Z世代に人気の『セックスライフ・オブ・カレッジガール』 世代別若者向けの青春×恋愛ドラマの特徴とは

海外の青春ドラマといえば、どんな作品を思い浮かべるだろうか? かつてはキラキラとした憧れの的のようなものだったが、今は「共感性」のあるドラマが人気を集めている。

好まれる青春ドラマが変わってきている

2000年代の青春ドラマというと、6シーズン続きリブート版も制作された『ゴシップガール』が代表的だ。ニューヨークという世界経済の中心の街で、常に高価なものを身につけるリッチな高校生たちがメインキャラクター。お金持ちすぎるキャラクターやドロドロとした人間関係、高校生にしてはだいぶ大人びた恋愛模様が描かれている。それを観る視聴者はきっと自らの“憧れ”を投影し、現実逃避をしたい気持ちもあっただろう。

2012年に終了した『ゴシップガール』が尾を引くように、2010年代になっても煌びやかな女子たちが登場するドラマもあった。しかし、その中で現実ともリンクするドラマとして『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』が登場した。少し年齢は上がり、ニューヨークにある人気雑誌の編集部で働く3人の女性がメインキャラクターなのだが、輝かしいキャリアウーマン的な側面だけではなく、女性が向き合うべき特有の病気や、キャリアと恋愛のバランスなど問題に直面する様子が描かれている。ミレニアル世代を対象とした“誰もが感じるであろう不安”を取り入れたストーリーで、共感を呼ぶのがよくわかる。ほかにも『SEX AND THE CITY』のリアル版ともいわれた『Girls/ガールズ』やアメリカの高校生のダークな悩みや生活が描かれる『Euphoria/ユーフォリア』なども高評価を得ている。

そして2020年代、今のZ世代に人気のドラマはシーズン2が配信中の『セックスライフ・オブ・カレッジガール』(原題:The Sex Lives of College Girls)であると言える。エセックス大学に通う大学生4人がメインキャラクターで、彼女たちが初めて挑戦する恋愛やサークル活動などを中心に話が進む。自身もコメディアンとして活躍し、『フォー・ウェディング ~恋するロンドンライフ~』『私の“初めて”日記』で企画・製作総指揮を手掛け、女優としては『ジ・オフィス』や『オーシャンズ8』などで知られるミンディ・カリングの作品で、シュールに笑える面白さも兼ね備えている。

シーズン1は女子4人が大学に入学して同じ寮部屋になるところから始まるのだが、性格はそれぞれ全く異なる。ごく普通の家庭で過保護に育てられたキンバリー(ポーリーン・シャラメ)、政治家の母の権力から離れるため遠くの大学を選んだホイットニー(アリア・シャネル・スコット)、ニューヨーク出身のお金持ちでレズビアンであることを公言できていないレイトン(レネー・ラップ)、コメディ作家を目指す恋愛に奔放なベラ(アムリット・カウル)が登場する。一見、普通ではない人たちのように思えるが、学校のマドンナ的な派手さはなく、ごく普通に経済的な問題や親との関係性などの悩みを抱えている。18歳で恋愛やセックスがほとんど初めての彼女たちが挑む大学生活に、自分の“初めて”を思い出さずにはいられないのだ。

シーズン2で大人気となった『セックスライフ・オブ・カレッジガール』

Fandomの「Inside Fandom 2022」の統計によると、シーズンを通して視聴率が76%アップするほどの人気だそう。なぜ18~24歳のZ世代が注目しているのかという質問には「セックスや酒といった大人な内容」「キャラクターやストーリーが個人的な経験につながるところがあるから」という回答があった。

シーズン2では、入学して大学生活に慣れてきた彼女たちの、新たな恋愛模様を追っていく。隣の部屋に入寮してきた筋肉ムキムキ男の虜になってしまったり、いろんな人とのセックスを楽しんだり、自分の気持ちの向くままに人生を楽しむ様子が伺える。また、奨学金をもらえなくなってしまったキンバリーが行う資金集めの様子や、たくさんの人と恋愛をする中で自分の大切な人に気がついていく4人の人生のステップアップも垣間見ることができる。今学生の人にはあるあるが詰まっているし、大人になった人にとっては青春時代を懐古したくなるドラマだ。

このような、少し地味で共感性のあるキャラクターといえば、古くは『ブリジット・ジョーンズの日記』、最近の作品で言うと『レディ・バード』や『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』にも重ねることができるはずだ。

2001年に公開された『ブリジット・ジョーンズの日記』は、ドジで冴えないブリジット(レネー・ゼルウィガー)が二人の男性の間で揺れ動くという内容で、今まで3作品続くほどの人気映画。働く女性たちへ希望と元気を与えた作品だ。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は、高校生活を真面目に勉強に費やしてきた女子二人が、卒業を前に青春を取り戻そうとする物語。よく映画やドラマに描かれているようなハイスクールライフではなく、ごく普通の生活をしてきた彼女たちの視点から見るアメリカの高校はよりリアルに感じられる。

グレタ・ガーウィグ(『フランシス・ハ』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)監督の実体験を元に作られた『レディ・バード』は、高校生のクリスティン(シアーシャ・ローナン)を主人公に、母親やクリスチャンの学校に反抗するという思春期のもやもやした感情を描いている。

映画は時間が限られている中でストーリーを展開させるため「こんなことあるわけない!」と思うことも多数起きる。その点では、ドラマではゆっくりとキャラクターたちの成長を見守ることができるので、共感性の高いストーリーを生みやすいベースでもあるのだろう。

『セックスライフ・オブ・カレッジガール』シーズン1~2はU-NEXTで独占配信中

Photo:『セックスライフ・オブ・カレッジガール』©2022 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license. 『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.