
大学時代に映画で見た憧れの女優ヘレナ・ボナム・カーターと共演!
――ヘレナ・ボナム・カーターとの共演はいかがでしたか?
とても嬉しかったです。私たちはほとんど同い年なんです。大学生の頃『眺めのいい部屋』を観に行ったことを覚えています。ポスターを貼っていましたよ。青いフィレンツェの空と窓が開いていて、ヘレナとジュリアン・サンズが写っているあのポスターです。だから彼女と共演できたなんて、本当に信じられません。撮影中はふたりでよく笑いました。ノリーはラリーのことをラズと呼んでいたので、ヘレナは僕のことをラズと呼んでいました。僕たちはノリーとラリーの関係を再現できたと思います。脚本は面白いし、感動的で、そしてヘレナが本当に素晴らしい。
――ラッセル・T・デイヴィスとの再会はどのようなものでしたか?
ラッセルとはいつもばったりと会ってはいたのですが、『ドクター・フー』以来一緒に仕事をしていなかったので、声をかけてもらて嬉しかったです。ラッセルは私とヘレナの撮影の日に、現場に来てくれました。
ヘレナとオマリ・ダグラスと一緒に『ドクター・フー』の撮影現場に行って、デヴィッド・テナントの復活も見せてくれました。とても楽しかったです。彼が長年活躍していることは本当に素晴らしいことです。彼の才能とテレビに対する素晴らしい愛情の証だと思います。
――おすすめのシーンはありますか?
ひとつだけ?いやいや、全部ですよ。クロスローズ・モーテルのセットで電話をとる写真を撮ってもらったので、有名な台詞を言えましたよ。「クロスローズ・モーテルです。ご用は?」って(笑)
――『クロスローズ』、『ジェネレーション・ゲーム』、『シャット・ザット・ドア』など、イギリスのテレビの黄金時代の番組が色々ありますが。もし70年代か80年代の番組をひとつ復活させられるとしたら、なにがいいですか?
難しいですね。正直なところ、50年後に人々がノスタルジーに浸れるような新しいものを作るというアイデアが好きなんですよね。でも、やっぱり『フォリーフット』かな!
イギリスのコメディアンであり司会者。BBCの人気ゲーム番組『ジェネレーション・ゲーム』などで活躍し『クロスローズ』にも度々カメオ出演。1981年にテレビから引退し主に劇場で活動。1995年に死去。生前公にはカミングアウトはしなかった。
『NOLLY ソープオペラの女王』その他キャストインタビュー
『NOLLY ソープオペラの女王』あらすじ
“ノリー”ことノエル・ゴードンは、連続テレビドラマ『クロスローズ』の主演女優としてイギリスでは知らぬ者はいない大スター。スタッフやキャストと家族のような関係を築き、ひとり暮らしの孤独も年下の共演者トニー・アダムスが紛らせてくれていた。ところがある日、ノリーは何の前触れもなくテレビ局から降板を告げられ、この理不尽な解雇は、英国中を騒がせる大ニュースとなる。60歳を過ぎてからの転落にショックを受けながらも、ノリーは新たな道を歩き始めるのだが…。
『NOLLY ソープオペラの女王』配信・放送情報
「スターチャンネルEX」
《字幕版》12月1日(金)より毎週金曜日配信開始(全3話)
BS10 スターチャンネル
《STAR1 字幕版》2024年1月8日(祝・月)より 毎週 月曜23:00 ほか
※1月3日(水)12:30より 字幕版 第1話 無料放送
公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/nolly/sid=1/p=t/
(海外ドラマNAVI)
Photo:『NOLLY ソープオペラの女王』© ITV Studios Ltd 2022