育児と仕事に追われるシングルマザーの、パワフルでカオスな日常を描くコメディ『SMILF(原題)』。製作・脚本・監督・主演のフランキー・ショウは、大学卒業後に思わぬ妊娠を知り、目指していた女優業との両立に悩んだという経歴の持ち主。波乱の半生をアップテンポなコメディに投影した『SMILF』は、1月上旬からシーズン2に突入。米Showtimeの第2チャンネル「SHO 2」で放送されている。
♦︎女優目指したブリジット、夢とは遠い日々
ボストン近郊に暮らすブリジット(フランキー)は、元気いっぱいのシングルマザー。一躍リッチな暮らしを手に入れようと女優を目指していたが、妊娠の発覚で夢はご破算に。息子のラリー(双子のアナ・ライマーとアレクサンドラ・ライマーのダブルキャスト)に良い暮らしをさせたいと願いつつ、現在は金持ちのアリー(コニー・ブリットン)に依頼された家庭教師の仕事に甘んじている。
仕事が終わると、散らかり放題の小さなワンルームに戻るブリジット。幼い息子と二人きりの孤独な彼女は、呑んだくれ、ジャンクフードをつまみ、SNS上を徘徊するなど、夢の女優業とは程遠い日々を送る。雇い主のアリーと一緒に酔いつぶれてデートをすっぽかし、教会からマリア像を持ち帰り、雇ったベビーシッターに無理難題を押し付け...。そんなブリジットのカオスな毎日に、不思議と笑みがこぼれるシリーズだ。
♦︎友情と温もりのシーズン2
シーズン1の放送は2017年。それまでのShowtimeのコメディといえば、登場人物に感情移入できるような正統派の作品が主流。行き当たりばったりのブリジットを主役に据えた本作は、その意外なスタイルで視聴者を驚かせた、と米Hollywood Reporterは振り返る。シーズン2でもブリジットは、いばらの道を突き進む。今回も傑作だ、と同メディアは仕上がりに大満足。
ブリジットの衝動的な行動に加え、シーズン2では温かみとキャラクター間の団結が強まったことで、さらに見応えのあるエピソードが目白押しに。風の吹くままカオスに身を任せた前期とは異なり、感情の山と谷がより入念に設計されている、と米Boston Globe。エピソードの中には、主人公のブリジットがまったく登場せずに、代わりに雇い主のアリーが女性キャラクターたちを取り仕切るという挑戦的な放送回も。物語性を増したシーズン2は、前期よりも大幅なステップアップを遂げた。
♦︎社会問題で賛否
本作では、シングルマザーなど女性たちの置かれた悲惨な状況がコメディの柱に。下着姿のブリジットが、ハリウッドでセクハラ告発の相次ぐプロデューサーに扮した男性とじゃれ合うシーンは、さすがに賛否が割れるところ。「#MeToo(私も)」や「Time"s Up(もう十分)」といったセクハラ告発運動が広がるなか、もしも本作が男性プロデューサーによるドラマだったら笑えただろうか、とHollywood Reporterは問いかける。
一方、Boston Globeは、シングルマザーへの偏見を和らげる作品として評価しているようだ。同テーマのドラマは何も目新しいものではないが、主人公に並ならぬ親近感を抱かせる点でほかの多くのドラマを圧倒している、と同メディアは指摘する。本作では、バーで酔ったりデートを楽しんだりといったシーンだけでなく、乱雑なワンルームのなかでもあらゆるシーンに密着。社会のなかで弱者とされるシングルマザーたちの悩みと挑戦を赤裸々に描くことで、より親しみを感じさせるドラマとなった。
ままならない日常をエネルギッシュに生き抜くコメディ『SMILF』シーズン2は、米SHO 2で放送中。(海外ドラマNAVI)
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フランキー・ショウ(C)Kathy Hutchins / Shutterstock.com