【映画レビュー】『女王陛下のお気に入り』アカデミー最多10候補 エマ・ストーンら三大女優が宮廷バトル

各賞レースで受賞が相次いでいる映画『女王陛下のお気に入り』が、いよいよ2月15日(金)から公開となる。高飛車で無知、そして密かな孤独に苦しむイングランド女王。そんな彼女を陰で操ろうと、女官長と侍女が水面下で確執を繰り広げる。

♦︎後継のない女王 その心を射止めるのは?

イングランド最後の統治者となった、女王アン(オリヴィア・コールマン『ブロードチャーチ ~殺意の町~』)。フランスとの戦争下にあった18世紀当時、政治情勢に疎い女王を陰で支配してきたのは、女王の幼馴染のレディ・サラ(レイチェル・ワイズ『ロブスター』)。最も信頼を得ている助言者の一人であった彼女は、17人の子どもをすべて失っている女王の孤独につけ入り、絶大な権力を握っていた。

そんなサラの元を、ある日一台の馬車が訪れる。客車から転がり落ちてきたのは、サラの従姉妹にあたるアビゲイル(エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』)。すっかり没落したアビゲイルを見捨てられず、サラは彼女が王宮で働けるよう女王に取り計らってしまう。しかし、聡明なアビゲイルはすぐに女王に取り入り、サラの地位は窮地に...。女王の「お気に入り」の座を巡り、二人の側近が熾烈な争いを繰り広げる。

♦︎シニカルで優雅な権力闘争

並外れて愉快で、清々しいほどシニカルな王室コメディ、とNew York Times紙は絶賛。本作を手掛けたギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督(『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』『籠の中の乙女』)は、明るさと哀愁が同居する不思議な鑑賞体験を生み出してきた名手。今作でも、シェイクスピアなどの悲劇とは違う、新感覚の王室物語を紡いでいる。

宮廷での奇妙な陰謀をテーマにした、良い意味で極悪非道なコメディとWashington Post紙は紹介。滑稽で皮肉に満ち、そして派手で悪趣味とすら言える120分間だ。オリヴィア演じる短気で傲慢な女王が隠す、孤独な一面も見所の一つ。今年の作品のなかでも指折りの演技として記憶に残るだろう、と同紙は賞賛している。

作品の要は、女王を巡る愛憎入り組んだ三角関係。気品に溢れた皮肉の応酬と、不道徳な欲望に満ちた一本だ、とLos Angeles Times紙はコメント。今年公開予定のどんな大作よりも、純粋でいながらひねくれた笑いを持つ映画になるかもしれない、と高く評価している。

♦︎アカデミー賞有力候補

アメリカでは4館限定公開で封切りした本作は、公開直後から驚異的な出足を記録。興行収入は3日間で42万ドルを超えた。シアター当たりの興行収入は『ラ・ラ・ランド』には届かなかったものの、同作以降の約2年間で最大の実績となっている。

昨年のベネチア国際映画祭で本作は、銀獅子賞(審査員大賞)と女優賞をダブルで受賞。また、今年のゴールデングローブ賞では、孤独で高慢な女王・アン役のオリヴィアに最優秀主演女優賞が贈られた。現在審査中のアカデミー賞にも『ROMA/ローマ』と並んで最多10ノミネートされているなど、各賞のノミネート・受賞が止まらない。

『女王陛下のお気に入り』は、2月15日(金)より全国にて公開。(海外ドラマNAVI)

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『女王陛下のお気に入り』
(C)2018 Twentieth Century Fox