【インタビュー独占公開】『NOLLY ソープオペラの女王』トニー・アダムス役オーガスタス・プリューを直撃

イギリスで1964年から4,500話以上に渡って放送され、全盛期は約1,500万人の視聴者を誇った伝説の連続テレビドラマ(ソープオペラ)『クロスローズ』のメグ役として、お茶の間で最も愛された女優“ノリー”ことノエル・ゴードン。そんな彼女の突然の降板劇を描く伝記ドラマ『NOLLY ソープオペラの女王』が12月1日(金)より、Amazon Prime Videoチャンネル上の動画配信サービス「スターチャンネルEX」にて、独占日本初配信(毎週金曜1話ずつ更新)することが決定した。

今回はヘレナ・ボナム・カーター演じるノリーの親友であり共演者のトニー・アダムス役を務めるオーガスタス・プリュー(『アバウト・ア・ボーイ』、『キックアス/ジャスティス・フォーエバー』、『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』)のインタビューをお届けしよう。

『NOLLY ソープオペラの女王』トニー・アダムス役オーガスタス・プリュー【インタビュー】

ノリーとトニーは‟ユニークで特殊な関係”

――『NOLLY ソープオペラの女王』はどんなストーリーでしょうか。

英国テレビ界のレジェンド、ノエル・ゴードンはひどい男たちのせいで歴史から忘れ去られてしまいました。その出来事を描いたドラマです。

――トニー・アダムス役を演じる前に、『クロスローズ』やノエル・ゴードンのことは知っていましたか?

『クロスローズ』のことは知っていましたが、いかにくだらない番組かというジョークのオチのような存在としてしか知りませんでした。ノエル・ゴードンについては知っていました。彼女はゲイのアイコン的存在ですからね!

世界初のカラーテレビに登場し、1500万人が毎晩『クロスローズ』にチャンネルを合わせ、6年連続でTVタイムズ・アワードの主演女優賞を受賞、彼女のために新しい賞を作らなければならなかったほどの、とてつもなくパワフルな女性です。それがなぜ歴史から完全に忘れさられることになったのか?それが、私がこの物語に惹かれたポイントでした。最初は彼女のことをよく知りませんでしたが、今は知ってよかったと本当に思っています。

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――トニー・アダムスがどんな人物だったか、少し教えてください。この役を演じるにあたって、いろいろ調べましたか?彼に会ったことはありますか?

漠然と『クロスローズ』のリブート作品を覚えていたのですが、リサーチを始めたら、実は『チキ・チキ・バン・バン』で彼を見たことがあることに気づきました。

でも、その時は彼が誰なのか知りませんでした。役柄のリサーチは、都度異なります。どの程度のリサーチが実際に役に立つのか、時には邪魔になることもあるので、気をつけなければなりませんが、この作品ではたくさんのリサーチをしました。

この世界は、それ自体が小さなサブカルチャーみたいなものです。そして、ラッセルが本当にいい脚本を書いてくれました。彼の脚本は実にニュアンス豊かで、質感があり、カラフルで、ユニークなサブカルチャーを描いています。そしてその世界に私たちを導いてくれます。

トニー・アダムス氏とは2回お話ししました。とても温かく、陽気で、愛情深く、ユーモラスで、優しい方でした。彼自身が物語に溢れています。今80代半ばでいらっしゃいますが、このドラマでは彼自身の物語をほぼそのまま描いています。

また、彼には独特の話し方や物腰があるので、取り入れたいと思いました。彼は母親の人生についての伝記も書いていて、リサーチに大変役立ちました。彼のパワフルな女性に対する強い愛情は、その伝記によって明かになっていると思います。

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――ノリーとトニーの関係について教えてください。

ノエル・ゴードンの人生の中で、トニーはとても重要な存在だと思います。彼は彼女を支えた親友でした。プラトニックな関係で、『クロスローズ』の撮影現場ではショーを仕切っていたパワーカップルです。年下の男性と年上の女性があれほど愛し合うなんて、80年代前半の当時としてはかなり先進的だと思います。

彼は毎日彼女を仕事場まで送り、毎晩夕食を作り、毎晩のように電話で話していたんです。ヘレナと私が(ノリー&トニーとして)窓越しに語り合うシーンがあるのですが、本当にそうだったと思います。彼はノリーの自宅の向かいにある、彼のために用意したアパートに住んでいました。とてもユニークで特殊な関係だったんです。

――ヘレナ・ボナム・カーターとの共演はいかがでしたか?

