Netflix製作による『クイーンズ・ギャンビット』は、エミー賞をはじめとする数多くの賞でノミネート・受賞を果たして高く評価されているが、2021年に内容が“性差別的”だと名誉棄損で訴えられた。今回、その訴訟に決着がついたようだ。米Indie Wireが報じている。
性差別的で軽蔑に値すると主張
ウォルター・テヴィスによる同名小説を下敷きにした本シリーズは、児童養護施設で人並外れたチェスの才能を開花させたベス・ハーモンを主人公に、薬物・アルコール依存症の問題を抱えながらも、男性優位のチェスの世界で頂点を目指すベスの姿が描かれる。
『クイーンズ・ギャンビット』の最終話では、実在の女性チェスプレイヤーでジョージア出身のノナ・ガプリンダシヴィリさんの名前が取り上げられていたが、2021年9月19日にノナさんが「事実に誤りがある」としてNetflixを提訴。
その問題のシーンは、1968年にベスがモスクワで男性プレイヤーと対局する場面。ラジオの解説者が「彼女に特筆すべき点は性別だけです。ロシアでは特別なことではなく、ノナ・ガプリンダシヴィリがいます。女子世界王者ですが、男性とは対局したことがありません」と解説している。
しかしノナさんによると、1968年までに彼女は59人の男性プレイヤーと対局したのだという。しかも、そのうちの少なくとも10人は、チェス選手にとって最高位であるグランドマスターのタイトルを保持していた強者であり、ドラマで事実とは異なる内容を描かれ、自身のキャリアを中傷されたと主張。ノナさんの訴えは、「“男性と対局したことはない”とは明らかに虚偽であり、また著しく性差別的で軽蔑に値する」ということ。
さらに訴状には、以下のように綴られている。
「Netflixは架空のヒーローが、ガプリンダシヴィリをはじめとする他の女性が成し遂げたことのないことをやってのけたように見せかけることで、“ドラマを盛り上げる”という安直かつ皮肉な目的で、ガプリンダシヴィリの功績について大胆かつ意図的に嘘をつきました。こうして、若い女性が世界最高レベルのチェス大会で男性と競う姿を見せることで、女性を鼓舞するはずだった物語の中で、Netflixは、同じ時代に世界の舞台で実際に男性と対局し、打ち負かした実在の女性先駆者を辱めたのです」
非公開の和解金で決着
ノナさんの訴えに対してNetflixは、「“フィクションには真実に対する義務がない”ことを視聴者は知っている」と主張し、訴訟の棄却を要求。しかし、ヴァージニア・フィリップス連邦地裁判事は、Netflixが史実の正確さに対して“認識ある過失”をしたと述べ、また番組にはガプリンダシヴィリほか実在の人物や出来事が含まれ、完全なるフィクションではないことも指摘し、訴訟の棄却要求を却下。ノナさんとNetflixは、非公開の和解金で決着がついたと報じられている。
なおNetflixは、『令嬢アンナの真実』のモデルで、実在の起業家で詐欺師のアンナ・デルヴェイの友人だった、レイチェル・ウィリアムズにも名誉棄損で訴えられている。
『クイーンズ・ギャンビット』は、Netflixにて独占配信中。(海外ドラマNAVI)
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Photo:Netflixオリジナルドラマシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』