すぐに恋に落ちました(笑)大好きです。私たちは似た者同士でエネルギッシュ。生涯の大切な友人を作ることができました。彼女には尊敬と敬意と愛情しかありません。彼女はとてもプロフェッショナルで、才能豊かで、魔法のような人です。ヘレナ・ボナム・カーターとひと夏を過ごせたなんて、本当に楽しい撮影でした。

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「無力な人々が力を合わせて困難に立ち向かう姿」を描いたドラマ

――様々な理由から、このショーは特にタイムリーで共鳴的だと感じます。そう思いますか?

特に今イギリスで起きている政治的なことについて、強烈に響くものがあると思います。

私たちは今「不満の冬」にいます。大規模なストライキが起きています。悲惨で、本当に憂慮すべきことです。そして私は今こそ、人々がしっかり考え、制度からではなく、愛する人々から力を得るべきだと思います。それがこの番組のテーマだと思うんです。この番組は、無力な人々が力を合わせて困難に立ち向かう姿を描いています。

ちなみに、『クロスローズ』は私の母が子供の頃から大好きな番組でした。学校から走って帰って、祖母と一緒に見ていたそうです。友達のお母さんにこの番組の話をすると「『クロスローズ』の番組をやるの?あれ、大好きだったのよ!」と大喜びされました。面白いですよね。その世代にとって、『クロスローズ』はとても懐かしい、思い出深い番組なんです。多くの人がそうなのだと思います。

『クロスローズ』のもうひとつの興味深い点は、当時は気づかなかったけれど、撮影中、ゲイである私の心に響いたことです。つまり学術的な意味でのクィアという意味です。主役はすべて女性で、他のテレビ番組ではあまり語られることのなかった問題を扱っていて、だからこそ女性たちに愛されたのだとわかりました。ゲイ・コミュニティにも愛されたのは納得です。

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――このドラマの舞台は40年近く前ですが、『クロスローズ』を知らない今の若い人たちは、このドラマから何を感じると思いますか?

ノリーはみんなの面倒を見ていて、男性と戦ったパワフルな女性です。見過ごされ、虐げられている人々が権力に立ち向かうということをやってのけました。21世紀の今、今も歴史は繰り返されています。ミレニアル世代や若い世代が、政治的な成熟期を迎えるにあたり、以前何が起こったかを理解することは重要だと思います。

また、ラッセルのおかげで、ジェンダーの役割や、ジェンダーのあり方を解体するような、素晴らしい番組がたくさんあります。70年代初頭から80年代にかけてのジェンダーのあり方を解体し、それが今日何を意味するのか。女性のエンパワーメント、フェミニズム、クィアネス、家父長制の脱構築など、当時議論され、今なお語り継がれている大きな用語の数々です。

また、『クロスローズ』を知らない人は、ぜひこの番組を見るべきだと思います。本当に面白いんですよ。たくさんのエピソードを見ましたが、すっかりハマりました。すごくくだらなくて、すごく面白い。最高です。

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キャスト全員と、次から次へと恋に落ちた!?

――劇中劇の演技はいかがでしたか?トニー・アダムスを演じるオーガスタス・プリューと、アダム・チャンスを演じるトニー・アダムスとの違いは?

彼はとても優れたソープ俳優です。独特な演技なんですよ。撮影の仕方も、ショーの中にショーがあるような感じだった。ヘレナ・ボナム・カーターがノエル・ゴードンを演じている。そしてノエル・ゴードンはメグ・モーティマーを演じる。すべての俳優が、ショーの中で登場人物を演じている。俳優として、俳優を演じ、当時は非常に進歩的な人物であったキャラクターを演じることで、3つの異なるテーマと共鳴することができました。頭の中で常に3つの異なることが起こっているんです。そのおかげで、本当に特別な作品になりました。

『クロスローズ』はとても奇妙で、演技はとてもオーバーなものでした。80年代の大きなヘアスタイルとか肩パッドとかもね。放送開始当初は週5話放送でしたが、『NOLLY』の舞台となった時代には週3話になりました。それでも多いのですが、演技のスタイルが、ソープの演技から一転して、キャラクター中心の個性的でニュアンスのある演技に切り替わっていることが印象的でした。そのとき、これは女性についての素晴らしい物語を語っているのだと気づきました。とてもスマートです。ラッセルは本当に天才です。ラッセル・T・デイヴィスがラッセル・T・デイヴィスである理由がここにあります。この作品に参加できて本当に光栄です。

――他のキャストとの仕事はいかがでしたか?

完全な恋愛関係ですよ(笑)ヘレナとは火がついたように意気投合したけれど、キャスト全員とも次から次へと恋に落ちました。ヘレナも含んだ40人くらいのメールグループで今もまだよく話しているんです!本当に大きな家族のようで、まさに魔法。滅多に出会えない本当に貴重なプロジェクトでした。すべてラッセル(・T・デイヴィス)、アンディ(・プライアー)、ピーター(・ホアー)の完璧なチームのおかげです。

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素晴らしいクリエイターとの素晴らしい作品…「見ない理由はない」!

――ラッセル・T・デイヴィスとの仕事について教えてください。

素敵すぎです!アイコニックで、まさに夢のような人です。今までに会ったことがないような優しい人で尊敬しています。撮影現場やプロジェクトの雰囲気は常にトップによって作られます。ショーランナーとディレクターがどんな関係であれ、そして役者にもその役割がありますが、それがプロジェクト全体のトーンを決めるんです。だから、このまるで“サマー・オブ・ラブ2022”な撮影が、終わらなければいいのにと思いました。すべてラッセルの功績であり、いかに素晴らしい人かわかるでしょう。個人的なことを言えば、彼の番組は私がゲイとしてどうあるべきか教えてくれたようなものです。

『Queer as Folk』は素晴らしく、そのような番組がなかった時代の象徴的な番組です。彼は、本当に重要な仕事をし続けていると思います。歴史に残るクリエイターです。

――おすすめのシーンは?

ノリーが解雇されることを知るシーンがあります。彼女は嫌な予感がしてトニーをアパートに呼びます。そしてノリーが上司のジャック・バートンと電話で話しているのを、トニーは子機で聞きながらノエルと話すところ。二人の関係を完璧に表現しているシーンです。もうひとつシリーズ終盤の中華料理店のシーンがあります。ネタバレなので詳細は番組を見て頂きたいのですが、トニーが彼女を叱咤激励するんです。とても美しいモノローグですよ。

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――この作品から観客に何を受け取ってほしいですか?

大きな問題を扱っていますが、アカデミックになりすぎず、インテリになりすぎず、確実に笑える作品です。笑い涙もあれば、悲しい涙もあります。80年代のテレビ番組というレンズを通して、人間の精神のすべてが凝縮されています。そして英国の国宝ヘレナ・ボナム・カーター主演。見ない理由はないですよね。

『NOLLY ソープオペラの女王』あらすじ

“ノリー”ことノエル・ゴードンは、連続テレビドラマ『クロスローズ』の主演女優としてイギリスでは知らぬ者はいない大スター。スタッフやキャストと家族のような関係を築き、ひとり暮らしの孤独も年下の共演者トニー・アダムスが紛らせてくれていた。ところがある日、ノリーは何の前触れもなくテレビ局から降板を告げられ、この理不尽な解雇は、英国中を騒がせる大ニュースとなる。60歳を過ぎてからの転落にショックを受けながらも、ノリーは新たな道を歩き始めるのだが…。

『NOLLY ソープオペラの女王』配信・放送情報

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海外ドラマ『NOLLY ソープオペラの女王』(全3話)
【配信】
「スターチャンネルEX」
《字幕版》12月1日(金)より毎週金曜日配信開始(全3話)
※第1話無料配信:2023年12月25日(月)~2024年1月23日(火)
【放送】
BS10 スターチャンネル
《STAR1 字幕版》2024年1月8日(祝・月)より 毎週 月曜23:00 ほか
※1月3日(水)12:30より 字幕版 第1話 無料放送公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/nolly/sid=1/p=t/

(海外ドラマNAVI)

Photo:『NOLLY ソープオペラの女王』© ITV Studios Ltd 2022